自然豊かな安曇野の地を走り抜けた「アルプスあづみのセンチュリーライド」。去年から4月と5月の2ヶ月連続開催になった同大会の4月大会”桜のAACR”をレポート。初参加で雄大な北アルプスとバラエティ豊かなグルメを堪能してきたCW編集部員・釜田がレポートします。



スタートの時を待つアルプスあづみのセンチュリーライド参加者の行列スタートの時を待つアルプスあづみのセンチュリーライド参加者の行列
大勢の仲間達と楽しむのもロングライドイベントの良さ大勢の仲間達と楽しむのもロングライドイベントの良さ 夫婦でAACRを楽しむ夫婦でAACRを楽しむ


今年は全国的に桜の開花が早く、東京などの平野部では、開いたばかりの花が散るのを「今年も早いね」と残念そうに見ていた人も多いことだろう。そんな憂いを帯びた顔は往々にして綺麗なものだ。しかし東京よりも高地にある長野県安曇野一帯ではそんなことはなく、まだまだ桜の季節は過ぎ去っていない。

そんな桜と北アルプス、そして青空というピンク、白、青の3色のコントラストを楽しむべく長野県松本市の梓水苑に集まったのは約1500名のサイクリスト達。2ヶ月連続開催となってもなお、この参加人数は減ることがなく、その上、5月開催の緑のAACRの方が参加人数が多いため、2大会合わせて3700人あまりの人がAACRを楽しんでいることになる。そう考えると非常にスケールの大きいロングライドイベントであることがよく分かる。

朝焼けの中、150kmコース1組目がスタート。AACRの開幕だ朝焼けの中、150kmコース1組目がスタート。AACRの開幕だ
早朝の澄んだ空気の中、心も晴れやかだ早朝の澄んだ空気の中、心も晴れやかだ
早朝の澄んだ空気の中、サイクリスト達がスタート地点に並び出す。天候は見るからに雲ひとつない快晴といったところ。予報では30度近くまで気温が上昇し、4月としては異例の高温になるということだ。しかしサイクリストからしてみれば半袖ジャージに足出しという、我々の正装で適温という気温だ。

大会の名物MCであるアケさんの軽妙なトークでスタートまで気持ちを盛り上げていると、あっという間に最初のスタートである150kmクラス1組目が走り出す時間。大会実行委員長兼プロデューサーである鈴木雷太さんの挨拶と共に桜のAACR2018が開幕である。

初っ端の桜並木は満開初っ端の桜並木は満開
これぞ桜のAACRといったところだこれぞ桜のAACRといったところだ
長く長く続く果樹園地帯を抜ける長く長く続く果樹園地帯を抜ける
スタートはマヴィックカーを先頭に5名程が一緒に走り出すウェーブスタート。30秒おきにスタートすることで、参加者の集中を防ぎ、渋滞を軽減する狙いだ。朝日を受けながら走り出すと気持ちの良い冷たい空気が身体に沿うように流れていく。会場に到着した時、列に並びながらスタートを待っていた時にも思ったことだが、ペダルを踏んで改めて思う。今日はやっぱり絶好のサイクリング日和だ。

スタート直後に現れる桜並木は遠目に少し散ってしまったかなと思っていたら満開であった。まさに”桜のAACR”といったところだろう。咲き乱れる桜が今日の素晴らしいサイクリングを成功を約束してくれているようだ。

第1エイドはチューリップ畑の中に設けられた第1エイドはチューリップ畑の中に設けられた
朝ごはん代わりのコッペパンにかじりつく朝ごはん代わりのコッペパンにかじりつく こちらは愉快なデローザ3兄弟こちらは愉快なデローザ3兄弟

綺麗なチューリップを背景に記念撮影に勤しむ綺麗なチューリップを背景に記念撮影に勤しむ
序盤の田園地帯と果樹園地帯は少しだけ登る場面も出てくるがほぼフラット。23.1kmほど走り、冠雪した山脈の頭がひょっこり見えてきたら、最初のエイドステーションとなるあづみの公園穂高エイドに到着だ。このエイドでは、信州名物のジャムを塗ったコッペパンとスポンジケージをホワイトチョコでコーティングした銘菓「あずさ」が登場。第1エイドでこのボリュームは朝食代わりとも言える。

この第1エイドが設置されている国営アルプスあづみの公園(堀金・穂高地区)は100ヘクタール、つまり、東京ドーム21個分の面積を持っている。その広大な敷地で四季折々の多彩な草花を見ることができる場所だ。大会当日も95品種、24万本にも及ぶチューリップの花が最盛期を迎えており、その美しい光景に皆、記念撮影に勤しんでいた。ちなみにこれはほんの豆知識であるが、黄色いチューリップの花言葉は「報われぬ恋」である。

おや?何か浮いているぞ?おや?何か浮いているぞ?
木漏れ日が差し込む森の中を走る木漏れ日が差し込む森の中を走る
木々の間をすり抜けていく国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)の敷地内木々の間をすり抜けていく国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)の敷地内
エイドを出た後は下り基調で小気味よくペダルを回し歩みを進める。まだまだ時間は7時頃と、気持ち良い空気が流れる。森の中に入ると木漏れ日が心地良い。少しづつ緩斜面へ。といっても1.3km、3.3%程の勾配で臆することはない。むしろ適度な刺激が脚を更に活性化させていくかのようだ。

そのまましばらく森の中を走っていると、脇道に誘導され、国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)の中に入っていく。木々の間をすり抜けていくような林間路を気持ちよく流していくと、あづみの公園大町エイドに到着だ。

