2017/07/27(木) - 19:34
新型シナプスでのファーストライドを終えたところで、開発の指揮をとったエンジニアたちにインタビューを行った。「TRUE ENDURANCE MACHINERY」のコンセプトのもと大きく変貌を遂げた新型シナプスは、いったいどこが変わったのか?
話を聞いたのはデザインエンジニアのアンディ・シュミット氏、プロダクトマネジャーのデイヴィッド・デヴァイン氏、インダストリアルデザインアーのイアン・スッラ氏らだ。
― ここに来る前に2週間をかけて現行シナプスに乗り込んできました。新型との2台の間には大きな差を感じました。新型シナプスはとてもスムーズでコンフォート性が大きく増しているように感じました。とにかく素晴らしいライドフィールでした。
ありがとう。新型シナプスを楽しんでもらえたようで何よりです。もっとも大きな違いは剛性が高まり快適性が増したことです。2倍快適というわけではありませんが、大きく向上した快適性を感じるはずです。そしてもっとヴァーサタイル(万能)なバイクになりました。太いタイヤをセットできるクリアランスがあり、どんな道へだってためらわずに乗り出せるバイクになっています。
― 前シナプスと比べてフレームの変更点のポイントは何でしょうか。
スタンドオーバーハイトを変更し、シートチューブが長く、シートステイの形状をよりフレックス性(しなり)を持たせるよう変更して振動を吸収するようにしています。シートステイは前のモデルはひねりを加えて曲げるような形状としていましたが、新型は形状に大きな変更を加えています。
― 実は前モデルのフレームは少しリジッドすぎるのでは?と感じていました。新型は格段にしなやかな乗り味になり、快適性という面では大きな変化だと感じます。
硬く感じたのはサイズが小さかったこと(48)と、ディスク仕様ということもあったかもしれませんね。新型は小さなサイズは以前より剛性が低くなり、大きなサイズの剛性は高まっています。サイズが小さいほど構造体としての剛性が高まってしまうのは仕方がないことでしたが、新型シナプスではすべてのサイズを乗り比べても共通した剛性になるようにサイズごとに最適化して設計しています。
― フレーム設計において他に違いはありますか?
カーボンレイアップも変更していますが、それは形状が変化したからです。チューブ形状の違いがもたらす効果は外観上のことだけでなく、乗り心地を大きく左右しています。またシートステイブリッジを除去し、フレームに用いられるアルミパーツも減らしました。それが軽量化につながっています。
そしてフレーム本体は、大きく言って前モデルは6ピース構造からオーバーラップしてボンディング(接合)して組み上げていましたが、新シナプスでは3ピース構造になっています。強度が上がり反応性のいい乗り味に貢献しています。
― 何か新しい素材は使用していますか? あるいは新しい技術は?
カーボン自体はとくに変更していませんし、新しい素材や新テクノロジーもとくに使用していません。バリステックについても採用していますがEVO同様のものです。マーケティング上は面白味が無いかもしれませんが、必要でないことはしません。チューブ形状の見直しなどのリ・エンジニアリングによってSAVEシステムすべてをリファインしました。
― 前モデルのジオメトリーはもっとアップライトだったように感じます。レーシーな走りをするにはやや不満を感じましたが、新型はよりスポーティに走れました。
その通りです。ややアグレッシブとなり、ニュートラルでありながらもレースバイクのように走れます。簡単に言ってリーチが長く、スタックが低くなりました。なかでもスタンドオーバーハイトの変更が大きなファクターとなっています。
― S.E.R.G.(SYNAPSE Endurance Race Geometry)と謳ってきたジオメトリーをあえて変更したのはなぜでしょう。何か理由がありますか?
