パワーとは何かという基本の”キ”からトレーニングノウハウの序の口まで紐解いてきたガーミンのパワトレ特集。前回、竹谷さんから学んだのは、実践で記録したデータを元に自分に必要な能力を把握すること。本番でできなかったシチュエーションを再現しやすくしたのがパワーメーターであり、パワーデータを活用しトレーニングを積むことで、誤魔化しのないキチンとした練習に取り組めるとも。

最終回であるVol.3は、ロードレースに必要な能力と練習内容のヒントをお届け。

竹谷賢二さんに聞く個別シチュエーションでの練習のヒント

ロードレースで集団についていくためには

「求める能力によってトレーニング内容が変わってきます」と竹谷賢二さん「求める能力によってトレーニング内容が変わってきます」と竹谷賢二さん
まずロードレースで集団に残るためには位置取りが重要です。このことはパワーというデータが登場する前から言われていたことですが、先頭にいるのかそうじゃないのか、風上なのかどうか、によって負担するパワーは違いますよね。集団に残るためには自分がどのくらいのパワーを出力できて、何分維持できるかを知る必要があります。

そこでまずは実践でデータを記録することで、集団から千切れた状況を把握することができます。結果をもとに次のレースでは、現状で出力できた数値を上回れるように練習する必要があります。例えば、150wを1時間維持できなかったとすると、単純にそのパワーで1時間維持できるように練習をするだけです。もし1時間漕ぎ続けられる環境がないのであれば、30分で180wなど短い時間で高めのパワーを維持する練習する必要があります。

集団についていくためには、まずレースで千切れた時のデータを確認し、自分が維持できるパワーを把握すること集団についていくためには、まずレースで千切れた時のデータを確認し、自分が維持できるパワーを把握すること photo:Makoto.AYANO
実践から得られるデータはトレーニングだけではなく、次回のレースにも反映することができます。集団に残れる力を持っていないにも関わらず、前方に位置していても負担が大きくなり千切れてしまいますので、集団内で力をセーブしながら走る必要がありますよね。試合の時に自分ができること以上の事をしてはいけないという事がパワーという数値でわかるようになります。パワーデータからは1回の本番でトレーニングとレースマネジメントという2つの見方を得なければなりません。

高出力が求められるアタック、ローテーションには何が必要?

集団内で走行するパワーが平均出力だとすると、アタックやローテーション、ブリッジをかけるタイミングはツキイチで集団内で走行するよりも高いパワーが必要となります。先程は出力パワーに時間という組み合わせでしたが、今回の場合は何回繰り返されるかという考えが加わります。

前を逃げていた3人に追いつきざま、さらにアタックして追従を許さなかったニキ・テルプストラ(クイックステップフロアーズ) 。ロンド・ファン・フラーンデレンの勝利を決めた瞬間だ前を逃げていた3人に追いつきざま、さらにアタックして追従を許さなかったニキ・テルプストラ(クイックステップフロアーズ) 。ロンド・ファン・フラーンデレンの勝利を決めた瞬間だ photo:Makoto.AYANO
レースでは3回ローテーションの先頭に出ることができても、4回目で脚がなくなってしまえば5回目以降はお払い箱になってしまいます。このような状況があるならば、練習では先頭に出た時のパワーを再現しながら、繰り返すことができる本数を増やしていく内容になります。

レストを挟みながら高い出力を出すトレーニングも昔から行われてきた内容です。しかし、昔は250wを出力しなければならない練習にもかかわらず、途中から200wに落ちていても気が付かずに、設定した本数をクリアしたと思い込んでいたということもありました。練習で追い込めていないことに気が付かないままレースに出場しても、練習でできたはずのことができないんですよ。パワーが下がっている状態での練習は何も意味をなさないです。

練習中のパワーを管理することで、200wに落ちていた時にターゲットとなるパワーを維持する練習が行なえます。その練習を積み重ねていくことで、目標を達成することができます。内容が曖昧なトレーニングが許されず、正確に練習を行えるので強くなりますよね。

