2016/05/09(月) - 09:01
昨年のユーロバイクにて発表されたローターの油圧制御コンポーネント「UNO」。今夏に予定される販売開始を前に、スペイン・マドリードにて開催されたメディア向け発表会より、UNOの詳細なディテールやインプレッションの模様を紹介していく。
企業として産声をあげたのは1996年のことで、2002年にはスパイダーにスプリングを組み込むことでクランク長を可変させ、ペダリング効率を高める「RCK」クランクを発表。そして、2005年に同社を代表するプロダクトである楕円チェーンリング「Q-RINGS」が誕生する。
スポンサー契約を破ってまでも同製品を愛用するカルロス・サストレ(スペイン)やマリアンヌ・フォス(オランダ)の活躍により、ローターは飛躍的な成長を遂げることに。国内でも発売当時はキワモノという認識であったが、楕円が持つ確かな効果により、今日ではホビーサイクリストから市民権を得ている。
その後、'00年代の終盤からはプロとの共同開発を強化し、「Agilis」や「3D」シリーズといった高性能アルミクランクをラインアップに加える。2013年からクランク式パワーメーターを展開し、これまでに14,000セットのセールスを記録している。
こうして常識にとらわれない独創的な製品で、飛躍的な成長を成し遂げてきたローターだが、開発から生産までを一貫してスペイン・マドリードで行っている点は創業当時から変わらず。そんな生粋のスパニッシュブランドの次なる一手がロード用フルコンポーネントである。
今回、UNOのメディア向け発表会の会場となったのは、スペインの首都マドリードの北東部に位置する山岳地帯。マドリード=バラハス空港からは車で1時間半ほど。情熱の国とはいっても、4月の山々には白い雪が残っており、荒涼とした道中の風景とは大きく異なる。
この発表会には、欧米系のメディアを中心とした著名なスポーツサイクル系メディアのジャーナリスト15名ほどが参加。プレゼンテーションの冒頭に紹介されたのが「HY STEP」という製品コンセプトだ。これは「HYdraulic Smart」「Technology applied」「EU product」 「Precision」という4つキーワードの頭文字を取ったものである。順不同にはなるが、それぞれのキーワードが意味するものを解説していく。
同様に、極めてローメンテナンスなことも油圧がもたらす大きなメリットの1つである。当然ながらUNOの場合には、ワイヤーの伸びやすり減り、電動変速におけるバッテリーの消耗はない。使用するオイル自体の劣化も極めて少ないため、UNOは数十年単位でメンテナンスする必要がないという(ディスクブレーキのオイルラインは除く)。
マグラは油圧に関するノウハウをローターに提供し、ブレーキシステムの組み立て・検品も担当。また、UNOのブレーキは、世界トップクラスのレースシーンで勝利に貢献してきたマグラの「RT8(リムブレーキ用)」と「MT8(ディスクブレーキ用)」をモデファイしたものとしている。
加えて、オイル自体も体積変化しにくいものとされており、常に正確なシフト動作が可能なのだ。マグラ製ブレーキについては言わずもがなという所で、正確かつスムーズなブレーキングを提供してくれる。
最後に、「HY STEP」の中には入っていないものの、優れた軽量性もUNOの大きな特徴である。ローターが得意とするアルミ/スチールの切削パーツに加え、ブレーキレバーやプーリーケージにはカーボンを採用し、徹底的にシェイプアップ。ディスクブレーキ仕様で1,604gをマークしている。競合製品と比較すると、シマノDURA-ACE Di2に対しては-417g、スラムRed22に対しては-10g、スラムRed eTap+ワイヤー引きキャリパーに対しては-99gだ。(重量はいずれもクランク無し)
マグラの協力や新技術の投入と共に、「UNO」の誕生に大きく貢献したのが、2015年11月より開始されたプロサイクリングチームによる実戦テストだ。今シーズンより、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)らを擁するディメンションデータがいくつかのレースで試験的に導入する他、女子トップチームのビグラは全ライダーが全レースで使用。これまでのプロダクトと同様に、プロへの供給を通して得ることのできたフィードバックにより「UNO」はブラッシュアップされ、製品化へとこぎつけた。
Vol.2ではUNOを構成する各パーツのディテールに迫ります。
独創的なプロダクトと共に飛躍的な成長を遂げるローター
ブレーキに加えてシフトも油圧で制御するという、ローターらしい独創性があふれる「UNO」。その詳細に触れる前に、急速な成長を続けるスパニッシュブランドの変遷について振り返っておく。ローターは1990年台中頃にマドリード大学航空工学科の学生たちが「人間による円運動と自転車のペダリング」をテーマに研究を始めたことに端を発する。専用フレームに複雑な歯車機構を組み込んだ独自のバイクで、ペダリング効率の向上に成功し、業界から注目を集めることになる。企業として産声をあげたのは1996年のことで、2002年にはスパイダーにスプリングを組み込むことでクランク長を可変させ、ペダリング効率を高める「RCK」クランクを発表。そして、2005年に同社を代表するプロダクトである楕円チェーンリング「Q-RINGS」が誕生する。
