6月に行われたMt.富士ヒルクライム。2年ぶりの開催とされつつも、トップレベルのクライマーが覇を競い合った主催者選抜クラスで入賞した皆さんの愛車を紹介します。



男子1位 池田隆人(TEAM ZWC) キャニオン AEROAD CF SLX

池田隆人(TEAM ZWC) キャニオン AEROAD CF SLX池田隆人(TEAM ZWC) キャニオン AEROAD CF SLX
大会新記録をマークし、圧巻の独走にて優勝した池田隆人。試走時にも料金所から55分36秒というタイムを記録し、ライバルたちからマークされている中、序盤から積極的に動いて勝利を手にした。

中盤、加藤大貴との二人逃げに持ち込んだ時には「いっぱいいっぱい」だったという池田だが、事前に決めていたというアタックポイントでは体重の7倍を超える出力でアタック、独走へ持ち込みそのまま勝利を手にした。

ブラケットを内側に寄せたセッティングブラケットを内側に寄せたセッティング
そんな池田の走りを支えるのはキャニオンのAEROAD CF SLX。「スバルラインくらいの斜度だと空力のほうが効果的なので」とバイクチョイスの理由を語ってくれた。エアロダイナミクスを重視する姿勢は他のパーツアセンブルからも窺える。

STIレバーを内側に入れたセッティングもその一つ。「エアロポジションも取りやすいですし、あまりバイクコントロールに影響も無いので」という。他にもフロントブレーキにトライリグを採用していたり、エクスペドのペダルの裏にテープを貼り付けたりとその対策は徹底している。

フロントはBORA WTO45 フロントはBORA WTO45 パワーメーターは4iiiiパワーメーターは4iiii


ペダル裏面にテープを貼る 細かな部分だがエアロ向上を狙うペダル裏面にテープを貼る 細かな部分だがエアロ向上を狙う ブレーキはトライリグブレーキはトライリグ


一方、ホイールはエアロと軽量性のバランスを重視したチョイス。フロントはカンパニョーロのBORA WTO45にヴェロフレックスのRECORDを、リアはメカニコの手組ホイールにヴィットリアのCORSA SPEEDを組み合わせている。

今シーズンは乗鞍などヒルクライムレースに焦点を当てて活動していきたいと語る池田。Zwiftで積み重ねたトレーニング、そして機材面でもわずかなアドバンテージを追い求めるそのストイックな姿勢が強さの秘訣だろう。



男子2位 加藤大貴(COW GUMMA) スペシャライズド S-WORKS VENGE

加藤大貴(COW GUMMA) スペシャライズド S-WORKS VENGE加藤大貴(COW GUMMA) スペシャライズド S-WORKS VENGE
ボトルケージはタイムボトルケージはタイム ハンドル周りは純正仕様で纏められるハンドル周りは純正仕様で纏められる


唯一池田のアタックに対応し、渡り合っていた加藤大貴。「実はもっと勾配がキツイほうが得意なんです」と語る加藤は、日本有数の激坂であるあざみラインのレコードを持つトップクライマーだ。

そんな加藤の愛車はスペシャライズドのエアロロード、 S-WORKS VENGE。以前はタイムのZXRSを愛用していた加藤だが、ロードレース用にディスクロードを誂えようとしてこのバイクを選んだのだという。

「正直、最初は物は試しに、くらいに思っていたんですが、いざ乗ると感触が良くて。あざみも赤城もこのバイクで勝てたのもあるし、ディスクでも6.8kgを切るくらい軽いものもありますから、ヒルクライムでもディスクロードで良いんじゃないかなと」と語る。

サドルはS-WORKS ToupeサドルはS-WORKS Toupe ホイールはロヴァール CLX32、タイヤはコンチネンタルのコンペティションTdFリミテッドモデルホイールはロヴァール CLX32、タイヤはコンチネンタルのコンペティションTdFリミテッドモデル


14-28Tのジュニアギアを使用14-28Tのジュニアギアを使用 パワーメーターはパイオニアペダリングモニターを使用パワーメーターはパイオニアペダリングモニターを使用


コンポーネントはシマノのDURA-ACE DI2と堅実な選択。「ヒルクライムでは13T以上はあまり使わないので、クロスレシオのメリットを取って、ジュニアギアを使っています」と話す通り、ギア比が50-34T×14-28Tという組み合わせ。

ホイールはロヴァールのCLX 32、タイヤはコンチネンタルのコンペティション 25C。
「クリンチャーよりもチューブラーのほうが乗り心地も良いですし、転がりも軽い気がするんです。アルピニストも同じ重量ですが、タイヤの仕様でこちらを選んでいます」とそのチョイスの理由を教えてくれた。



