2018/10/11(木) - 18:00
プロレースに投入されたフロントシングルロードとして話題となった3Tのエアロレーシングバイク「STRADA」。今夏リリースされたフロントダブルの「STRADA DUE」とともに、国内屈指の山岳である乗鞍高原でその実力を試した。
3Tが2017年に発表したエアロロードバイク、STRADA(ストラーダ)。同社がリリースするバイクフレーム第2弾として登場したこのモデルは、処女作であるオールロードEXPLOROとは趣向をガラリと変えたレーシングモデルに仕上がる。イタリア語で”道”を表すstradaのモデル名の通り、高性能なロードレーサーとして生み出され、今季はUCIプロコンチネンタルチームのアクアブルースポートがレースで使用したモデルでもある。
開発者であるジェラルド・ブルーメン氏が得意とするエアロの造形を随所に盛り込みつつ、フロントシングルやディスクブレーキ、ワイドタイヤに最適化させた先進的なデザインが光るSTRADA。発表年にはインターバイクイノベーションアワードを獲得。さらに2018年のiFデザイン賞、ドイツデザイン賞などにも輝き、洗練されたルックスがすでに高い評価を得ている。
もちろん見た目だけではなく、速くそして快適な走りを実現するべく工夫を凝らしたテクノロジーが数多く奢られている。まず目につくのは後輪を覆うように大きくカーブさせたシートチューブだろう。いかにもエアロロードらしさを醸し出すこのデザインは、後輪とフレームとの隙間を最大限減らすことで乱流の発生を抑制し、空力性能を向上させている。
同様に前輪も可能な限りダウンチューブに近づくよう設計されており、走行中スムーズな空気の流れを生み出す。ディスクブレーキに最適化されており、リムブレーキキャリパーが取り付くフォーククラウンのスペースを省略できるために実現したデザインである。また空気抵抗を減らすため、前方投影面積を小さくした薄いヘッドチューブやフォークブレード、専用のエアロシートポストも特徴的だ。
各チューブには空力性能の高い翼断面形状と、ねじれ剛性に優れる角断面形状を組み合わせた独自の「SQAERO(スクエアロ)」形状を採用。ダウンチューブはボトルが隠れるようBB側をやや幅広にしたデザインで、かつボトルケージの取り付け位置も2箇所から選べるようになっている。ワンボトルのみの際はBBに近い下側に装着することでエアロ効果を高めることができる。
剛性が高く走りが硬くなりがちなエアロロードの弱点を補うため、シートステーは細身とすることで振動吸収性を高める狙いも。またSTRADAの大きな特徴の一つとして、ただタイヤクリアランスを広げただけではなく、フレーム全体をワイドタイヤに最適化させることで快適性とともにエアロ性能にも配慮した設計となっている。
最大30mm幅のタイヤを装着可能とし、高いエアボリュームによる乗り心地の良さをエアロロードにももたらす。加えてワイドタイヤを合わせることでフレームとホイールの間を最小限に狭め、バイク全体の一体感を高める設計により空力性能を向上させている。これにより、スピードと快適性の両立を図ったハイパフォーマンスな性能を実現しているのだ。
ディスクブレーキは昨今に標準的なフラットマウントで、前後12mmスルーアクスル仕様。六角レンチで締め込むタイプの「SYNTACE X-12」スルーアクスルを採用することで見た目もスッキリに仕上がる。フレームはユニディレクショナルカーボンのモノコック成形により造られ、レイアップも工夫することで重量が重くなりがちなディスクブレーキエアロロードながらアンダー1kgを達成している。
世界初のフロントシングル専用エアロロードとして開発されたSTRADAは、フロントディレイラーとフロントインナーリングを排除することで約300gの重量を削減し、かつフレームへの付加物を除去することで8wほどのドラッグ低減も果たしている。シフト動作の手間も減り、走りに集中できるのもフロントシングルの狙うところだ。フレームセットで販売され、ノーマルなレッドカラーとオールブラックのステルスカラーで展開される。
完成車で販売される「STRADA PRO」もラインアップ。通常のSTRADAがTEAMグレードなのに対し、カーボングレードを落としたPROグレードとすることで価格を抑えたことが特徴だ。重量は+130gほどになるが、同一のフレーム形状で剛性や強度も同じ数値になるようカーボン積層を工夫している。フロントシングルに合わせたスラムのFORCE組みで、鮮やかなシャイニーブルーのフレームカラーとなる。
そして最新作であるフロントダブル仕様の「STRADA DUE」は、ノーマルなSTRADAをベースにフロント台座を装備したもので、こちらもフレームセット販売。イタリアデザインのトレンドカラーであるグレーにてペイントされる。各社電動コンポーネントにのみ対応。
