2016/08/27(土) - 09:53
8月20日(土)、21日(日)にわたって開催されたシマノ鈴鹿ロードレース。全国から1万人を超えるサイクリストが集うホビーレースのお祭りの様子をレポートします。
国内最大規模のロードレースイベントとして、並ぶもののない人気を誇るシマノ鈴鹿ロードレース。毎年8月の下旬に夏休みを締めくくるオンロードバイクの祭典として開催され続けてきた、33年目を迎えた歴史ある大会だ。
2日間を通して集まるサイクリストは実に1万人超と、参加人数を見ても日本一。舞台となるのも日本一のサーキットと名高い鈴鹿サーキット。F1日本GPやオートバイの鈴鹿8時間耐久といったモータースポーツの中でも最高峰のイベントを数多く開催してきた実績のある由緒正しい会場である。
全長5.8kmの国際コースはモータースポーツで使われるのと同じもの。周回の向きこそ逆になるが、多くのドライバーを苦しめるテクニカルなコースレイアウトはサイクリストにとっても走り甲斐のあるコースだ。起伏に富んだ丘陵地帯に大小様々なコーナーを配置したコースはアタックポイントもたくさん。
ピットの位置取りから始まる土曜日 ロードレースにTT、エンデューロと目白押しの1日目
土曜の早朝。4時ごろに現地へと到着した私たちだが、会場のゲート前には既に参加者たちが列を成している。そう、ピットの場所取りのために集まった参加者たちだ。夏まっただ中で行われるシマノ鈴鹿ロードにおいて、1日を過ごす場所取りは死活問題ともいえる。
ゲートがオープンすると同時に我先に駆け込んでいく参加者たち。陽も昇らない時間帯だが、ダッシュを決めて会場へと駆け込んでいく参加者たちの姿は、既にレースが始まっているかのよう。参加者受付がオープンすると、あっという間に長蛇の列が出来上がる。
そんな慌ただしい空気の中、試走タイムでは多くの参加者がコースイン。コースの距離感や気をつけるポイントをチェックするために、特に初心者の方にはマストな試走時間は長めにとられている。この日は朝から蒸し暑く、試走が終わるころには汗びっしょりだ。その後、開会式が行われるといよいよレースのスタートだ。
トップバッターとなるのは、「5ステージスズカ」の第1ステージ。2日間で3つのロードレースと個人TT、チームTTを戦うチーム対抗ステージレースの初戦から、シマノ鈴鹿ロードは始まった。そして、ほぼ同時に「5周の部」もスタート。同じ時間内に異なるいくつものレースが同時に進行するのも、シマノ鈴鹿ロードならでは。
多くの種目が開催されるシマノ鈴鹿ロードだが、大半を占めるのは周回数が決まったロードレース。脚力や年齢、性別によって細かく分けられたカテゴリーが用意され、自分のレベルに合わせたレースを楽しめるようになっているのは嬉しいところ。
多くのレースはゴールスプリントで決着がつくため、スプリンターの方にとっては俄然気合の入る2日間だが、決してスプリンターのみが楽しめる大会というわけではない。アップダウンに富んだコースは逃げも決まりやすい。逃げたい選手と逃がしたくない選手のせめぎ合いもあり、ロードレースの駆け引きを実際に体験できる貴重なレースとなっている。
もちろん、ロードレースだけがシマノ鈴鹿の魅力ではない。タイムトライアル系の種目が充実していることも、シマノ鈴鹿が高い人気を持っている理由の一つでもある。1日目には個人TTとチームTTの両方が行われ、自分と仲間たちの限界へと挑む走りを多くの参加者たちが見せてくれた。
1日目の目玉種目ともいえるのが、最大の参加者数を誇る2時間エンデューロ。参加チーム約840チーム参加者数2250名と、シマノ鈴鹿でもっとも長いスタート待機列が形成される。スタートの号砲と共にホームストレートを埋め尽くし、先頭がシケインに到達しても最後尾は未だスタートしないほどの車列は圧巻の一言である。ちなみに最後尾のスタートまで、3分ほどかかっていた。
これだけの人数がいるエンデューロとあって、応援するチームの盛り上がりも半端ではない。チームメイトたちでごった返すピットエリアは、次々に帰ってくるライダーへの労いと走りだすライダーたちへの応援の声で満たされることとなった。
そんな楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもので、あっという間に陽が落ちていく。土曜のみの参加というチームや人も多いためか、1日目の終了時にはあちらこちらで記念撮影している様子がちらほら。そんな少しさびしげな様子の会場を励ますように花火が打ち上げられれば、1日目の終わりである。
虹が出迎えた2日目 レース以外も楽しめるシマノ鈴鹿ロード
