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マヴィックの開発したロードチューブレスシステム「UST」。画期的とも言える嵌合の簡単さと乗り心地の快適さ、高いグリップ性能など、インプレッションを通じても完成度の高さが伺える。チューブレスのブレークスルーとも言える製品化の裏には果たして何があるのか? フランスはアヌシーに開発本拠を構えるマヴィックに、開発者を訪ねインタビューした。

フランス、アヌシーにあるマヴィックの本拠地ADC(アヌシーデザインセンター)フランス、アヌシーにあるマヴィックの本拠地ADC(アヌシーデザインセンター)
フレンチアルプスの麓、エメラルドグリーンの湖畔の都アヌシーにマヴィックの開発と生産拠点となるA.D.C(アヌシー・デザイン・センター)はある。USTの開発を統括したマキシム・ブレナン氏とチャッド・モア氏を訪ね、開発までのストーリーを訊いた。

リムとタイヤの製造精度とマッチングを追求した

USTの開発を統括したチャッド氏(左)とマキシム氏。ともにバイクジャンキーだUSTの開発を統括したチャッド氏(左)とマキシム氏。ともにバイクジャンキーだ
―― USTロードチューブレスの完成度の高さの秘訣となった開発のキーポイントを教えてください。

マキシム: マヴィックのUSTロードチューブレスのキーワードは、WTS(ホイール・タイヤ・システム)、つまりホイールとタイヤをシステムで開発したことです。それをまずユーザーが実感できるのがタイヤを実際に着脱するときです。まず、やってみましょう。(ここで実際にタイヤの脱着について実演しながらの説明となる)

力が必要なのはタイヤビードを最後に嵌めるときだけ。ビードは常にバルブのところで最後に嵌めるようにします。リムのセンターの溝はタイヤに空気を入れ、ビードを上げる際に大切な働きをします。肩にあるハンプと呼ぶ小さなリブ(出っ張り)が大事な働きをします。

タイヤを嵌めたらサイドのラインが均等に出ていることを確認してください。あとは携帯ポンプでもビードが上がるのです。ビードを外すときはタイヤサイドを横から強く押しこんで外します。

USTタイヤの嵌め込みを実演してみせるマキシム・ブレナン氏USTタイヤの嵌め込みを実演してみせるマキシム・ブレナン氏 最後にバルブのところを持ち上げるようにして嵌め込む最後にバルブのところを持ち上げるようにして嵌め込む

―― (記者も実際に試してみる)本当に簡単ですね。私もチューブレスが好きで多くのタイヤを使ってきましたが、苦労を多くしてきています。それをすべて帳消しにするほどの完成度ですね。今までチューブレスの使用経験がある人なら誰もが驚くことでしょう。設計でそれらを解決した? 秘訣となるキーは何だったのでしょうか?

リムとタイヤのダイアメーター(径)の数値は非常に重要なキーポイントです。例えば1mm大きく、あるいは小さく造ったとすると、それは嵌め合いにおいて非常に大きな違いになります。緩ければタイヤが外れ、リムが小さく、タイヤが大きいときはコンプレッサーがないと空気を入れることが困難です。キツければハズれないことで安全面は保たれますが、嵌めることが難しくなります。

携帯用ポンプでも簡単にビードが上がった。チューブレスは運用が難しいというイメージを覆す存在に成りうる携帯用ポンプでも簡単にビードが上がった。チューブレスは運用が難しいというイメージを覆す存在に成りうる
―― タイヤとリムの製造精度を高めたこと、その両方を同時に行ったということがポイントということですか?

そうです。USTではリムを製造する時に、我々の設定した規格通りの数値になるよう厳密に、そしてタイヤ側も規格通りの数値で、リムとのマッチングを徹底的に追求しました。タイヤとリム、その両方の精度が高ければ、取り付けは非常に簡単になります。

「”EASY. SAFE. FAST.”は精度とマッチングの追求と地道なテストが可能にした」とマキシム氏「”EASY. SAFE. FAST.”は精度とマッチングの追求と地道なテストが可能にした」とマキシム氏 マッチングを追求した結果、タイヤの取り付けが非常に簡単になり、かつ安全です。USTリムプロファイルでは空気を抜いてもビードはリムにロックされたままです。例えばもし空気圧のほとんど無い状態で走らなければならない状況になっても、ビードがリムから外れることなく、安全が保たれます。

―― 今までのような、ビードが上がる際に発生する「バチンッ」という音がしませんでしたが?

