前編に続き、いよいよイベント当日を迎えたオマーンセンチュリーライド。雄大な景観にため息をつき、オマーンの人々の温かさと優しさに触れながら走ったライドイベントは、オマーンの魅力を日本からの参加者へと十二分に教えてくれた。

マトラ港を見渡す場所にスタート/ゴール地点が設けられたマトラ港を見渡す場所にスタート/ゴール地点が設けられた 当日受付をするオマーン現地在住のサイクリストたち当日受付をするオマーン現地在住のサイクリストたち


迎えたオマーンセンチュリーライド当日は素晴らしい天候に恵まれた。とは言ってもオマーンは降雨日が年間にわずか2.3日とめったに無いため、晴天はあらかじめ確約されていたようなもの。ホテルで見たアラビア語の天気予報によると、11月下旬にも関わらず最高気温は33度まで上がるという。しかし夏場は50度まで上がるというから30度なんて全く涼しいらしいが...(汗)。

大会ゲストの長塚智広選手(左)と、新田祐大(右)選手大会ゲストの長塚智広選手(左)と、新田祐大(右)選手 オマーン在住のヨーロッパ人サイクリストたち。同じクラブに所属しているそうオマーン在住のヨーロッパ人サイクリストたち。同じクラブに所属しているそう


まだ薄暗い時間(日の出は日本よりやや遅い)にホテルを出発し、日本人参加者を載せたバスは、首都マスカットから20kmほど離れたスタート/ゴール地点が置かれた港町・マトラを目指して走っていく。

久枝譲治在オマーン大使とオマーンスポーツ大臣の祝辞とテープカット久枝譲治在オマーン大使とオマーンスポーツ大臣の祝辞とテープカット 日本とオマーンの国旗が入れられた大会ジャージを着てスタート地点へと向かうその30時間前はまだ日本にいたのだから、時差ぼけと合わせてまだ、オマーンという中東の国にいるという現実感が無い。会場に向かうに連れて顔を出したオレンジ色の朝陽が砂塵っぽい朝の空気を照らし、もやがかかっているように見えた。絶対に日本では見ることのできない光景だ。

スタート/ゴールの会場となったのは、世界のトップ選手が集うツアー・オブ・オマーンの総合表彰式が行われるのと同じ場所。マトラ湾に面した会場からはスルタン(国王)が所有する豪華客船やクルーザー、または伝統的な木製の船も見える。バスで到着した日本人参加者に加えて、当日受付を行うオマーン人サイクリストや、現地在住のヨーロッパ人などがおよそ100名ほど集まった。

マトラのモスクを背後にスタートを切っていくマトラのモスクを背後にスタートを切っていく (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会

現地参加者は欧米人の割合が高かったが、話を聞けばツアー・オブ・オマーンの開催でスポーツサイクリングの認知度が高まり、趣味として始める人も増えてきたそうだ。日本側で主催した大会の第1回目とあって現地での十分な事前告知ができなかったそうだが、ほぼクチコミで100名も集まったところを見ると、オマーンでサイクリングブームが熱を帯び始めてきているという事も納得できる。

日本とオマーンの国交40周年記念大会とあって、開会式はゲストである長塚智広・新田祐大両選手の紹介に続き、久枝譲治在オマーン大使とオマーンスポーツ大臣の祝辞とテープカットによってスタートした。オレンジ色にまぶしく輝く朝陽をいっぱいに受けながら、およそ130名の参加者は花に彩られた美しいマトラの街へと飛び出していく。

交通封鎖された大通りを駆け抜けていくメイン集団。平地では40km/hほどで進んだ交通封鎖された大通りを駆け抜けていくメイン集団。平地では40km/hほどで進んだ (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会朝陽を受けながら旧市街へと向かっていく朝陽を受けながら旧市街へと向かっていく (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会


プロトンの先頭を牽く新田選手と長塚選手。身体が一際大きい!プロトンの先頭を牽く新田選手と長塚選手。身体が一際大きい! オマーン人サイクリストも多く参加していた。国内のサイクリングブームも高まっているというオマーン人サイクリストも多く参加していた。国内のサイクリングブームも高まっているという