男子3位 板子佑士 スコット Addict

板子佑士 スコット Addict板子佑士 スコット Addict
メイン集団の先頭で3位に入ったのは、2018年大会でも3位に入った板子佑士。「前々回も今回も、2人逃げの後ろの集団のアタマを獲るという展開なので、ラストのスプリントに持ち込めればチャンスはあるかもしれない。でも、正直前の二人はサイボーグかな?という強さでしたから、難しいですね(笑)」と今年のレースを振り返る。

そんな板子の愛車は今年も変わらず、スコットのヒルクライムマシンであるADDICTだ。「本当にヒルクライムレースのための決戦バイクで、去年はイベントが無かったので一度も乗らなかったんです」と、まさにスペシャルバイクであることが分かるコメント。

サドルはMcfk、ポストはウッドマンだサドルはMcfk、ポストはウッドマンだ バーテープ、フードをはがした決戦仕様。安全のためバーエンドプラグは装着しているバーテープ、フードをはがした決戦仕様。安全のためバーエンドプラグは装着している


コンポーネントも軽量な機械式REDコンポーネントも軽量な機械式RED ケーブルは重量と引きの軽さを実現するリンクタイプケーブルは重量と引きの軽さを実現するリンクタイプ


上位2名がエアロに重点を置いていたのに対し、板子のバイクはTHEヒルクライムバイクといったイメージの超軽量仕様。バーテープやブレーキフードも省略し、極限まで軽量化を目指した結果、5.6kgという重量を実現している。

コンポーネントはスラムのRED。クランクはローター3Dで、ギア構成は50-34T×12-25Tとオーソドックスなもの。ホイールは前後ともにジップ202、タイヤはヴェロフレックスと足回りの軽量化にも余念が無い、まさにクライミングバイクの教科書的な一台だ。



男子6位 前回大会優勝 佐々木遼(Team GOCHI) スペシャライズド S-WORKD TARMAC SL7

佐々木遼(Team GOCHI) スペシャライズド S-WORKD TARMAC SL7佐々木遼(Team GOCHI) スペシャライズド S-WORKD TARMAC SL7
ディフェンディングチャンピオンであり、ロードレースでも強さを見せる佐々木遼。「ツール・ド・かつらおにピークを持ってきていたので、調子は下がり気味でした。スプリントならチャンスはあるかと思っていたのですが、序盤でから逃げが出来てしまって作戦通りには行かなかったですね。前は異次元の速さでしたが、必ずリベンジします!」と再戦を誓った。

そんな佐々木が駆ったのはスペシャライズドのオールラウンドバイク、S-WORKS TARMAC SL7。佐々木はTARMAC SL5で前回大会を制しており、同シリーズを乗り継ぐ形となっている。「脚に嫌な反発が無いので踏みやすいんです。SL5もそうだったんですが、この乗り味が好きなんですよね」とその乗り味について語ってくれた。

ステムは専用品ではなく、汎用品を使用するステムは専用品ではなく、汎用品を使用する フロントはロヴァール Rapideを使用フロントはロヴァール Rapideを使用


ビッグプーリーを採用するためRDのみR9000を使用するビッグプーリーを採用するためRDのみR9000を使用する パワーメーターはシマノ純正品を使用パワーメーターはシマノ純正品を使用


基本的にはR9100系DURA-ACE DI2で組み上げ、パワーメーターもシマノの純正を使用するが、RDはビッグプーリーを使用するためにR9000系を採用している。また、ホイールはロヴァールで揃えるが、空力に大きく寄与するフロントをRapide、駆動輪であるリアを軽量なAlpinistという組み合わせ。

タイヤは転がりと耐パンク性を両立したコンチネンタルのグランプリTTの25Cを採用、フロントを5bar、リアを5.5barで設定している。「体重が軽いので、あまり高圧にすると跳ねてしまってロスになるため低めに設定しています」とのことだった。



女子1位 望月美和子 (SAGISAKA) Liv LANGMA ADVANCED SL

望月美和子 (SAGISAKA) Liv LANGMA ADVANCED SL望月美和子 (SAGISAKA) Liv LANGMA ADVANCED SL
2018年大会以来、2度目となる優勝を果たした望月美和子。「前々回と比べるとタイムは落ちたのですが、その分ロードレース的な駆け引きのある展開でした。何度か逃げたのですが逃げきれず。最後の平坦区間でも仕掛けてみたものの、独走は出来なかったのでスプリントに切り替えました」と、今年の展開を振り返る。

その臨機応変な走りを支えたのがアンバサダーを務めるLivのクライミングバイク、LANGMA ADVANCED SL。新車かと見紛うほど綺麗な状態だったが、実は既に3シーズンを経過しているとのことで、いかに丁寧に乗られているかが窺える。

ホイールはジャイアント P-SLR、タイヤはカデックスのチューブレスホイールはジャイアント P-SLR、タイヤはカデックスのチューブレス ステムやハンドルは純正。日泉のステッカーが貼られているステムやハンドルは純正。日泉のステッカーが貼られている


