年々注目が集まるE-bike。シマノやボッシュのユニットを試した前編に続き、後編ではヤマハやパナソニック、ベネリと国内市場を開いてきたパイオニアたちを紹介。



国内E-bikeのパイオニア 新シリーズの展開で更なる浮揚を図るヤマハ

今春正式に発表されたYPJ-XCの姿も今春正式に発表されたYPJ-XCの姿も
先行モデルととは異なり、大容量バッテリーを装備する先行モデルととは異なり、大容量バッテリーを装備する よりパワフルな特性を与えられたという新型ユニットよりパワフルな特性を与えられたという新型ユニット


国内のE-bikeを語る上で、外せないのがヤマハだろう。2015年に発表したYPJシリーズは、日本初の本格的なE-bikeとして注目を集め、それ以来電動アシストスポーツバイクといえばヤマハ、のイメージを積み重ねてきた。

今回のサイクルモードライドOSAKAでは、本格的なトレイルライド向けE-MTB・YPJ-XCやオールロードバイク・YPJ-ERなど発表を目前に控えたYPJの新シリーズがズラリとブースへと展示され、更にこのカテゴリーへと力を入れていくことを示してくれた。

試乗が可能であったのは、既存のYPJシリーズの2車種。ロードバイクタイプのYPJ-RとクロスバイクタイプのYPJ-Cだ。この2つのバイクの最も大きな特徴は、25.2V/2.4Ahとあえて容量の少ない小型バッテリーを使用することで、スポーツバイクとして重要な軽快さを失わずに、アシスト能力を付加したことだろう。

そのおかげもあり、車体重量は15.7kgとかなり軽量な仕上がりに。あくまで自転車であることを大切にした味付けとなっており、アシスト機能はここぞという時に使える、文字通りの「アシスト」としての位置づけとなっているという。

ヤマハ YPJ-Cヤマハ YPJ-C
どこかモーターサイクルを彷彿とさせるヤマハのパワーユニットどこかモーターサイクルを彷彿とさせるヤマハのパワーユニット 圧倒的に小型で軽量なバッテリーを装備する圧倒的に小型で軽量なバッテリーを装備する


一方で、よりロングライフなバッテリー性能を求める声も高まってきたとのことで、新しくラインアップする新シリーズは、そういった要望に応える36.0V/13.3Ahという大容量バッテリーと新ユニットを装備したものになるという。軽く機敏な既存の2モデルに加え、よりパワフルでタフな新シリーズが加わり盤石の体制となるYPJシリーズは、今後も国内E-bike市場のキープレイヤーとなりそうだ。

さて、改めてYPJ-Rに試乗した感想をお届けしよう。今回試乗した中では、唯一のドロップハンドルを使用するロードバイクタイプの製品とあって、アシストを使用しない”素”の走行フィーリングは最もスポーティー。もちろん、それは小型バッテリーによる軽量な車体の恩恵も大きいと感じる。

用意される3つのアシストモードの違いが最も分かりやすかったのもこのYPJ-R。ECOモードでは発進時や坂道などでしか働かないほどに制御される一方、HIGHモードでは、かなりの速度域まで力強いアシストを感じる。ダンシングやコーナーリングでのフィーリングも既存のスポーツバイクに引けを取らない自然な感覚で、そこにアシストが加わるのだから鬼に金棒といえるだろう。少なめのバッテリーに関しても、自分とバイクのトータルのエネルギーマネジメントを考えつつペース配分するというのもまた、一つの楽しみとして受け止めることも出来るはずだ。



本格E-MTB XM1で打って出たパナソニックサイクルテック

意欲的なE-MTB、XM1をデビューさせたパナソニック意欲的なE-MTB、XM1をデビューさせたパナソニック
これまでも軽快車タイプに使用するユニットを採用したスポーツタイプ電動アシストバイクのジェッターやハリヤといったラインアップを持ち、ヤマハと並んで大きな存在感を示し続けてきたパナソニックが、昨夏発表し、驚きを持って迎えられたのが本格E-MTBであるXM1だ。

