エヴァディオの処女作となったカーボンフレームのヴィーナスは、性能自体の高さもさることながら、抜群のプライスパフォーマンスによって一躍注目される存在となった。そして、その優れた基本性能をベースにしながら進化を遂げた現在のフラッグシップが「ヴィーナス01」である。

エヴァディオ ヴィーナス01エヴァディオ ヴィーナス01
トップレベルのレーサーを満足させる性能を追求して開発されたヴィーナスシリーズだが、その大きな特徴は、ペダリングロスを低減するための高いフレーム剛性だ。その実現の大きなポイントとなるのがエヴァディオ独自のフレーム構造「RPS」(リブパワーシステム)。内部にリブを配置する特徴的なチューブ形状によって、とくに大きなトルクをかけた際のたわみを抑制してフレーム剛性を高める効果を発揮する。

ヴィーナス01ではこの特徴的なチュービングに加えて、フレームのフロントまわりの剛性が高められている。ヘッドパーツ下側のベアリングをスーパーオーバーサイズに拡張したテーパードヘッドチューブを採用。合わせてフロントフォークはクラウン部を大きくボリュームアップさせたタイプとなり、ヘッドからフォークまでの剛性アップによって、ハンドリング性能が高めらた。

ボリューム感あふれるヘッド部。シフトワイヤはトップチューブの上側から内蔵されるボリューム感あふれるヘッド部。シフトワイヤはトップチューブの上側から内蔵される ヘッドチューブ下側のサイズアップによって高剛性のフロントセクションが作られるヘッドチューブ下側のサイズアップによって高剛性のフロントセクションが作られる オーソドックスなセパレートタイプのシートポストを装備オーソドックスなセパレートタイプのシートポストを装備

そしてヘッドチューブ下部のボリュームアップはダウンチューブとの接合面積を大きくし、これがパワーラインの剛性アップとなり、フレームトータルの剛性レベルの向上によって、これまで以上に攻撃的な走りが追求されている。

フレーム細部の作りに目を向けると、シフト、フレーキともに内蔵式とすることでワイヤを泥やほこりなどから守り、スムーズなシフトやブレーキングの持続がしやすくなっている。また、エアロダイナミクスにおいても効果があり、フレームのシルエットもスマートな印象だ。

システム1で選べるファイアバードパターンによる美しいカラーリングも大きな魅力だシステム1で選べるファイアバードパターンによる美しいカラーリングも大きな魅力だ
モノタイプのシートステー。横方向の扁平加工により十分なねじれ剛性と快適性を両立モノタイプのシートステー。横方向の扁平加工により十分なねじれ剛性と快適性を両立
オーソドックスな丸断面に成型されたダウンチューブ。十分な断面積で高い剛性を生むオーソドックスな丸断面に成型されたダウンチューブ。十分な断面積で高い剛性を生む

ヴィーナス01はテーパードヘッドや内蔵式ワイヤといった最新設計を取り入れつつも、ユーザーの使い勝手に配慮したオーソドックスな構造も展開される。その一つがハンガーシェルであり、オーソドックスなスレッドタイプが採用される。プレスフィット規格などのオーバーサイズBBは、製品の精度や相性によってペダリングで音鳴りが発生する場合もあり、こうしたトラブルが少ないスレッド式は堅実な構造といえるだろう。

スレッド規格ながら圧倒的なハンガー部のボリュームによってペダリングロスを低減するスレッド規格ながら圧倒的なハンガー部のボリュームによってペダリングロスを低減する シフトワイヤはダウンチューブ内を通り、ハンガーシェル下で外へと出されるシフトワイヤはダウンチューブ内を通り、ハンガーシェル下で外へと出される

シート部についてはインテグラル構造ではなく、オーソドックスな丸型断面を持つエヴァディオオリジナルのシートポストが装備される。このタイプはサドル高さの微調整が容易であり、アップグレード用の交換パーツも入手しやすいため、特にポジションにシビアなレーサーには使い勝手に優れる仕様だ。