さて、明くる日曜日も天気は快晴。とはいえ、すこし気温は下がり多少の過ごしやすさも出てきた。そんな中、マスターズや小学生のレースがどんどんと進行していく。いくつになっても自転車レースを楽しんでいる様子は変わらない。
熱いレースが繰り広げられる中、ピットビルでは初心者向けの走り方講座や絹代さんによる女子自転車講座、シマノレーシングの栄養管理士を務めていた河南こころさんによるサイクリストのための栄養学講座などが開講され、多くの参加者を集めていた。
また、ピットの裏側ではブラッキー中島さんによるウィーラースクールが今年も開催されていた。各地から集まったゲストライダー達とともに自転車の乗り方を学べるとあって、多くのキッズ達が参加する人気企画である。憧れの選手からサインがもらえるチャンスもあり、未来のレーサーたちのハートをがっちりつかんでいたようだ。ちなみにウィーラースクールは、大人向けの走り方講座もあり、そちらも受講者たちの熱心さは変わらず。基礎をもう一度確かめたい参加者たちがたくさん集まった。
そういったサブイベントに加え、シマノ鈴鹿に欠かせないのが全国から多くの出展社が集まるブースエリアだろう。新製品発表の時期と重なることもあり、シマノ鈴鹿で初めて一般向けにお披露目されるバイクやパーツなども多く、機材好きなサイクリストにとってはまさに天国。試乗車も充実しており、下手なサイクルショーが裸足で逃げだすほどの規模のブースエリアとなっている。
さて、そんな一日を締めくくるのは国内外のプロ選手たちが中心となって走る国際ロード(レースレポートはこちら)。トッププロが鎬を削り合う華やかなレースだが、一般参加のホビーライダーには別の楽しみ方もある。果たしてプロのスピードにどこまで付いていけるのか?というセルフチャレンジだ。
ピットエリアも心得たもので、プロの応援ももちろんだが千切れかけている仲間に対する声援も欠かさない。今年はなかなかアタックが決まらず、一般ライダーにとっては地獄のような展開であっただけに、完走できた喜びはひとしおだったのではないだろうか。
あっという間に駆け抜けた2日間。表彰台を目指してスプリントに挑む人がいれば、仲間の前でアピールすべくアタックする人、完走を目標にして走り出す人、仲間を応援するために来た人もいる。人それぞれのスタイルで楽しむことができるシマノ鈴鹿ロードは、年に一度のお祭りレースに相応しい熱気が満ちていた。
text:Naoki.YASUOKA
photo:photo:Masanao.Tomita,Naoki.Yasuoka,Gakuto.fujiwara
国内最大規模のロードレースイベントとして、並ぶもののない人気を誇るシマノ鈴鹿ロードレース。毎年8月の下旬に夏休みを締めくくるオンロードバイクの祭典として開催され続けてきた、33年目を迎えた歴史ある大会だ。
2日間を通して集まるサイクリストは実に1万人超と、参加人数を見ても日本一。舞台となるのも日本一のサーキットと名高い鈴鹿サーキット。F1日本GPやオートバイの鈴鹿8時間耐久といったモータースポーツの中でも最高峰のイベントを数多く開催してきた実績のある由緒正しい会場である。
全長5.8kmの国際コースはモータースポーツで使われるのと同じもの。周回の向きこそ逆になるが、多くのドライバーを苦しめるテクニカルなコースレイアウトはサイクリストにとっても走り甲斐のあるコースだ。起伏に富んだ丘陵地帯に大小様々なコーナーを配置したコースはアタックポイントもたくさん。
ピットの位置取りから始まる土曜日 ロードレースにTT、エンデューロと目白押しの1日目
土曜の早朝。4時ごろに現地へと到着した私たちだが、会場のゲート前には既に参加者たちが列を成している。そう、ピットの場所取りのために集まった参加者たちだ。夏まっただ中で行われるシマノ鈴鹿ロードにおいて、1日を過ごす場所取りは死活問題ともいえる。
ゲートがオープンすると同時に我先に駆け込んでいく参加者たち。陽も昇らない時間帯だが、ダッシュを決めて会場へと駆け込んでいく参加者たちの姿は、既にレースが始まっているかのよう。参加者受付がオープンすると、あっという間に長蛇の列が出来上がる。
そんな慌ただしい空気の中、試走タイムでは多くの参加者がコースイン。コースの距離感や気をつけるポイントをチェックするために、特に初心者の方にはマストな試走時間は長めにとられている。この日は朝から蒸し暑く、試走が終わるころには汗びっしょりだ。その後、開会式が行われるといよいよレースのスタートだ。
トップバッターとなるのは、「5ステージスズカ」の第1ステージ。2日間で3つのロードレースと個人TT、チームTTを戦うチーム対抗ステージレースの初戦から、シマノ鈴鹿ロードは始まった。そして、ほぼ同時に「5周の部」もスタート。同じ時間内に異なるいくつものレースが同時に進行するのも、シマノ鈴鹿ロードならでは。
