2018/12/10(月) - 16:32
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに来日したUAEチームエミレーツの4選手にインタビュー。今シーズンの振り返りと、チームで駆るコルナゴのバイクについてインプレッションを訊いた。コルナゴが供給する3種のバイク、C64、V2-R、CONCEPTをどう乗り分けているのか、どう感じているのか。本音でトークしてもらった。
― 今シーズンについて教えてください。満足のいくものでしたか?
クリストフ:勝利数では5つと少なかったけれど、結果的にはいいシーズンだったと思う。春にクラッシュして怪我をしたおかげで夏前までの結果にはやや不満足だったけど、ツール・ド・フランスでのシャンゼリゼの勝利がすべてをハッピーに変えてくれたね。ツールではダン・マーティンのステージ勝利と、僕自身は2位が多かったけど、いいリザルトでチームにとっても良かった。エシュボルン・フランクフルトでの4連勝は大会史上初のことで、嬉しかった。
― 今年のツール・ド・フランスはスプリンターにとって厳しいレースでしたね。多くの選手が途中でリタイアに追い込まれてしまいました。スプリンターで最後まで残れたのはあなたやサガン含めて数人でしたね。
ツールでは山岳ステージで生き残ったんだ。連日タイムリミットとの闘いで、マルカートが助けてくれた。カヴェンディッシュ、キッテル、ガヴィリア、フルーネウェーヘンらが次々に苦しんでタイムアウトになり、レースを去っていった。ラルプデュエズのステージは今までのキャリアの中でももっとも厳しい日だったね。
― フランクフルトは2014年から4連覇!。毎年勝っていますね(15年はレース中止のため完全4連勝中)。よほど向いているんですか?あるいは特別なモチベーションがある?
自分にとってホームレースのようだね。スプリントで決まるけれど、とてもハードなレースで、今年も途中で一度遅れているんだ。それでも復帰して勝っている。歴史を作ることができたね。
― ヨーロッパ選手権のチャンピオンとして、白と青の特別ジャージでシーズンの大半を走りました。あのジャージは特別なものでしたか?
本当にそう思います。ヨーロッパチャンピオンは将来的にはもっと価値が上がるだろうけれど、特別ジャージというのはいつでもいいものだね。観客もすぐに認知してくれるし、何より美しい。ファンがとても喜んでくれるんだ。ジャージもいいけど、ホワイト&ブルースペシャルペイントバイクに乗れるのも素晴らしい。クールだね。
― さいたまクリテリウムのスタートでは欧州チャンピオンの座を譲ることになったトレンティンと一緒にスタートで並びましたね。
そう、彼にはこう言ったんだ。「それは俺のジャージだから返せ」って(笑)。来年はまた取り返すさ。
― 来年はどのレースを目標にしていますか?
チームにフェルナンド・ガヴィリア(元クイックステップ)が移籍して来る。だからまだレースプログラムは決まっていないんだ。ガヴィリアと、それぞれどのレースに出るか、あるいは一緒に出るかを決めるんだ。場合によっては彼のリードアウトもすることになるだろう。
― チーム内のスプリントエースの座を争うことになる?
それは無いね。僕よりも彼をうまく牽引できる選手はいないはずだよ。あくまでチームでの勝利を目指すんだ。彼もリードアウトトレイン無しでも勝つことができる選手だから、来年は一緒により多くの勝利をチームにもたらすことができると思う。
― クラシックはどうですか? ロンド・ファン・フラーンデレンやミラノ〜サンレモはまた狙いますか?
ぜひそうしたいね。とくにパリ〜ルーベにはまだ勝っていないから、ぜひ勝ちたい。でも本当に難しいレースだね。でも諦めずにチャレンジしたいね。
― ポジション的にもチームのビッグリーダーになりますね。
そうだね。来年のUAEエミレーツは今季よりもずっといいチームになるだろうね。チームはガヴィリア以外にも多くの優秀な選手とサインを済ませているから、おそらくプロトンの中でも最も勝ち星を多く上げるチームになるんじゃないかと思っている。
チームビルディングは慎重に行われているけど、進歩を目指してスタッフも大きく入れ替わるんだ。医療チームなど新しい体制も加わり、もっとプロフェッショナルなチームになるんだ。来年はきっとエキサイティングな1年になるはず。すべての面でステップアップして、世界でもベストなチームになるだろう。
ビストラム:もちろん勝ちたかったね。でも自分ではベストリザルトで、ハッピーだよ。来年こそグランツールでステージを勝ちたいね。
― タイプとしてはステージレーサーなのですか?
オールラウンダーで、逃げでチャンスを掴むタイプです。グランツールでステージ優勝を掴むことが当面の目標だね。
― チームとは2020まで契約があり、若手として将来を期待されているのがわかります。
まだアシスト選手ですが、来年はタイムトライアルやグランツールでのステージ優勝を狙います。ブエルタやジロで活躍したいです。
マルカート:今年は勝利という結果が出せなかったけど、内容的にはいい1年だった。でも来年はもっといいレースをしたいね。逃げるのは僕のスタイルだけど、じつは来季は石畳のクラシックに挑戦して結果を出したいと思っている。とくにロンド・ファン・フラーンデレンが好きなんだ。
― 今回来日したチームメンバーは皆仲がいいんですか?
