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満を持して登場したカブトの超軽量ヘルメット、FLAIR。本章では、カブト開発陣が意見を求めた強豪ヒルクライマーの森本誠さんを筆頭に、パリ〜ブレスト〜パリ日本人最高タイム保持者の三船雅彦さん、そして土井雪広、窪木一茂両選手のインプレッションを紹介する。ヒルクライムやブルベ、そしてロードレースと、ニーズの異なる各ジャンルにおける、FLAIRの使い勝手とは?

森本誠(マウンテンサイクリングin乗鞍8回優勝・レコードホルダー)

「ヒルクライムでのメリットと使い勝手に文句無し。自分の要望が叶った」

まず初めにお話を聞いたのは、FLAIRの開発陣が意見を求めたという森本誠さん。乗鞍や富士山などで幾多の優勝経験を持ち、全日本選手権やツール・ド・おきなわでも結果を残す国内屈指のヒルクライマーはFLAIRをどう評価したのか。実戦初投入となった菰野ヒルクライムにてその使用感を聞いた。

「とにかく軽くてフィット感も良い。欲しいものが形になりました」と森本誠さん「とにかく軽くてフィット感も良い。欲しいものが形になりました」と森本誠さん
まだ使い始めてから日が経っていませんが、とにかく軽いし、フィット感も相変わらず素晴らしく良い製品ですね。やはり軽量ヘルメットと言えばカブトですし、ヒルクライムでのアドバンテージや使い勝手は何の文句も出ないくらい。この先のロードレースでもFLAIRを使おうと決めました。

カブトの開発陣とお話しさせて頂いた時にお伝えしたのは、安全基準をクリアするギリギリの軽さを狙ってほしいということ。僕はフィッティングよりも軽さを優先しますから、クロージャーなども最低限あればいい。ヒルクライム中のスピードは20km/hそこそこですからエアロも必要ありませんし、できる限り軽さに振り切ったものを求めたんです。かなり無茶な要求だったので苦労されたのではないかなと思いますね。

「アジャスターの軽量化は強く求めた部分です」「アジャスターの軽量化は強く求めた部分です」 「デザイン的にもまとまっていますし、ヒルクライムではすぐ人気に火がつきそうですね」「デザイン的にもまとまっていますし、ヒルクライムではすぐ人気に火がつきそうですね」


やっぱりヘルメットの重さはダイレクトに感じる部分ですし、なんとなく心理的にも響きますよね。実際に50gの差がタイムに影響するのかというと?マークですが、やっぱり運動する上で頭が軽い方が良いじゃないですか。前モデルのMOSTROがデビューした時、ヒルクライムのライバルほぼ全員が使い出したことも思い出です。今シーズンのヒルクライムでも同じことが起こるだろうなと想像つきますし、暫く軽量ヘルメットはカブトの独壇場になるのではないでしょうか。

気づいたのが、内部の熱を良く排出してくれること。ロードレースのように40km/hで走れるならともかく、いかんせんヒルクライム中はスピードが遅いのでこの機能は助かりますね。これも私がリクエストした一つなのですが、乗鞍のような標高が高い場所でも夏なら汗をかきますし、機能が目的に合っているなと感じますね。

菰野ヒルクライムがFLAIRの実戦投入の場となった菰野ヒルクライムがFLAIRの実戦投入の場となった
MOSTROからカブト製品を使っていますが、フィット感だってカブトらしく素晴らしいですよ。個人的に深めが好きなのでアジャスターを調整すると、あごひも無しでもOKなくらいなんです。シェルを肉抜きした部分もデザインとして上手くまとまっているなと思いますし、何より価格も安い。すぐ人気に火がつきそうですね。

三船雅彦(元プロロード選手・パリ〜ブレスト〜パリ日本人最高タイム保持者)

「首の疲労が無視できないブルベでは大きなメリット。峠が多い場面でより活きる」

続いてインプレッションを伺ったのは、かつてヨーロッパでプロ選手として活躍し、現在は日本屈指のブルベライダーとして活動し、パリ〜ブレスト〜パリ日本人最高タイムを持つ三船雅彦さんだ。超長距離走行時のFLAIRの評価はロングライドを楽しむサンデーライダーも要注目。FLAIRで国内ブルベを走った上での使用感を聞いた。

