2017/11/30(木) - 17:47

今、世界中のサイクリストにシェアを広げつつあるZWIFT(ズイフト)。簡単に説明するならば、現実世界で計測したスピードやケイデンス、パワーデータにあわせて、画面上のアバターが画面の中を走り回るバーチャルサイクリングソフトだ。2015年にはトレック・ファクトリーレーシングがツール・ド・フランスの休息日にオンラインデモを行い、レース愛好家にも大きなインパクトを与えた。
2016年にはマシュー・ヘイマン(オリカ・スコット)は腕を骨折した後にズイフトだけで集中リハビリトレーニングを行い、パリ〜ルーベ覇者となった。「ズイフトだからこそ諦めずにトレーニングが続けられた」という言葉は驚きをもって迎えられた。
I was embarrassed by this photo. There's a fine line between stupidity and dedication. #OGErocks #noshortcuts pic.twitter.com/bZod6p6ed8
— MathewHayman (@Mathew_Hayman) 2016年4月16日
トレックセガフレードのチームウェアをライドによって獲得している人がたくさん! まるでチームメイトと走っているようだ。@GoZwiftJP #Rideon pic.twitter.com/1hZpxGk0CU
— Fumiyuki Beppu (@Fumybeppu) 2017年2月19日
ローンチ当時よりズイフトに触れてきた別府史之(トレック・セガフレード)をはじめ、マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)らプロ選手たちもアカウントを持っており、時折バーチャルワールドに姿を現すこともある。そんなズイフトの魅力と導入方法を紹介したいと思う。
ズイフトって何が楽しいの?
今回の特集記事制作にあたり、編集部員のムラタがジャパンカップ2017期間中に限定オープンしていたRapha宇都宮のズイフトコーナーで実体験した。ズイフト・ジャパンの佐藤慎也さんが約1時間かけてズイフトの機能と魅力をナビゲート。それでも時間が足りなくなるほど沢山の機能が盛り込まれているとのこと。その一部を動画とともに紹介しよう。
記事冒頭で説明した通り、自分の脚でバーチャルワールドをサイクリングできることが魅力のズイフト。その場にいるのはサイクリストだけというクローズドな環境で、「先行サイクリストに追いつこう」「この人ペースが安定してるから一緒に走ろう」「あの人を追い抜かそう」など、自分が思うままにサイクリングを楽しめる感覚を例えるならば、時間耐久(エンデューロ)レースだろうか。
世界中からアクセスしている人たちと同時に自転車で走り、誰かと一緒にサイクリングを楽しんでいるという気持ちにさせ、部屋で1人淡々とペダルを回すだけの室内トレーニングに華やかさを持たせてくれる存在だ。
スマートトレーナーを使用すると、ズイフト世界内の勾配やドラフティングの有無によりローラー台の負荷が自動調整されることも大きな魅力の1つ。室内でペダルを漕いでいながら、脚から伝わってくるのは実世界を走っているかのようなフィーリングを得やすい。

自動的に負荷が調整されないローラー台の場合は、ライダー自身が出力しているスピード(車輪が回る速度)、ケイデンス、パワーを参考に、ズイフト内での走行スピードが調整されるのだ。
例えば、勾配が厳しいところでスピードを上げたければ、自分自身でより高パワーで踏まなければならない。ドラフティングが効いているならば、パワーを緩めなければ前走者を追い越してしまう。つまり、ローラー台が自動的に行なってくれることを自分自身で行うという違いしかないのだ。
ズイフトを盛り上げる要素
リアルタイムKOM、スプリント争い
様々なサイクリストが楽しめるように、ズイフトにはゲーム要素が多く取り入れられている。例えば、マップ内に設定された峠道でのタイムアタックや、平坦路でのスプリントタイムアタックなどだ。ランキングのトップに躍り出た選手のアバターは、その瞬間に特別ジャージへと着替え、周囲のサイクリストに自分が首位だとアピールすることができる。一方で、ランキングはリアルタイムで更新されるため、他の人が首位を獲得してしまうと特別ジャージが剥奪されてしまうのも面白い。ジャージの奪い合いをリアルタイムでできるのはオンラインゲームならではの楽しさだ。


グループライドやレースに参加しよう
インドアトレーニングは往々にして個人で励むものであった。しかし、インターネットを介し全世界とリンクしたバーチャルワールドでは、いつでも自宅で世界中の人と一緒にライドを楽しむことができるようになっている。もちろん1人で黙々とペダルを回し続け、抜きつ抜かれつのサイクリングを堪能しても良い。せっかくバーチャルワールドに入ったのなら、ズイフトが定期的かつ頻繁に開催しているグループライドやレースに参加してみてはいかがだろうか。
開かれているライドの種類は数多い。イージーペースのサイクリングやハイテンポのトレーニングライド、フラットなレース、ヒルクライムレースなど。グループでのワークアウトライドも用意されているため、1人では辛い練習メニューでも誰かと一緒に苦しみながら、トレーニングを遂行することもできる。
もし、レースやグループライド中にあるライダーが先頭に躍り出て集団を牽引するいい走りを見せたとする。その活躍を褒めたい時は、SNSの「いいね!」のように特定のライダーに「ライドオン」と呼ばれるサムズアップのマークを贈ることができる。外国語での意思疎通は難しくても「いいね!」という形でコミュニケーションを取りながらサイクリングを楽しむことが可能なのだ。