エンデュランスセグメントの拡大、そしてホットになってきていることですね。グランフォンドしかり、エンデュランスレースというカテゴリーも面白い。ユーザーたちの乗り方も変わってきているように感じています。
― 新シナプスが乗りやすく感じたのは、少し低く・遠いハンドルポジションになったことが大きかったと感じます。自分のケースで言えば、ロードレースとエンデュランスやロングライドはほぼ同じポジションで良いと感じています。ハンドルを少し上げるとしても、ほんの少し、5mmほどでしょうか。
そう、それは非常に良いことだと思います。乗りこなしていれば問題はないし、とくにエンデュランスだからと気に入ったポジションを大きく変える必要はないんです。
― 前シナプスは自分には必要ないと感じましたが、新型シナプスは自分のバイクとして欲しくなりました。明日はさらに1cm〜1.5cm下げてみたい。(このインタビューは初日に行い、筆者はテストライド2日目にハンドル高を変えて試した結果、ロードポジション+5mmぐらいが「シナプスのベスト」と感じて落ち着いた)
私は56サイズに15mm高のトップキャップを使用しています。従来よりアグレッシブとはいえ、依然としてニュートラルなポジションです。5mm高のトップキャップの用意もありますから交換して問題ないし、それでシナプスのコンセプトが狂うことはありません。
― 他社のエンデュランスカテゴリーのバイクのジオメトリーは良く似かよっていて、一層ヘッドチューブが長くハンドルが高いと感じます。ロードレースバイクと比べれば違いがより明らかです。
販売する側が説明しやすいという事情もあるからでしょう。買う側も小さな数値の違いだと差がわかりにくいですから。乗れば分かるこの小さな差が新型シナプスのこだわりです。ところでステアリング系のジオメトリーはどう感じましたか?
― とてもニュートラルでした。ダウンヒルが速く、切り返しなどレスポンスもいい。レースバイクと同じ感覚でした。クセも感じませんでした。
小さな48サイズに乗ってそう感じてもらったのは我々にとっていいニュースです。ハンドリングの問題は小さなフレームサイズの場合に顕著に出てきます。大きなサイズのフレームと同じオフセットのフォークを使うと、キレが悪い、曲がりたい方向に曲がれないなど、ヘッドアングルとのアンマッチが出てきます。48と44サイズには60mmオフセットのフォークを共用しています。”スポーティハンドリング”だったでしょう。今までとは大きな違いです。3種類のオフセットのフォークは、44・48、51・54、56・58でそれぞれシェアしています。
ファーストサンプルは56cmで開発を進めます。それはもっともマーケットシェアの大きなサイズだからです。小さなバイクは構造上過剛性になりがちですが、新型シナプスはフレームのヘッド、トップ、ダウンチューブの口径も小さくしています。それにより硬すぎるといった問題は解消しています。メインチューブに関してはフレームサイズごとに違う太さのものを使用しています。サイズの異なるバイクを乗り比べても、同じライドフィールになるように。
― 快適かつレーシングバイクのような反応性と加速性があり、気に入りました。エンデュランスバイクにありがちなダルな点が見当たらない、ロードレースに出るにも遜色のない走りだと思います。
ありがとう。それは今回の「リ・エンジニアリング」の成果です。そう感じ取ってもらえて嬉しいです。
― ウィル・クラーク(キャノンデール・ドラパック)がパリ〜ルーベで乗ったバイクを現場で見ましたが、フェンダーマウントもありました。製品版と同じレベルのプロトタイプだったのですか?
そうです。今はUCI規定の認証を取る必要もありますから、カラーのみオールグリーンで中身はほとんど製品と同一のプロトタイプです。今年は多くのバイクを用意できなかった。
― ウィルは低くて長い前下がりステムを使ってEVOとまったく同じポジションを再現したと言っています。新型シナプスはプロツアーレベルのレースのことも考えて開発してきましたか?
もちろん! 実は開発チームのボスは過去にプロチームのエンジニア兼メカニックでした。だからパリ〜ルーベのことは知り尽くしていて、パヴェでの使用状況や求められる性能などのノウハウを開発にも活かしてきました。大きなギアを使うなど一般レベルと違うことも求められるけれど、来年こそすべての選手が新型シナプスに乗ってポディウムを目指したいですね!