クリストフ:僕とビストラムはカチューシャから揃って移籍したんだ。僕がUAEに行くときに、一緒にという条件でね。ビストラムとは家も近くてトレーニングパートナーなんだ。ラエンゲンは今フランスに住んでいるけど、家はオスロの近くにあって、3人は自国のよきライバルで仲もいいんだ。
マルカート:僕はイタリアのパドヴァに住んでいるよ。コルナゴ社のあるカンビアーゴまでクルマで2時間ぐらいのところなんだ。
コルナゴの30年の歴史を持つ伝統の外ラグ式カーボンフレームとして2018年に登場。前作C60から約200gの軽量化を果たし、カムテールデザインによりエアロダイナミクスも向上。スレッドフィット82.5やカーボン/ナイロン/エラストマーから成る高分子化合物を使用したヘッドセットも搭載。トラディショナルな最先端オールラウンドバイクとして高い人気を誇る。
→特集記事 コルナゴC64デビュー 伝統のラグド製法にこだわった最高峰のイタリアンレーサー
→インプレッション記事 伝統と革新が融合する珠玉のイタリアンレーシング
前作V1-Rをベースによりエアロに、より高剛性にアップデート。モノコック製法を用い、ダウンチューブやシートチューブ、フロントフォークに至るまで随所にカムテール形状を盛り込み、エアロ性能を向上。スレッドフィット82.5や振動吸収性をもつヘッドセットを搭載し、ケーブルルーティングも空力に配慮し最適化。フレーム重量はコルナゴ史上最軽量の835gに仕上がるオールラウンドレーシングバイク。
→インプレッション記事 エアロダイナミクスと剛性を強化し進化した軽量レーシングマシン
フェラーリ社との協働により制作されたコンセプトモデルをもとに製品化したという、同社初のエアロロードバイク。テーパーヘッドからの造形は前方投影面積を減少させるべくデザインされ、ダウンチューブにはカムテール形状を導入するなど徹底してエアロダイナミクスを突き詰めて設計された。形状的な縦剛性の増加には振動吸収性をもつヘッドパーツにより微振動をカット。28mmタイヤを許容するクリアランスも持ち合わせる。
→インプレッション記事 満を持して登場した老舗イタリアンブランドのエアロロードレーサー
― コルナゴのバイクについてコメントを頂けますか。現在コルナゴにはC64、V2-R、CONCEPTの3つのハイエンドバイクがあり、チームに供給されています。コルナゴ社からは選手に対してどのモデルに乗って欲しいという指定は無く、選手が好きに選んでいいと聞いています。どう使い分けているか、それぞれのインプレッションもお聞きしたいんです。
クリストフ:CONCEPTに乗っています。理由はエアロダイナミックで、とても速いバイクだから。CONCEPTは“スーパーファースト”なバイクです。
― 今回もCONCEPTと一緒での来日ですね。どんな点が気に入っていますか?
クリストフ:平地やダウンヒルの速さはノーマルバイクと比べれば本当に速く走れて有利なんだ。
― コルナゴの他の2台、V2-RやC64と比べるとどうですか? その2台との違いは?
クリストフ:V2-RやC64と比べると、CONCEPTは少しハンドリング特性が違うんだ。少し重量があっても速いから、ほとんどすべてのレースでCONCEPTに乗っているね。ダウンヒルにおいて、90〜100km/h出るような下りでの速さといったらノーマルバイクの比じゃない。真っ直ぐに走ろうとするエアロ特性から鋭角コーナーでは少しクセがあるけれど、ハンドリングも常に安定していて、速く走るのに適したバイクなんだ。
― エアロダイナミクスをそれほど重視するのはなぜですか?
クリストフ:僕の場合は勝ちたいレースはほとんどすべてハイスピードな展開のゴールスプリントなど、速いエアロダイナミックバイクを必要とする勝ち方だから。バイクの重量の軽さや登りでの走りの軽やかさは、僕にとって重要ではないんだ。ダン・マーティンやファビオ・アルのような選手が登りで勝負をかけるのとは違って、僕は平坦コースやスプリントで勝利するタイプだから。そのようなコースで速いバイクであることが重要なんだ。
― 春のクラシックではV2-Rに乗っていますね?
クリストフ:そう。ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベでは平坦系と言っても石畳のレースだから、CONCEPTは少し剛性が高すぎるからV2-Rを選んでいるんだ。それらのレースでも最後にスプリントに持ち込んだとしたらCONCEPTのエアロダイナミクスが欲しくなるけれど、やはりコースの大半を占める石畳での快適性をとらざるを得ない。ずっと悪路の振動を受け続けるから、より快適な乗り味のV2-Rを好んでいるんだ。同時に28〜29cといった太いタイヤを使用するから、フレームクリアランスの大きさも必要になってくるからね。
― タイヤの太さは今、25Cですか?
クリストフ:そう、ほとんどのレースでは25Cを使っています。エアロダイナミクスと転がり抵抗のバランスがいいんです。パヴェのレースでは28か29Cです。
― V2-RとCONCEPTでは、乗り味の違いはありますか?
クリストフ:V2-RはCONCEPTに比べれば少しスローだけれど、より快適だね。振動を打ち消すような特性があり、楽に走れるんだ。だからクラシックでは選んでいる。CONCEPTは石畳を走るにはちょっと剛性が高すぎるんだ。太いタイヤを使う必要もあるしね。
― ツール・ド・フランスのラルプデュエズステージではバイクは何をチョイスしましたか?超難関山岳ステージで、獲得標高は5,000m以上ありました。多くのスプリンターが登りで遅れてタイムアウトで失格になった日です。
クリストフ:CONCEPTです。
― 驚きです。バイク重量があってもCONCEPTを選ぶんですか? 軽いV2-RやC64のほうが有利なのではないのですか?
