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ファビアン・カンチェラーラが北のクラシックで駆ったトレックの新型Domane(ドマーネ)が発表された。路面の振動を打ち消してくれるまったく新たな機構を搭載し、進化したドマーネSLR。革新的なエンデュランスバイクがさらに進化を遂げた。

イタリアのパリ〜ルーベの異名をとるストラーデ・ビアンケ シエナの街に先頭で飛び込むファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)イタリアのパリ〜ルーベの異名をとるストラーデ・ビアンケ シエナの街に先頭で飛び込むファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード) (c)TREK
ストラーデ・ビアンケにおいて勝利を飾ったファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)ストラーデ・ビアンケにおいて勝利を飾ったファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード) (c)TREK2012年にデビューした初代ドマーネ。それから4年、トレックの開発陣は新たな機構を搭載した第2世代のドマーネを北のクラシックに投入した。当初からの開発パートナー、「スパルタクス」ことファビアン・カンチェラーラの勝負バイクとして。

プロトタイプとして投入したそのバイクは、初戦のストラーデ・ビアンケにおいて勝利を飾ることになる。カンチェラーラはイタリアのパリ〜ルーベの異名をとるそのレースで、パヴェと石畳の街なかを誰よりも速く駆け抜け、3度めの勝利を挙げた。そのときに駆ったバイクがいつものドマーネと違っていることに気づいた者は少なかった。シートチューブ後部に入ったスリット、わずかに上部の形状が変化したヘッドチューブ。外観上の違いは小さかったからだ。しかし、第2世代のドマーネは大きな変化を遂げていた。

コルトレイクのエキスポに近いホールでドマーネSLRはベールを脱いだコルトレイクのエキスポに近いホールでドマーネSLRはベールを脱いだ photo:Makoto.AYANO
4月4日、ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)の開催翌日にドマーネSLRはベールを脱いだ。そう、4年前と同じベルギーはコルトレイクの風車が見下ろすエキスポルームにおいて。
各国の主要メディア、そしてディーラーが集ったその場でプレゼンテーションが行われた。その顔ぶれの中には現在ルクセンブルグでトレックコンセプトストアを経営するアンディ・シュレックの姿も。

プレゼンを行うドマーネの開発責任者ベン・コーツ氏プレゼンを行うドマーネの開発責任者ベン・コーツ氏 photo:Makoto.AYANOラストロンドを、そして新型ドマーネを語るファビアン・カンチェラーララストロンドを、そして新型ドマーネを語るファビアン・カンチェラーラ photo:Makoto.AYANO


カンチェラーラの過去の軌跡を振り返るトークショーに会場は沸いたカンチェラーラの過去の軌跡を振り返るトークショーに会場は沸いた photo:Makoto.AYANO現在は母国でトレックディーラーを営むアンディ・シュレクも観覧席に現在は母国でトレックディーラーを営むアンディ・シュレクも観覧席に photo:Makoto.AYANO


世界各国からのゲストの前に登場したのは開発責任者ベン・コーツ。そして ”ミスター・ドマーネ” ファビアン・カンチェラーラその人だ。
前日、アタックのタイミングを逃して2位に甘んじたカンチェラーラ。「レースは水もの、そして時の運」と、最後のロンドを逃した悔しさを滲ませながらも、「チームレオパードの頃よりバイクの開発に関っているため、ドマーネはいわば”My Baby”のようなバイク。こうして皆さんの前にお披露目できることが嬉しい」と、拍手喝采を浴びた。

ロンド・ファン・フラーンデレンの翌日の発表会で、ファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)が新型ドマーネSLRを掲げたロンド・ファン・フラーンデレンの翌日の発表会で、ファビアン・カンチェラーラ(トレック・セガフレード)が新型ドマーネSLRを掲げた photo:Makoto.Ayano
ヘッドチューブに搭載されたIsoSpeedヘッドチューブに搭載されたIsoSpeed photo:Makoto.Ayanoリア周りの分割式シートマストチューブが目を引くリア周りの分割式シートマストチューブが目を引く photo:Makoto.Ayano


