国内屈指の難易度を誇るMTB XCマラソンレース「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝」。このレースでは、レースを走り抜くテクニックと体力に加えて事前準備が重要となる。そこで何が必要なのか5人の選手にノウハウを聞いてみた。



尖った石が容赦なく選手を襲うセルフディスカバリー・イン・王滝尖った石が容赦なく選手を襲うセルフディスカバリー・イン・王滝
国内屈指のMTB XCマラソンレース、セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝(以下、SDA王滝)。SDA王滝で良い結果を残すためには、選手たちは高いハードルをいくつか乗り越えなければならない。1つは登りと下りしか無い未舗装区間をクリアするための体力とテクニックが必要という問題だ。これらの要素はSDA王滝に参加する前に鍛え上げておきたい。

「できる限り身軽にしようと思っています」池田佑樹「できる限り身軽にしようと思っています」池田佑樹 「ショップでバイクを整備してもらえれば、トラブルは少なくなります」國井敏夫「ショップでバイクを整備してもらえれば、トラブルは少なくなります」國井敏夫 選手自身のフィジカル・テクニック面に加えて、SDA王滝ではトラブルへの対処能力と携行品の事前準備が求められる。SDA王滝に参加する選手は、レース中にどのようなハプニングが起こるのかを想定し、対策を練らなければならないのである。初参加の選手はインターネットや仲間から情報を得ておかなければ、痛い目をみるかもしれない。

そもそもなぜ事前準備が必要なのだろうか。SDA王滝ではご当地グルメが振る舞われるエイドステーションや、パンク修理を手助けしてくれるメカニックなどが用意されていないからだ。完走するためには選手が自分自身でケアをする必要がある。また、ルールには制限時間を超過した場合でも、自走でスタート地点まで戻る必要があると記されている。一度、ダート区間に入ってしまうと誰も助けてくれないのだ。

SDA王滝のレースコースにエスケープルートがほぼ無いところにも、事前準備を怠ってはいけない理由がある。大会スタッフが詰めているチェックポイントは120kmの間に3つしかないため、万が一、機材トラブルで動けなくなったとしても、回収車がすぐに駆けつけてくれるという可能性は少ない。なんとかチェックポイントやゴールまで移動しようと、何kmもランニングしたという話は珍しくない。リタイヤにも膨大な労力が必要ならば、トラブルに見舞われる度に処置して走ったほうが楽なのかもしれない。

では何をどう対策すればよいのだろう。100kmや120kmを走る選手たちはどのような装備でレースにのぞむのか。優勝を果たした宮津旭(パックスプロジェクト)と2位の池田佑樹(トピーク・エルゴン)、MTBエリートライダーの國井敏夫(マイルポストBMCレーシング)、合田正之(3UP)、毎回100kmクラスに出場する難波江啓(ライトウェイプロダクツジャパン)にコメントを伺った。

バイクに詰まるSDA王滝のノウハウ

SDA王滝を走っている途中にネジが緩んできた、チェーンが切れた、ブレーキパッド(シュー)がすり減ってしまったというトラブルをよく耳にする。「バイクに関してはショップで整備していれば問題ないと思います」というのは國井選手だ。整備不良は怪我につながるため、SDA王滝に出場するならば事前に一度ショップで点検してもらったほうが良いだろう。

メリダ BIG.NINETY-NINE 合田正之(3UP)メリダ BIG.NINETY-NINE 合田正之(3UP)
チューブをダウンチューブガードとして利用しているチューブをダウンチューブガードとして利用している タイヤのパッケージを利用した手作りフェンダータイヤのパッケージを利用した手作りフェンダー


もちろん整備を行っていたとしてもネジの緩みやチェーントラブルなどが発生しやすいのがSDA王滝だという。これらのトラブルに対処するためにミニツールやチェーンカッター、チェーンのリンクも持ち運びたい。もちろんトップを走る選手たちも携行している。