現在は国内屈指のブルベライダーとしてライドを楽しむ三船雅彦さん現在は国内屈指のブルベライダーとしてライドを楽しむ三船雅彦さん photo:Shingo.Fujimaki
長距離を走る上では特に頭上の軽さは武器ですよ。極端に言えば1gでも軽い方が首への負担も少なくなりますし、峠が多ければよりアドバンテージは顕著になりますよね。FLAIRを楽しみにして200kmの山岳ブルベを走ったのですが、軽さゆえに疲れは少なかったですし、路面から突き上げを受けた時にも頭が振られにくいんです。100km程度だったら気にならなくても、200km、300kmと距離が増えるほど首の疲労は無視できなくなるので、そういう意味では物凄いメリットを持つ製品だなと感じます。

面白かったのが、なぜか走り始めでダンシングで登るときに身体のリズムが合わなかったんですよ。なんでだろう?と思ったら、今まではZENARDの重さに合わせて頭を振っていたのが、FLAIRが軽くなったぶん違和感が出たことに気づいたんですね。数字にすれば数十グラムの違いですが、実際には走り方を変えてしまうくらい大きいんだと再認識しましたね。

「軽さゆえにブルベでの疲れは少なかったですし、路面から突き上げを受けた時にも頭が振られにくいんです」「軽さゆえにブルベでの疲れは少なかったですし、路面から突き上げを受けた時にも頭が振られにくいんです」 photo:Shingo.Fujimaki
通気性はZENARDの場合空気が前から後ろに抜けるイメージでしたが、FLAIRは横からも入って上に抜けていくイメージ。ブルベは30km/hくらいとあまり速くないスピードで走るので、こういう設計になっているのはありがたいですし、一般のホビーライダーにもぴったりでしょう。前方からの流入量はZENARDほどではありませんが、蒸れないから不快じゃない。夏の暑いブルベでも使ってみたいなと思います。

ZENARDよりも少しだけ浅めな被り心地だと感じますが、アジャスターの深さ調整を行えば違和感もありませんし、何より日本人向けの帽体であることはカブト最大の特徴です。私は比較的上体を起こすポジションなので上部視界が広がったメリットは少ないのですが、その分サイクリングキャップを併用した場合の相性は良かったですね。

「あごひもの調整などZENARDより使い勝手が落ちる部分はありますが、マイナス評価に繋がることはありません」「あごひもの調整などZENARDより使い勝手が落ちる部分はありますが、マイナス評価に繋がることはありません」 photo:Shingo.Fujimaki「空気が横からも入って上に抜ける。暑い時期にも使ってみたいと思います」「空気が横からも入って上に抜ける。暑い時期にも使ってみたいと思います」 photo:Shingo.Fujimaki


クロージャーは決戦用のSLW-1を試用していますが、個人的には一般的なダイヤル式の方が良いかな、と。ブルベのような長距離では少し緩めたかったり、締めたかったりするシーンがありますし、コンビニ休憩時に脱ぐ際SLW-1だと両手を使う必要があるので若干面倒なんです。ただ、ヒルクライムのような一発決戦だと調整も途中休憩もないのでメリットが生まれますね。そもそも一般的なアジャスターですら軽いし、その2種類が同封されて選べるようになっているのは素晴らしくユーザーフレンドリーなポイント。

確かに軽さを求めたことで、あごひもの調整だったり、パッドの量だったりとZENARDより使い勝手が落ちる部分はあります。でも軽いからパッドが少なくても気にならないし、マイナス評価に繋がることはありません。ここ一番の日に使う決戦用としては非常に良いものですし、R1やZENARDと使い分けていくのが良いでしょう。実際の作り以上にリーズナブルな価格ですので、超高価なカーボンパーツで軽量化するより、FLAIRと、良いタイヤ、そして軽量チューブを揃える方がよっぽど効果が生まれると思いますよ。

