「史上最軽量のロードバイクを作ること」から始まったエモンダ

トレックが誇る三種の武器 ドマーネ、エモンダ、マドントレックが誇る三種の武器 ドマーネ、エモンダ、マドン photo:Kei Tsuji
トレックはロードのラインナップの中に「軽量」「エアロ」「エンデュランス」という3つの柱を打ち立てた。つまりそれぞれ「エモンダ」「マドン」「ドマーネ」が該当する。用途に合わせた三種のフラッグシップが揃った。

やはりここでは「史上最軽量のロードバイクを作ること」を至上命題として開発がスタートし、それを実現させたエモンダにスポットライトを当てたい。「トレック最軽量ロードラインナップ」は如何にして生み出されたのだろうか。

トレックの3つのフラッグシップロードバイク
EMONDA最軽量ロードLIGHT
MADONEエアロロードAERO
DOMANEエンデュランスロードSMOOTH

トレック本社で完成形に近いエモンダに触れる別府史之(トレックファクトリーレーシング)トレック本社で完成形に近いエモンダに触れる別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:TREK
2012年に開発がスタートし、プロライダーの意見を取り入れながら製品開発が行なわれたエモンダ。机上の解析を経て何百本というテストフレームが生み出され、レディオシャックや現トレックファクトリーレーシングの選手たちが徹底的にテストした。

一見「マドンとリアブレーキ位置が異なるだけ」と思われるかも知れないが、その中身は全くの別物だ。トレック曰くエモンダは「これまでで最も精巧に作られたチューブ形状」を有している。それはカーボン素材を最大限活かすための形状だ。

Emondaはフランス語で「剥ぎ取る」「削ぎ落とす」を意味するEmonderが語源となっており、その名の通り不要なものを削ぎ落とし、必要なものだけを残した。その結果、世界最軽量の市販バイクが完成した。

完成車で4.65kgという驚異の軽さを実現したエモンダSLR10完成車で4.65kgという驚異の軽さを実現したエモンダSLR10 photo:Kei TsujiエモンダSLR10が乗せられた計りの目盛りは4.65kgを指すエモンダSLR10が乗せられた計りの目盛りは4.65kgを指す photo:Kei Tsuji

最高グレードのSLRはフレーム690g、フォーク280gという軽量性を誇る。フラッグシップモデルのエモンダSLR 10は「10ポンド」というネーミングが示す通り、わずか4.65kg。実用的なアイオロスホイールを装着しても5kgを少し上回る程度だ。

他ブランドの軽量バイクとは一線を画すのは、製造上の問題に対して補償を行なう「ライフタイム・ワランティ(生涯補償)」を採用していることだろう。そこにトレックの自信を感じずにはいられない。その軽量性だけに注目が集まりがちだが、サイズ毎にコントロールされたライドクオリティやトータルバランスも忘れてはいけないポイントだ。

トレックの真打ちエモンダが登場トレックの真打ちエモンダが登場 photo:Kei Tsuji怪しく浮かび上がるSLRの文字怪しく浮かび上がるSLRの文字 photo:Kei Tsuji

エモンダSLR9エモンダSLR9 photo:Kei Tsuji

エモンダを駆る別府史之「ペガサスに乗っているよう」

別府史之(トレックファクトリーレーシング)別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
ヨーロッパからトレーニングバイクを持ち込んだ別府史之(トレックファクトリーレーシング)ヨーロッパからトレーニングバイクを持ち込んだ別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji「普段プロ選手は自分が乗っているバイクがどうやって開発されたのかなんて知る由もないのですが、実際に本社に行ってエンジニアたちと言葉を交わすことで、時間と労力の積み重ねで完成されたバイクだと知った。本当に感動した」と語るのは、今年4月にアメリカ・ウィスコンシン州のトレック本社を訪れ、発表前のエモンダをテストした別府史之だ。

エモンダで全日本選手権を走る別府史之(トレック・ファクトリーレーシング)エモンダで全日本選手権を走る別府史之(トレック・ファクトリーレーシング) photo:Makoto Ayano別府はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでエモンダを実戦に投入。正式な発表を前にエモンダで全日本選手権ロードを走った。SRMパワーメーターとアルミハンドル、アイオロス5ホイールを装着することでUCIの規定重量6.8kgを辛うじて上回っている。逆に、軽量なアイオロス3ホイールを使用する場合は重りをフレームに挿入する必要が出てくると言う。

「マドンも充分に完成されたバイク。ダンシングでパワーを込めた時に一気に加速するキレがある。『バイクが自分で前に進む』ような、すごく凶暴で攻撃的なイメージです」。シーズン中盤までマドンを乗り続けたフミはそうコメントする。「でもマドン特有のリズムがあって、そのキレを持続するためにはスキルが必要。かなりのパワーで踏み続けないといけない」

現在の相棒であるエモンダに関しては「ペガサスに乗っているよう」と評する。「マドンから乗り換えた時に感じたのは、踏んだ分だけ進むという感覚です。自分のリズムで長い時間ダンシングを続け、淡々とペースで走ることが出来る。特筆すべきは登りの性能だけじゃなくて、総合力がとても高い。コーナリングもエレガントで安定している。ヒルクライムが人気の日本では、登りはもちろんのこと、安心して下りを走ることが出来るのでお勧めしたいですね」。
提供:トレック・ジャパン photo/text:Kei Tsuji 制作:シクロワイアード