クリストフ:いえ、CONCEPTを選びます。僕の場合は登りで軽いことよりも、平坦のローリング(巡航)性能やダウンヒルの速さで選びます。そのおかげで早くフィニッシュにたどり着けて、生き残ることができたのです。ツール・ド・フランスでCONCEPT以外のバイクに乗ったのは、パヴェのある第9ステージでV2-Rに乗った1日だけです。あの日はパリ〜ルーベと同じコースを走る石畳ステージでしたから。何度も言いますが、僕にとってエアロダイナミクスはもっとも重視する性能です。ジャージも空気抵抗が少ないワンピースタイプのボディスーツを着ます。タイトだけど、暑くて登りの多い日以外ならエアロスーツを選ばない手は無い。レースではいつでもエアロダイナミクスに優れたものをチョイスするようにしています。
ラエンゲン:僕は今回クリストフのリードアウト役でもあるのでCONCEPTですね。普段のレースでもCONCEPTを選ぶことが多いです。レースごとに乗り味の好きなバイク、特性で選んでいますが、身長が195cmもあるので、60サイズがあるCONCEPTがぴったりフィットするんです。クリストフの言うように、CONCEPTが速いバイクというのには同意です。本当に速く走れる。
マルカート:C64が僕のメインバイクです。とてもオールラウンドなバイクであり、コンフォート性能を持ちあわせているからです。 同時に非常に剛性に優れたバイクで、コーナーの立ち上がりやアップヒルスプリントで鋭く反応してくれます。ダウンヒルのハイスピードコーナリングも非常に良いフィーリングで、とても速いんです。C64はCONCEPTよりも操りやすいと思います。ダウンヒルとコーナリングでは安全で、ハンドリングがとてもニュートラルでクセが少ないのです。
― アタッカーらしいお答えですね。クラシックでは何を選びますか?
マルカート:パヴェのレースでもC64を選びます。フレームは非常に強く、丈夫です。ハードなレースでも壊れることはほぼ無いでしょう。一般ライダーなら長い期間に渡って乗り続けることができると思います。C64はとても気に入っています。
― 快適性が高いということですが、C64の剛性について、前モデルのC60と比較してはどうですか?
マルカート:C60と比べると剛性感はほとんど同じに感じます。C64は確か200g近く軽量化されたと思いますが、それでいて同じ剛性感や鋭い反応性を持っているのはすごいことだと思います。非常に剛性が高く、高いレーシング性能をもっています。
― C64とV2-Rの違いはどうですか?
マルカート:C64はC60からのモデルチェンジでカムテールデザインを取り入れてエアロダイナミクスにも優れるバイクになりました。C64とV2-Rの違いはおもに乗り味です。これは表現するのが難しいのですが、実際に乗って、自分の脚にあう好みのタイプで選ぶほかありません。例えばチームの2人のエース、ファビオ・アルとダン・マーティンを例に取ると、アルはC64、マーティンはV2-Rを好んでいます。2人はほとんどのレースでそればかり乗っていますね。平坦だからCONCEPTに乗るということもない。2人ともそれぞれのバイクが自分の脚質に合っていると話しています。
― コルナゴの3台のバイクの違いはどんなところに感じますか?
ラエンゲン:3タイプのバイクにおいて、C64とV2-Rのキャラクターの違いは少しだと思う。重量的にはCONCEPTでも1kgを切っているので、3モデルでそんなに差を考えたことはないですね。
※フレーム重量はCONCEPT:990g、C64:900g、V2-R:835g(いずれもフレーム単体/未塗装)
ラエンゲン:僕は背が195cmと高すぎるので、CONCEPTは最も大きな60サイズに乗っています。今のところCONCEPTのストックサイズである60cmで十分フィットするため気に入っています。 C64はラグ製法のためジオメトリーオーダーができるので気になっています。58がストックサイズの最大サイズなので、オーダーしてみるのはいいかもしれません。コルナゴのハイエンドバイクは最大13サイズから選べるから、プロ選手でもあまりサイズ選びに困ることはないんです。他のブランドだとそうはいきません。
ビストラム:僕もほとんどのレースでCONCEPTに乗っていますね。例外はクラシックで、V2-Rです。ほぼクリストフと同じ選択理由ですね。V2-Rも非常にオールラウンドなバイクで気に入っています。平坦のレースでは速く走れるバイクが好みなのでCONCEPTを駆っています。ローリングコースでの逃げなどには有利ですからね。
― CONCEPTは人気ですね。インプレッションでは、剛性は他の2台に比べて高いようですね。
クリストフ:速さを求めるならCONCEPTは良い選択だと思います。長いヒルクライムではなく、多少のアップダウンがあってもローリングコースならCONCEPTは有利でしょう。でもクライマーならC64かV2-Rですね。この2台はフィーリングの好みにより選べば間違いないと思います。
― 日本ではホビーレースやヒルクライムのレース系イベントが年間500レースほど開催されています。耐久レースとヒルクライムがとくに人気です。日本のユーザー、とくにホビーレーサーにとってバイク選びについてはどのようにアドバイスしますか? サーキットコースでの耐久レースやロードレースでは、何がベストですか? コルナゴのバイクならどう選びますか?
ラエンゲン:もしあなたがパンチャーやヒルクライマーで、登りで勝負をかけるのならV2-RかC64です。勝つためには。しかし急勾配の登りがないレースならCONCEPTが有利だと思います。サーキットコースのエンデュランスレースなどではもっとも速いでしょう。これは本当です。
― ディスクブレーキにはトライしていますか? UAEの選手はレースであまり使用していませんね。
マルカート:レースではまだスペアホイールの問題もあってチームとしては冒険しない方針でしたが、トレーニングではすでに使い初めています。普段からC64のディスクブレーキバージョンに乗っています。実際、将来はディスクブレーキにあると思っています。マーケットもその方向に向いていますね。
個人的にはとても気に入っています。安全性が高くて、ブレーキフィーリングも良く、コントロール性に優れて非常にいい。よりアクティブに走れます。問題は少しの重量増加。それ以外は気に入っています。
― ハンドル周りもフル内蔵ケーブルのC64に乗っている?