― グラベルについてはどうでしょう? あなたはSLATE(スレート)の開発担当で、MTBなどオフロード系バイクの開発が得意分野だと伺いました。
そう! いいグラベルトレイルがオフィスのすぐ裏手にあるんだ(と目を輝かす)。いつでも走れる環境がある。新シナプスには太いタイヤへのキャパシティを持たせていて、今私はENVE のSESワイドリムにWTBの30Cタイヤをチューブレスで使用しています。実測なら30Cより少し太いでしょう。空気圧を低めにして乗っています。楽しいですよ。高いロードパフォーマンスを持ったシナプスはホイール選択でグラベルも楽しめるんですから。
― SAVEシステムバーでハンドル周りのインテグレーションが一気に進みました。開発にあたって意図したこと、苦労したことは何ですか?
SAVEシステムを盛り込みながらどのようにインテグレート(統合)して、スリーク(滑らかに)に見せつつ、かつ完全な調整幅をもつようにしたかった。ハンドルは細かく調整できなければストレスとなります。つまり本当に機能的なものにするのに苦心しました。
― このツーピース構造は独創的なアイデアだと感じます。いったいどこから着想を得たのでしょう?
数え切れないトライをして、いろいろな方法を試しました。着想したのはシートピラーのヤグラ部分からです。無段階に角度を調整できて、固定することができる構造を応用しました。3Dプリントによるアルミニウムで試作し、ハンドルシェイプも多くのものを試しました。
ハンドルの上下角で8度の調整幅をもたせることができ、ベースステムとハンドルバーの組み合わせでステム長もリーチもハンドル幅も選べる。形状は60人ものスタッフが試して最適なエルゴ形状を導き出しました。これはすべてキャノンデールの社内で作ったキャノンデールプロダクツです。
― 上下方向のしなりがあって快適なのに、同時に非常に硬いバーですね。
スプリントのときに力が逃げるほどのしなりは持たせていません。レースでも十分使える剛性があります。フレームがサイズごとの最適専用設計になっているように、広いハンドルにおいても狭いハンドルにおいても共通したしなり量をもっています。しなりすぎると不安定になりますから、快適すぎないものです。上下方向にしなるが、他の方向にはしならない形状を追求しました。同じフレックス量であるべきだという考えに基づき、幅(サイズ)によって上部の太さも違います。
バンプに乗り上げてもズレることがありませんが、レコメンドとしてはカーボンペーストを塗って固定力を増すことでしょうか。ピッチ(溝)を切っていないのでハンドルの角度は無段階に調整して固定することができます。
※SAVEシステムバーは生産上の課題が生じたため、来季以降のスペックインとなることが発表された。(2017年8月28日)
― 最後に、日本ではまだエンデュランスカテゴリーがポピュラーではありません。どう思われますか?