オマーンセンチュリーライドが走るのは、スタート/ゴール地点を基準に8の字を描く155kmのコース。前半の小さなループはマトラから東へと向かい、ツアー・オブ・オマーンに山岳コースとして使われる一部分をなぞっていく。一旦会場を通り過ぎ、後半のループは首都マスカットの平坦コースをひた走る。こちらもスプリントステージが行われるコースを通過するため、熱心なプロレースファンならテレビやPC画面で見たことのある景色が面の前に展開されていく。

しかもコースとなる道をオマーン警察が走行車線はもちろんのこと対向車線まで封鎖し、信号機をコントロールしてくれるという、プロレースと同様の完璧な警備体制を敷いてくれたため、全くクルマの心配をせずに思う存分ライドを楽しむことができた。しかも郊外の道路ならいざ知らず、方側2車線のメイン通りまでをそうして警備してくれたことはとても驚いた。

マトラの街にあるゲートをくぐっていく。路面は移りこむほどピカピカだマトラの街にあるゲートをくぐっていく。路面は移りこむほどピカピカだ

後で知ったところ、警察官たちはプロレースのツアー・オブ・オマーンと同じように「大集団が一瞬で通過すると思っていたから」、という笑い話なのだが、間違いに気づいても「まぁいっか」となったそう。オマーン人のおおらかな性格を考えれば、これも微笑ましく感じるところだ。

渋滞を食らっているドライバーはさぞかし不機嫌かと思いきや、クルマを降りて応援に出て来てくれる人も多かった。みんなレンズを向けても屈託のない表情でカメラに収まってくれる。自転車に乗って走る外国人(特にアジア人)が珍しいからとエイドステーションでお手伝いをしてくれたオマーン人に一緒に写真を撮ろうとせがまれたり、とにかくみんな純粋でとても人なつっこい。

旧市街へと抜ける、情緒ある門をくぐっていく。旧市街へと抜ける、情緒ある門をくぐっていく。 現地在住の女性サイクリストの姿も。彼女はトライアスリートだそう現地在住の女性サイクリストの姿も。彼女はトライアスリートだそう


コースはマトラを離れて郊外の旧市街を抜け山岳へと入っていく。オマーンの山岳コースはとにかくダイナミックで、日本だったらカーブを描きながら高度を増していきそうな所を、幅広の道路が平気な顔をしてズドーン!と斜面を直登していく。

コースにはほぼ海抜0mから500mまでを一気に上り詰める峠も含まれていて、その平均斜度は軽く10%を超えている。斜度はキツくても、クルマが全く通っていないから蛇行し放題だ(笑)。一直線に続く下りでは単独で走っているのにも関わらず、最高速度は90km/h以上をマーク。上りで苦労していた新田選手は、鬼のような加速でダウンヒルをかっ飛んでいった。単純に「走ること」がこんなにも楽しい場所で開催されるイベントは他にあまり無いと思う。

青い空と、荒涼とした大地のコントラストが美しい。ずっとこんな大絶景が広がっている青い空と、荒涼とした大地のコントラストが美しい。ずっとこんな大絶景が広がっている

折り返し地点のロータリーから引き返して再び峠を上る。頂上からは荒々しい茶色い地形、そして真っ青な海の美しいコントラストがバンッ!っと目の前に広がった。その素晴らしさに思わずボーッと通過して写真を撮り忘れてしまったほど。

山岳コースをひとしきり楽しんだ後は再びスタート/ゴール地点を目指し、後半のループへと入っていく。その途中には国会や宮殿などもあるため、観光気分で走ることができた。往路でも通っていたのだが、なにぶんペースがレース並みに速かったので、見ている余裕が無かった。

斜面を直登するように据え付けられたダイナミックな峠道を上がっていく斜面を直登するように据え付けられたダイナミックな峠道を上がっていく 一直線に駆け下りていく峠道。最高速度は90km/h以上をマークした一直線に駆け下りていく峠道。最高速度は90km/h以上をマークした


封鎖で足止めを受けてるのにも関わらず、車を降りて応援しに来てくれた封鎖で足止めを受けてるのにも関わらず、車を降りて応援しに来てくれた 大会スタッフと一緒にエイドステーションで記念撮影!眼下には紺碧のアラビア海が広がっていた大会スタッフと一緒にエイドステーションで記念撮影!眼下には紺碧のアラビア海が広がっていた (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会


