初めてのエタップに挑戦した河口まなぶさん。出走までをつづった第1篇につづく今回は、スタートから最初の難関である一級山岳までをレポートします。



朝4時に起床、朝食は前日に宿泊地サン・ジェルヴェのブーランジェリー(パン屋)で買った本場もののバゲットにハムを挟んで食べ、5時に宿を出発した。

実は今回、我々の走るコースは短縮されていた。日本を出発する前に分かったことなのだが、1つの峠で崖崩れの危険性があるために146km→122kmに短縮されており、1級山岳が1つキャンセルになっていた。なので、まぁ意外に楽にいけるだろう…という雰囲気が当初から漂っていた。ただし、122kmで獲得標高は2800m。楽ではないだろうなとは思っていた。

スタート前の朝一番乗りでマヴィックのサービスにてメンテ。スタート前の朝一番乗りでマヴィックのサービスにてメンテ。 photo:Manabu.Kawaguchi
我々はスタート地点付近までクルマで移動したが、自走でスタート地点にやってくる人も多い。ゼッケン8905番である僕のスタート位置は8。スタートは7時45分なので、まだまだかなり時間があった。しかも前日の試走でスプロケットが緩んでしまってカラカラと音を立てていたため、朝一番乗りでマヴィックのサービスでチェックをしてもらった。

エタップ・デュ・ツールでも当然、マヴィックはスタート地点や中間地点でメンテナンスのサービス場所を確保しており、何かあれば誰でもここに駆け込める。そしてレース中はマビックカーやマビック・バイクが常に全ての参加者に対してサポートを行ってくれる。

スタート前に私のバイクをメンテナンスしてもらった場所がスタート・ゲートの近くだったので、まずはそこで記念撮影をしておく。

スタート・ゲート前で記念写真が撮れるのはこの時だけ。スタート・ゲート前で記念写真が撮れるのはこの時だけ。 photo:Manabu.Kawaguchi
スタート1時間前でこの状態。続々と人が集まってくる。スタート1時間前でこの状態。続々と人が集まってくる。 photo:Manabu.Kawaguchi自身のスタート・エリアからスタート・ゲートまでは数キロある。自身のスタート・エリアからスタート・ゲートまでは数キロある。 photo:Manabu.Kawaguchi


それから自分たちのスタート・エリアへ移動したわけだが、やはり1万6000人が参加する巨大な大会だけに、スタート・ゲートから自分のスタート位置までは相当に離れていた。おそらくみなさんの中には、大きなマラソン大会に出た経験がある人も少なくないと思うが、例えば東京マラソンなどは、実際のスタート・ゲートから自分のスタート・エリアまでは随分遠いと感じる。実際に先頭がスタートしても自分がスタートするのは10分後、というような感覚だ。

ようやくスタート・ゲートに到着。ここからさらに10分はかかる。ようやくスタート・ゲートに到着。ここからさらに10分はかかる。 photo:Manabu.Kawaguchiスタートして18kmは気持ち良い下り基調が続く。爽快だ。スタートして18kmは気持ち良い下り基調が続く。爽快だ。 photo:Manabu.Kawaguchiしかもエタップ・デュ・ツールの場合は1万6000人の人に加えてバイクがあるため、当然整列すると場所を取るわけで、マラソンよりも大分スタート・エリアが長くなる印象だった。これは今までにない体験だった。

8000番台のスタート・エリアはスタート・ゲートからは遥か遠く…実際にゲートから自転車に乗って5分以上は走って移動をしたほどだった。つまりスタート・ゲートからは数キロ離れていると考えて良い。

そうしてスタートを待つ間に、どんどん人が押し寄せてくる。1000人単位でスタートしていくのだが、当然ゲートまでそれだけの自転車が移動していくので時間がかかる。実際に先頭がスタートしてから約1時間以上が経過して、ようやく我々のスタートとなったのだった。

走り始めは下り基調なので楽々と進んで行く。40km/h以上で軽々下るので脚も軽く回り、まさに気持ち良いサイクリング状態だ。そんな風にしてアッという間に18kmが過ぎ、そのまま給水所で最初の休憩を取る。

そしてその後から、最初の登りである2級山岳のアラビス峠に挑戦となった。アラビス峠は平均7%の登りが6.7km続く。まだスタートしたばかりとあって、さほどのダメージを受けずに登りきることができた。