カンチェラーラはこう続ける。「自分の意見を元に完成したこの新型ドマーネは、まさにスーパーバイクだ。荒れた道をものともせず、滑るように走る」と。

開発リーダーを務めたベン・コーツ氏によると、新しいドマーネSLRの大きな特徴は3つ。フレームからシートチューブを独立させた新構造のIsoSpeedはスライダーによる調整機構を備えてしなり量をコントロール可能としたこと。そしてフロント部にもIsoSpeedを搭載し、フォークコラムをしならせる機構を採用。さらに微振動をカットする新型のIsoCoreハンドルバーを投入したことだ。

会場にはドマーネの完成車ラインナップがディスプレイされた会場にはドマーネの完成車ラインナップがディスプレイされた photo:Makoto.AYANO
プレゼンテーション会場に並べられた新型ドマーネ。鮮やかなプロジェクトワン仕様だプレゼンテーション会場に並べられた新型ドマーネ。鮮やかなプロジェクトワン仕様だ photo:Makoto.Ayanoボルトジョイントを介して接続されたシートマストチューブはフレームから独立しているボルトジョイントを介して接続されたシートマストチューブはフレームから独立している photo:Makoto.AYANO


フロントIsoSpeedにより初代ドマーネで課題となっていたフロントの突き上げを大幅にカットすることに成功。調整機構付きのリアIsoSpeedはライダーの好みで柔軟性を調整することができるようになった。IsoCoreハンドルバーはOCLVカーボンに特殊なエラストマーを重ねて成形され、細振動の吸収を大きく改善。従来のカーボン製のハンドルバーと比べ約20%の振動の軽減に成功しているという。新型ドマーネSLRは、これら3つの新機構により新しく生まれ変わり、フルモデルチェンジと言えるまでの進化を遂げたのだ。

2分割しているように見えるシート部とスライダーにより調節が可能なリアIsoSpeed2分割しているように見えるシート部とスライダーにより調節が可能なリアIsoSpeed photo:Makoto.AYANOシートチューブは分離式から一体型へ。そして後方にリーフ構造のIsoSpeedシートマストが搭載されるシートチューブは分離式から一体型へ。そして後方にリーフ構造のIsoSpeedシートマストが搭載される photo:Makoto.AYANO


ディスクブレーキのオプションとさらに広くなったタイヤクリアランス

Domane SLRはキャリパーブレーキまたはディスクブレーキのモデルを選択でき、両方とも以前よりも広いタイヤクリアランスとなっている。
キャリパーブレーキ仕様は28C、Disc仕様では32Cのタイヤが標準装備される。キャリパー仕様のDomane SLRにはダイレクトマウント方式ブレーキが備えられ、ディスクブレーキモデルには12mmのスルーアクスルを搭載する。また、両モデルはエンド部に外観上目立ちにくいフェンダー(泥除け)マウントも備えている。

ロンド・ファン・フラーンデレンに続き、パリ〜ルーベではトレック・セガフレードのメインバイクとしてドマーネSLRはパヴェを駆け抜けた。ドマーネSLRはロードに、グラベルに、あるいはロングライドに、フィールドを選ばず、真のエンデュランスバイクとして無限の可能性を感じさせてくれるプロフィールになっている。日本での完成車ラインナップは以下のとおり。もちろんカラーオーダーの「プロジェクトワン」にも対応する。



Domane SLR 日本国内でのラインナップ(完成車)

DOMANE SLR 7

ドマーネSLR 7ドマーネSLR 7 (c)トレック・ジャパン
フレームOCLV 600 Series
メインコンポShimano Ultegra Di2
ホイールParadigm Comp Tubeless Ready
価格680,000円(税込)

DOMANE SLR 6

ドマーネSLR 6ドマーネSLR 6 (c)トレック・ジャパン
フレームOCLV 600 Series
メインコンポShimano Ultegra 6800
ホイールParadigm Comp Tubeless Ready
価格590,000円(税込)

DOMANE SLR 6 DISC

ドマーネSLR 6 DISCドマーネSLR 6 DISC (c)トレック・ジャパン
フレームOCLV 600 Series
メインコンポShimano Ultegra 6800
ホイールParadigm Comp Tubeless Ready Disc
価格640,000円(税込)



※2016年4月現在のラインナップ。欧米には話題の無線コンポ、スラムe-tap仕様完成車もあるが、日本では電波法の認可待ち状態だ。この後に普及グレードなども順次リリースされるはずだ(現段階では未発表)。



次項では革新的変化を遂げたそのテクノロジーの詳細に迫っていく。
提供:トレック・ジャパン photo&report:綾野 真(Makoto.AYANO)