レースで勝つためには誰よりも強く、速く!スプリントで強くなるためには

ゴールスプリントでは自身の最大出力と持続時間を見極めた発射タイミングが明暗を分ける(ジロ・デ・イタリア2018第7ステージ)ゴールスプリントでは自身の最大出力と持続時間を見極めた発射タイミングが明暗を分ける(ジロ・デ・イタリア2018第7ステージ) photo:Kei Tsuji
スプリントでは競り合う相手と同じ条件であれば最大出力が高いほうがスピードが出ます。そのためスプリント能力を高めるトレーニングでは、瞬間最大出力のワット数を更新していく練習となります。

それと同時にスプリントでは最大出力に到達するまでの時間という考え方も必要です。例えば、30秒で最大値に到達する選手がフィニッシュ地点の10秒前からスプリントを行ったとしたら、レース終了後に最高速がでることになります。もし、その選手が勝つためにスプリントをかけるのであれば、30秒よりも前である必要があります。

しかし、早い段階でスプリントを開始してしまったら、ライバルが後ろにつける時間が長くなり、負けてしまうかもしれません。ですので、スプリントでは最大出力までの立ち上がりを早め、かつ最大出力を高めるための練習が必要です。

ポジションやペダリング次第で出力されるパワーは異なる

高いスピード維持力とともに空気抵抗の少ないポジションとフォームが追求されたTTスペシャリストのローハン・デニス(BMCレーシング)の走り(ジロ・デ・イタリア2018第1ステージ)高いスピード維持力とともに空気抵抗の少ないポジションとフォームが追求されたTTスペシャリストのローハン・デニス(BMCレーシング)の走り(ジロ・デ・イタリア2018第1ステージ) photo:Kei Tsuji
さらに追求すると速度が60km/hなどの場合では空気抵抗の影響が非常に大きくなることも考慮にいれなければいけません。同じ1000w出力できる選手であれば、頭を下げ空気抵抗が少ないポジションの人の方がスピードが高くなる可能性もあるので、速度を上げるためのスキルも必要です。

もちろんスプリントかどうかに関わらず、全ての状況においてスキル面を向上させれば出力を更新できる可能性もあります。例えば、腰の位置が上下左右、前後にズレるだけでも出力は変わりますし、ヒルクライムの時に腰を起こすのか寝かせるかによっても数値は変動します。

その中で、力をかけるリズムと自分の感覚がマッチし、筋力の負担が少ないと感じる状況で、高いパワーと速度を出すことができる能力がスキルと言えるでしょう。軽い力で回せている感覚を作り出し、その時に高いパワーを出力できているかを検証しながら、感覚とのズレを近づける作業が重要であると私は考えています。

動作に対してパワーの変化が生まれていることを理解できると、ペダリングパワーフェーズもスキル向上に役立てられるでしょう。パワーに関わる因子が【力】と【動きの速さ】に加わることで、仮説を立てる時の要素のひとつとして組み入れることができます。

ガーミンのペダリングパワーフェーズ、プラットフォームセンターオフセットを読み解く

パワーフェーズとパワーバランスでは、ペダリング中のパワーのかかり方を可視化してくれるパワーフェーズとパワーバランスでは、ペダリング中のパワーのかかり方を可視化してくれる プラットフォームオフセットではペダルのどこに力がかかっているか把握できるプラットフォームオフセットではペダルのどこに力がかかっているか把握できる (ガーミンコネクトの画面)VECTOR3を使用するとパワーや左右バランス、プラットフォームセンターオフセット、パワーフェーズなども確認できる(ガーミンコネクトの画面)VECTOR3を使用するとパワーや左右バランス、プラットフォームセンターオフセット、パワーフェーズなども確認できる

ペダリングパワーフェーズ、プラットフォームセンターオフセットに必ずしも正解があるとは言えないです。体への負担が少なく長時間維持できる状態、もしくは体への負担が少なく高いパワーが出力され、同じワット数であれば速いスピードを出せる状態というのが正解に近いかもしれませんね。

