トレックがフルサスE-MTB「Rail」を発表。前160/後150mmトラベルのサスペンションと2.6インチタイヤを備えた本気のトレイルバイクだ。イタリアでの試乗レポや、同時発表されるアルミハードテールE-MTB「Powerfly」の詳細と併せて紹介したい。

Rail:ボッシュのPerformance CXを採用する、最も進んだフルサスE-MTB

デビューを飾ったRail。ボッシュのPerformance CXを採用する本気のE-MTBだデビューを飾ったRail。ボッシュのPerformance CXを採用する本気のE-MTBだ photo:TREK
春先に発表されたE-MTBの国内投入決定の一報から半年。今日の情報解禁を待ちわびていた方も多いだろう。トレック・ジャパン初の本格E-MTBとしてデビューするのが、前160/後150mmトラベルのサスペンションを装備したRail(レイル)。ボッシュのPerformance CXをドライブトレインに採用し、今年初開催されたE-MTB世界選手権の女子レースでアルカンシエルを獲得した本気のハイエンドE-トレイルバイクだ。

従来トレック本国にはフルサスE-MTBの「Powerfly LT」が用意されていたが、後継モデルのRailはモデルチェンジを果たしたボッシュのハイグレードドライブユニット「Performance CX」を採用することで、フレーム設計を一から刷新。最新のトレンドに沿うようジオメトリーを調整し、トレイルでの扱いやすさを徹底的に研究したという。

ドライブトレインはボッシュのPerformance CX。最大トルク75Nmを発揮するドライブトレインはボッシュのPerformance CX。最大トルク75Nmを発揮する photo:So.Isobe
ダウンチューブ右側は全て開口部。RIBシステムによって大容量バッテリーが収められているダウンチューブ右側は全て開口部。RIBシステムによって大容量バッテリーが収められている photo:So.Isobeバッテリーはダウンチューブ内装式。脱着は鍵1本で行い、本体には持ち運びに便利なハンドルも装備するバッテリーはダウンチューブ内装式。脱着は鍵1本で行い、本体には持ち運びに便利なハンドルも装備する photo:TREK

ディスプレイは新型のPurion。コンパクトだが視認性も悪くないディスプレイは新型のPurion。コンパクトだが視認性も悪くない photo:So.Isobe小型化したドライブトレインによってチェーンステーを大幅に短縮している小型化したドライブトレインによってチェーンステーを大幅に短縮している photo:So.Isobe


第2世代にモデルチェンジしたボッシュのPerformance CXは、現在国内市場で最も強力な最大トルク75Nmを発揮しながら、内部機構のブラッシュアップや軽量なマグネシウム材を使うことで、25%の軽量化と48%の小型化を成し遂げた意欲作。短いチェーンステー長で反応性を増す手法は現代MTBのトレンドだが、Railではモーター自体の小型化によってPowerfly LTよりも27mmもの短縮に成功し、かつ19mm下げたBBドロップやオフセット量の短いフォークと1.5度寝かせたヘッドチューブアングルなどによって安定感や操作性も向上させている。

フレームはOCLVマウンテンカーボンを使う上級モデルと、Alphaアルミニウムを使った弟分の2種類で、日本にはカーボンメインフレームとカーボンリアアームを組み合わせた「9.7」が入荷する。スマートなルックスが映えるインチューブ式バッテリーは500wHで、本国では625wHという超大容量を誇るバッテリーを装備したモデルも用意される。アシスト量を調整する上で欠かせないスピードセンサーもチェーンステーに組み込まれているなど細部に至るまで芸が細かい。

フロントフォークは全車種で160mmトラベル。重たい車重をロングストロークで支えるフロントフォークは全車種で160mmトラベル。重たい車重をロングストロークで支える photo:So.Isobe捻れを抑制するためにフォーククラウンは特注のオーバーサイズ捻れを抑制するためにフォーククラウンは特注のオーバーサイズ photo:So.Isobe上級モデルにはRE:AKTIVシステムを搭載する(日本発売モデルは非搭載)上級モデルにはRE:AKTIVシステムを搭載する(日本発売モデルは非搭載) photo:So.Isobe