パーツブランドとして長く歴史を刻んできた3Tが放つ初のレーシングバイクSTRADA。今回はフロントシングルのSTRADAとフロントダブルのSTRADA DUEの試乗車を用意し、それぞれを国内屈指の山岳である乗鞍高原にて乗り込んだ。愛知県名古屋市にショップを構え、オン/オフロードともにレースを嗜むニコー製作所の吉田幸司店長によるインプレッションをお届けしよう。
「フロントギアの有無で印象が変わる1台。いかなるシーンでもエアロの恩恵は大きい」
まずSTRADAとSTRADA DUEでフレーム自体は全く同じものではありますが、アセンブルの違い、即ちギアの使い方の違いがそれぞれの狙う走り方を明確に分ける印象で、全く異なる走りのフィーリングがありました。フロントシングルのSTRADAは一人で淡々とロングライドやブルベに挑戦したくなるイメージで、反対にSTRADA DUEは速度のアップダウンが激しいレースシーンでキビキビ走るような感触です。
3T初のレーシングバイクながらその完成度は高く、いずれの走りにも満足いく性能を発揮してくれるパフォーマンスを持っています。ですが何でもこなせるオールラウンダーというような曖昧なバイクではなく、レース向きのアセンブルなら切れ味のある走りを、ワンバイ(1✕)でロングを行くなら気持ちの良い巡航を、それぞれライダーが望む用途に性格を合わせてくれる懐の深さがありますね。その中でSTRADAに特徴的な ”速く快適” な走りが大きな軸として通っているので、どのシーンでも走りが破綻せずライドを楽しめるんです。
フレームは見た目通りエアロロードらしい剛性感があり、やや硬めの踏み味になります。その上でパワーを逃さない反応性の良さやエアロダイナミクスの効いた伸びのある加速はSTRADAの持ち味でしょう。乗鞍のような峠のダウンヒルではグングンと前に進む空力の良さを感じますし、そのハイスピードをコントロールするのにもディスクブレーキとのマッチングは最高だと思います。
特に高速巡航している時の安定感は素晴らしく、エアロポジションを取っていても車体がブレず安心した走りを見せてくれます。巡航時のストレスが少ないので自然と長距離も走れるようなイメージを受けますね。その上で荒れた路面などではフレームの硬さのせいか、ややリアの跳ね感が気になります。そこでワイドタイヤの恩恵が活きてくる部分だと感じますね。
リアの突き上げが大きいと感じるのであれば迷わず28cタイヤがオススメ。それで走りの軽快さが失われるようなことはありません。ワイドタイヤでも走りが重くならず、かつ空気圧の調整で快適性も向上するのであえて25cを合わせる理由はないと思います。もっと乗り心地を良くしたいのであれば、チューブレスタイヤを使うとガラッと走りを変えてくれそうです。
フロントシングルに不安を持つ人もいるかもしれませんが、スプロケットやチェーンリングの歯数を走るシーンに合わせて調整してあげればギアが足りなくて困ることもないと思います。フロントシングルだから登りがキツいだとか、下りでギアがかけられないとか、そういう問題は解消できる範囲です。ハイパフォーマンスなフレームの性能を活かしてあげるアセンブルができると、よりライドを楽しめるバイクになるでしょう。そういったカスタムの部分もSTRADAの楽しみ方の一つですね。
一方で仲間とトレーニングをしたりレースで争ったりして、頻繁にギアを上げ下げするようになると断然フロントダブルのSTRADA DUEの方がマッチします。走行ペースの上下が激しいと、やはりフロントギアは2枚欲しくなりますからね。レーススペックのフレームなので、ガンガンアタックをかけていくような走りも楽しめますし、エアロロードらしく速さを感じる乗り方が似合うバイクだと思います。
総じて、フロントギアの有無で性格や走り方がガラッと変わる1台になります。どんな乗り方がしたいと用途が明確に決まっているライダーにはSTRADAがオススメで、さらにレーシーに走りたいならSTRADA DUEを選ぶと良いでしょう。ギリギリに設定されたタイヤクリアランスなどエアロを押し出したルックスも前衛的で格好良いですし、それでいて剛性感や走りに不安もありません。デザインや話題性だけではない性能の良さを感じてもらいたいですね。
5年先を見通した先進的デザイン 我が”道”を行くSTRADA
3Tが2017年に発表したエアロロードバイク、STRADA(ストラーダ)。同社がリリースするバイクフレーム第2弾として登場したこのモデルは、処女作であるオールロードEXPLOROとは趣向をガラリと変えたレーシングモデルに仕上がる。イタリア語で”道”を表すstradaのモデル名の通り、高性能なロードレーサーとして生み出され、今季はUCIプロコンチネンタルチームのアクアブルースポートがレースで使用したモデルでもある。
開発者であるジェラルド・ブルーメン氏が得意とするエアロの造形を随所に盛り込みつつ、フロントシングルやディスクブレーキ、ワイドタイヤに最適化させた先進的なデザインが光るSTRADA。発表年にはインターバイクイノベーションアワードを獲得。さらに2018年のiFデザイン賞、ドイツデザイン賞などにも輝き、洗練されたルックスがすでに高い評価を得ている。