また、パワーフェーズなどの良いパターンを一般化することも難しいです。これまで蓄積してきたデータから読み解ける傾向でしかないことに気をつけてください。

ペダリングのパワーがかかる部分の良い傾向としては、力のかかり始めはクランクが高い位置にある時、抜けも速い場所であると言えそうです。ピークはクランク位置90°よりも少し高い位置から始まっていると良さそうです。もうひとつの考え方として、踏む時間は短く、筋緊張を短くしたペダリングで高いパワーを出せると良いかもしれません。状況によって変わると思いますが、体への負担を減らしながらも高い出力を出せることが理想です。

対して、パワーのピークがクランク位置90°よりも下方に位置していると、踏みこみ気味というふうに読めます。ペダルの下死点付近でパワーをかけていると、パワーは推進力となるチェーンには小さくかかり、フレームやBB軸の方に大きく加わっている可能性があります。フレームにかかるストレスが大きいとバイクがの挙動が乱れることもあり、出力しているパワーを損失させているかもしれませんね。

屋外ライドの場合はルートログ、標高なども加えて表示される屋外ライドの場合はルートログ、標高なども加えて表示される
ガーミンコネクトではウォッチタイプのデータもチェックできる。水泳やバイク、ランニングなどのアクティビティをまとめて確認できるガーミンコネクトではウォッチタイプのデータもチェックできる。水泳やバイク、ランニングなどのアクティビティをまとめて確認できる
プラットフォームセンターオフセットもどこが正解かという中央値はありません。なぜならペダルの中央自体が体にマッチしていないことも考えられるからです。ただ、左右での踏み位置がバラバラであったり、著しく値が大きい場合は、何らかの問題を抱えている可能性はあります。概ね中央から5mm離れしまっている場合は値が大きいと捉えて良いでしょう。

ただし、値が大きい原因を数値だけで捉えることはできません。あくまでも検証するための材料です。なので自分が良い状態の時を記録しておき、振り返りができる状態にしておくことが重要になります。将来的に膝が痛み出した時に、調子が良い時の記録を残しておくことで原因がわかるかもしれませんよ。

ガーミンではシッティング時間とダンシング時間を記録してくれる機能もあります。パソコンで確認すると任意のセグメントで切り出すことができるため、トレーニング結果を検証できる内容が増えます。

パワートレーニングではラップを記録することでライド後の振り返りやすくなるパワートレーニングではラップを記録することでライド後の振り返りやすくなる
データを読み取ることが難しい時はコーチなどに答えを求めても良いですし、とりあえずデータを蓄積しておくことで良い状態と悪い状態の比較を行えるようになります。なので、どのようなライドでもデータを残しておくことが良いでしょう。

また、ライド中に「ラップ」ボタンを押すことで、任意のセグメントでのデータを切り出しておくことができます。パソコンでわざわざ作業する手間も少なくなるため、パワーメーターを使用する場合は「ラップ」ボタンを押すということがデバイスを使いこなす第一歩です。

パワーメーターやサイクルコンピューターはどんどん多機能になっていますが、自分が使いたい機能だけ使えば良いと考えています。スマホも全ての機能を使いこなせているわけではないでしょうし、同じような気軽な気持ちで始めてみても良いでしょう。パワーメーターもその人なりの使い方があると思います。

ガーミンのアンバサダーとして活動する竹谷賢二さんガーミンのアンバサダーとして活動する竹谷賢二さん


全3ページに渡ってお届けしたガーミンの特集コンテンツ「パワーメーターを使いこなす」。指南役の竹谷賢二さんからは、パワーのイロハの“イ”からトレーニングの進め方、パワーメーターを活用して行えることまで学ぶことができた。

パワーから得られるデータは深掘りすればするほど、ライダーの強化に繋がることや、苦しいFTPテストを行わなくてもライドの回数を重ねるだけで概算値が算出されるガーミンの独自機能によって、パワートレーニングはシリアスなアスリートだけのものでは無くなったことも明らかになった。

いずれにせよパワーメーターの真価を発揮させるためには、活きたデータを集めることが最重要ポイントだ。トレーニングやサイクリングに力が入るグリーンシーズンの今から、パワートレーニングを導入してみてはいかがだろうか。
提供:ガーミン 制作:シクロワイアード編集部