音が鳴るのは気温、湿度などの条件によりけりですが、鳴ったとしても「ボンッ」と、そんなに大きな音ではありません。チューブレスと言えばビード上げの際には「バチンッ」と驚くほど大きな音がするものです。この破裂音がしないとビードが嵌った実感がないかもしれませんが、USTではタイヤサイドのガイドラインとリムとの間隔が均等になっていれば問題ありません。

リムセンターにある溝はビードを正しい位置にロックする働きがあります。その設計にも秘密があり、携帯ポンプでビードがあげられるのです。手だけでビードを嵌めることに自信が持てない人でも、タイヤレバーを使うことで簡単に嵌めることが出来ます。

緻密に設計されたアルミリム。センターにある溝はビードを正しい位置にロックする働きがある緻密に設計されたアルミリム。センターにある溝はビードを正しい位置にロックする働きがある カーボンモデルにはリムテープが使われるカーボンモデルにはリムテープが使われる

―― シールやビードを傷めないようにタイヤレバーを使わないというのもチューブレスタイヤの鉄則でした。それがさらに嵌めるのを難しくしていましたが…。

USTチューブレスには「タイヤレバーを使わないで」ということはありません。問題なく使えます。「タイヤレバーフレンドリー」も私達が開発においてスタートラインとしたひとつでした。もっとも、タイヤレバーが必要なシーンはほとんど無いはずですが。

―― なぜ今までのチューブレスは問題点が多かったのでしょうか。造る側にとって、何が難しかったのでしょう?

チャッド: 誰もリスクを取りたくないからです。そして今までタイヤメーカーとホイールメーカーは密な関係をつくって仕事を共にしてこなかったのだと思います。

チューブレスにおいては、タイヤメーカーは安全上のリスクを取りたくがないためにタイヤビードをキツく設計する傾向がありました。走行中やパンクの際にビードが外れてしまわないように、です。

リムとタイヤのサイドラインが均一になっていれば嵌合はOKだというリムとタイヤのサイドラインが均一になっていれば嵌合はOKだという チャッド・モア氏はかつてトレックMTBワールドチームのメカニックとしても経験を積んだというチャッド・モア氏はかつてトレックMTBワールドチームのメカニックとしても経験を積んだという

―― 確かにタイヤが外れたとき、製造責任を問われるとその会社はダメージを被りますね。訴訟にもなりかねない。それがリスクということですね。

ホイールメーカーも同様に、リスクを取りたくないために外径が大きくなります。そうなると安全だけれどタイヤを嵌めることが困難なホイールになってしまいます。ライド中にパンクすると、チューブを入れようとしてもきつくて入らない、ビードが上がらない、といった事態に陥るのです。逆に取り付けやすさを優先するならリム外径が小さくなりますが、嵌めるときに緩いのはいいが、気温が上がるとタイヤが外れるといったことも起こりえます。

マヴィックのWTS(ホイール・タイヤ・システム)は、タイヤとリムの両方を親和性の高いものとして設計することができるため、こういったアンマッチを心配することがありません。

タイヤとホイールをひとつのシステムとして考え、設計する

―― 設計のキーとなったのはどの部分でしょうか?

「リムとタイヤの設計をとことん突き詰め、双方のマッチングを高めた」とチャッド氏「リムとタイヤの設計をとことん突き詰め、双方のマッチングを高めた」とチャッド氏 マヴィックはまずリムとタイヤビードの公差(規格値と実際の数値の間に許される差)を少なく設計することにこだわったのです。基準となるETRTO規格よりも厳しい数値を設定し、タイヤビードとリムが完全に一致すること、フィットすることにこだわりました。寸法や形状、素材の追求とともに製造上のプロセスにおいて誤差が生じないように徹底して管理しました。WTS=ホイール・タイヤをひとつのシステムとして設計することで、使うのが簡単で安全性の高い製品になると確信したのです。

タイヤにはハッチンソンと共同開発したYKSION PRO USTタイヤには「イレブンストーム」という新コンパウンドを使用していますが、ケーシングやビードは新たなUST専用タイヤの設計となります。