「いいね!」が贈られた人のバックポケットには「ライドオン」マークが収納されていき、その数が多くなるとバックポケットが膨らんだり、はみ出したりするギミックも面白い。このような細かいディテールまで凝っているため、ズイフトの魅力を語ろうとすると際限なくなってしまうのだ。
変幻自在のアバターとバイク
顔や髪の毛といった体のパーツ、ウェアなどを一つ一つ選んでいき、思うがままの自分を作り出して遊ぶことができるのもオンラインゲームならではの機能。自分に似たアバターを作り出すのも、全く違う姿にアレンジするのも良い。走りのパフォーマンスだけではなく、見た目でも全世界に自分の存在を主張することだって可能だ。選べるジャージやバイクの種類はゲームを進めていくことで増やしていく。走行距離や時間に応じて貰えるものもあれば、キャンペーン期間中のみしか手に入れることができないジャージやバイクも存在するため、ログインするモチベーションの1つとなるだろう。


ちなみに、プロ選手には専用のチームウェアやバイクが提供されているため、一般サイクリストと違うということを判別できる。後ろから追い抜かされたり、すれ違ったりした時はひと目でわかるため、インターネット上でのランデブーを楽しめるはずだ。
今回紹介したズイフトの魅力は、インドアサイクリングを飽きさせないための細かいディテールなどのほんの一部にしか過ぎない。本記事の動画を視聴したり、体験型展示を行っているイベントなどで体感することができるはずだ。百聞は一見に如かず。気になる方は体験会などの機会を見つけて試してもらいたい。
CW編集部員ムラタがズイフトを初体験 機能と魅力を動画とインプレッションで紹介
CW編集部員ムラタが2017年のジャパンカップ期間限定でオープンしていたRapha宇都宮にてズイフトを初体験。イベントブースで一般サイクリストに魅力を紹介するインストラクター佐藤慎也さんからレクチャーを受けながら、バーチャルサイクリングを堪能した。その様子を通してズイフトの世界と楽しみ方を理解して欲しい。
【動画の閲覧方法】
埋め込まれている動画のタイトルをクリックするとYouTubeのページにジャンプします。説明欄に動画の目次を用意しているので、そちらを確認しながら御覧ください。目次の数字をクリックすると当該時間へジャンプします。
ズイフト初体験のムラタ「ローラーを漕ぐというよりはゲームに参加している感覚」
プライベートでは固定ローラー台を部屋に置き、かつサブバイクを常にセット、汗や騒音対策も怠らずいつでも漕げる状態にしながらも室内トレーニングの退屈さに耐えられず練習は専ら実走派である私ムラタ。

今回初めてズイフトを体験してみて感じたのが、ローラー練習時にネックとなる”退屈さ”が払拭されており室内トレーニングでも飽きずに長時間ライドを楽しめるということ。ペダルを漕げばコースに沿って画面内の景色が変わり、実際に外を走っているかのような感覚を味わえるため、自然とローラーを回すことに集中できる。普段30分すらローラーを漕ぐのが嫌な私でも、気づけば1時間も乗っていたのだから驚きである。
それだけではなく、自身のキャラクターをペダリングによって操作するゲーム性もトレーニングを退屈させない要素だと感じた。ペダリングと自身のアバターの動きが連動しているため、例えば集団走行をしている時は付いていこうと頑張ってペダルを回してしまうし、よりパワーを上げて他ライダーを置き去りにすることもできる。一人でローラーを漕いでいても、そこに他人との駆け引きが生まれることでよりトレーニングを楽しめるコンテンツとなるのが、このズイフトの真骨頂と言えるだろう。




今回体験した際に使われていたローラー台は自動負荷調整機能付きのWahoo KICKR。ズイフト内で登りに差し掛かれば連動してペダルの負荷が重くなるし、集団内を走れば空気抵抗が小さくなったかのように負荷が軽くなるのだ。より実走に近い感覚でトレーニングが行えるというズイフトの魅力を、最大限体感することができた。
オンライン上で仲間と集まることもできるし、世界中のライダーと競うこともできる。ネットを介したズイフトならではの遊び方が、今までにない充実したローラートレーニングをもたらしてくれると今回の体験を通して確信した。早速アカウントを登録し、この冬から私もズイフトを始めるとしよう。みんなも一緒に、レッツ ライド・オン!
ズイフトには何が必要なの?~準備編~

