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JEROBOAMレポートに続いて、イタリアに居を構える3Tの本社&工場への訪問レポートをお届け。メイドインイタリーかつ職人の丁寧な手作業で作られるカーボンホイールやカスタムペイント、カーボンクランクなどに焦点を当てつつ、知られざる社内の様子を通して3Tブランドへの理解を深めていきたい。

革新的なプロダクトを生み出し続ける3T イタリア本社&工場の様子をレポート

ミラノ空港から車で90分ほどの所にある3T本社ミラノ空港から車で90分ほどの所にある3T本社 (c)Hayato Higuchi
イタリア北部の都市Bergamo(ベルガモ)にある3T(スリーティ)。1961年にイタリアのトリノで創業し、ハンドルバーをはじめ、数々の名品を生み出しているメーカーだ。

近年はジェローム・ブルーメンが設計したエアログラベルロードバイクや、エアロディスクロードバイクをリリースし注目を集めた他、ドイツのカーボンパーツメーカーであるTHMを傘下に収め、イタリアの自社施設内でカーボンクランクを製造。また、アーティストとのコラボレーションペイントである#getcreative企画を推し、独特で芸術的なペイントのフレームを発表している。

今回は、その3Tイタリア本社及び、カーボンホイール、フレームペイントを請け負う工場を訪問。こだわりの詰まった製品の数々を紹介する。

エントランスを入るとギャラリーのようにバイクが展示されている。エントランスを入るとギャラリーのようにバイクが展示されている。 (c)Hayato Higuchi
イタリアのナショナルチームカラーであるブルーをアクセントにした本社建物のエントランスを過ぎると、アーティストのペイントが施されたエアログラベルバイクのEXPLORO、今年のユーロバイクで注目を集めたエアロディスクロードバイクSTRADAの軽量THMバージョン、ブラック/イエローのカスタムペイントのSTRADAの3台が目に入る。

事務所、会議室、倉庫といった無機質な空間の中で一際目立つ、まるで美術館のようなレイアウトに置かれたコンセプトバイクをじっくりと眺める事ができる。

イタリア国内で活躍するアーティストを起用し、芸術的なフレームを展開する #getcreative

ユーロバイクショーでも実演されていたSTRADAのフレームも展示。ユーロバイクショーでも実演されていたSTRADAのフレームも展示。 (c)Hayato Higuchi
食や文化などイタリアらしいライフスタイルを提案している3Tで最も熱い企画が「#getcreative」。イタリア国内で活躍するアーティストを起用し独特な力強さを持つペイントをSTRADA、EXPLOROに施し、カスタムオーダーカラーとは違ったアーティスティックなフレームを発表している。

ユーロバイクショーではアーティストが自ら描いた絵画をベースとして、フレームにペイントを施していた。1枚の絵を基にして描かれるフレームアートは、まさに芸術品であり3T本社内のギャラリースペースでも、その芸術的なペイントに時間を忘れて眺めてしまう。

#getcreative企画のアーティストによるペイントが美しい。#getcreative企画のアーティストによるペイントが美しい。 (c)Hayato Higuchi
本社内に入って一番手前に展示されているグリーンのEXPLOROをペイントしたアーティストのジョルジオ氏は、自身でペイントを行ったEXPLOROを駆りJEROBOAMグラベルチャレンジでも300kmを走るサイクリストだ。

EXPLOROでグラベルに挑戦している際に生まれてくるインスピレーションを数々のフレームにペイントを行っているそうだ。ナイトランや山々、自然の中での閃きをフレームに映しているため、彼の作品である#getcreativeのEXPLOROは独特の力強さがある。

注目はイタリアアーティスト、ジョルジオ氏によるペイントフレームだ。注目はイタリアアーティスト、ジョルジオ氏によるペイントフレームだ。 (c)Hayato Higuchi
カフェスペースには今年のユーロバイクでも実際にブースでペイントを行っていたSTRADAのフレームも展示され、イタリアンインテリアとROCKETエスプレッソマシーンが配置されたカフェスペースに華を添えていた。