基本設計はエンデューロバイクのSlashに準じており、ロッカーアーム部のパーツの位置を変更することによって、ジオメトリを大きく変更できるMinolinkが採用されている。また、ブレーキ中でもリアサスペンションの動きを妨げないActive Braking Pivotも忘れられていない。

トラベル量は先述の通り前160/後150mmで、タイヤはトレイルバイクとして太い2.6インチを標準装備。重量のある車体を余裕あるストロークとタイヤボリュームで支える仕組みで、カスタム仕様のオーバーサイズフォーククラウン、全モデルで4ピストンブレーキを装備するなどE-MTBならではのセットアップが特徴だ。

全車種でドロッパーポストを標準装備する全車種でドロッパーポストを標準装備する photo:So.Isobeヘッドパーツに内蔵されたKnock Block。フォーククラウンとダウンチューブの接触を防ぐヘッドパーツに内蔵されたKnock Block。フォーククラウンとダウンチューブの接触を防ぐ photo:So.Isobeタイヤは2.6インチ。E-MTBに特化したサイズだタイヤは2.6インチ。E-MTBに特化したサイズだ photo:So.Isobe

Railは史上初開催されたE-MTB世界選手権でも活躍。女子レースではアルカンシエルを射止めたRailは史上初開催されたE-MTB世界選手権でも活躍。女子レースではアルカンシエルを射止めた photo:UCI
バッテリーはRIB(Removable Integrated Battery)と名付けられたダウンチューブ内装式で、汚れ被りの少ないサイドアクセスを採用する。脱着は付属するABUS製の鍵1本のみで行い、バッテリー本体には持ち運ぶ際に使えるハンドルが取り付けられるなど利便性も十分に考慮されている。

先述した通り、カナダ、モンサンタンで史上初開催されたE-MTB世界選手権の女子レースでは、Railに乗ったナタリー・シュナイター(スイス)が優勝。Railは世界初のE-MTBワールドチャンピオンバイクという称号を手に入れたことも特記しておきたい。

日本で発売されるのはスラムのNX EagleとロックショックスのYari RC(前)、Deluxe RL(後)サスペンション、ボントレガーのLine Comp 30ホイール、500wHバッテリーを装備した「9.7」で、税抜価格は79万円だ。

注目のRailを徹底試乗 イタリアの山中で1日乗り倒す

ここがオープントレイルなのが信じられない最高のコース。Railの安定感に助けられたここがオープントレイルなのが信じられない最高のコース。Railの安定感に助けられた photo:TREK
フルモデルチェンジを遂げたDomaneのテストライドデーから一夜明け、私こと磯部はバリバリのマウンテンバイカーたちに紛れてRailのグループライドに繰り出した。正直に言えば昨今のMTB事情には明るくないのだが、最新E-MTBを味わえる機会をみすみす逃す手は無い。「結構ヤバい下りもある」とのことでスタート前は若干不安だったものの、蓋を明けてみればRailの素晴らしい走りを終始堪能する半日となった。

試乗車はスラムのGX EagleやボントレガーのLine Compホイール、625wHバッテリーを装備した本国仕様の「Rail 9.8」で、インチューブバッテリーやコンパクトなドライブトレインが作り出す自然なルックスが何とも格好良い。「E-BKEはその見た目がな...」と敬遠していたのも今や昔の話となりつつあるのだ。私のRail 9.8は当初欧州仕様だったものの、発表会に同席していたボッシュのエンジニアがPerformance CXのプログラムを日本仕様に書き換えてくれた。

シングルトラックに分け入る。日本と緯度が近く植生も似ていたシングルトラックに分け入る。日本と緯度が近く植生も似ていた photo:So.Isobeプレスキャンプでの充電の様子プレスキャンプでの充電の様子 photo:So.Isobe