イアン:アメリカも同様で、ホットで「これからくる」と言えるでしょう。この世界はまだ「エクストリーム」と言われたり、あるいは「カッティングエッジ(最先端)」と言われるけれど、この先メインストリームになる可能性は十分にあります。日本は伝統的なマーケットでロードバイクが主流だけれど、多くのユーザーにおいてロードレーシングバイクよりシナプスのほうがベネフィット(利点)があるのは確かです。
アンディ: 実際僕はすでにEVOに乗っていないし、乗る必要が少ないんです。シナプスと過ごす時間が長くなるばかりですよ。
話を聞いたのはデザインエンジニアのアンディ・シュミット氏、プロダクトマネジャーのデイヴィッド・デヴァイン氏、インダストリアルデザインアーのイアン・スッラ氏らだ。
「よりアグレッシブに、より快適に。再エンジニアリングで走りを進化させた」
アンディ・シュミット(デザインエンジニア)
まずはシナプス開発の総括的な指揮をとったアンディ・シュミット氏に話を聞いた。キャノンデールに勤務して8年のシュミット氏はMTBなどオフロード系バイクの開発を得意とし、アルミ時代のシナプスから設計に携わり、SLATEも開発を担当した。サイクリング・スポーツ・グループ傘下にあるGTのグラベル系バイクも彼の作品だ。― ここに来る前に2週間をかけて現行シナプスに乗り込んできました。新型との2台の間には大きな差を感じました。新型シナプスはとてもスムーズでコンフォート性が大きく増しているように感じました。とにかく素晴らしいライドフィールでした。
ありがとう。新型シナプスを楽しんでもらえたようで何よりです。もっとも大きな違いは剛性が高まり快適性が増したことです。2倍快適というわけではありませんが、大きく向上した快適性を感じるはずです。そしてもっとヴァーサタイル(万能)なバイクになりました。太いタイヤをセットできるクリアランスがあり、どんな道へだってためらわずに乗り出せるバイクになっています。
― 前シナプスと比べてフレームの変更点のポイントは何でしょうか。
スタンドオーバーハイトを変更し、シートチューブが長く、シートステイの形状をよりフレックス性(しなり)を持たせるよう変更して振動を吸収するようにしています。シートステイは前のモデルはひねりを加えて曲げるような形状としていましたが、新型は形状に大きな変更を加えています。
― 実は前モデルのフレームは少しリジッドすぎるのでは?と感じていました。新型は格段にしなやかな乗り味になり、快適性という面では大きな変化だと感じます。
硬く感じたのはサイズが小さかったこと(48)と、ディスク仕様ということもあったかもしれませんね。新型は小さなサイズは以前より剛性が低くなり、大きなサイズの剛性は高まっています。サイズが小さいほど構造体としての剛性が高まってしまうのは仕方がないことでしたが、新型シナプスではすべてのサイズを乗り比べても共通した剛性になるようにサイズごとに最適化して設計しています。
― フレーム設計において他に違いはありますか?
カーボンレイアップも変更していますが、それは形状が変化したからです。チューブ形状の違いがもたらす効果は外観上のことだけでなく、乗り心地を大きく左右しています。またシートステイブリッジを除去し、フレームに用いられるアルミパーツも減らしました。それが軽量化につながっています。
そしてフレーム本体は、大きく言って前モデルは6ピース構造からオーバーラップしてボンディング(接合)して組み上げていましたが、新シナプスでは3ピース構造になっています。強度が上がり反応性のいい乗り味に貢献しています。
― 何か新しい素材は使用していますか? あるいは新しい技術は?
カーボン自体はとくに変更していませんし、新しい素材や新テクノロジーもとくに使用していません。バリステックについても採用していますがEVO同様のものです。マーケティング上は面白味が無いかもしれませんが、必要でないことはしません。チューブ形状の見直しなどのリ・エンジニアリングによってSAVEシステムすべてをリファインしました。
― 前モデルのジオメトリーはもっとアップライトだったように感じます。レーシーな走りをするにはやや不満を感じましたが、新型はよりスポーティに走れました。
その通りです。ややアグレッシブとなり、ニュートラルでありながらもレースバイクのように走れます。簡単に言ってリーチが長く、スタックが低くなりました。なかでもスタンドオーバーハイトの変更が大きなファクターとなっています。
― S.E.R.G.(SYNAPSE Endurance Race Geometry)と謳ってきたジオメトリーをあえて変更したのはなぜでしょう。何か理由がありますか?