最低限の整備に加えてSDA王滝スペシャルバイクに仕立てている選手も数多い。合田選手は雨、砂対策として簡易フェンダーを前後に装着。タイヤが跳ねた石でフレームが傷つかないように、タイヤチューブを利用してトップチューブガードを取り付けていたことも印象深い。

國井選手はサドルバッグを標準装備のベルトに加えてソックスバンドで固定していた。シートポストに取り付けるCO2ボンベマウントのベルトの内側にはチューブを巻きつけている。いずれも常に振動がバイクを襲い続けるSDA王滝への対応策だ。

GT FORCE 難波江啓(ライトウェイプロダクツジャパン)GT FORCE 難波江啓(ライトウェイプロダクツジャパン)
クッション量が多いものを選ぶのも手の1つだクッション量が多いものを選ぶのも手の1つだ 手書きのメッセージを見ると力が湧くという手書きのメッセージを見ると力が湧くという


SDA王滝100kmクラスに毎回出場し続けているライトウェイプロダクツジャパンの難波江選手。毎回がチャレンジという難波江選手は、身体への負担が少なく、トラクションを掛けやすいフルサスペンションバイクを推す。加えて、難波江選手はサドルもクッション量が多いものを選び、身体への負担を最小限に抑えている。完走を目的とするならば、長丁場を想定したバイクやパーツ選びも重要だろう。

パンクしやすいSDA王滝の傾向と対策

SDA王滝では先の尖った岩が転がるSDA王滝のコースでは、サイドカットやリム打ちパンクが発生しやすい。120kmで先頭争いする池田選手はSDA王滝のために、タイヤを普段から使い慣れているコンチネンタル RACE KINGから同ブランド X KINGに変更している。

キャニオン LUX CF 29 池田佑樹(トピーク・エルゴン)キャニオン LUX CF 29 池田佑樹(トピーク・エルゴン)
その理由はサイドノブが高いタイヤはサイドカットする可能性が低くなるからだという。加えて、「転がりの軽さはRACE KINGが勝りますが、砂礫が多いSDA王滝のコースではノブが高いほうがグリップ力につながりますからね」とタイヤを変えている理由を教えてくれた。

対して、マイルポストBMCレーシングの國井選手は転がりの軽さを優先し、タイヤブロックの背が低いIRC G-CLAWを選択している。「パンクや下りのスピードが落ちるリスクもありますが、今回は登りでの転がりを優先させました」とは國井選手だ。結果としてはパンクに見舞われること無く3位でフィニッシュしている。パンクさせないという自信を持つならば、攻めたスタイルでも良いかもしれない。

サイドノブが高いことでパンクリスクが減るという(池田選手、コンチネンタル X KING)サイドノブが高いことでパンクリスクが減るという(池田選手、コンチネンタル X KING) 登りでの軽快感を優先しブロックの背が低いIRC G-CLAWをアッセンブル(國井選手)登りでの軽快感を優先しブロックの背が低いIRC G-CLAWをアッセンブル(國井選手)

パンク修理アイテム「サムライスォード」をバーエンドに入れているパンク修理アイテム「サムライスォード」をバーエンドに入れている 瞬間パンク修復剤IRC ファストリスポーンも持つという瞬間パンク修復剤IRC ファストリスポーンも持つという

池田選手のサドルバッグの中身。軽量化のために最小限に留められているという池田選手のサドルバッグの中身。軽量化のために最小限に留められているという マウントの内側にチューブを巻きつけ、振動で脱落しないようにしているマウントの内側にチューブを巻きつけ、振動で脱落しないようにしている


対象的なタイヤ選択をしている2選手だが、どちらもタイヤにシーラント剤をたっぷりと入れるそうだ。シーラント剤で塞ぐことができるパンクが複数回発生した場合の対策だろう。

タイヤ修理キットとして替えチューブとCO2ボンベ、タイヤレバーはもちろん必携アイテムだ。池田選手はタイヤの穴を埋めるサムライスォードというアイテムを持っていたため、替えチューブは1本のみの用意だったが、その他の選手は2本持ち運ぶことが基本なようだ。

