鉄道の魅力に取りつかれた「テツ店長」ことバイクプラス多摩センターの河井店長。今回は、日光にかつて存在したという路面電車の痕跡を求める、ちょっぴりロマンチックな旅のレポートが届きました。



美しい紅葉に色づく日光へと出かけてきました美しい紅葉に色づく日光へと出かけてきました photo:Kosuke.Kawai
今回は日本を代表する観光地"日光"へ行ってきました。とは言っても、東照宮に行くわけではなく、いろは坂に行くわけでもありません。テツ店長的に今もっとも気になっているのは、その昔日光の市街に路面電車が走っていたという事実を最近知ってしまった事なのです!

しかもどうやらその遺構がいまでもいくつか残っているらしく、これはこの目で確かめに行かなければ!ともう居ても立ってもいられない気分なのでありましたが……。まあ日光に行くなら紅葉も一緒に楽しめる時期を狙って行くのが吉かな、ということで満を持して出動してきました。

東武スカイツリーライン・東向島駅にある"東武博物館"へ予習に出かけました東武スカイツリーライン・東向島駅にある"東武博物館"へ予習に出かけました photo:Kosuke.Kawai
日光軌道線についての展示日光軌道線についての展示 photo:Kosuke.Kawaiこちらは東京・浅草から日光を結んでいた東武鉄道の特急車両こちらは東京・浅草から日光を結んでいた東武鉄道の特急車両 photo:Kosuke.Kawai


そんな訳で、紅葉が見頃になるまでにはもう少し時間がありそうだったので、ならばそれまでに予習でもしておこうと言う事で、仕事の合間をぬって東武スカイツリーライン・東向島駅にある"東武博物館"へ。そこには実際の日光軌道線を走っていた車両が展示されておりました。"日光"の行先表示を掲げたホンモノの車両は薄緑と橙に塗り分けられた、連接構造のモダンな車両だったのでした。

これが日光駅からいろは坂の入り口である"馬返し"までを結び、そこから先はケーブルカーが"明智平"まで、さらに先はロープウェイ(現存)に乗り換えて"展望台"までを結ぶ観光ルートがその昔は存在していたのだそうです。前回はいろは坂を上った際にも通過して行ったけれど、歴史って知ると色んな事実が出てきて面白いものですね!

ここではその他にもかつて東京・浅草から日光を結んでいた東武鉄道の特急車両などもあり、たっぷりと探索に向けての予習をしてきたのでした。

新宿始発のとても便利な特急”日光”号新宿始発のとても便利な特急”日光”号 photo:Kosuke.Kawai元々成田エクスプレスだった253系の改造車を使っているため荷物スペースが広い!元々成田エクスプレスだった253系の改造車を使っているため荷物スペースが広い! photo:Kosuke.Kawai


さて、ここからが本題。紅葉もかなり見頃になってきた11月のある日、準備万端整えて日光に向かいましたが、今回は太っ腹な編集部が交通費を支給してくれるということで、珍しく?特急列車に乗って出かけたのでした。乗車したのはJR~東武乗り入れの特急"日光"号、新宿始発のとても便利な列車です。

使用される車両がもと成田エクスプレスだった253系の改造車という、テツ店長的にはちょっとそそられる車両ということもあり、喜び勇んで乗り込んだのでした。車内はもと成田エクスプレスだった名残りなのか、荷物置きスペースがとても広くて輪行向きの車両でしたね(笑)

新宿から2時間の電車旅は快適新宿から2時間の電車旅は快適 photo:Kosuke.Kawai終点の東武日光駅に到着終点の東武日光駅に到着 photo:Kosuke.Kawai


新宿から約2時間の列車の旅は快適そのもの!目的地まで乗り換え無しってラクで良いですね♪♪そして終点の東武日光駅に降り立つと11月の日光はやっぱり寒い!まあ半ば予想はしていたのですが……。

とりあえず駅前で自転車を組み立ててスタートしたものの、まず向かった先はお隣のJR日光駅。せっかく日光に来たら、やっぱりこの駅舎は拝んでおかないと!100年以上の歴史を持ち、関東の駅100選にも選ばれた重厚な洋風建築の木造駅舎は一見の価値ありだと思います。あと駅前には天然水が湧き出していて、ここでボトルに水を詰めていけるのもちょっとうれしい計らいです(笑)