エンデュランスセグメントの拡大、そしてホットになってきていることですね。グランフォンドしかり、エンデュランスレースというカテゴリーも面白い。ユーザーたちの乗り方も変わってきているように感じています。
― 新シナプスが乗りやすく感じたのは、少し低く・遠いハンドルポジションになったことが大きかったと感じます。自分のケースで言えば、ロードレースとエンデュランスやロングライドはほぼ同じポジションで良いと感じています。ハンドルを少し上げるとしても、ほんの少し、5mmほどでしょうか。
そう、それは非常に良いことだと思います。乗りこなしていれば問題はないし、とくにエンデュランスだからと気に入ったポジションを大きく変える必要はないんです。
― 前シナプスは自分には必要ないと感じましたが、新型シナプスは自分のバイクとして欲しくなりました。明日はさらに1cm〜1.5cm下げてみたい。(このインタビューは初日に行い、筆者はテストライド2日目にハンドル高を変えて試した結果、ロードポジション+5mmぐらいが「シナプスのベスト」と感じて落ち着いた)
私は56サイズに15mm高のトップキャップを使用しています。従来よりアグレッシブとはいえ、依然としてニュートラルなポジションです。5mm高のトップキャップの用意もありますから交換して問題ないし、それでシナプスのコンセプトが狂うことはありません。
― 他社のエンデュランスカテゴリーのバイクのジオメトリーは良く似かよっていて、一層ヘッドチューブが長くハンドルが高いと感じます。ロードレースバイクと比べれば違いがより明らかです。
販売する側が説明しやすいという事情もあるからでしょう。買う側も小さな数値の違いだと差がわかりにくいですから。乗れば分かるこの小さな差が新型シナプスのこだわりです。ところでステアリング系のジオメトリーはどう感じましたか?
― とてもニュートラルでした。ダウンヒルが速く、切り返しなどレスポンスもいい。レースバイクと同じ感覚でした。クセも感じませんでした。
小さな48サイズに乗ってそう感じてもらったのは我々にとっていいニュースです。ハンドリングの問題は小さなフレームサイズの場合に顕著に出てきます。大きなサイズのフレームと同じオフセットのフォークを使うと、キレが悪い、曲がりたい方向に曲がれないなど、ヘッドアングルとのアンマッチが出てきます。48と44サイズには60mmオフセットのフォークを共用しています。”スポーティハンドリング”だったでしょう。今までとは大きな違いです。3種類のオフセットのフォークは、44・48、51・54、56・58でそれぞれシェアしています。
ファーストサンプルは56cmで開発を進めます。それはもっともマーケットシェアの大きなサイズだからです。小さなバイクは構造上過剛性になりがちですが、新型シナプスはフレームのヘッド、トップ、ダウンチューブの口径も小さくしています。それにより硬すぎるといった問題は解消しています。メインチューブに関してはフレームサイズごとに違う太さのものを使用しています。サイズの異なるバイクを乗り比べても、同じライドフィールになるように。
― 快適かつレーシングバイクのような反応性と加速性があり、気に入りました。エンデュランスバイクにありがちなダルな点が見当たらない、ロードレースに出るにも遜色のない走りだと思います。
ありがとう。それは今回の「リ・エンジニアリング」の成果です。そう感じ取ってもらえて嬉しいです。
― ウィル・クラーク(キャノンデール・ドラパック)がパリ〜ルーベで乗ったバイクを現場で見ましたが、フェンダーマウントもありました。製品版と同じレベルのプロトタイプだったのですか?
そうです。今はUCI規定の認証を取る必要もありますから、カラーのみオールグリーンで中身はほとんど製品と同一のプロトタイプです。今年は多くのバイクを用意できなかった。
― ウィルは低くて長い前下がりステムを使ってEVOとまったく同じポジションを再現したと言っています。新型シナプスはプロツアーレベルのレースのことも考えて開発してきましたか?
もちろん! 実は開発チームのボスは過去にプロチームのエンジニア兼メカニックでした。だからパリ〜ルーベのことは知り尽くしていて、パヴェでの使用状況や求められる性能などのノウハウを開発にも活かしてきました。大きなギアを使うなど一般レベルと違うことも求められるけれど、来年こそすべての選手が新型シナプスに乗ってポディウムを目指したいですね!