あづみの公園大町エイドに到着だあづみの公園大町エイドに到着だ
白おにぎりに郷土味噌をつけて頂く。下の辛こしょうの麹くんが筆者のオススメ白おにぎりに郷土味噌をつけて頂く。下の辛こしょうの麹くんが筆者のオススメ あずき入り羊羹で糖分を補給あずき入り羊羹で糖分を補給

味噌をいっぱいつけて塩分補給だ味噌をいっぱいつけて塩分補給だ
このあづみの公園大町エイドでは白おにぎりを渡され、そこに好みの郷土味噌を付けて食べる味噌おにぎりが頂ける。暑くなる前にここでしっかり塩分とミネラル、エネルギーを補給して、ライドを思う存分楽しもうということだろう。エイドグルメの補給タイミングも完璧なのがAACRの良いところだ。

用意されている味噌は定番とも言える”伝説のネギ味噌”、青唐辛子を加えた”青とん味噌”、信濃大町の漬物屋で販売されているという”辛こしょうの麹くん”の3種類。伝説と前置きするネギ味噌は安定の美味。青とん味噌はピリ辛が食欲をそそる感じだ。そしてポップな名前の辛こしょうの麹くんはこしょうの風味とガツンと来る辛さでご飯のお供として最高であった。ということでおにぎり3つも頂いてしまったがこれは取材なのだ。しょうがないのだ。

信濃大町方面に風を切りながら駆け下りる信濃大町方面に風を切りながら駆け下りる
冠雪した北アルプスの山々が見えてきた冠雪した北アルプスの山々が見えてきた
この後は信濃大町方面へ気持ち良いダウンヒルをこなした後、田んぼや畑などの里山の風景が続いていく。この辺りになると常に冠雪した北アルプスの山々が見えるようになり、清々しい気持ちになる。雪解け水が多いのだろうか、河川の水も非常に綺麗で、日本にこんな豊かな自然が残されていたのかとしみじみ思う。長野県のお隣、群馬育ちの筆者だが、心はコンクリートジャングル東京に染まってしまったようだ。

第3エイドとなる大町市平公民館までは第2エイドから10.5kmの距離。思った以上にすぐ着く。ここでは私がAACR取材が決まってから地味に楽しみにしていた漬物バイキングが行われているのだ。漬物といってもしっかり漬けた塩分高めのモノではなく、薄味で浅めに漬けて野菜を美味しく頂けるようなメニューが揃っていて、お皿いっぱいに盛っても全部美味しい。

選り取り見取りの漬物バイキング選り取り見取りの漬物バイキング
新鮮な信州野菜を使った漬物に大満足だ新鮮な信州野菜を使った漬物に大満足だ
桜も咲いていた中綱湖の湖岸を走っていく桜も咲いていた中綱湖の湖岸を走っていく
そしてこの漬物はスタッフとしてサポートしてくれているおばちゃん達の手作り。漬物が無くなるとタッパーからこれでもかと補充されるので、気兼ねなくいっぱい食べよう。ちなみに私のオススメはキャベツの切り漬け(レモン風味)、白菜の漬物、きゅうりの浅漬け、カクテキだ。プラス後半に向けてレモンのはちみつ漬けもマストだ。

その後はAACRの人気スポットの1つ、木崎湖の西岸を走り抜ける。今までとは違う湖面の風景にちょっと気持ちも盛り上がるというものだろう。そのまま仁科三湖の中綱湖と青木湖の湖岸を駆け抜けていく。途中、桜の美しい場所や、湖面と北アルプス山脈がおり混ざった眺めが良いフォトスポットなどがあり、風景に飽きることがない。

冠雪した北アルプスをバックに春の白馬を走る冠雪した北アルプスをバックに春の白馬を走る
青空と連峰の残雪、そして緑という3色のコントラストは眩しい青空と連峰の残雪、そして緑という3色のコントラストは眩しい
仁科三湖のエリアを抜け、白馬村に入っていくと、雪化粧した白馬連山が姿を見せる。日本とは思えないダイナミックな光景は、さすが日本アルプスである。行ったことはないが、本家ヨーロッパのアルプス山脈もこのような雰囲気なのだろう。ヨーロレイッヒ!と歌いたくなるのは私だけだろうか。

そんな清々しい気持ちでペダルを回していると、あっという間に折返し地点となる白馬岩岳エイドに到着。ウインターシーズンになると多くのスキー客で賑わう白馬岩岳スキー場ゴンドラ前に設置されたエイドでは地元信州のお蕎麦と、お漬物が頂けるのだ。

お蕎麦は流石、そば処信州ということもあり、香り良し、コシ良し、味良しと本格的な味わい。冷たい汁が火照った身体を冷やしてくれる。そして合いの手に入れるお漬物もベストマッチだ。午後に入り気温もぐんぐん上がっていく中の塩分補給は重要である。

白馬岩岳エイドでは本格的なお蕎麦が頂ける白馬岩岳エイドでは本格的なお蕎麦が頂ける
香り良し、コシ良し、味良しの冷たいお蕎麦はスルスルと食べられる香り良し、コシ良し、味良しの冷たいお蕎麦はスルスルと食べられる
ここまでで79.4km。全行程が150kmであるので、半分ほどの行程をこなしたことになる。といっても大きな登りもないため、脚の疲労感も程よい感じだ。その上、帰路は下り基調、追い風となるため、妙なプレッシャーもなく気が楽というもの。景色を楽しみつつ、マイペースに楽しみながら走ろうと思う。

text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.Ayano Kosuke.Kamata