と、ここで完全封鎖を敷いたための問題が一つ生じてしまった。トップグループが想像以上に速く(セミプロレベル)、先頭と最後尾が20km以上も差がついてしまったという。大通りを封鎖していたことで交通がマヒし大会の途中でコースの短縮を余儀なくされてしまったのだ。
間隔が開いているのに律儀に封鎖してくれたオマーン警察の生真面目さとも言えるけれど(笑)。その結果、速いグループはそのままのコースを。真ん中以降のグループを一旦まとめ、短縮コースを走らせる措置が取られることに。

しかし私は速いグループ最後尾に着いて行ったため、コース短縮の情報を得ること無く当初のコースへ向かった。しかも悪いことにメカトラで停まった際に一人ぼっちになったうえに、コースマップも無かった。後ろからはライダーが来るはずもなく、警備の警官も短縮コースに向かってしまったようだ。方向もわからない見ず知らずの国で完全迷子になってしまった。
なんとか道行くオマーン人に道を聞いたり、見ず知らずの人の車に乗せてもらったりしてゴールまでたどり着いたが、ここでもオマーンの人々の温かさが身に沁みて嬉しかった。そんな親切を受けたことがオマーンでの何より素晴らしい体験だったと今にして思える。

いつものスタイルで仕事中の私。「クレイジー」と言われたいつものスタイルで仕事中の私。「クレイジー」と言われた (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会小さな港町とその先に広がるアラビア海を横目に進む小さな港町とその先に広がるアラビア海を横目に進む


私が右往左往してしまっている一方で、私と一部の参加者を除く先頭グループと後方グループは全く問題なくライドを楽しんでゴールを迎えたそうだ。私にとってのイベントは簡単には終わらなかったが、その分オマーンの人々と交流する機会があって、より現地を知ることができたかな、ということは事実。つくづく温かい人柄が素敵な国だと感じた。

ゴールした数時間後には、日本からの参加者や大会関係者を日本大使公邸に招いてのパーティーが催され、つい先程のライドの様子を共に語らう豪華な時間を過ごした。大使館に招かれてのパーティーなんて、このイベントに参加した参加者だけの貴重な経験だ。そして翌日、タイトなスケジュールのツアー参加者はドーハ経由のフライトでオマーンを後にした。

中東にこんな平和で、温かい人柄に溢れる国があるとは全く思っていなかった。

走りきって安堵の表情走りきって安堵の表情 (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会大会を通して生まれた絆もあったようだ。国交記念イベントに相応しい光景だ大会を通して生まれた絆もあったようだ。国交記念イベントに相応しい光景だ (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会


短縮コースを走りゴールした参加者たち。この頃私は一人で迷子に...短縮コースを走りゴールした参加者たち。この頃私は一人で迷子に... (c)オマーンセンチュリーライド実行委員会

プロレースのツアー・オブ・オマーンは春先のクラシックレースに照準を合わせる選手が調整レースとして出場するレースだが、ただ単に温暖な気候だけを求めてやってくるのでは無いのだろう。そうでなければわざわざヨーロッパから遠く離れた中東にまで来ることも無いだろう。私が感じた居心地の良さを同じように感じるからこそ、開催3回にしてトップレーサーが数多く集う大会に成長したのかもしれない。

大使公邸で催された記念ディナーパーティー大使公邸で催された記念ディナーパーティー 大使公邸でのパーティーに招待されたツアー参加者たちで記念撮影大使公邸でのパーティーに招待されたツアー参加者たちで記念撮影


今回参加させて頂いたオマーンセンチュリーライドは初回大会とあって、多くの人を集めるだけの受け皿が用意されてなかったことは事実。リピーターを獲得するにはまだまだ多くの工夫や準備が必要だろう。しかし同じように手探りで始めながら成長したイベントは多くあるし、オマーンという国はそれだけで遠く離れた日本から訪れる価値があって余りある場所だと強く思う。

良い意味で様々なことを感じさせてくれる国とイベントだった。今後の発展に是非大きな期待を寄せたい。


text:So.Isobe
photo:So.Isobe&オマーンセンチュリーライド実行委員会
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