マルカート:まだですが、完全インテグレート設計の専用ハンドルはもうすぐ供給されると思います。たぶん来年はレースによりCONCEPTディスクも使用しようと思っています。速いステージでメリットが出せると思う。楽しみです。日本でのディスクロードのシェアはどうですか?
― プロレーサーが使いだしているから、日本でもディスクロードのシェアが増加しています。その数はまだ10%ほどですが、来年はもっとディスクの割合が増えるでしょう。イタリアでもそうですか?
マルカート:もちろん。ショップで販売されるバイクの70%はすでにディスクですね。イタリアンブランドもほとんどがディスク推しですから。
― ユーザーは次のバイクをディスクにするかどうかを考えていますね。
ラエンゲン:僕はノーマルブレーキも好きですよ。完成されているから。
― クリストフ、あなたはいかがですか? ツール・ド・フランスでも多くのスプリンターがディスクブレーキ仕様のエアロバイクをチョイスしていましたが?
クリストフ:僕の場合は少し悪い経験をしたので、その印象がまだ拭いきれていないんだ。長いダウンヒルでブレーキがフェードを起こして効きが悪くなったんだ。もちろん多くないトラブルだと思うけれど、そのときの印象があるから少し慎重になっている。他の選手でもツールのアルプスの長いダウンヒルがあるステージで大きな音を立てて下っている選手がいたから、マイナートラブルはプロユースでも起こっているね。
いくつかクリアすべき問題はあっても、平坦は問題無いだろう。とくに雨のステージではディスクブレーキはメリットがあると思う。長いヒルクライムではホイール周りの重量増加は避けたいけれど、石畳クラシックで雨や泥なら迷わずディスクかもしれない。ブレーキがよく効くからね。ただニュートラルサポートの問題はつきまとうね。
― 他のブランド含めて今までにたくさんのバイクに乗ってきたと思うけれど、コルナゴの特徴を教えてください。
ビストラム:今話してきたように、3つのタイプのバイクから選べるというのはとてもメリットがある。昨年は他のチーム(カチューシャ)に居たけど、チームのバイクはタイプの選択肢が少なかったんだ。あと個人的にコルナゴはビューティフルバイクだと思う。プロであってもそれは感じているんだ。速くて、美しいのはベスト。買いたくなるバイクだね。自転車レースに対するパッションを感じるんだ。乗って速く、見て美しいから僕はハッピーだよ。
― エルネスト・コルナゴ氏が聞いたら喜びますね。
ビストラム:その美しさはイタリアンブランドならではですね。ノルウェー人の僕にとってもコルナゴは特別な存在なんです。
クリストフ:昨シーズンに乗った他ブランドのバイクは、エアロバイクはCONCEPTに似たモデルがあったけど、他に選択肢が少なかった。そうだね、僕もコルナゴには美しさを感じるし、乗るのが嬉しい。ブランドがもつヒストリーは他とは違うね。美しいと感じるのは、そういったところからかもしれないね。
ビストラム:僕は小さな頃からコルナゴのバイクに乗ってレースを走っていたんだ。だからハンドリング特性にも慣れていて、今もそれが良くフィットする。その頃からずっと共通しているんだ。レースで乗りやすいバイク。それがコルナゴのすごいところ。
マルカート:ちょっと待って! 僕はイタリア人だからコルナゴの素晴らしさはここに居る誰より知っているよ(笑)。今はどのブランドも技術を競い合ってバイクを進化させてきたから、どれも素晴らしいと思う。確かに前ほど差は大きくないだろう。それでも1ブランドの中で3つからレースバイクを選べるというのは他にない特徴だと思う。僕らのレベルでは、乗り比べてどのバイクにするか選べるというのはとても大きなメリットだと感じる。
ビストラム:同時にコルナゴはヒストリックなバイクだから、乗る喜びも感じる。精神的なメリットもあるんだ。ブランドにプライドや誇りを感じる。乗るとハッピーになれるね。
マルカート:イタリアでは誰もがコルナゴを知っていて、イメージはとても高いんだ。コルナゴは自転車レースの歴史そのものだから。マスプロメーカーもあるけれど、巨大ブランドより小さなコルナゴのほうが人気があるのは面白いよ。何を選ぶかは個人の価値観による選択だけど。
ラエンゲン:僕は体格が巨体で、レースでハードに使うというのもあるけど、今までに多くのバイクを壊してきたんだ(笑)。でもコルナゴのバイクは他のブランドのバイクより丈夫で壊れにくいと思う。ロードバイクを知り尽くした設計になっているからという面もあるだろうね。とにかく強いんだ。強靭で、いつでも100%のレーシングフレームだと思う。カーボンもクオリティが高いんだろうね。
― インタビューを通して、それぞれの選手のバイクのこだわりが垣間見えました。プロ選手のコメントはコルナゴファンやユーザーにとって大きなアドバイスになると思います。バイク選びの指標になりますね。
クリストフ:こちらこそありがとう。日本での走るレースは楽しく、多くのファンにプレゼントを貰ったり、暖かく応援してもらえるのは他の国とは違う素晴らしい経験です。これからも応援してください。
クリストフ&4人のUAEライダーにインタビュー
インタビューに応じてくれたのは、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)、スヴェンエリック・ビストラム(ノルウェー)、マルコ・マルカート(イタリア)、ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー)の4人。アレクサンドル・クリストフ
― 今シーズンについて教えてください。満足のいくものでしたか?