イタリアで行われるカスタムペイント

アーティストによるペイントの他、カスタムペイントとして塗装工場でのペイントも美しい仕上がりだ。イタリアの工場で行われている塗装作業現場を覗いて来た。

欧米向けのプロパー製品の塗装と、カスタムペイントは3Tの本社から車で約90分のところにある塗装工場で行われている。

デカール箇所が記された仕様書とカラー見本。デカール箇所が記された仕様書とカラー見本。 (c)Hayato Higuchi
丁寧な作業が美しいフレームを生み出す。丁寧な作業が美しいフレームを生み出す。 (c)Hayato Higuchi
作業は工場にありがちな、流れ作業的な製造というよりも一つ一つの作業を確認しながら丁寧に行われている。工房的な要素が強く、下地塗り、磨き、本塗り、デカール貼り付け、クリアといった作業も丁寧で美しい仕上がりへと繋がっている。

空間、時間ともに余裕を持った工場内では、担当毎に各作業が行われる。クリアの吹付作業1つにとっても、心のこもった丁寧さが伝わってくる。

デカール貼りも一枚一枚慎重に行われていた。デカール貼りも一枚一枚慎重に行われていた。 (c)Hayato Higuchi仕上げのクリア塗装。仕上げのクリア塗装。 (c)Hayato Higuchi

カスタムペイントされたSTRADAのフレーム。光りの当たり方で見え方が変わる。カスタムペイントされたSTRADAのフレーム。光りの当たり方で見え方が変わる。 (c)Hayato Higuchi

光の当たり方によってクランク側はパープルに見えたりゴールドに見えたりし、左半面はブラックに塗られたデュアルカラーでカスタムペイントを施されたSTRADA DUEのフレーム。単にパープル/ブラックという2トーンでは無く、洒落た煌めきを持たせている所がイタリアらしい。

最近の3Tのフレームカラーはプロパー製品では、ガルフカラーやヨーロッパの自動車によく見られるようなカラーリングを採用しており、ファッション性が高く、「自転車」という枠を超えたラグジュアリーブランドとなっている。

イタリアの職人によるカーボンホイールビルディング

熟練した職人によって手作業で行われるホイールの組立。熟練した職人によって手作業で行われるホイールの組立。 (c)Hayato Higuchi
2020年は内幅が25mmのワイドリムを採用したDISCUS C45 LTD 700Cディスクホイールをリリース。エアロダイナミクスを追求したエアロ&コンフォートの機能に加え、カラーハブ仕様のモデルを追加。これにより、選択肢の幅を広げている。

ホイールの生産現場は、先ほどの塗装工場と3T本社の中間のあたりにある。いずれも、イタリア国内という事で品質管理が行き届き、確かな製品をユーザーに届ける事ができるという。高い精度が必要とされるカーボンホイールの組立ては、電動工具が使用されない全て職人達による手作業で行われている。

静かで綺麗に整理された作業空間だ。静かで綺麗に整理された作業空間だ。 (c)Hayato Higuchi
カラー提案のクリスキングハブを使用した3T DISCUS ホイールの組立を行っていた。カラー提案のクリスキングハブを使用した3T DISCUS ホイールの組立を行っていた。 (c)Hayato Higuchi計測を行いながら黙々と作業は行われる。計測を行いながら黙々と作業は行われる。 (c)Hayato Higuchi

計測結果はシートで保管され、合格したもののみが出荷される。計測結果はシートで保管され、合格したもののみが出荷される。 (c)Hayato Higuchi
工具や試験機の音しか聞こえない静かで整理の行き届いた工場内では、熟練した職人による作業が行われ、計測機器を使用し作業ごと、部品ごとに数値を確認している。

今回訪問した際には、新製品であるクリスキング製カラーハブを使用したDISCUS C45 LTD 及びDISCUS PLUS i28 LTD ディスクカーボンホイールを組み立てていた。3Tのハイエンドにあたる両ホイールは、こうした手作業で組立されている。