BMC teamelite TE01 國井敏夫(マイルポストBMCレーシング)BMC teamelite TE01 國井敏夫(マイルポストBMCレーシング)
加えて、國井選手はファストリスポーンという瞬間パンク修復剤やタイヤブートを持つという。池田選手もタイヤブート代わりにタイヤの切れ端を用意しているという。この切れ端を替えチューブのバルブに巻きつけ、チューブとバルブが擦れることを防いでいるとのことだ。パンクさせないテクニックを持っている選手たちでさえ万全の準備を行うのだから、一般的な選手も過信は禁物だろう。

長いレース時間に対応する補給

SDA王滝は長時間バイクに乗り続けるためレース中の補給が必要だ。水分はコース上でも追加補充できるが、エネルギーになる食べ物はほとんど用意されていないため、食べ物関連も対策しておきたい。

パックスプロジェクト -FS 29er 宮津旭(パックスプロジェクト)パックスプロジェクト -FS 29er 宮津旭(パックスプロジェクト)
120kmクラスで優勝した宮津選手は、ハイドレーションバッグにはコーラを、ボトルにはエネルギージェルを入れ、トップチューブは固形のエナジーバーを貼り付けレースに臨んだ。メインの補給はドリンクとジェルとし、サブの補給として固形食を用意しているスタイルだ。

このスタイルは池田選手も同様だが、池田選手の場合は身軽さを優先するためにスポーツドリンク入りボトルを2本用意し、ハイドレーションバッグを背負わないという選択をした。また、固形のエナジーバーはあらかじめ包装から取り出し、一口大に丸めておくという。包装を外している暇や余裕が無いときには有効なノウハウだろう。

ハイドレーションのためにバックパックを背負うスタイルがスタンダードだ(宮津選手)ハイドレーションのためにバックパックを背負うスタイルがスタンダードだ(宮津選手) 中にはボトル2本差の選手も中にはボトル2本差の選手も

宮津選手はパワーバーを直接トップチューブに貼り付けていた宮津選手はパワーバーを直接トップチューブに貼り付けていた 補給食の取り出しやすさに美点があるトップチューブバッグ(合田選手)補給食の取り出しやすさに美点があるトップチューブバッグ(合田選手)


3UPの合田選手はエナジージェルを中心とした補給に羊羹を持ち運んだという。合田選手が宮津選手や池田選手と異なるポイントはトップチューブバッグを使用していることだ。ジャージのポケットよりもトップチューブバッグの方が補給を取り出しやすいことは想像に難くない。ストレスフリーにレースを進めることはSDA王滝では重要なのだろう。

ジェル系補給食をメインとする場合、ジェルを口にするタイミングは30~40分に1回、量は約1袋分ぐらいと國井選手は説明する。固形物がメインの場合は1時間に1回というペースだという。いずれもエネルギーを切らさないようにすることが鉄則だ。また、ジェル系補給食はあらかじめフラスコに移し、飲みやすくすると良いだろう。レース中にゴミを出さないということもメリットだ。

補給はパフォーマンス維持のために必要不可欠だ補給はパフォーマンス維持のために必要不可欠だ メイタンの2RUNを摂り、足つり対策もバッチリだメイタンの2RUNを摂り、足つり対策もバッチリだ


レース中の補給に加えて、レース前の朝食も体調に影響をあたえるだろう。池田選手は朝食から長めのバゲットを丸々1本とバナナや特製ジュースなどを食べ、レースに備えるそうだ。朝食は喉を通らないという方でも、小腹を満たした状態でスタートラインに並べば、レースを上手く進められるだろう。



SDA王滝のために用意する準備は数多く、スタート前の準備もレースの一部といっても過言ではないはずだ。準備内容は人それぞれで、経験を活かし装備品を削る人や、ありとあらゆる状況を想定し重装備の人もいる。自分に適した装備品を見つけ出すこともSDA王滝の楽しさの1つではないだろうか。
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