関東の駅100選に選ばれた重厚な洋風建築のJR日光駅関東の駅100選に選ばれた重厚な洋風建築のJR日光駅 photo:Kosuke.Kawai
JR日光駅の天然水を汲みますJR日光駅の天然水を汲みます photo:Kosuke.Kawai東武日光駅前で日光名物ゆばまんじゅうをゲット東武日光駅前で日光名物ゆばまんじゅうをゲット photo:Kosuke.Kawai


さていよいよ出発という前に、ふたたび東武日光駅前に戻ってちょっと寄り道。気になっていたのは、日光名物のゆばを使用した揚げゆばまんじゅうという一品。ゆばと豆乳を練りこんだ衣をカラっと油で揚げた一品で、揚げたてのサクサクとした衣にやさしい甘さのこしあんがマッチして甘党のワタシにはたまりません!とりあえず店の前でひとりパクついて、小腹を満たしてからのスタートとなりました。

駅前をスタートして東照宮の方に向かって自転車を走らせると、まもなく道路をまたぐ架線柱が現れました。これぞまさにここに路面電車が走っていたという証拠ですね!それにしてもいままで何度も通っていたのに、この大きな遺構にまったく気付かなかったというのも、われながら鈍感ですよね(泣)それにしても、この一本だけがドーンと残っているのもちょっと不思議な光景ではありました。

道路をまたぐ架線柱が!道路をまたぐ架線柱が! photo:Kosuke.Kawai
日光を代表する名所”神橋”日光を代表する名所”神橋” photo:Kosuke.Kawai"金谷ベーカリー"で昼食を補給"金谷ベーカリー"で昼食を補給 photo:Kosuke.Kawai橋と橋の間に路面電車の遺構が橋と橋の間に路面電車の遺構が photo:Kosuke.Kawaiさらに先にすすんでいくと、日光を代表する景色でもある"神橋"が見えてきました。じつはここにも鉄道遺構があって、よく見ると華やかな赤い橋の手前には路面電車が通っていた当時の橋梁の橋台だけが、今もひっそりと残されていました。ここもこれまで何度も目にしてきたけど、いやはやなかなか分からないものです。

ここからさらにいろは坂方面に向かって進んで行くのですが、じつは今回向かうのは中禅寺湖方面ではなく、ひと山超えて隣り町まで出て、もう一本廃線巡りをしようという予定なのでした。おそらくこの先は食料の調達にも支障をきたしそうだったので、にぎやかなここ日光でしっかり昼食を買い込んでから先に進んでいくことにしましょう。ということで、ちょうど通りにあった"金谷ベーカリー"のお店でパンを買って、ひとまずはバッグに詰めて先に進んでゆきます。

片側2車線の立派な国道120号(日本ロマンチック街道)をいろは坂に向かって走ってゆくと途中に橋があるのですが、よくよく見ると、ここの道路の間に路面電車の橋梁が隠れているんですよ、これはなかなか気づきませんよね!それにしても歴史の陰にふだん埋もれている遺構探しというのも、宝探し的なところがあって何とも面白いんですよねぇ……。いい大人が目的のモノを発見したときのテンションの上がりっぷりはハンパない!のですが、それは果たしてワタシだけ?

この先でまさかの遭遇をすることに……この先でまさかの遭遇をすることに…… photo:Kosuke.Kawaiみなさんも山ではクマに注意しましょう!(笑)みなさんも山ではクマに注意しましょう!(笑) photo:Kosuke.Kawaiさて、いろは坂がはじまる手前で道を左折して、国道122号(銅街道=あかがねかいどう)に入ります。ここから銅山で有名な足尾の町をめざすのですが、せっかく紅葉の時期なのと、せっかくなら昔の道を辿って行く方が、廃線巡りの旅にはふさわしかろうということで、あえて新道のトンネルを避けて細尾峠越えの旧道踏破を選んだのですが……。

途中の集落を走りぬけていると、追い抜きざまに地元のおじさんから「クマが出っから気を付けっぺ!」と栃木なまりで声を掛けられたのでした。とりあえず「分かりましたぁ~」と元気に返事をしたものの、果たして分かっていても実際自分に何ができるの? などと走りながら自問自答しつつ、峠に向かって坂を上りはじめたまさにその時!