タイヤ性能はグリップと走行抵抗のバランスのベストを追求しました。今まで欧州ではS社の製品がベストなチューブレスタイヤだと言われてきました。しかし我々のテストでは走行抵抗の低さは優秀でも、グリップ力が不足している面があった。それはあくまで「マヴィックの基準において」です。それよりもグリップを向上させ、両方の性能をバランスさせたハイエンドタイヤに仕上げています。 

ADC内を案内してくれたマキシム氏とチャッド氏ADC内を案内してくれたマキシム氏とチャッド氏
テストによって研究されたタイヤ。実走テストを重んじるというテストによって研究されたタイヤ。実走テストを重んじるという 徹底的なテストを感じさせるタイヤが山積みされていた徹底的なテストを感じさせるタイヤが山積みされていた

マキシム:ライバル各社のタイヤも何本もラボで研究しました。タイヤビードの外径の数値は正確でも、ストレッチ(伸び)率が高いケースなども見受けられます。マヴィックのUSTタイヤのケーシングや設計、伸びないカーボンビードは他とは違います。今までの製品とは信頼性のレベルがまったく違うのです。

シーラントも新しいものです。シーラントはホイール一本につき30g、ハンディボトルの4分の1を使うだけ。エア漏れを防ぎ、パンクの際の自己修復を高めてくれます。市場にたくさんの選択肢がありますが、シーラント自体も他社製との違いを感じることができる製品です。

―― USTロードチューブレスの開発には長い時間がかかりましたね? 何が難しかったのでしょう?

チャッド: チューブレスの黎明期、一般ユーザーの体験したことがあまりにも悪かったからです。ロード上でタイヤが外れない、チューブが入らない、タイヤレバーを使っていて折れる(ぐらいキツい)..。我々はそういったネガティブな体験を根本的に解決できる方法を見いださなければいけないと考えたのです。すべてを解決できなければ製品としてはリリースできない。あるケースで問題があるとわかっている製品を販売することは出来ない。ユーザーが使うことに苦労するようなものを製品化することに、その時点では自信が持てなかったのです。

解決策が見えない状況に、次のステップは何だろう? と模索をしていました。最終的にプロジェクトを完結できなかったのです。しかしその間も、マヴィックは先にマウンテンバイクで普及させることに成功したUSTにおける経験値を蓄積していました。

ホイールをテストすると同時にプロレースのニュートラルサポートの拠点となるADCホイールをテストすると同時にプロレースのニュートラルサポートの拠点となるADC

難航した開発。地道なテストと精度追求がカギだと確信した

―― USTの開発には通算何年の開発期間がかかっていますか?

ロードUSTにかけた開発期間は何年と言うのが難しい。最初のプロジェクトに2年、そして詰めの段階の開発はこの2年間と言えるでしょう。ただし全体で何年間かかったと言うのが難しいのです。

―― 最初のステップではハッチンソンとミシュランとコラボレーションしていました。今回のUSTではミシュランの協力は抜けていますか?

そのとおり、MTBのUSTシステム開発においては、1998・99年にミシュランそしてハッチンソンと協力関係に有りました。その後MTBに続いて開発に移ったロードUSTについては、ミシュランとマヴィックが「満足のいく性能に到達できない」として開発に一時ストップをかけましたが、ハッチンソンは先にチューブレスタイヤをリリースしました。私達は「性能的にはまだだ」と判断していましたが。

ホイールとしての完成度も上げるためハブも設計面から刷新し、軽量化と強度アップを達成しているホイールとしての完成度も上げるためハブも設計面から刷新し、軽量化と強度アップを達成している USTロードチューブレスタイヤ YKSION PRO UST 現在はこの1種のみだUSTロードチューブレスタイヤ YKSION PRO UST 現在はこの1種のみだ

今回のロードUSTにおけるハッチンソンとの関係は、単にタイヤ製造を任せているに過ぎません。マヴィックはタイヤ製造工場を持たないからです。マヴィックタイヤにおいて唯一シェアされるテクノロジーが、昨年ユッチンソンとマヴィックが共同で開発した新コンパウンド「イレブンストーム」です。その他のタイヤのデザインや製造方法、ビードやケーシングの素材や構造、全体的な設計やUSTデザインについては、同じハッチンソンの工場で作っていてもマヴィックのエクスクルーシヴ(専用)です。

―― 改めて、開発するうえでもっとも難しかったことは何でしょう?