Performance CXの特徴であるE-MTBモード。ルーズな路面では非常に使いやすかったPerformance CXの特徴であるE-MTBモード。ルーズな路面では非常に使いやすかった photo:So.Isobeランチタイムは丘の上のトラットリアで。Railの走り心地について熱い議論が飛んだランチタイムは丘の上のトラットリアで。Railの走り心地について熱い議論が飛んだ photo:So.Isobe


走り出してまず気づくのはアシストのスムーズさだ。ライバルであるシマノSTEPS E8080よりもペダリングに対する反応が早く、小刻みに入力のオンオフを繰り返してもガコつきがほとんど無い。他社製品と比べればやや駆動音が大きめだが、75Nmを誇る最大トルクは言わずもがな強力で、Turboモードを選べば瞬間的に24km/hまで加速してくれる。

欧州仕様のアシスト比は最大340%で、日本仕様では最大200%未満という縛りがあるものの、決定的な差を感じたのはアシスト量が減少する20km/hを超えたあたりの登坂区間。それでも強くペダリングすれば欧州仕様のバイクに遅れを取ることもなく、30%に匹敵する急勾配だろうが、登坂中の凹凸だろうが、一切お構い無しに登りきれる。人力では絶対に不可能な場所を余裕を持ってクリアできたり、ミスコース後の登り返しでも精神的ショックが全くないのはE-MTBならではの愉しみだ。

そのパワーを活かすのが、バイクそのものの優れた走行性能だ。トレックのカーボンバイクらしいスムーズな走りはそのままで、重量を除けばFuelなどノーマルバイクと走りの根本がかなり近いことに驚いた。ダウンチューブの右側全体が開口部であってもフレームのたわみは一切感じないし、ロングストロークの前後サスペンションも違和感なく良く動く。

いとも簡単に激坂を乗り越える加速性能に思わず笑顔の筆者いとも簡単に激坂を乗り越える加速性能に思わず笑顔の筆者 photo:TREK
車重によって慣性が大きいため、ノーマルバイクと比べれば細かい切り返しやルーズ路面でのコーナリングは苦手。しかし、私にとって(かなり)久々のトレイルライドにも関わらず、富士見パノラマのBコースより確実にハードな下りを走破できたのは、Railの走りの安定感あってこそ。登りでも下りでも圧倒的なテクニックで走っていたドイツのE-MTB専門誌のライダーが「間違いなくトップクラスのE-MTBの一台」と呟いていたのも印象的だった。

華麗な走りを披露していたドイツのE-BIKE専門誌のスタッフ。欧州では本気のMTB乗りの間でもE-MTBが既に一般的となっている華麗な走りを披露していたドイツのE-BIKE専門誌のスタッフ。欧州では本気のMTB乗りの間でもE-MTBが既に一般的となっている photo:TREK
昼食を挟んで8時間(!)遊び倒したにも関わらず、バッテリー表示は5段階中の2も残っていたことも大きな驚きだった。乱暴に計算すればバッテリー容量の増加分がそのまま残量になったとも言えるため、本格派MTBerにとってRailの625wHバッテリーは確実なメリットがある。そもそもよほど健脚の持ち主でない限り余裕で8時間も走れる訳がなく、誰にとってもE-MTBが新たな地平線を切り拓いてくれることは間違いない。

国内で発売される「9.7」は500wHバッテリー仕様であるため、今後は625wHバッテリーの単品発売にも期待したいところ。しかし500wH版は625wH版に比べて軽く仕上がることも忘れてはならないポイントだ。