窪木一茂、土井雪広 2名のトップ選手に聞くFLAIRの魅力

最後に、すでに国内レースで実戦投入している窪木一茂(ブリヂストンサイクリング)と土井雪広(マトリックスパワータグ)両名によるインプレッションを紹介する。従来ZENARDやAERO R1の独壇場だったロードレースシーンに、FLAIRはどう切り込んでいけるのか。そしてどのようなシーンでメリットになるのか。全日本選手権優勝経験を持つ二人の言葉に注目してほしい。

窪木一茂(ブリヂストンサイクリング):「驚く軽さ。前傾姿勢でも前が見やすい」

「驚く軽さ。前傾姿勢でも前が見やすい」窪木一茂(ブリヂストンサイクリング)「驚く軽さ。前傾姿勢でも前が見やすい」窪木一茂(ブリヂストンサイクリング)
実は今日(Jプロツアー第3戦修善寺)初めてこのFLAIRを使用したのですが、この軽さには驚きました。やはりヘルメットは軽ければ軽いほど首に負担がかからず疲れにくいですし、着用していてもストレスが少ないです。カブトのヘルメットは昔から軽量で気に入っているのですが、今回のFLAIRは特に軽量に仕上がっていたので本当に驚きました。

Jプロツアー第5戦では見事優勝。FLAIRの国内レース初勝利となったJプロツアー第5戦では見事優勝。FLAIRの国内レース初勝利となった 「フィットが良いのでレース中に直すこともありませんでした」「フィットが良いのでレース中に直すこともありませんでした」


今回のレースが行われた日本CSCのコースはアップダウンやコーナーが多いので、深い前傾のクラウチングポジションを取ったりと首をよく動かすのですが、軽さと前方視界が広いため疲れが少なかったことが気に入りました。これが長時間、長距離のレースだと、更にこのメリットが活きてくると思います。やはりヘルメットは軽いに越したことはないですね。

フィット感は従来のカブト製品よりも深く感じますが、基本的な帽体の形状は変わらない印象ですね。今回のレースコースである日本CSCはアップダウンやコーナーが連続する激しいコースですが、アジャスターをしっかり締めなくてもフィットしていますし、ずれる感覚はありませんでした。レース中にヘルメットを直すこともありませんでした。これで価格が2万円以下というのは驚きですし、カラーバリエーションもあって選択肢も少なくない。おすすめの製品ですね。

土井雪広(マトリックスパワータグ):「長丁場のレースでメリットが大きくなる」

「長丁場のレースでメリットが大きくなる」土井雪広(マトリックスパワータグ)「長丁場のレースでメリットが大きくなる」土井雪広(マトリックスパワータグ) photo:Makoto.AYANO
「フィットが良いカブト製品の中でも特に良い印象を受けました」「フィットが良いカブト製品の中でも特に良い印象を受けました」 photo:Makoto.AYANO「誰でも軽さや被り心地といったメリットを受けられる」「誰でも軽さや被り心地といったメリットを受けられる」 photo:Makoto.AYANO


より深い被り心地で、かつ軽いのでヘルメットを被っている感覚がしないほど。被りが浅いものは頭の上にのっかって動いてしまう感覚がありますが、これはしっかりフィットしますね。ダイヤルを締めても痛くならないし、フィットが良いカブト製品の中でも特に良い感じでした。

レースで初投入したのはツール・ド・とちぎの第2ステージでしたが、この軽さはヒルクライムはもちろん、グランフォンドなど長時間ヘルメットを被る人に良いのではないでしょうか。ロードでも2時間までの短距離レースではそこまでの違いは感じにくいのですが、例えば5時間超えのような長丁場だと首が疲れるのでヘルメットの重量は気になるんです。

空力だけで言えばAERO R-1の方が優れているので、自分にとってのメインはそちらになるでしょう。でも用途を絞らずとも誰でも軽さや被り心地といったメリットを受けられるし、通勤にだって悪くないと思いますよ。安全性は転ばないと分からないところですが、カブトなら大丈夫という安心感があるのは良いですね。

提供:オージーケーカブト 制作:シクロワイアード編集部