ボトルケージもLiv、ボトルはエリート FLYのジロモデルボトルケージもLiv、ボトルはエリート FLYのジロモデル コンポーネントはDURA-ACE  DI2、パワーメーターも純正だコンポーネントはDURA-ACE DI2、パワーメーターも純正だ


先日発表されたディスクモデルにも最近乗り始めたとのことだが、今回はレースということもあり乗り慣れたリムブレーキモデルを選んだとのこと。「ロードレースやクリテリウムではディスクがメインになると思います」と新バイクとの違いを語ってくれた。

アンバサダーだけあり、基本的なパーツ構成は純正のものが多い。コンポーネントはDURA-ACE DI2でギア構成は50-34T×11-30T。ハンドル周りやホイールなどはジャイアント、タイヤもカデックス GAVIA RACE 0をチューブレス仕様で。「一度BORAなども試してみたんですが、しっくりくるのはジャイアントのホイールでしたね。総合力という意味では、ベストマッチだと思います」とフィーリングを教えてくれた。

爽やかなブルーの日泉 ウルトラライトブレーキアウター爽やかなブルーの日泉 ウルトラライトブレーキアウター
そして、こだわりを見せるのはケーブル周り。日泉のウルトラライトブレーキアウターで組み上げられており、「まるでコンポーネントのグレードが上がったようなフィーリングなんです」と、その性能に惚れ込んでいた。



女子2位 石井嘉子(アーティファクトレーシング)トレック Madone 7

石井嘉子(アーティファクトレーシング)トレック Madone 7石井嘉子(アーティファクトレーシング)トレック Madone 7
望月と最終局面まで争ったのがアーティファクトレーシングの石井嘉子。なんと今回が初めてのヒルクライムレースで、初参加にして表彰台という快挙を成し遂げた。「個人的にはシルバーを目標にしていたので、達成できただけでも嬉しいんです。2位というのは、正直自分でもびっくりしてますね」、と予想外の戦績について喜びを滲ませた。

そんな石井の愛車はトレックのエアロロードであるMadone 7。「カンチェラーラが好きで好きで。このスパルタクスカラーが欲しかったんですが、縁があって手に入れることが出来ました」と愛車について語ってくれた。

トップチューブにはSPARTACUSの文字が入るトップチューブにはSPARTACUSの文字が入る ホイールはBORA ONE 35ホイールはBORA ONE 35


リデアのビッグプーリーを使用するリデアのビッグプーリーを使用する ペダルはパワーメーターのASSIOMAを使用するペダルはパワーメーターのASSIOMAを使用する


「そんなに軽くしてたりするわけではないんです」と語る石井だが、電動アルテグラを中心にリデアのビッグプーリーを組み合わせ、ホイールにはBORA ONE35をアセンブルするなど機材面でも抜かりはない。

「4月からパワーメーターを使い始めたんです」と石井。ASSIOMAを使用した感想は「数字が出るといかにサボってるかが分かるのでサボりづらくなりました(笑)」と、はにかみつつもその強さの一因を垣間見せた。



女子3位 佐野歩 (Infinity Style) アンカー RL8

佐野歩 (Infinity Style) アンカー RL8佐野歩 (Infinity Style) アンカー RL8
女子の3位に入った佐野はヒルクライムレースをメインに戦うヒルクライマー。2017年の富士ヒル優勝者である兼松大和の立ち上げたInfinity Styleに所属し、乗鞍や富士ヒルなど、各地の大会で存在感を示す女子レーサーだ。

そんな佐野の愛車はアンカーの軽量モデル、RL8。「実は1台目のバイクもアンカーで、2台連続アンカーです。乗り味が気に入っていて、ラインアップの中で一番軽かったRL8を選んだんです」と語る。

サドルとポストはMcfkサドルとポストはMcfk 駆動系はRED、ブレーキはDURA-ACE 駆動系はRED、ブレーキはDURA-ACE


カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用カーボンドライジャパンのビッグプーリーを使用 ボトルケージレスという潔い仕様ボトルケージレスという潔い仕様


ヒルクライマーらしく、軽量化にも余念が無い。コンポーネントははスラムのRED eTapでクランクはペダリングモニター付きのアルテグラに。RDにはカーボンドライジャパンのビッグプーリーをアセンブルし、駆動効率にも気を配る。

目を惹くのがホイールだ。究極の回転体とも言われるライトウェイトは「兼松さんが使わないというので譲ってもらいました」と、師匠譲りの逸品。サドルおよびシートポストも超軽量カーボンパーツを手掛けるMcfkで揃えられている。

ホイールはライトウェイトを採用ホイールはライトウェイトを採用
「大体これで6kgは切っているくらいです。完全に軽量化に振れば、以前乗鞍で4kg台まで落としていたので、まだ余裕がありますね」と機材にもストイックな姿勢を見せてくれた。

text&photo:Naoki Yasuoka