さて、ここからはズイフトを始めようと考えている人へ向けた導入編だ。はじめるにあたって何が必要なのかを改めておさらいしよう。
バーチャルサイクリングには自動的に負荷が変化するスマートトレーナーが必須と思われている方も少なくないだろう。しかし実際は従来型のトレーナーでも十分に楽しむことができ、必要なものを揃えれば気軽に始められるのだ。改めてズイフト導入に何が必要なのか確認しよう。
ズイフト導入必要機材
1.自転車
2.ローラー台
3.パソコンもしくはiOSのスマホ/タブレット
4.データ計測センサー&受信機
5.インターネット
1.自転車
2.ローラー台
3.パソコンもしくはiOSのスマホ/タブレット
4.データ計測センサー&受信機
5.インターネット

以上がマストなアイテムである。自転車はロードバイクはもちろん、MTBやシクロクロス、クロスバイクだってOKだ。合わせて用意するローラー台がスピードとケイデンスを検知できるのならば、自転車には何も装着しなくても良い。データを取得できないローラー台ならば、自転車にスピードとケイデンスセンサーを装着するだけで、ズイフトの画面上でアバターが自分の化身としてバーチャルワールドを駆け回ってくれるようになる。
ズイフト対応モデルではなくても、実測スピードとケイデンスを計測できれば登録した体重と組み合わせてパワーとズイフト内でのスピードが算出される。3本ローラーやハイブリッドローラー、旧型のモデルなどありとあらゆるローラー台でズイフトは楽しめるのだ。
市販されているおもなスマートローラー




もちろんバーチャルワールドでの勾配やドラフティングの有無によって負荷が自動的に変化するスマートトレーナーであれば、より仮想世界に入り込むことができる。また、自動負荷調整機能がないズイフト対応モデルは、ソフトの中に負荷曲線データが内蔵されているため、未対応モデルよりも精確なパワーが算出されることになっている。各社が様々なローラー台を出しているため、予算に適したモデルが見つかるはず。
自転車とローラー台を用意したら、いよいよパソコンかスマホ/タブレットとの連携だ。一度、ご自身の手元にあるローラー台やスピード/ケイデンスセンサーが対応している通信規格を確認して欲しい。ズイフトが認識するのはANT+とBluetoothの2種類。手持ちのセンサーに対応する受信機(ドングル)をパソコンに装着するとパソコンでデバイスを認識するようになる。ここまで準備ができたら、バーチャルの世界へ飛び込もう。


導入機材例
パターンA:自転車+スマートトレーナー+パソコン
パターンB:自転車+スピード/ケイデンスセンサー+従来型固定トレーナー+iPhone
パターンA:自転車+スマートトレーナー+パソコン
パターンB:自転車+スピード/ケイデンスセンサー+従来型固定トレーナー+iPhone
既にパワーメーターを所有している方であれば、ローラー台とズイフトの計算に依存せず自分の出力をダイレクトにバーチャル世界へ反映してくれる。既にインドアでパワートレーニングを行っている方であれば、データの通信環境と手持ちのPCやiPhoneなどのスペックが適していれば、すぐにでも始められてしまう。
手持ちのパソコンが要求スペックに応えられているかどうかは、ZWIFTの公式ページに記載されているため確認して欲しい。一度、体験期間を利用し、実際に動くかどうかのチェックしたほうが確実だろう。インターネットの回線速度に関しては、Wi-Fiなどで十分に動くとのことだ。
あったら便利な小道具類
ここからは必要最低限な物に加え、あったら便利なものを紹介していきたい。インドアトレーニングに取り組む方ならばマットと扇風機は用意しておいたほうがベターだ。ズイフトでは、今回の取材のように1時間があっという間に過ぎてしまうほど没入してしまうため、汗が床に滴る可能性は非常に高い。一生懸命練習した後に床の拭き掃除の手間を減らすために是非とも用意したいアイテムだ。


扇風機はトレーニングで発熱する体をクーリングするため。走行風が当たらないインドアでは、屋外では風が大きな役割を果たしていたことを実感できるほど想像以上に発熱、発汗しやすい。本格的にインドアトレーニングを実践している方の中には、強力な工業用扇風機を導入している人もいるほど。扇風機は、少しでも快適でストレスフリーな環境を追い求めたいのならば必須と言っても過言ではない機材でもある。
iPhoneやiPadでも、映像出力ケーブルとディスプレイを組み合わせれば大画面でプレイすることも可能となる。プレイヤーの中にはプロジェクターを使用してズイフトを楽しんでいる方もいるのだとか。快適な環境を作り上げ、ズイフトの世界に没頭しても良いのではないだろうか。
提供:ZWIFT 協力:rapha 制作:シクロワイアード編集部