もちろん見た目だけではなく、速くそして快適な走りを実現するべく工夫を凝らしたテクノロジーが数多く奢られている。まず目につくのは後輪を覆うように大きくカーブさせたシートチューブだろう。いかにもエアロロードらしさを醸し出すこのデザインは、後輪とフレームとの隙間を最大限減らすことで乱流の発生を抑制し、空力性能を向上させている。
同様に前輪も可能な限りダウンチューブに近づくよう設計されており、走行中スムーズな空気の流れを生み出す。ディスクブレーキに最適化されており、リムブレーキキャリパーが取り付くフォーククラウンのスペースを省略できるために実現したデザインである。また空気抵抗を減らすため、前方投影面積を小さくした薄いヘッドチューブやフォークブレード、専用のエアロシートポストも特徴的だ。
各チューブには空力性能の高い翼断面形状と、ねじれ剛性に優れる角断面形状を組み合わせた独自の「SQAERO(スクエアロ)」形状を採用。ダウンチューブはボトルが隠れるようBB側をやや幅広にしたデザインで、かつボトルケージの取り付け位置も2箇所から選べるようになっている。ワンボトルのみの際はBBに近い下側に装着することでエアロ効果を高めることができる。
剛性が高く走りが硬くなりがちなエアロロードの弱点を補うため、シートステーは細身とすることで振動吸収性を高める狙いも。またSTRADAの大きな特徴の一つとして、ただタイヤクリアランスを広げただけではなく、フレーム全体をワイドタイヤに最適化させることで快適性とともにエアロ性能にも配慮した設計となっている。
最大30mm幅のタイヤを装着可能とし、高いエアボリュームによる乗り心地の良さをエアロロードにももたらす。加えてワイドタイヤを合わせることでフレームとホイールの間を最小限に狭め、バイク全体の一体感を高める設計により空力性能を向上させている。これにより、スピードと快適性の両立を図ったハイパフォーマンスな性能を実現しているのだ。
ディスクブレーキは昨今に標準的なフラットマウントで、前後12mmスルーアクスル仕様。六角レンチで締め込むタイプの「SYNTACE X-12」スルーアクスルを採用することで見た目もスッキリに仕上がる。フレームはユニディレクショナルカーボンのモノコック成形により造られ、レイアップも工夫することで重量が重くなりがちなディスクブレーキエアロロードながらアンダー1kgを達成している。
世界初のフロントシングル専用エアロロードとして開発されたSTRADAは、フロントディレイラーとフロントインナーリングを排除することで約300gの重量を削減し、かつフレームへの付加物を除去することで8wほどのドラッグ低減も果たしている。シフト動作の手間も減り、走りに集中できるのもフロントシングルの狙うところだ。フレームセットで販売され、ノーマルなレッドカラーとオールブラックのステルスカラーで展開される。
完成車で販売される「STRADA PRO」もラインアップ。通常のSTRADAがTEAMグレードなのに対し、カーボングレードを落としたPROグレードとすることで価格を抑えたことが特徴だ。重量は+130gほどになるが、同一のフレーム形状で剛性や強度も同じ数値になるようカーボン積層を工夫している。フロントシングルに合わせたスラムのFORCE組みで、鮮やかなシャイニーブルーのフレームカラーとなる。
そして最新作であるフロントダブル仕様の「STRADA DUE」は、ノーマルなSTRADAをベースにフロント台座を装備したもので、こちらもフレームセット販売。イタリアデザインのトレンドカラーであるグレーにてペイントされる。各社電動コンポーネントにのみ対応。
パーツブランドとして長く歴史を刻んできた3Tが放つ初のレーシングバイクSTRADA。今回はフロントシングルのSTRADAとフロントダブルのSTRADA DUEの試乗車を用意し、それぞれを国内屈指の山岳である乗鞍高原にて乗り込んだ。愛知県名古屋市にショップを構え、オン/オフロードともにレースを嗜むニコー製作所の吉田幸司店長によるインプレッションをお届けしよう。
インプレッションライダーのプロフィール
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長。常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者が気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がける。週末にはロードやMTB、シクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、自身も各種レースを嗜む実走派。お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視し、親切丁寧なアドバイスを提供する。
