ピレネー山脈にほど近いスペイン北東部のパンプローナ郊外にて開催されたキャニオンの2016モデルのプレスキャンプにおいて、「ULTIMATE(アルティメット) CF SLX」のモデルチェンジが発表された。持ち前の重量比剛性にエアロをプラスした新モデルの詳細を紐解いていこう。

ドイツ生まれのピュアレーシングブランド「キャニオン」。そのフラッグシップに位置付けられるのが軽量オールラウンドモデル「ULTIMATE」とエアロロード「AEROAD」。ULTIMATEは2014年のジロ・デ・イタリアでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)と共に総合優勝を遂げ、AEROADは今年の春のクラシックで、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)と共に勝利を量産。今年のツール・ド・フランスでもキャニオンバイクの活躍に大きな期待が集まる。

スペイン・パンプローナにて開催されたプレスローンチ

モビスターの選手たちも出席(最前列)したプレゼンテーションモビスターの選手たちも出席(最前列)したプレゼンテーション
選手たちも新型モデルに興味津々選手たちも新型モデルに興味津々 プレゼンテーションに聞き入るモビスターの選手たちプレゼンテーションに聞き入るモビスターの選手たち


そんなキャニオンの「ULTIMATE CF SLX」が新しく生まれ変わった。2005年に初代が登場してから、今回が3度目のモデルチェンジとなる。その発表は6月中旬のこと。モビスターチームが本拠地を置くスペイン北東部のパンプローナにて、世界各国のジャーナリスト、さらにスペシャルゲストでキンタナをはじめとするモビスターの選手たちを集めてプレスキャンプが行なわれた。

重量比剛性を損なうことなくエアロダイナミクス性能を向上

キャニオン NEW ULTIMATE CF SLXキャニオン NEW ULTIMATE CF SLX photo:Kenji.Hashimoto
3年ぶりにフルモデルチェンジを果たした「ULTIMATE CF SLX」。歴代のULTIMATEはUCIプロツアーチームへ供給され、2009年のカデル・エヴァンスによる世界選手権制覇など多くのビッグレースで勝利に貢献してきたことは知っての通り。デビュー当初より、軽量性と剛性を高次元で両立したモデルとして注目を集めてきた。

そして、重量比剛性(STW)に加えて快適性を高めた第3世代は、ナイロ・キンタナが駆り、ジロ・デ・イタリアを制覇。今回の第4世代は、これまで通りの高い重量比剛性と快適性に加えて、エアロダイナミクス性能を向上させている。


横幅を細身に改良して背面は切り落とした横幅を細身に改良して背面は切り落とした ダウンチューブ前面は緩やかなカーブを描くダウンチューブ前面は緩やかなカーブを描く Dシェイプを採用したエアロフォークレッグDシェイプを採用したエアロフォークレッグ


キャニオンが理想とする重量剛性比を実現した第3世代に、高い空力性能を付加するため、第4世代ではフレーム設計が大きく刷新されている。そのキーフィーチャーとなるのが風洞実験によって誕生した「Dシェイプチューブ」。第3世代のチューブ形状より横幅を狭め、前面を緩やかな曲線とした一方で背面を切り落とした様な新形状となっている。これによりフレームセットで前作比8%(マイナス7.4Wセーブ)の空気抵抗の低減を果たした。

通常エアロダイナミクスを高めると重量は増加する傾向にあるが、新型ULTIMATEはフレーム単体で前作の790gから780gへと軽量化も実現。さらに、新型は細部のパーツ一つひとつにまで徹底して改良が施され、その完成度をより一層高い次元へと押し上げている。

徹底して空力性能にこだわるトップキャップにより固定する徹底して空力性能にこだわるトップキャップにより固定する
ハンドルとステムに合わせ、コラムスペーサーもDシェイプチューブ形状とされているハンドルとステムに合わせ、コラムスペーサーもDシェイプチューブ形状とされている
前面投影面積を最小化するアワーグラスヘッドチューブ前面投影面積を最小化するアワーグラスヘッドチューブ