クリストフ:勝利数では5つと少なかったけれど、結果的にはいいシーズンだったと思う。春にクラッシュして怪我をしたおかげで夏前までの結果にはやや不満足だったけど、ツール・ド・フランスでのシャンゼリゼの勝利がすべてをハッピーに変えてくれたね。ツールではダン・マーティンのステージ勝利と、僕自身は2位が多かったけど、いいリザルトでチームにとっても良かった。エシュボルン・フランクフルトでの4連勝は大会史上初のことで、嬉しかった。
― 今年のツール・ド・フランスはスプリンターにとって厳しいレースでしたね。多くの選手が途中でリタイアに追い込まれてしまいました。スプリンターで最後まで残れたのはあなたやサガン含めて数人でしたね。
ツールでは山岳ステージで生き残ったんだ。連日タイムリミットとの闘いで、マルカートが助けてくれた。カヴェンディッシュ、キッテル、ガヴィリア、フルーネウェーヘンらが次々に苦しんでタイムアウトになり、レースを去っていった。ラルプデュエズのステージは今までのキャリアの中でももっとも厳しい日だったね。
― フランクフルトは2014年から4連覇!。毎年勝っていますね(15年はレース中止のため完全4連勝中)。よほど向いているんですか?あるいは特別なモチベーションがある?
自分にとってホームレースのようだね。スプリントで決まるけれど、とてもハードなレースで、今年も途中で一度遅れているんだ。それでも復帰して勝っている。歴史を作ることができたね。
― ヨーロッパ選手権のチャンピオンとして、白と青の特別ジャージでシーズンの大半を走りました。あのジャージは特別なものでしたか?
本当にそう思います。ヨーロッパチャンピオンは将来的にはもっと価値が上がるだろうけれど、特別ジャージというのはいつでもいいものだね。観客もすぐに認知してくれるし、何より美しい。ファンがとても喜んでくれるんだ。ジャージもいいけど、ホワイト&ブルースペシャルペイントバイクに乗れるのも素晴らしい。クールだね。
― さいたまクリテリウムのスタートでは欧州チャンピオンの座を譲ることになったトレンティンと一緒にスタートで並びましたね。
そう、彼にはこう言ったんだ。「それは俺のジャージだから返せ」って(笑)。来年はまた取り返すさ。
― 来年はどのレースを目標にしていますか?
チームにフェルナンド・ガヴィリア(元クイックステップ)が移籍して来る。だからまだレースプログラムは決まっていないんだ。ガヴィリアと、それぞれどのレースに出るか、あるいは一緒に出るかを決めるんだ。場合によっては彼のリードアウトもすることになるだろう。
― チーム内のスプリントエースの座を争うことになる?
それは無いね。僕よりも彼をうまく牽引できる選手はいないはずだよ。あくまでチームでの勝利を目指すんだ。彼もリードアウトトレイン無しでも勝つことができる選手だから、来年は一緒により多くの勝利をチームにもたらすことができると思う。
― クラシックはどうですか? ロンド・ファン・フラーンデレンやミラノ〜サンレモはまた狙いますか?
ぜひそうしたいね。とくにパリ〜ルーベにはまだ勝っていないから、ぜひ勝ちたい。でも本当に難しいレースだね。でも諦めずにチャレンジしたいね。
― ポジション的にもチームのビッグリーダーになりますね。
そうだね。来年のUAEエミレーツは今季よりもずっといいチームになるだろうね。チームはガヴィリア以外にも多くの優秀な選手とサインを済ませているから、おそらくプロトンの中でも最も勝ち星を多く上げるチームになるんじゃないかと思っている。
チームビルディングは慎重に行われているけど、進歩を目指してスタッフも大きく入れ替わるんだ。医療チームなど新しい体制も加わり、もっとプロフェッショナルなチームになるんだ。来年はきっとエキサイティングな1年になるはず。すべての面でステップアップして、世界でもベストなチームになるだろう。
スヴェンエリック・ビストラム
― なんといってもブエルタでの逃げ切りステージ2位が惜しかったですね。もう一息でした。ビストラム:もちろん勝ちたかったね。でも自分ではベストリザルトで、ハッピーだよ。来年こそグランツールでステージを勝ちたいね。
― タイプとしてはステージレーサーなのですか?
オールラウンダーで、逃げでチャンスを掴むタイプです。グランツールでステージ優勝を掴むことが当面の目標だね。
ヴェガールステイク・ラエンゲン
ラエンゲン:ノルウェーのロード選手権でナショナルチャンピオンをとったことが嬉しいですね。カタルーニャ一周でのステージ2位など、まずまず成功の1年だったと思います。タイムトライアルも好きですから、そのジャージも欲しいです。― チームとは2020まで契約があり、若手として将来を期待されているのがわかります。
まだアシスト選手ですが、来年はタイムトライアルやグランツールでのステージ優勝を狙います。ブエルタやジロで活躍したいです。
マルコ・マルカート
― この1年はどんなシーズンでしたか? 逃げのスペシャリストが来季狙うレースは?マルカート:今年は勝利という結果が出せなかったけど、内容的にはいい1年だった。でも来年はもっといいレースをしたいね。逃げるのは僕のスタイルだけど、じつは来季は石畳のクラシックに挑戦して結果を出したいと思っている。とくにロンド・ファン・フラーンデレンが好きなんだ。
― 今回来日したチームメンバーは皆仲がいいんですか?