こうしてレース機材として死角のない内容に仕上げられているヴィーナス01だが、その所有欲をさらに引き上げてくれるのが美しいカラーリング。カラーオーダーシステムの「システムワン」は、1万5000通り以上という幅広いペイントバリエーションが用意されている。

リブパワーシステム採用のフロントフォークが優れたステアリング性能の一端をになうリブパワーシステム採用のフロントフォークが優れたステアリング性能の一端をになう
チェーンステーはリヤエンドに対して直線的に結ばれる。剛性を重視した設計といえるチェーンステーはリヤエンドに対して直線的に結ばれる。剛性を重視した設計といえる
ヘッドチューブの幅いっぱいに成型されたトップチューブ。ねじれ剛性と快適性を両立するヘッドチューブの幅いっぱいに成型されたトップチューブ。ねじれ剛性と快適性を両立する


フレームのペイントは、性能と同じぐらいバイク選びのポイントとなるだけに、豊富なバリエーションから自分好みの1台を作り出すことができるのは、この上ない魅力といえるだろう。早速エヴァディオこだわりのカーボンモデル、ヴィーナス01の走りを検証してみよう。

インプレッション

「高い運動性能がレースライドで強い味方になってくれる」(吉本 司)

ヴィーナスシリーズというと高剛性をうたう開発コンセプトだけあって、その評判も同様の意見が聞かれる。個人的には剛性が高いよりも、ほどほどのレベルに抑えられているフレームのほうが好みなので、ヴィーナス01の試乗前はその印象がどうなるか心配だった。しかし、実際に走らせてみるとそのフィーリングに好感を持つことができた。

メーカーの設計意図通り、とてもしっかりとした剛性を持っていおり、フレームの一体感が強い。したがって出足はとても軽やかだ。トルクをかけるとスッとバイクが前に出てくれる。そこからさらにスピードを上げてもスムーズに進んでくれる印象がある。

剛性は高いが、各部のバランスがいいので固さは気になることはない剛性は高いが、各部のバランスがいいので固さは気になることはない
剛性が高いフレームの場合、初速は軽やかでも大きなトルクをかけると脚が上がりやすく、加速の頭打ちを早く迎えてしまうこともある。試乗前はそうした部分も覚悟していたのだが、ネガティブなフィーリングは感じられない。踏めば踏むほど速度はリニアに上がっていく印象だ。おそらくフレーム全体の剛性は高くとも、各部の剛性バランスがしっかりと調和しているためだろう。

確かにヴィーナス01の加速性能をさらに引き出すには脚力がある方がいいが、一般のレベルのライダーでもレース志向であれば、この加速の良さはあらゆる場面でアドバンテージとなる。

エヴァディオ ヴィーナス01エヴァディオ ヴィーナス01 マヴィック・コスミックカーボン80を装備していることを差し引いても、平地や緩斜面での巡航性能はレーシングバイクとして高いレベルにある。大きなトルクでペダルを踏み続けてもすぐに脚にきてしまうような感覚はなく、スピード維持もしやすい。

そして、ダンシングやレーンチェンジなど横の動きにも軽快な反応を示し、とくに上りは1枚ぐらい軽めのギヤを選んで回転重視で走るとシャキシャキとバイクが進んでくれる。

乗り心地に安楽な印象はないが、それでもレーシングレベルの走りで不快となる振動は十分にカットしてくれるので、レーシングバイクとしての快適性は標準的なレベルにある。

ジオメトリーも素直で走らせやすいのもヴィーナス01の魅力の一つだ。ホイールは低重心を演出しやすいタイプというのもあるが、乗車感覚に腰高な印象はなく、適正な重心で乗れている感覚が強い。したがって安定感に優れており、下りもオンザレールの感覚を得ながら安心感を持って走らせることができる。

特に下りは平地や上り以上にバイクの性能で差の生じやすいパートであり、高性能なバイクはライダーに精神的なゆとりを与え、必要以上の危険を冒すことなくスピードを追求することが可能だ。

加速性能はもとより、レベルの高いレーシングライドに必要な性能をしっかりと詰め込んだヴィーナス01は、レースに本格的に挑戦するライダーにおすすめしたい1台だ。
編集:シクロワイアード 提供:エヴァディオ