20~30m先の山側斜面に何やら動く物体が……。四つ足でずんぐりとした動物が走り去って行くのがはっきりと見えてしまいました! 大慌てでストップして今見たものを頭の中で整理してみましたが、どう見ても今さっき目撃したしたのはクマでしょう!! ということで、早々にここから立ち去らなければ命までヤバいのでは?との恐怖感が先だって、もはやこのまま山に向かって前進するという選択肢はなく、その場で退却を決断したのでした(泣)

最近は人里近くでのクマ出没の情報も良く聞くので、なんとなく怖い感じはしていたのですが、まさか本当に出会う日がやってくるとは思ってもいませんでした。まあ命あってのサイクリングなので何事も無くて良かったというべきか……。

美しい紅葉の中を走っていきます美しい紅葉の中を走っていきます photo:Kosuke.Kawai
気を取り直して、新道の国道122号まで戻ってサイクリングを再開しましたが、こちらでも上々の紅葉が目の前に広がっていて、十分満足のいく紅葉ライドとなりました。

足尾の閉鎖された小学校足尾の閉鎖された小学校 photo:Kosuke.Kawai今は誰もいない長屋の集落今は誰もいない長屋の集落 photo:Kosuke.Kawai足尾の町に近づいてゆくと、閉鎖された学校や人の住まなくなった集落などの建物が目につくようになってきます。その昔銅山の全盛期には、宇都宮に次ぐ栃木県第二の都市だったというのだから驚きです!いまはすっかり過疎化がすすみ、ここだけが昭和のまま時間が止まってしまっているようです。

そんなタイムスリップしたような空間を進んでゆくと、目の前に鉄道の線路が見えてきました。こちらの路線"わたらせ渓谷鐡道"の現在の終点"間藤"から、その先に延びる"足尾本山"までの廃線跡をこのあと巡ってみたいと思います。

この鉄道はもと国鉄足尾線として、足尾銅山で産出された銅鉱石や、精錬のための硫酸を運搬するための産業鉄道として敷設され、明治から昭和にかけては大いににぎわったようですが、1973年に銅山が閉山されるとその後は廃れる一方で、国鉄民営化と同時に第三セクターの"わたらせ渓谷鐡道"に転換して、今はむしろ観光鉄道としての色合いを強めて存在感を見せて今に至っています。

今回はそんな足尾銅山につながっていた、旧国鉄足尾線の廃線区間と、足尾銅山の跡を巡ってみたいと思います。間藤駅から先の線路は今もほぼ残っていますが、1987年の貨物輸送終了から30年の月日の流れを感じさせる廃墟感が滲み出ていました。

旧国鉄足尾線の廃線旧国鉄足尾線の廃線 photo:Kosuke.Kawai踏切もその機能を止めたまま残されています踏切もその機能を止めたまま残されています photo:Kosuke.Kawai

使われることのない隧道使われることのない隧道 photo:Kosuke.Kawaiここだけ時間が止まっているかのようここだけ時間が止まっているかのよう photo:Kosuke.Kawai


線路に沿って自転車を走らせていると、そんな時間が止まったままの風景は美しくもあり、個人的には見ていて飽きることがありません。2kmほど走ると足尾線の本当の終点"足尾本山駅"構内に線路は入ってゆきます。ここがまさに足尾銅山の中心地であり、日本の公害事件の始まりだったりもするのですが、今は静かに時の流れに身をゆだねているようでした。

山奥に威容を誇る工場には、精錬用の硫酸のタンクや巨大な煙突などが現存しますが、今は静かすぎてちょっと気味が悪いくらい。ここからさらに奥に進んで行くと、荒廃したはげ山が姿を現します。銅山から出た有害なガスで、今に至るも草木の生えない不毛地帯が広がっていました。

渡良瀬川の流れを見つめる渡良瀬川の流れを見つめる photo:Kosuke.Kawai異様な雰囲気の錆びついた廃工場異様な雰囲気の錆びついた廃工場 photo:Kosuke.Kawai

水力発電所の跡地です水力発電所の跡地です photo:Kosuke.Kawai足尾本山にある古川橋は1891年に架けられた日本最古の鉄橋足尾本山にある古川橋は1891年に架けられた日本最古の鉄橋 photo:Kosuke.Kawai

松木渓谷から先は自転車も通行止めになっていました松木渓谷から先は自転車も通行止めになっていました photo:Kosuke.Kawai40代以上の人には懐かしい名前かも?40代以上の人には懐かしい名前かも? photo:Kosuke.Kawai


草木が生えなくなったことで、保水力が無くなった山からの土砂流出を防ぐために、渡良瀬川には巨大な砂防ダムがいくつも築かれ、ここもまた一種独特の風景を作り出しています。それにしても、この取り返しのつかない自然破壊の爪痕を見るにつけ、人間の業の深さを感じずにはいられません。