― グラベルについてはどうでしょう? あなたはSLATE(スレート)の開発担当で、MTBなどオフロード系バイクの開発が得意分野だと伺いました。
そう! いいグラベルトレイルがオフィスのすぐ裏手にあるんだ(と目を輝かす)。いつでも走れる環境がある。新シナプスには太いタイヤへのキャパシティを持たせていて、今私はENVE のSESワイドリムにWTBの30Cタイヤをチューブレスで使用しています。実測なら30Cより少し太いでしょう。空気圧を低めにして乗っています。楽しいですよ。高いロードパフォーマンスを持ったシナプスはホイール選択でグラベルも楽しめるんですから。
インテグレーションを進めたSAVEシステムバー
イアン・スッラ(インダストリアルデザイナー)
新型シナプスの最大の技術的トピックスとも言えるSAVEシステムバー。このハンドルシステムの開発を担当したインダストリアルデザイナーのイアン・スッラ氏に開発の様子を聞いた。― SAVEシステムバーでハンドル周りのインテグレーションが一気に進みました。開発にあたって意図したこと、苦労したことは何ですか?
SAVEシステムを盛り込みながらどのようにインテグレート(統合)して、スリーク(滑らかに)に見せつつ、かつ完全な調整幅をもつようにしたかった。ハンドルは細かく調整できなければストレスとなります。つまり本当に機能的なものにするのに苦心しました。
― このツーピース構造は独創的なアイデアだと感じます。いったいどこから着想を得たのでしょう?
数え切れないトライをして、いろいろな方法を試しました。着想したのはシートピラーのヤグラ部分からです。無段階に角度を調整できて、固定することができる構造を応用しました。3Dプリントによるアルミニウムで試作し、ハンドルシェイプも多くのものを試しました。
ハンドルの上下角で8度の調整幅をもたせることができ、ベースステムとハンドルバーの組み合わせでステム長もリーチもハンドル幅も選べる。形状は60人ものスタッフが試して最適なエルゴ形状を導き出しました。これはすべてキャノンデールの社内で作ったキャノンデールプロダクツです。
― 上下方向のしなりがあって快適なのに、同時に非常に硬いバーですね。
スプリントのときに力が逃げるほどのしなりは持たせていません。レースでも十分使える剛性があります。フレームがサイズごとの最適専用設計になっているように、広いハンドルにおいても狭いハンドルにおいても共通したしなり量をもっています。しなりすぎると不安定になりますから、快適すぎないものです。上下方向にしなるが、他の方向にはしならない形状を追求しました。同じフレックス量であるべきだという考えに基づき、幅(サイズ)によって上部の太さも違います。
バンプに乗り上げてもズレることがありませんが、レコメンドとしてはカーボンペーストを塗って固定力を増すことでしょうか。ピッチ(溝)を切っていないのでハンドルの角度は無段階に調整して固定することができます。
※SAVEシステムバーは生産上の課題が生じたため、来季以降のスペックインとなることが発表された。(2017年8月28日)
― 最後に、日本ではまだエンデュランスカテゴリーがポピュラーではありません。どう思われますか?
イアン:アメリカも同様で、ホットで「これからくる」と言えるでしょう。この世界はまだ「エクストリーム」と言われたり、あるいは「カッティングエッジ(最先端)」と言われるけれど、この先メインストリームになる可能性は十分にあります。日本は伝統的なマーケットでロードバイクが主流だけれど、多くのユーザーにおいてロードレーシングバイクよりシナプスのほうがベネフィット(利点)があるのは確かです。
アンディ: 実際僕はすでにEVOに乗っていないし、乗る必要が少ないんです。シナプスと過ごす時間が長くなるばかりですよ。
提供:キャノンデール・ジャパン Photo&Report : Makoto.AYANO