トレック Rail 9.7スペック

トレック Rail 9.7トレック Rail 9.7 (c)TREK
フレームOCLV Mountain Carbon main frame, alloy stays, Removable Integrated Battery (RIB), tapered head tube, Control Freak internal routing, magnesium rocker link, Motor Armor, Mino Link, ABP, Boost148, 12mm thru axle, 150mm travel
フォークロックショックス Yari RC, DebonAir spring, Motion Control RC damper, e-MTB optimized, tapered steerer, 42mm offset, Boost110, 15mm Maxle Stealth, 160mm travel
リアサスペンションロックショックス Deluxe RL, 230x57.5mm
ホイールボントレガー Line Comp 30, Tubeless Ready
ドライブトレインスラム NX Eagle
ブレーキシマノ MT520 4-piston hydraulic disc
バッテリーBosch PowerTube, vertical, 500wh
コントローラーBosch Purion
モーターBosch Performance Line CX, 250 Watt, 75Nm, magnesium body, 24km/h max assist
サイズS, M, L, XL
税抜価格790,000円


Powerfly:トレイルを身近にしてくれる、アルミハードテールE-MTB

アルミハードテールのPowerfly。スポーツユースからトレイルまでを守備範疇にするアルミハードテールのPowerfly。スポーツユースからトレイルまでを守備範疇にする photo:TREK
Railの影に隠れがちではあるものの、このPowerflyも忘れてはならない存在だ。「もっと多くの人をバイクに、もっと多くの人をトレイルへ」を掲げる本格アルミハードテールE-MTBであり、それだけにRailに引けを取らないテクノロジーが凝縮されている。

ドライブトレインはRailと同じくボッシュのPerformance CXで、Alphaアルミニウム製フレームのダウンチューブにはRIB(Removable Integrated Battery)を装備するため、クリーンなルックスもその特徴の一つ。本国ラインナップには一日中のライドでもバッテリー切れの心配が無い超大容量625wHバッテリー版も用意されるという。

フレームはトレックが誇るAlphaアルミニウム。カーボンフレームにも思えるデザインだフレームはトレックが誇るAlphaアルミニウム。カーボンフレームにも思えるデザインだ photo:So.Isobeノーマルバイクにも近いスマートなルックス。末広がりのシートチューブなど各部にこだわりが見て取れるノーマルバイクにも近いスマートなルックス。末広がりのシートチューブなど各部にこだわりが見て取れる photo:So.Isobe

上級グレードは超大容量625wHバッテリーをダウンチューブ内に装備する上級グレードは超大容量625wHバッテリーをダウンチューブ内に装備する photo:So.IsobeドライブトレインはボッシュのPerformance CXドライブトレインはボッシュのPerformance CX photo:So.Isobe


 パワフルな車体に組み合わせるのは120mmトラベルのフロントサスペンションで、上級グレードはRailと同じくオーバーサイズクラウンやドロッパーシートポストも用意されている。シティユースを考慮しフェンダーや専用リアラック、キックスタンドなどオプション品を装備した「Powerfly Sport」も用意されているのもポイントだ。

日本で発売されるのはスラムのSX EagleとロックショックスのRecon RL、500wHバッテリーを装備した「5」で、税抜価格は46万円。トレイルを身近にしてくれる一台としては十分なコストパフォーマンスと言えるだろう。

トレック Powerfly 5スペック

トレック Powerfly 5トレック Powerfly 5 (c)TREK
フレームAlpha Platinum Aluminum, Removable Integrated Battery (RIB), tapered head tube, Control Freak internal routing, Motor Armor, Boost148, 12mm thru axle
フォークロックショックス Recon RL, Solo Air spring, Motion Control damper, e-MTB optimized, tapered steerer, 46mm offset, Boost110, 15mm Maxle Stealth, 120mm travelmm Maxle Stealth, 160mm travel
ドライブトレインスラム SX Eagle
ブレーキテクトロ HD-M275 hydraulic disc
バッテリーBosch PowerTube, vertical, 500wh
コントローラーBosch Purion
モーターBosch Performance Line CX, 250 Watt, 75Nm, magnesium body, 24km/h max assist
サイズS, M, L, XL
税抜価格460,000円
提供:トレック・ジャパン text&photo:So.Isobe