これまでの2軸タイプのユニットではなく、入力からのタイムラグが少ないペダリングフィールが特徴の”スポーツドライブユニット”と、ダウンチューブへと一体化されることでスマートなルックスでありつつ36.0V/8Ahという容量を手に入れた”セミインテグレーテッドバッテリー”の2つによって、E-bikeの本流である欧州顔負けの本格的なE-MTBとして一足飛びのデビューを遂げたのが、このXM1だ。

なぜ、同社初の本格E-bikeとしてMTBを選んだのか、と問いかけると「速度域が上がるにつれて出力を絞る必要のある日本の環境では、常用速度域が低く、かつ出力が必要なオフロードが一番E-bikeとしての能力が発揮できるからですね」とのことだ。

とにかくE-bikeの持つポテンシャルをしっかりと感じてほしいという思いの元開発されたXM1。このモデルを軸に、これからパナソニックはさまざまな展開を視野にいれているとも。国内メーカーの威信をかけた一作として、期待が集まる一台に試乗した。

見やすい大型のディスプレイに操作しやすいコントロールユニットが用意される見やすい大型のディスプレイに操作しやすいコントロールユニットが用意される ダウンチューブに埋め込まれるようなデザインのバッテリーダウンチューブに埋め込まれるようなデザインのバッテリー


XM1に与えられたのはダイレクトドライブタイプのパワーユニットだXM1に与えられたのはダイレクトドライブタイプのパワーユニットだ こちらは一般車と共通の二軸式のユニット モーターの力を伝える歯車がクランクとは別に存在するこちらは一般車と共通の二軸式のユニット モーターの力を伝える歯車がクランクとは別に存在する


さて、そんなXM1だが、実際に乗ってみると予想以上の完成度に舌を巻く。漕ぎ出しからの力強いアシストを感じるのは最新のE-bikeとしては当然のことだが、その太いトルク感が中速域まで生きているのがもっとも大きな特徴だろう。

アシストがほとんど感じられなくなってきたな、という速度域も大体23km/hほどと、かなり引っ張ってくれる印象。路面抵抗が大きいMTBということもあるのかもしれないが、とにかくパワフルさを感じる一台に仕上がっていた。

コントロールユニットの出来も秀逸。どのモードからでも一気にHIGHモードへ切り替えることが出来るボタンが設置されているのだが、これがなかなか便利なのだ。電池を節約するためにアシストをECOやオフにしているのを忘れていて急に坂が現れた時、はたまたXM1の主戦場であるオフロードなどで急に斜度がきつくなりもっと力強いアシストが欲しくなる時、このボタンが輝いて見えるはずだ。

今回はオンロードの試乗コースしかなかったため、MTBとして重要なオフロードでのハンドリングなどを試す機会は無かったけれど、特に変な癖は感じられず。むしろ重心位置が下がることで、安定感が増しておりトレイル初心者でも安心できるのではないだろうか。一点付け加えるならば、ハンドル幅を広めのものに交換すれば、より車体を抑え込みやすくなるだろう。



車種に合わせたチューニングで最適性能を引き出すイタリアブランド ベネリ

ベネリのセミファットモデル Neroneベネリのセミファットモデル Nerone
今回最後に紹介するのがイタリアからやってきたE-bikeブランド、ベネリ。実は国内で初めてE-MTBを展開し始めたブランドであり、昨年末には奈良県の吉野で国内初のE-MTBレースを手掛けたことでも注目を集めている。

そんなE-bikeを積極的に展開するベネリの強みはここのモデルに最適化されたユニットチューニングにある。ベネリが使用するバーファンのパワーユニットはコストを抑えつつ他社と遜色ないスペックを持つが、もっとも大きな特徴はプログラミングの自由度なのだとか。

ボッシュやシマノなど大メーカーよりも小回りの利く対応が可能で、ベネリは車種ごとにユニットの出力カーブを最適化することが出来たのだという。その調整には元プロロードレーサーの辻善光氏も協力し、もっとも気持ちよく走らせることができるマッピングを実現したという。