ようやく2級山岳が始まる。この辺りはまだ余裕だった。ようやく2級山岳が始まる。この辺りはまだ余裕だった。 photo:Manabu.Kawaguchi
まだまだ穏やかな登り。アルプスの少女ハイジを思い出す光景。まだまだ穏やかな登り。アルプスの少女ハイジを思い出す光景。 photo:Manabu.Kawaguchiやはりヒルクライム仕様のスーパーシックスエヴォはかなりの武器。加えてコスミック・プロカーボンSLはカッチリとした印象で、登りで力が逃げない感覚が僕にもわかる。最初に見たときは40mmハイトのリムで大丈夫かなと思っていたが、重さ等は全く気にならない。おそらくこれがキシリウム・プロカーンSLだったら、さらに登りが楽に感じるのだろうなとすら思えたのだった。

2級山岳をクリアした後は気持ちの良い下り区間。そして30km地点にある最初のエイドステーションを迎えた。

エイドではアーモンドやレーズン、パンにチーズなどを用意。エイドではアーモンドやレーズン、パンにチーズなどを用意。 photo:Manabu.Kawaguchi
その他にもクラッカーやエビアンなども用意されていた。その他にもクラッカーやエビアンなども用意されていた。 photo:Manabu.Kawaguchiいよいよ1級山岳を登り始める。このころはすでにかなり高温。いよいよ1級山岳を登り始める。このころはすでにかなり高温。 photo:Manabu.Kawaguchi
エイドステーションでは日本同様に様々な食べ物が用意されるが、フランスらしいなと感じたのはチーズ、フランスパン、干しぶどう、いちじく、アーモンドなど、まるで簡単な食事感覚のものが多かったこと。ある意味横に、赤ワインが用意されていても全く不思議ではないラインナップだった。

飲み物は水、スポーツドリンク、コーラとこの辺りは世界共通。だが! フランスらしいと思えたのはエビアンがボトルで用意される他に、ペリエのビッグサイズが用意されていたこと。炭酸水が用意されるのは海外ならでは? といえるだろう。そして実はこの後、このペリエが極めて重宝するものになることを知ったのだった。

仲間と一緒に走っていることもあって、すっかりエイドステーションを満喫してしまった。距離はまだ90km以上残っている。そして次の登坂までの下りを颯爽と駆け抜けていった……が、颯爽だったのはおそらく、この日これが最後だった。

走り続けて36km地点に差し掛かる。海抜は906m。ここから距離11.7km、平均斜度5.8%の1級山岳、コロンビエール峠への登りが始まったのだった。平均斜度5.8%と聞けば、シクロワイアードの読者のみなさんはさして驚かないだろう。実際、それほどキツい登りではなかった。

しかし、この日の天気はドピーカンで、朝から温度はどんどん上昇し、この時既に気温は33度を指していた。それだけに登り自体は大した斜度ではなかったが、額からは汗が流れ、サングラスのレンズ面を滝のように落ちていく。

加えて暑さで頭がボーッとして、脚も回らなくなってきた。思ったより、キツい…そう思った時、マヴィックの方が後ろから「ヤバいです、熱中症になります」と言いつつ、僕の頭から首元にかけて冷水をかけてくれた。そして補給のジェルを口にして、なんとか平静を取り戻し、ヘロヘロになりながらも、コロンビエール峠の頂点に立ったのだ。

なんとか1級山岳をクリア。この時点ですでにヘロヘロな状態だった。なんとか1級山岳をクリア。この時点ですでにヘロヘロな状態だった。 photo:Manabu.Kawaguchi
こうして初めての1級山岳は、想像以上にハードだった。だが、これはまだ序章に過ぎず、この時点で残りは70km近くあった。

text&photo:河口まなぶ



河口まなぶさん河口まなぶさん 筆者プロフィール

河口まなぶ 1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。2010年にweb上の自動車部「LOVECARS!」(http:/lovecars.jp )(部員約2,200名)を設立し主宰。Facebook上に「大人の自転車部」を設立し主宰、1万4千名ものメンバーが参加する。その他youtubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数5万4000人)を持つ。趣味はスイム、自転車、マラソン、トライアスロン。