クリストフ:僕とビストラムはカチューシャから揃って移籍したんだ。僕がUAEに行くときに、一緒にという条件でね。ビストラムとは家も近くてトレーニングパートナーなんだ。ラエンゲンは今フランスに住んでいるけど、家はオスロの近くにあって、3人は自国のよきライバルで仲もいいんだ。
マルカート:僕はイタリアのパドヴァに住んでいるよ。コルナゴ社のあるカンビアーゴまでクルマで2時間ぐらいのところなんだ。
レースで駆るコルナゴバイク 走りにあわせてこう乗り分ける
コルナゴの3つのハイエンド・レーシングバイク
C64
コルナゴの30年の歴史を持つ伝統の外ラグ式カーボンフレームとして2018年に登場。前作C60から約200gの軽量化を果たし、カムテールデザインによりエアロダイナミクスも向上。スレッドフィット82.5やカーボン/ナイロン/エラストマーから成る高分子化合物を使用したヘッドセットも搭載。トラディショナルな最先端オールラウンドバイクとして高い人気を誇る。
→特集記事 コルナゴC64デビュー 伝統のラグド製法にこだわった最高峰のイタリアンレーサー
→インプレッション記事 伝統と革新が融合する珠玉のイタリアンレーシング
V2-R
前作V1-Rをベースによりエアロに、より高剛性にアップデート。モノコック製法を用い、ダウンチューブやシートチューブ、フロントフォークに至るまで随所にカムテール形状を盛り込み、エアロ性能を向上。スレッドフィット82.5や振動吸収性をもつヘッドセットを搭載し、ケーブルルーティングも空力に配慮し最適化。フレーム重量はコルナゴ史上最軽量の835gに仕上がるオールラウンドレーシングバイク。
→インプレッション記事 エアロダイナミクスと剛性を強化し進化した軽量レーシングマシン
CONCEPT
フェラーリ社との協働により制作されたコンセプトモデルをもとに製品化したという、同社初のエアロロードバイク。テーパーヘッドからの造形は前方投影面積を減少させるべくデザインされ、ダウンチューブにはカムテール形状を導入するなど徹底してエアロダイナミクスを突き詰めて設計された。形状的な縦剛性の増加には振動吸収性をもつヘッドパーツにより微振動をカット。28mmタイヤを許容するクリアランスも持ち合わせる。
→インプレッション記事 満を持して登場した老舗イタリアンブランドのエアロロードレーサー
― コルナゴのバイクについてコメントを頂けますか。現在コルナゴにはC64、V2-R、CONCEPTの3つのハイエンドバイクがあり、チームに供給されています。コルナゴ社からは選手に対してどのモデルに乗って欲しいという指定は無く、選手が好きに選んでいいと聞いています。どう使い分けているか、それぞれのインプレッションもお聞きしたいんです。
クリストフ:CONCEPTに乗っています。理由はエアロダイナミックで、とても速いバイクだから。CONCEPTは“スーパーファースト”なバイクです。
― 今回もCONCEPTと一緒での来日ですね。どんな点が気に入っていますか?
クリストフ:平地やダウンヒルの速さはノーマルバイクと比べれば本当に速く走れて有利なんだ。
― コルナゴの他の2台、V2-RやC64と比べるとどうですか? その2台との違いは?
クリストフ:V2-RやC64と比べると、CONCEPTは少しハンドリング特性が違うんだ。少し重量があっても速いから、ほとんどすべてのレースでCONCEPTに乗っているね。ダウンヒルにおいて、90〜100km/h出るような下りでの速さといったらノーマルバイクの比じゃない。真っ直ぐに走ろうとするエアロ特性から鋭角コーナーでは少しクセがあるけれど、ハンドリングも常に安定していて、速く走るのに適したバイクなんだ。
― エアロダイナミクスをそれほど重視するのはなぜですか?
クリストフ:僕の場合は勝ちたいレースはほとんどすべてハイスピードな展開のゴールスプリントなど、速いエアロダイナミックバイクを必要とする勝ち方だから。バイクの重量の軽さや登りでの走りの軽やかさは、僕にとって重要ではないんだ。ダン・マーティンやファビオ・アルのような選手が登りで勝負をかけるのとは違って、僕は平坦コースやスプリントで勝利するタイプだから。そのようなコースで速いバイクであることが重要なんだ。
― 春のクラシックではV2-Rに乗っていますね?
クリストフ:そう。ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベでは平坦系と言っても石畳のレースだから、CONCEPTは少し剛性が高すぎるからV2-Rを選んでいるんだ。それらのレースでも最後にスプリントに持ち込んだとしたらCONCEPTのエアロダイナミクスが欲しくなるけれど、やはりコースの大半を占める石畳での快適性をとらざるを得ない。ずっと悪路の振動を受け続けるから、より快適な乗り味のV2-Rを好んでいるんだ。同時に28〜29cといった太いタイヤを使用するから、フレームクリアランスの大きさも必要になってくるからね。
― タイヤの太さは今、25Cですか?
クリストフ:そう、ほとんどのレースでは25Cを使っています。エアロダイナミクスと転がり抵抗のバランスがいいんです。パヴェのレースでは28か29Cです。
― V2-RとCONCEPTでは、乗り味の違いはありますか?
クリストフ:V2-RはCONCEPTに比べれば少しスローだけれど、より快適だね。振動を打ち消すような特性があり、楽に走れるんだ。だからクラシックでは選んでいる。CONCEPTは石畳を走るにはちょっと剛性が高すぎるんだ。太いタイヤを使う必要もあるしね。
― ツール・ド・フランスのラルプデュエズステージではバイクは何をチョイスしましたか?超難関山岳ステージで、獲得標高は5,000m以上ありました。多くのスプリンターが登りで遅れてタイムアウトで失格になった日です。
クリストフ:CONCEPTです。
― 驚きです。バイク重量があってもCONCEPTを選ぶんですか? 軽いV2-RやC64のほうが有利なのではないのですか?