ロードUSTチューブレスシステム断面図ロードUSTチューブレスシステム断面図 安全性と扱いやすさとのバランスをとることです。タイヤの取り付けを簡単にすればタイヤが外れる可能性が上がります。安全性を高めれば、嵌めにくく外しにくいタイヤになります。気温が上がった際に状況が変わることも考慮しなくてはいけません。Ease of use(扱いやすさ)とsafety(安全性)、そのベストなバランスを取るべく実証実験を経ながら製品へと落とし込んでいくことがもっとも大変でした。

―― カーボンはアルミよりも難しいのですか?

マキシム: そうです。アルミリムでうまくいったら次はカーボンです。同じ条件でもカーボンは温度上昇が大きくなるため、リムブレーキタイプのカーボンリムがもっとも難しい。カーボンリムはブレーキング時に最高200℃まで熱を持ちます。高熱によりコンパウンドやビードに影響が出て、リムが破損することもあります。一方ディスクブレーキホイールのリムにはブレーキ当たり面の処理は無くて良いのです。

プロレースで使用されるとは限らない。しかし速さにつながるのは確かだ

―― USTロードチューブレスシステムは欧州のプロロードレースでこれから使用されるのでしょうか?

レースではまだまだチューブラーが主流です。パンクした際に空気がゆっくり抜け、タイヤが外れにくいためサポートカーが来るまでそのまま走り続けることができます。プロが使い慣れている安心感によるものは大きいでしょう。しかし一方で、より速く走れるならUSTを選んでくれる可能性はあるでしょう。

昨年のツール・ド・フランスの最終ステージ、マルセイユの個人タイムトライアルでリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)が前輪にUSTチューブレスのCOMETEホイールを使用し、8位の好タイムを出し、総合も2位にアップ。シャンゼリゼで表彰台に上がりました。チューブレスを使用したのはウランだけでしたが、マルセイユの石畳や荒れた路面にはメリットがあったようです。

ツール・ド・フランス2017最終ステージ  前輪にUSTチューブレスのCOMETEホイールを使いTTを走ったリゴベルト・ウランツール・ド・フランス2017最終ステージ 前輪にUSTチューブレスのCOMETEホイールを使いTTを走ったリゴベルト・ウラン
ちなみにチームの他の選手は50%がチューブラー、50%がクリンチャーを使用したようです(但し前輪)。クリンチャーを使うのはチューブラーより真円度が高く、転がり抵抗が低いためです。チューブレスは同様に真円度が高く、チューブが無くなることでタイヤ内部で発生するチューブのズレによる摩擦抵抗も無くなるため、クリンチャーよりもTTに向いているという数値データがあります。パンクに強いのはもちろん、安全でもあります。

―― プロチームはチューブレスに興味を示しませんか?

チャッド: ボーラ・ハンスグローエにはシーラントを製品に持つサプライヤーが加わりました。おそらくチームはレースでチューブラーやクリンチャータイヤにシーラントを入れて使っているのでしょう。ならチューブレスタイヤのほうが良いのでは?と考えているのではないでしょうか。実際、マヴィックがホイールを供給したアージェードゥーゼルとキャノンデール・ドラパックとの間ではそういう話をしていました(2017年時点)。しかしプロレースの世界では長年使い慣れたものを誰もあえて変えたがらないという保守的な面があります。

USTチューブレスにおけるアプローチはプロレーサーのための製品開発というよりは、一般ユーザーのためと言えます。しかし一般ユーザーが使うに十分なメリットがある製品なら、プロが使う理由にもなるかもしれません。USTチューブレスのほうが速く走れるとしたら? ディスクブレーキ同様、プロトン内でこれからチューブレスがどれぐらいのシェアをとるかはまだ予想がつきません。

―― お話を伺って、USTロードチューブレスシステムの開発は時間的にも労力的にも大きな仕事だったことがわかりました。

「未来はチューブレスにある。それは確実に言えるよ」とマキシム氏「未来はチューブレスにある。それは確実に言えるよ」とマキシム氏 それは我々マヴィックにとって大きなストーリーです。しかしユーザーはただUSTシステムを使って、今までのものより扱いが簡単で、安全で速いと感じてくれさえすればよいのです。使えばわかりますよ。