川沿いに奥へ進んでいくと、松木渓谷というところで道は通行禁止となっており、工事用車両を除いて自転車も含めて車両は進入禁止ということで、仕方ないのでここから引き返すことにします。ここからの帰路でも、かつてこの地域がにぎわっていた事を今に伝える住宅跡や発電所跡などの遺構が数多く残っており、古い物好きにはある意味楽しくて仕方のない場所なのでありました。

いろいろ見ていると時間がいくらあっても足りないので、後ろ髪をひかれつつも、帰りの列車の時間も気になってきたのでそろそろ引き返すことにしましょう。

帰りはもちろんわたらせ渓谷鐡道で!ゆったり輪行中帰りはもちろんわたらせ渓谷鐡道で!ゆったり輪行中 photo:Kosuke.Kawai首都圏色のキハ35の外吊り式の扉に興味津々首都圏色のキハ35の外吊り式の扉に興味津々 photo:Kosuke.Kawai


足尾の駅で遅めのお昼に。金谷ベーカリーのパンをいただきます足尾の駅で遅めのお昼に。金谷ベーカリーのパンをいただきます photo:Kosuke.Kawai
帰りはもちろんわたらせ渓谷鐡道を利用しないわけににはいきません! 乗車するのは終点の"間藤"から一駅先の"足尾"からにします。こちらの駅舎がまた昭和のままの雰囲気で、古い車両も留置してあったりと、テツ店長的にはテーマパークのような場所なのでありました(笑)これまで忙しく活動していて昼食を取る時間もなかったので、駅のホームで列車を待つあいだに、買っておいたパンをかじりながら遅めのランチタイムとなりました。

しばらく古い駅舎や車両などを観察していると、お迎えの列車がやってきました!今回はあらかじめ調べていたトロッコ列車"トロッコわっしー号"に乗って、走る列車から紅葉を楽しもうという算段なのでした。乗り込んでみると、本当に窓のない開けっ広げの車内?でしたが、そのおかげでとにかく眺望は抜群なのでありました。幸い自転車用の冬用ジャージも防風性をいかんなく発揮してくれて、思ったより快適にトロッコ列車の旅を楽しむことができました。

"トロッコわっしー号"が到着!"トロッコわっしー号"が到着! photo:Kosuke.Kawai
トロッコ列車"トロッコわっしー号"は窓がないんですトロッコ列車"トロッコわっしー号"は窓がないんです photo:Kosuke.Kawaiわたらせ渓谷鐡道の"水沼駅はホームと温泉が直結していて至極便利!わたらせ渓谷鐡道の"水沼駅はホームと温泉が直結していて至極便利! photo:Kosuke.Kawai


正味1時間の快適なトロッコ列車の旅でしたが、ちょっと途中下車することにします。わたらせ渓谷鐡道の"水沼駅"は、なんと駅自体が温泉施設となっており、駅から出ることなくひと風呂浴びることができるのです!次の列車が来るまで約1時間あるので、ゆっくりと温泉に浸かって冷えた体を温めて、すっかりリフレッシュしたのでした。

相老駅で東武特急りょうもう号に乗り換え相老駅で東武特急りょうもう号に乗り換え photo:Kosuke.Kawai旅の〆は千代田線~小田急線直通のロマンスカー・メトロホームウェイ号旅の〆は千代田線~小田急線直通のロマンスカー・メトロホームウェイ号 photo:Kosuke.Kawaiこの後はテツ店長の面目躍如?といったところで、予め入念に調べておいた特急乗り継ぎプランに沿って、快適な鉄道の旅を満喫します。

まずはわたらせ渓谷鐡道の普通列車で相老駅まで行き、そこからは東武特急りょうもう号に乗車。そして、北千住駅で乗り換えて千代田線~小田急線直通のロマンスカー・メトロホームウェイ号で、夜のラッシュアワーの都心を通り抜けて快適な輪行旅を楽しんだのでした。

今回は鉄道遺構に産業遺構、加えて色んな特急列車にも乗れて、これまた鉄分豊富な旅が満喫できましたね(笑)おまけにクマにも遭遇するというオマケもついて、思い出深いサイクリングにもなりましたし……。

こうして記事を書いている間も、時刻表を見ながら計画を立てるのが楽しくてたまらないテツ店長なのですが、次はどこへ向かうのやら……。

次回の旅も楽しみにしてもらえたら幸いです。それではまたお会いしましょう!



河井 孝介河井 孝介 旅する人 河井孝介プロフィール

バイクプラス多摩センターの店長を務める48歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。

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