なお、Dシェイプチューブテクノロジーは、ダウンチューブだけでなく、ヘッドチューブ、フロントフォーク、シートチューブ、シートステー、コラムスペーサーへと適用。そして、新チューブ形状の採用に以外にも、様々な空気抵抗削減テクノロジーが搭載されている。

フレームのエアロダイナミクス向上と合わせて、AEROADにも用いられる「エアロコクピット」テクノロジーを採用。ステム一体型のエアロハンドルは、フレームが備える優れた空力性能との組み合わせにより、前作よりも14%ものパワーセーブを実現。なお、新型エアロコクピットは現行のAEROADモデルとは異なる新型が装着される予定だ(写真は現行AEROADのハンドル)。

シート集合部のスタイルは前作を引き継ぐシート集合部のスタイルは前作を引き継ぐ しなり量は垂直方向に15%、水平方向に37%増加しなり量は垂直方向に15%、水平方向に37%増加 シートステー中央のボトルにより固定するシートステー中央のボトルにより固定する


エアロダイナミクスの向上だけに注目されがちな第4世代だが、インレグレーテッドシートクランプも注目したいところ。これは外付けシートクランプの替りに、シートチューブ下方で固定する新機構のことで、シートポストを大きく変形させることを可能とし、快適性を飛躍的に向上させている。

ボトムブラケットには、前作同様にアダプターをBBに圧入するプレスフィットタイプを採用し、パワー伝達と軽量化に貢献した。また、第4世代ではワイヤーのフリクション軽減のためにケーブルストッパーを見直しや、ディレイラーハンガーの剛性を強化するなど、細部パーツにまで手が加えられている。

BBはパワー伝達性とパーツの簡素化に貢献するプレスフィットタイプを採用BBはパワー伝達性とパーツの簡素化に貢献するプレスフィットタイプを採用
スムーズなワイヤーラインを実現する新設計のケーブルストッパーにより、フリクションフリーを実現スムーズなワイヤーラインを実現する新設計のケーブルストッパーにより、フリクションフリーを実現
再設計されたハンガーは、従来よりも剛性が25%もアップ。同時に軽量化を果たし11.5gとなった再設計されたハンガーは、従来よりも剛性が25%もアップ。同時に軽量化を果たし11.5gとなった


サプライズ発表された超軽量ULTIMATE CF EVO

サプライズ発表された 超軽量ULTIMATE CF EVOサプライズ発表された 超軽量ULTIMATE CF EVO
最上位グレードにおかれるULTIMATE CF EVOもお披露目された最上位グレードにおかれるULTIMATE CF EVOもお披露目された THM製のカーボンクランクとキャリパーブレーキでアッセンブルTHM製のカーボンクランクとキャリパーブレーキでアッセンブル


第4世代ULTIMATE CF SLXのプレゼンテーションの直後、フレーム単体665gのULTIMATE CF EVOのサプライズ発表が行なわれた。フレーム形状は共通とした一方、カーボン繊維と積層を変更し、フレーム一体型のカーボン製フロントディレイラー台座を採用することで、ノーマルタイプより115g減の665gを実現。フロントフォークも275gのEVO専用モデルとされ、軽量パーツをちりばめた完成車重量はなんと4.85kgをマークしている。

第4世代新型ULTIMATE CF SLX スペック

キャニオン 第4世代アルティメットCF SLXキャニオン 第4世代アルティメットCF SLX

キャニオン 第4世代新型ULTIMATE CF SLX

フレーム重量780g
フォーク重量295g
フレームセット重量1130g
カラーステルスアスファルトグレー、ジェットシルバーグレー
サイズ2XS、XS、S、M、L、XL、2XL
発売時期8月末のユーロバイク期間中から受注開始(11月以降に発送開始予定)
価格現行と同水準になる予定
※参考:現行のULTIMATE CF SLX 9.0 完成車モデルは477,999円

第4世代新型ULTIMATE CF EVO

フレーム重量665g
フォーク重量275g
発売時期、価格未定
提供:キャニオン・ジャパン photo/text:Kenji.Hashimoto 制作:シクロワイアード編集部