―― その良さを感じるには体験することが必要ですから、少し時間がかかるのかもしれませんね。

マキシム: ロードチューブレスシステム自体は新しいものではありませんが、我々は今回のUSTシステムの完成度の高さを非常に誇らしく思っています。ぜひ使ってみてください。未来はチューブレスにあります。

他社製タイヤとマヴィックUSTホイールのマッチングは? なるしまフレンド小畑メカが徹底分析

専用設計のタイヤ、YKSION PRO USTが用意されているUSTシステムだが、マヴィックのアナウンスでは「相性があるものの他社のチューブレスタイヤを使用することも可能だ」とされている。そこでチューブレスタイヤにも造詣の深いなるしまフレンドの小畑郁メカニックが他社製のチューブレスタイヤ、IRC Fomula Pro、ハッチンソン Fusion5、マキシス PadroneをKsyrium Pro USTに装着するテストを行った。その印象とは?

タイヤはCW編集部が店頭で購入し、小畑さんにその場で嵌めてもらうことでテストを行った。

今回試したのはIRC Formula Pro、ハッチンソン Fusion5、マキシス Padrone TRの3モデル今回試したのはIRC Formula Pro、ハッチンソン Fusion5、マキシス Padrone TRの3モデル
IRC Formula Proは少し硬めだがビードは上がりやすいIRC Formula Proは少し硬めだがビードは上がりやすい まずは国産ブランドであり国内レーサーにも厚い支持を受けるIRC Formula Pro。「お店でも人気のチューブレスタイヤで、カンパニョーロやフルクラムの2Way-fitのホイールに組み合わせても嵌め合いは硬めで気密性は高いタイヤです。USTホイールと組み合わせても装着感は硬めですね。バルブ側を最後にする、片側のビードを嵌め終わったら、こじるようにして中央の溝に落とすビードを入れ替えてあげる、といった手順をしっかりと踏めば手で装着することは難しくありません。気密性は高く、携帯ポンプでもビードは簡単に上がりますね」と小畑メカニック。

続いて、IRCと並ぶ人気を誇るというハッチンソン Fusion5。「ハッチンソンはマヴィックの純正タイヤを製造しているということですが、サイズ感はかなり違いますね。ビードの長さはかなり大きめで嵌めやすい。ですので、非力な方でも手で装着できるでしょう。取り付けやすさに優れている一方で、気密性は少し低いようです。残念ながら携帯ポンプではビードを上げることは出来ませんでした。しかしフロアポンプを使えば直ぐに上げることが出来たので、使用上の問題は無いでしょう」とのことだ。

ハッチンソン Fusion5は嵌めやすいがフロアポンプが必要だったハッチンソン Fusion5は嵌めやすいがフロアポンプが必要だった マキシス Padrone TRもフロアポンプが必要だったマキシス Padrone TRもフロアポンプが必要だった

そして、マキシスのPadrone TR。「装着した感触ではYKSION PRO USTに一番近いのはこのタイヤです。サイズとしてはIRC Formula Proとハッチンソン Fusion5の中間ぐらいですね。ただ、ビードの形状のせいでしょうか、純正タイヤとは違って携帯ポンプではビードを上げることは出来ませんでした。とはいえ、こちらもフロアポンプを使えば一発でビードを上げることが出来ます。出先で修理する時もCO2ボンベがあれば安心でしょう」とその印象を語ってくれた。

マッチングは純正タイヤが一番だが、リム形状が工夫されているので他社製タイヤも使いやすいようだマッチングは純正タイヤが一番だが、リム形状が工夫されているので他社製タイヤも使いやすいようだ ブランドによってかなりのばらつきがありながらも、どのタイヤも比較的スムーズに装着可能という結果については、「ビードのサイズに関わらず、しっかりと空気が入っていくのはホイール側の造りが良いからでしょう。コンプレッサーやチャンバー(圧搾空気を一気に噴出できるタンク)つきポンプは3つとも不要でした。リム中央の溝やハンプといった形状が考え抜かれているんでしょうね。

ロード用チューブレスタイヤが発表された当時に比べれば、最近のリムやタイヤはかなり改善してきてはいましたが、ロードUSTシステムは更に上の段階へ到達しましたね。これだけ気密性が高ければシーラントの使用量は少しで済むはずです。重量やライディングフィールの上でも大きなメリットがあります」とロードUSTの持つ優位性を語ってくれた。
提供:アメアスポーツジャパン インタビュー:綾野 真 製作:シクロワイアード