クリストフ:いえ、CONCEPTを選びます。僕の場合は登りで軽いことよりも、平坦のローリング(巡航)性能やダウンヒルの速さで選びます。そのおかげで早くフィニッシュにたどり着けて、生き残ることができたのです。ツール・ド・フランスでCONCEPT以外のバイクに乗ったのは、パヴェのある第9ステージでV2-Rに乗った1日だけです。あの日はパリ〜ルーベと同じコースを走る石畳ステージでしたから。何度も言いますが、僕にとってエアロダイナミクスはもっとも重視する性能です。ジャージも空気抵抗が少ないワンピースタイプのボディスーツを着ます。タイトだけど、暑くて登りの多い日以外ならエアロスーツを選ばない手は無い。レースではいつでもエアロダイナミクスに優れたものをチョイスするようにしています。
ラエンゲン:僕は今回クリストフのリードアウト役でもあるのでCONCEPTですね。普段のレースでもCONCEPTを選ぶことが多いです。レースごとに乗り味の好きなバイク、特性で選んでいますが、身長が195cmもあるので、60サイズがあるCONCEPTがぴったりフィットするんです。クリストフの言うように、CONCEPTが速いバイクというのには同意です。本当に速く走れる。
マルカート:C64が僕のメインバイクです。とてもオールラウンドなバイクであり、コンフォート性能を持ちあわせているからです。 同時に非常に剛性に優れたバイクで、コーナーの立ち上がりやアップヒルスプリントで鋭く反応してくれます。ダウンヒルのハイスピードコーナリングも非常に良いフィーリングで、とても速いんです。C64はCONCEPTよりも操りやすいと思います。ダウンヒルとコーナリングでは安全で、ハンドリングがとてもニュートラルでクセが少ないのです。
― アタッカーらしいお答えですね。クラシックでは何を選びますか?
マルカート:パヴェのレースでもC64を選びます。フレームは非常に強く、丈夫です。ハードなレースでも壊れることはほぼ無いでしょう。一般ライダーなら長い期間に渡って乗り続けることができると思います。C64はとても気に入っています。
― 快適性が高いということですが、C64の剛性について、前モデルのC60と比較してはどうですか?
マルカート:C60と比べると剛性感はほとんど同じに感じます。C64は確か200g近く軽量化されたと思いますが、それでいて同じ剛性感や鋭い反応性を持っているのはすごいことだと思います。非常に剛性が高く、高いレーシング性能をもっています。
― C64とV2-Rの違いはどうですか?
マルカート:C64はC60からのモデルチェンジでカムテールデザインを取り入れてエアロダイナミクスにも優れるバイクになりました。C64とV2-Rの違いはおもに乗り味です。これは表現するのが難しいのですが、実際に乗って、自分の脚にあう好みのタイプで選ぶほかありません。例えばチームの2人のエース、ファビオ・アルとダン・マーティンを例に取ると、アルはC64、マーティンはV2-Rを好んでいます。2人はほとんどのレースでそればかり乗っていますね。平坦だからCONCEPTに乗るということもない。2人ともそれぞれのバイクが自分の脚質に合っていると話しています。
― コルナゴの3台のバイクの違いはどんなところに感じますか?
ラエンゲン:3タイプのバイクにおいて、C64とV2-Rのキャラクターの違いは少しだと思う。重量的にはCONCEPTでも1kgを切っているので、3モデルでそんなに差を考えたことはないですね。
※フレーム重量はCONCEPT:990g、C64:900g、V2-R:835g(いずれもフレーム単体/未塗装)
ラエンゲン:僕は背が195cmと高すぎるので、CONCEPTは最も大きな60サイズに乗っています。今のところCONCEPTのストックサイズである60cmで十分フィットするため気に入っています。 C64はラグ製法のためジオメトリーオーダーができるので気になっています。58がストックサイズの最大サイズなので、オーダーしてみるのはいいかもしれません。コルナゴのハイエンドバイクは最大13サイズから選べるから、プロ選手でもあまりサイズ選びに困ることはないんです。他のブランドだとそうはいきません。
ビストラム:僕もほとんどのレースでCONCEPTに乗っていますね。例外はクラシックで、V2-Rです。ほぼクリストフと同じ選択理由ですね。V2-Rも非常にオールラウンドなバイクで気に入っています。平坦のレースでは速く走れるバイクが好みなのでCONCEPTを駆っています。ローリングコースでの逃げなどには有利ですからね。
― CONCEPTは人気ですね。インプレッションでは、剛性は他の2台に比べて高いようですね。
クリストフ:速さを求めるならCONCEPTは良い選択だと思います。長いヒルクライムではなく、多少のアップダウンがあってもローリングコースならCONCEPTは有利でしょう。でもクライマーならC64かV2-Rですね。この2台はフィーリングの好みにより選べば間違いないと思います。
― 日本ではホビーレースやヒルクライムのレース系イベントが年間500レースほど開催されています。耐久レースとヒルクライムがとくに人気です。日本のユーザー、とくにホビーレーサーにとってバイク選びについてはどのようにアドバイスしますか? サーキットコースでの耐久レースやロードレースでは、何がベストですか? コルナゴのバイクならどう選びますか?
ラエンゲン:もしあなたがパンチャーやヒルクライマーで、登りで勝負をかけるのならV2-RかC64です。勝つためには。しかし急勾配の登りがないレースならCONCEPTが有利だと思います。サーキットコースのエンデュランスレースなどではもっとも速いでしょう。これは本当です。
― ディスクブレーキにはトライしていますか? UAEの選手はレースであまり使用していませんね。
マルカート:レースではまだスペアホイールの問題もあってチームとしては冒険しない方針でしたが、トレーニングではすでに使い初めています。普段からC64のディスクブレーキバージョンに乗っています。実際、将来はディスクブレーキにあると思っています。マーケットもその方向に向いていますね。
個人的にはとても気に入っています。安全性が高くて、ブレーキフィーリングも良く、コントロール性に優れて非常にいい。よりアクティブに走れます。問題は少しの重量増加。それ以外は気に入っています。
― ハンドル周りもフル内蔵ケーブルのC64に乗っている?