余裕のあるクリアランスを持つ余裕のあるクリアランスを持つ バッテリーはダウンチューブにマウントされるバッテリーはダウンチューブにマウントされる


現在、スタンダードモデルとなるXCバイクのTAGETEを中心にセミファットバイクやミニベロなど5車種を展開するベネリだが、それぞれが最適化されたユニットを搭載し最高の性能を引き出しているという。今回はTAGETEとセミファットモデルNeroneへと試乗した。

最初に跨ったNeroneはセミファットタイヤを履くアルミバイクとあって、どうしても重めの挙動をイメージしがち。だが、E-bikeの素晴らしいところはそんなカテゴリーのバイクでも軽々と加速させてくれること。バーファンのユニットはしっかりとアシストしてくれるので、漕ぎの重さは無く太いタイヤの恩恵をしっかりと感じることが出来る。

スタンダードモデルとなるTAGETEスタンダードモデルとなるTAGETE
バーファンのユニットはシンプルなデザインだバーファンのユニットはシンプルなデザインだ 幅広で見やすい印象のディスプレイ幅広で見やすい印象のディスプレイ


正直、Neroneでもかなりの完成度だと感じており、他社のE-bikeと比べても遜色ない仕上がり。なので「TAGETEはもっと良いですよ!」という力強いプッシュに、少し疑問符を抱きつつコースへ出た。しかし、一踏みした瞬間、その懐疑は力強い加速感でどこかへ吹っ飛ばされることに。圧倒的な力強さのアシストによって、一瞬で25km/hまで持っていかれる感覚は他のどのモデルにもない。ナチュラルな自転車らしさ、という視点で語ればまた違うかもしれないが、このパワフルさは乗り物として正しい方向性でもあるだろう。

一つ欲を言うならば、前後エンドをスルーアクスル、そしてブースト規格へとアップデートされればこのパワフルな加速感をより安心して楽しむことができるのではないだろうか、とは思う。だが、車体自体のコストパフォーマンスに優れるのもベネリの大きな美点である。

既存のサイクリストにとってなじみ深いブランドではないけれど、それがプロダクトの魅力を毀損することは無いし、むしろE-bikeというフロンティアにあっては専業メーカーという立ち位置は大きな強みとなるのではないだろうか。



ボッシュやシマノといったビッグプレイヤーが参入し、盛り上がりを見せるE-bike市場。乗り比べる前には、同じルールの中で作られているユニットなのだからそこまで大きな違いはないだろうと思っていたが、実際に乗ってみると、それぞれのユニットや車体によってなかなかわかりやすくキャラクターが異なっていることに感心した。

シマノブースにはSTEPS搭載バイクに試乗した感想がズラリと貼りつけられたシマノブースにはSTEPS搭載バイクに試乗した感想がズラリと貼りつけられた それは定格出力や車体重量、バッテリー容量といったスペック的な部分だけで推し量れるものではなく、ユニットのパワー特性やそれを搭載するフレーム性能などが複雑に絡み合った結果であり、個々のバイクに個性があるのはこれまでのスポーツバイクと何一つ変わらない。そればかりか、パワーユニットというパーツが増えた分、さらに選択の幅は広がっていくはず。そういった意味では、E-bikeは機材マニアにとっても突き詰めがいのある分野ともなりそうだ。

ボッシュのブースではこんなことを聞いた。「E-bikeは自転車の苦しさを取り除いて『楽しさ』だけを残してくれる道具なんです」と。シマノのブースに寄せられた試乗した人の感想に目立ったのも「楽しかった」というものだった。

「E-bikeに乗ることで、いつもは越えようと思わない峠の先、川の向こうへ走ってみようという気になる。帰りにもう一度登りが出てきても、向かい風になりそうだとしても、気にせず足を延ばせるようになる。そんな風に自転車を楽しんで欲しいんです」とはシマノのブースで聞いた声だ。

ひたすらストイックに自分自身との対話を続けるシリアスライダーにとって、電動アシストは余計なお世話かもしれないけれど、大多数のサイクリストはそうじゃない。きっと、E-bikeは自転車を通して見える世界を広げてくれるだろうし、スポーツサイクリングの世界自体を広げてくれる助けになるはずだ。

text&photo:Naoki.YASUOKA
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