スポンサー契約を破ってまでも同製品を愛用するカルロス・サストレ(スペイン)やマリアンヌ・フォス(オランダ)の活躍により、ローターは飛躍的な成長を遂げることに。国内でも発売当時はキワモノという認識であったが、楕円が持つ確かな効果により、今日ではホビーサイクリストから市民権を得ている。
その後、'00年代の終盤からはプロとの共同開発を強化し、「Agilis」や「3D」シリーズといった高性能アルミクランクをラインアップに加える。2013年からクランク式パワーメーターを展開し、これまでに14,000セットのセールスを記録している。
こうして常識にとらわれない独創的な製品で、飛躍的な成長を成し遂げてきたローターだが、開発から生産までを一貫してスペイン・マドリードで行っている点は創業当時から変わらず。そんな生粋のスパニッシュブランドの次なる一手がロード用フルコンポーネントである。
ブエルタにも登場する山岳地帯で開催されたプレゼンテーション
今回、UNOのメディア向け発表会の会場となったのは、スペインの首都マドリードの北東部に位置する山岳地帯。マドリード=バラハス空港からは車で1時間半ほど。情熱の国とはいっても、4月の山々には白い雪が残っており、荒涼とした道中の風景とは大きく異なる。
この発表会には、欧米系のメディアを中心とした著名なスポーツサイクル系メディアのジャーナリスト15名ほどが参加。プレゼンテーションの冒頭に紹介されたのが「HY STEP」という製品コンセプトだ。これは「HYdraulic Smart」「Technology applied」「EU product」 「Precision」という4つキーワードの頭文字を取ったものである。順不同にはなるが、それぞれのキーワードが意味するものを解説していく。
HYdroric Smart=油圧がもたらすメリット
UNOが採用する油圧制御は、金属ケーブルや電気による制御に対して多くのメリットを持つ。その中でも最も大きなものが、ワイヤリングによって操作に必要な力が変わらないこと。複雑なルーティングをとるエアロフレームでも、UNOの設計が意図する通りのレバーの引きを実現することができる。同様に、極めてローメンテナンスなことも油圧がもたらす大きなメリットの1つである。当然ながらUNOの場合には、ワイヤーの伸びやすり減り、電動変速におけるバッテリーの消耗はない。使用するオイル自体の劣化も極めて少ないため、UNOは数十年単位でメンテナンスする必要がないという(ディスクブレーキのオイルラインは除く)。
EU product=ヨーロッパで設計/製造
これまでローターは、設計から製造までの全ての工程をマドリードの本社にて完結させてきたが、UNOについては「EU product」と表現を用いている。これは、MTB用ディスクブレーキのトップブランドであるドイツのマグラをUNOの開発パートナーに迎えたからだ。マグラは油圧に関するノウハウをローターに提供し、ブレーキシステムの組み立て・検品も担当。また、UNOのブレーキは、世界トップクラスのレースシーンで勝利に貢献してきたマグラの「RT8(リムブレーキ用)」と「MT8(ディスクブレーキ用)」をモデファイしたものとしている。
Precision=正確さ、Technology applied=高度なテクノロジー
UNOの機能的な 特徴の1つに「正確さ」がある。ドライブトレインにおいて、これを実現するのが既存のコンポーネントとは大きく異なる構造だ。UNOでは、通常はレバーのブラケット内に収められているインデックス(位置決め機構)を前後ともにディレーラー側に配置。これにより、オイルの体積変化(=ワイヤーの伸び)の影響を受けることなく、ディレーラーは常に正確な位置を保つことができる。加えて、オイル自体も体積変化しにくいものとされており、常に正確なシフト動作が可能なのだ。マグラ製ブレーキについては言わずもがなという所で、正確かつスムーズなブレーキングを提供してくれる。
最後に、「HY STEP」の中には入っていないものの、優れた軽量性もUNOの大きな特徴である。ローターが得意とするアルミ/スチールの切削パーツに加え、ブレーキレバーやプーリーケージにはカーボンを採用し、徹底的にシェイプアップ。ディスクブレーキ仕様で1,604gをマークしている。競合製品と比較すると、シマノDURA-ACE Di2に対しては-417g、スラムRed22に対しては-10g、スラムRed eTap+ワイヤー引きキャリパーに対しては-99gだ。(重量はいずれもクランク無し)
プロとの共同開発によって磨き上げられた「UNO」の性能
マグラの協力や新技術の投入と共に、「UNO」の誕生に大きく貢献したのが、2015年11月より開始されたプロサイクリングチームによる実戦テストだ。今シーズンより、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)らを擁するディメンションデータがいくつかのレースで試験的に導入する他、女子トップチームのビグラは全ライダーが全レースで使用。これまでのプロダクトと同様に、プロへの供給を通して得ることのできたフィードバックにより「UNO」はブラッシュアップされ、製品化へとこぎつけた。
Vol.2ではUNOを構成する各パーツのディテールに迫ります。
編集:シクロワイアード 提供:ダイアテック