CWレコメンドショップページ
ワタキ商工株式会社 ニコー製作所 ショップHP
名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長。常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者が気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がける。週末にはロードやMTB、シクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、自身も各種レースを嗜む実走派。お客さんと一緒に自転車を楽しむことを重視し、親切丁寧なアドバイスを提供する。
CWレコメンドショップページ
ワタキ商工株式会社 ニコー製作所 ショップHP
3T STRADA インプレッション
「フロントギアの有無で印象が変わる1台。いかなるシーンでもエアロの恩恵は大きい」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
まずSTRADAとSTRADA DUEでフレーム自体は全く同じものではありますが、アセンブルの違い、即ちギアの使い方の違いがそれぞれの狙う走り方を明確に分ける印象で、全く異なる走りのフィーリングがありました。フロントシングルのSTRADAは一人で淡々とロングライドやブルベに挑戦したくなるイメージで、反対にSTRADA DUEは速度のアップダウンが激しいレースシーンでキビキビ走るような感触です。3T初のレーシングバイクながらその完成度は高く、いずれの走りにも満足いく性能を発揮してくれるパフォーマンスを持っています。ですが何でもこなせるオールラウンダーというような曖昧なバイクではなく、レース向きのアセンブルなら切れ味のある走りを、ワンバイ(1✕)でロングを行くなら気持ちの良い巡航を、それぞれライダーが望む用途に性格を合わせてくれる懐の深さがありますね。その中でSTRADAに特徴的な ”速く快適” な走りが大きな軸として通っているので、どのシーンでも走りが破綻せずライドを楽しめるんです。
フレームは見た目通りエアロロードらしい剛性感があり、やや硬めの踏み味になります。その上でパワーを逃さない反応性の良さやエアロダイナミクスの効いた伸びのある加速はSTRADAの持ち味でしょう。乗鞍のような峠のダウンヒルではグングンと前に進む空力の良さを感じますし、そのハイスピードをコントロールするのにもディスクブレーキとのマッチングは最高だと思います。
特に高速巡航している時の安定感は素晴らしく、エアロポジションを取っていても車体がブレず安心した走りを見せてくれます。巡航時のストレスが少ないので自然と長距離も走れるようなイメージを受けますね。その上で荒れた路面などではフレームの硬さのせいか、ややリアの跳ね感が気になります。そこでワイドタイヤの恩恵が活きてくる部分だと感じますね。
リアの突き上げが大きいと感じるのであれば迷わず28cタイヤがオススメ。それで走りの軽快さが失われるようなことはありません。ワイドタイヤでも走りが重くならず、かつ空気圧の調整で快適性も向上するのであえて25cを合わせる理由はないと思います。もっと乗り心地を良くしたいのであれば、チューブレスタイヤを使うとガラッと走りを変えてくれそうです。
フロントシングルに不安を持つ人もいるかもしれませんが、スプロケットやチェーンリングの歯数を走るシーンに合わせて調整してあげればギアが足りなくて困ることもないと思います。フロントシングルだから登りがキツいだとか、下りでギアがかけられないとか、そういう問題は解消できる範囲です。ハイパフォーマンスなフレームの性能を活かしてあげるアセンブルができると、よりライドを楽しめるバイクになるでしょう。そういったカスタムの部分もSTRADAの楽しみ方の一つですね。
一方で仲間とトレーニングをしたりレースで争ったりして、頻繁にギアを上げ下げするようになると断然フロントダブルのSTRADA DUEの方がマッチします。走行ペースの上下が激しいと、やはりフロントギアは2枚欲しくなりますからね。レーススペックのフレームなので、ガンガンアタックをかけていくような走りも楽しめますし、エアロロードらしく速さを感じる乗り方が似合うバイクだと思います。
総じて、フロントギアの有無で性格や走り方がガラッと変わる1台になります。どんな乗り方がしたいと用途が明確に決まっているライダーにはSTRADAがオススメで、さらにレーシーに走りたいならSTRADA DUEを選ぶと良いでしょう。ギリギリに設定されたタイヤクリアランスなどエアロを押し出したルックスも前衛的で格好良いですし、それでいて剛性感や走りに不安もありません。デザインや話題性だけではない性能の良さを感じてもらいたいですね。
提供:あさひ ホールセール事業部 制作:シクロワイアード
取材協力:NORTHSTAR
取材協力:NORTHSTAR