完成したホイールは一つ一つ検査が行われ、合格したもののみを出荷している。

ホイール組立工場のオーナーのフィリッポ氏もJEROBOAM75kmを走った経験を持つサイクリストだ。ホイール組立工場のオーナーのフィリッポ氏もJEROBOAM75kmを走った経験を持つサイクリストだ。 (c)Hayato Higuchi
3T本社内にある試験室では、各部品、フレームの製品試験を行っている。3T本社内にある試験室では、各部品、フレームの製品試験を行っている。 (c)Hayato Higuchi
ホイールは実際にタイヤが嵌められたうえで走行試験を行う。ホイールは実際にタイヤが嵌められたうえで走行試験を行う。 (c)Hayato Higuchiレーザーによってリムの振れを計測している。レーザーによってリムの振れを計測している。 (c)Hayato Higuchi


働いている職人たちはいずれも普段からスポーツバイクに慣れ親しむ自転車乗りだ。オーナーのフィリッポさんも、昨年のJEROBOAMグラベルチャレンジを75kmで参加し完走している。

また、3T本社内では試験施設を完備。工場内での品質検査の他、適時各製品について自社内で品質検査を行っている。

ホイールはスポークテンションの計測確認、実際にタイヤを装着しての走行試験が行われている。その他、フレームやハンドル、ステム、シートピラー、フォークとそれぞれの製品についても、検査が行われ、製品の品質管理・向上に努めている。

イタリアの自社内にて製造されるカーボンクランク TORNO

THMの製造施設を3T本社内に設置。TORNOカーボンクランクを生産している。THMの製造施設を3T本社内に設置。TORNOカーボンクランクを生産している。 (c)Hayato Higuchi
ドイツのカーボンクランクメーカーであるTHMを傘下に収め、1x専用エアロカーボンクランクTORNOをリリースした3T。昨年末よりイタリアにカーボンクランク製造施設を設置し、イタリア本社内でTORNOの製造を開始している。

ペイント、ホイールと同様、高い品質にこだわるカーボンクランクの生産も職人による手作業だ。明るく、整理が行き届いた作業スペースは、まるで試験を行っている学校教室のように静かで職人は集中して生産作業を行う事ができる。

手作業でカーボンシートを一枚一枚重ねる。手作業でカーボンシートを一枚一枚重ねる。 (c)Hayato Higuchi金型のメンテナンスも丁寧だ。金型のメンテナンスも丁寧だ。 (c)Hayato Higuchi

”made in italy”の文字が誇らしげに入ったTORNOクランク。美しい。”made in italy”の文字が誇らしげに入ったTORNOクランク。美しい。 (c)Hayato Higuchi
LTDグレードで330g、TEAMグレードで380g(いずれもチェーンリング抜き重量)と、抜群の軽さを誇るだけあり、慎重な作業が行われる。カーボンシートの重ね合わせや薬剤の注入等、手作りならではの丁寧な作業で工程が進んでいく。

生産だけでなく、金型のメンテナンスに於いても丁寧さが伺える。破損に繋がる油分や埃などの付着が無いよう丁寧にメンテナンス作業を行っている。

このように作られるハンドメイドのカーボンクランクTORNOの完成品もまた芸術的な雰囲気を醸し出している。圧倒的な軽さを誇りながらも、力強さをアピールするクランクアームに、エアロ効果を高める薄い板状のクランクアームは唯一無二のデザイン。ハンドメイドカーボン製品ならではの質感と存在感がある。


フレーム、ホイール、クランク。手の込んだ製品に芸術性を加えた3T製品が並ぶ。フレーム、ホイール、クランク。手の込んだ製品に芸術性を加えた3T製品が並ぶ。 (c)Hayato Higuchi
生産現場を目にした後で再度、3T本社のギャラリーに戻る。特徴的なペイントが施されたフレーム、職人による手組ホイール、一枚一枚丁寧カーボンを積み重ねて出来上がったクランク。あらためて眺めると、製品から溢れ出てくる力それぞれに、職人、アーティスト達の経験と技術がこめられている事を感じる。

ギャラリー調に展示されたバイクは、一つの芸術品であり、見る者を魅了してやまない。“エアロカーボンクランク”“エアログラベルロードバイク”“1xエアロディスクロードバイク”といった革新的なプロダクトを作る3Tは、芸術性を採り入れる事で新たな領域に入っていた。
提供:あさひ ホールセール事業部 テキスト:樋口準人