マルカート:まだですが、完全インテグレート設計の専用ハンドルはもうすぐ供給されると思います。たぶん来年はレースによりCONCEPTディスクも使用しようと思っています。速いステージでメリットが出せると思う。楽しみです。日本でのディスクロードのシェアはどうですか?
― プロレーサーが使いだしているから、日本でもディスクロードのシェアが増加しています。その数はまだ10%ほどですが、来年はもっとディスクの割合が増えるでしょう。イタリアでもそうですか?
マルカート:もちろん。ショップで販売されるバイクの70%はすでにディスクですね。イタリアンブランドもほとんどがディスク推しですから。
― ユーザーは次のバイクをディスクにするかどうかを考えていますね。
ラエンゲン:僕はノーマルブレーキも好きですよ。完成されているから。
― クリストフ、あなたはいかがですか? ツール・ド・フランスでも多くのスプリンターがディスクブレーキ仕様のエアロバイクをチョイスしていましたが?
クリストフ:僕の場合は少し悪い経験をしたので、その印象がまだ拭いきれていないんだ。長いダウンヒルでブレーキがフェードを起こして効きが悪くなったんだ。もちろん多くないトラブルだと思うけれど、そのときの印象があるから少し慎重になっている。他の選手でもツールのアルプスの長いダウンヒルがあるステージで大きな音を立てて下っている選手がいたから、マイナートラブルはプロユースでも起こっているね。
いくつかクリアすべき問題はあっても、平坦は問題無いだろう。とくに雨のステージではディスクブレーキはメリットがあると思う。長いヒルクライムではホイール周りの重量増加は避けたいけれど、石畳クラシックで雨や泥なら迷わずディスクかもしれない。ブレーキがよく効くからね。ただニュートラルサポートの問題はつきまとうね。
― 他のブランド含めて今までにたくさんのバイクに乗ってきたと思うけれど、コルナゴの特徴を教えてください。
ビストラム:今話してきたように、3つのタイプのバイクから選べるというのはとてもメリットがある。昨年は他のチーム(カチューシャ)に居たけど、チームのバイクはタイプの選択肢が少なかったんだ。あと個人的にコルナゴはビューティフルバイクだと思う。プロであってもそれは感じているんだ。速くて、美しいのはベスト。買いたくなるバイクだね。自転車レースに対するパッションを感じるんだ。乗って速く、見て美しいから僕はハッピーだよ。
― エルネスト・コルナゴ氏が聞いたら喜びますね。
ビストラム:その美しさはイタリアンブランドならではですね。ノルウェー人の僕にとってもコルナゴは特別な存在なんです。
クリストフ:昨シーズンに乗った他ブランドのバイクは、エアロバイクはCONCEPTに似たモデルがあったけど、他に選択肢が少なかった。そうだね、僕もコルナゴには美しさを感じるし、乗るのが嬉しい。ブランドがもつヒストリーは他とは違うね。美しいと感じるのは、そういったところからかもしれないね。
ビストラム:僕は小さな頃からコルナゴのバイクに乗ってレースを走っていたんだ。だからハンドリング特性にも慣れていて、今もそれが良くフィットする。その頃からずっと共通しているんだ。レースで乗りやすいバイク。それがコルナゴのすごいところ。
マルカート:ちょっと待って! 僕はイタリア人だからコルナゴの素晴らしさはここに居る誰より知っているよ(笑)。今はどのブランドも技術を競い合ってバイクを進化させてきたから、どれも素晴らしいと思う。確かに前ほど差は大きくないだろう。それでも1ブランドの中で3つからレースバイクを選べるというのは他にない特徴だと思う。僕らのレベルでは、乗り比べてどのバイクにするか選べるというのはとても大きなメリットだと感じる。
ビストラム:同時にコルナゴはヒストリックなバイクだから、乗る喜びも感じる。精神的なメリットもあるんだ。ブランドにプライドや誇りを感じる。乗るとハッピーになれるね。
マルカート:イタリアでは誰もがコルナゴを知っていて、イメージはとても高いんだ。コルナゴは自転車レースの歴史そのものだから。マスプロメーカーもあるけれど、巨大ブランドより小さなコルナゴのほうが人気があるのは面白いよ。何を選ぶかは個人の価値観による選択だけど。
ラエンゲン:僕は体格が巨体で、レースでハードに使うというのもあるけど、今までに多くのバイクを壊してきたんだ(笑)。でもコルナゴのバイクは他のブランドのバイクより丈夫で壊れにくいと思う。ロードバイクを知り尽くした設計になっているからという面もあるだろうね。とにかく強いんだ。強靭で、いつでも100%のレーシングフレームだと思う。カーボンもクオリティが高いんだろうね。
― インタビューを通して、それぞれの選手のバイクのこだわりが垣間見えました。プロ選手のコメントはコルナゴファンやユーザーにとって大きなアドバイスになると思います。バイク選びの指標になりますね。
クリストフ:こちらこそありがとう。日本での走るレースは楽しく、多くのファンにプレゼントを貰ったり、暖かく応援してもらえるのは他の国とは違う素晴らしい経験です。これからも応援してください。
提供:コルナゴ・ジャパン、photo&text:綾野 真/Makoto.AYANO