多くの種目が開催されるシマノ鈴鹿ロードだが、大半を占めるのは周回数が決まったロードレース。脚力や年齢、性別によって細かく分けられたカテゴリーが用意され、自分のレベルに合わせたレースを楽しめるようになっているのは嬉しいところ。
多くのレースはゴールスプリントで決着がつくため、スプリンターの方にとっては俄然気合の入る2日間だが、決してスプリンターのみが楽しめる大会というわけではない。アップダウンに富んだコースは逃げも決まりやすい。逃げたい選手と逃がしたくない選手のせめぎ合いもあり、ロードレースの駆け引きを実際に体験できる貴重なレースとなっている。
もちろん、ロードレースだけがシマノ鈴鹿の魅力ではない。タイムトライアル系の種目が充実していることも、シマノ鈴鹿が高い人気を持っている理由の一つでもある。1日目には個人TTとチームTTの両方が行われ、自分と仲間たちの限界へと挑む走りを多くの参加者たちが見せてくれた。
1日目の目玉種目ともいえるのが、最大の参加者数を誇る2時間エンデューロ。参加チーム約840チーム参加者数2250名と、シマノ鈴鹿でもっとも長いスタート待機列が形成される。スタートの号砲と共にホームストレートを埋め尽くし、先頭がシケインに到達しても最後尾は未だスタートしないほどの車列は圧巻の一言である。ちなみに最後尾のスタートまで、3分ほどかかっていた。
これだけの人数がいるエンデューロとあって、応援するチームの盛り上がりも半端ではない。チームメイトたちでごった返すピットエリアは、次々に帰ってくるライダーへの労いと走りだすライダーたちへの応援の声で満たされることとなった。
そんな楽しい時間はすぐに過ぎてしまうもので、あっという間に陽が落ちていく。土曜のみの参加というチームや人も多いためか、1日目の終了時にはあちらこちらで記念撮影している様子がちらほら。そんな少しさびしげな様子の会場を励ますように花火が打ち上げられれば、1日目の終わりである。
虹が出迎えた2日目 レース以外も楽しめるシマノ鈴鹿ロード
さて、明くる日曜日も天気は快晴。とはいえ、すこし気温は下がり多少の過ごしやすさも出てきた。そんな中、マスターズや小学生のレースがどんどんと進行していく。いくつになっても自転車レースを楽しんでいる様子は変わらない。
熱いレースが繰り広げられる中、ピットビルでは初心者向けの走り方講座や絹代さんによる女子自転車講座、シマノレーシングの栄養管理士を務めていた河南こころさんによるサイクリストのための栄養学講座などが開講され、多くの参加者を集めていた。
また、ピットの裏側ではブラッキー中島さんによるウィーラースクールが今年も開催されていた。各地から集まったゲストライダー達とともに自転車の乗り方を学べるとあって、多くのキッズ達が参加する人気企画である。憧れの選手からサインがもらえるチャンスもあり、未来のレーサーたちのハートをがっちりつかんでいたようだ。ちなみにウィーラースクールは、大人向けの走り方講座もあり、そちらも受講者たちの熱心さは変わらず。基礎をもう一度確かめたい参加者たちがたくさん集まった。
そういったサブイベントに加え、シマノ鈴鹿に欠かせないのが全国から多くの出展社が集まるブースエリアだろう。新製品発表の時期と重なることもあり、シマノ鈴鹿で初めて一般向けにお披露目されるバイクやパーツなども多く、機材好きなサイクリストにとってはまさに天国。試乗車も充実しており、下手なサイクルショーが裸足で逃げだすほどの規模のブースエリアとなっている。
さて、そんな一日を締めくくるのは国内外のプロ選手たちが中心となって走る国際ロード(レースレポートはこちら)。トッププロが鎬を削り合う華やかなレースだが、一般参加のホビーライダーには別の楽しみ方もある。果たしてプロのスピードにどこまで付いていけるのか?というセルフチャレンジだ。
ピットエリアも心得たもので、プロの応援ももちろんだが千切れかけている仲間に対する声援も欠かさない。今年はなかなかアタックが決まらず、一般ライダーにとっては地獄のような展開であっただけに、完走できた喜びはひとしおだったのではないだろうか。
あっという間に駆け抜けた2日間。表彰台を目指してスプリントに挑む人がいれば、仲間の前でアピールすべくアタックする人、完走を目標にして走り出す人、仲間を応援するために来た人もいる。人それぞれのスタイルで楽しむことができるシマノ鈴鹿ロードは、年に一度のお祭りレースに相応しい熱気が満ちていた。
text:Naoki.YASUOKA
photo:photo:Masanao.Tomita,Naoki.Yasuoka,Gakuto.fujiwara