「これからパスタでも食いにいくか?」 編集会議を終え、ホッと一息の編集部にメタボ会長が問いかけてきた。普段は焼き鳥かラーメンくらいしか誘ってくれないメタボ会長にしては珍しい心使いだ。

なんでまた急にパスタなの?とは思ったが、タダ飯のチャンスをみすみす逃すほど、我々編集部は裕福な状態ではない。

パスタに行くぞぉ!タダ飯につられてゾロゾロ出動だ。パスタに行くぞぉ!タダ飯につられてゾロゾロ出動だ。 夕暮れの中をパスタ目指してガシガシ進む。夕暮れの中をパスタ目指してガシガシ進む。


夜の街中を編集部によるトレインが続く。勝手にドンドン進むメタボ会長を追いかけておおよそ40分は走っただろうか? 
埼玉県狭山市にある1軒のイタリアンカフェ「ラ・ヴィータ」というお店に到着した。

店内は60席程度のオープンスペースで、落ち着きの中にも温もりを感じさせる素敵なたたずまいである。今年の10月7日に新装オープンしたばかりだという。

ラ・ヴィータに到着。「自転車担いでどうするつもりなの?」ラ・ヴィータに到着。「自転車担いでどうするつもりなの?」 落ち着いた雰囲気でかなりオシャレな店内だ。気持ち薄暗い照明が映し出す店内には大胆な鉢植えが並び、床材や壁材も温もりと同時にハイセンスな趣を演出している。

どうやらメタボ会長はこのカフェの常連さんのようで、店員さん達とも顔見知りの様子である。このオヤジはいつもこんな素敵な店で食事してるのかと思うと、無性に腹が立ってくる。

「会長はいつもこんな素敵なお店で食事されてるんですね。 ほんと羨ましい。」

皮肉たっぷりにメタボ会長に問いかけると

「いやいや、俺もこの店で食事するのは初めてなんだよ。いいお店だろ?」

常連さんじゃないの? 全く意味不明の答えにチンプンカンプンの編集部一同。違和感を抱きながらも、笑顔が素敵なお姉さんに案内され席に着く。席につくなりメタボ会長が笑顔のおねえさん相手に口を開く

「コイツらになんか適当に食べさして貰える?」

あらあら、ずいぶんと馴れ馴れしいオーダー方法ですね(苦)。こっちがハラハラしてしまう程の無礼講だ。お姉さんごめんなさいね。社内でならともかくと思いながらも、苦笑いを浮かべながら黙って座ってるしかない私達であった。

料理を前に嬉しそうなメタボ会長。ランチタイム以外なら店内に自転車を入れさせてもらえるのが嬉しい。料理を前に嬉しそうなメタボ会長。ランチタイム以外なら店内に自転車を入れさせてもらえるのが嬉しい。
こんな乱暴なオーダーにも、快く対応して料理を運んできてくれる笑顔のお姉さん。そのお姉さんの後ろから店長さんらしき人が走り寄ってきて、満面の笑みを浮かべながらメタボ会長に話しかけてきた。

「先生、お世話になりました。ご来店頂けて感激です!」

なんだよ!やっぱり知り合いじゃんか! だけど、先生ってどういう事ですか? アンタはいつから先生と名乗っているんですか? なんだかキナ臭い犯罪の匂いすら感じながら、メタボ会長に問い正す。

「会長が何でまた先生って呼ばれてるんですか? まさか世間様に迷惑をかけるような怪しい事とかしてないでしょうね?」

「ラーメン食べてるようにしか見えませんよ。」パスタをお箸で頬張る「ラーメン食べてるようにしか見えませんよ。」パスタをお箸で頬張る すると、箸でパスタを頬張りながらメタボ会長が答える。

「この店の内装デザインは俺が担当したんだよ。」

「え”?」

このむさくるしいオヤジがよりによってイタリアンカフェのデザインだとぉ? 冗談にもほどがあるというもんだ。

「会長! いくら冗談でも、お店の方に失礼ですよ!」 
不快感も露わに言葉を吐き捨てる私に対して、店長さんが微笑みながら

「おもしろいジョークですね(笑)。この素敵な内装が評判で、開店から連日フル回転なんですよ。お待ち頂くお客様も多くて申し訳ないくらいなんです。これもすべて先生あっての事ですから、先生には本当に感謝しています。」

「いやいや店長さん。あなたは確実に騙されてますよ! このオヤジは人に迷惑を掛ける事に関してだけは天才ですが、こんな素敵なお店をデザインなどできる筈がありませんから!」 喉まで出かかった言葉を、飲み込むのが精一杯の私だった。

店長さんが煽てるもんだから、このオッサンはかなりご機嫌です。店長さんが煽てるもんだから、このオッサンはかなりご機嫌です。 さては、本社の誰かがデザインした手柄をオヤジが立場を利用して横取りしたに違いない。 ちょうど明日、本社に行くから小山社長に聞いてみよう。 メタボ会長の化けの皮は、私がキッチリと剥がして見せましょう!

そんな不信感で満たされた私の心とは裏腹に、店長さんが次々と出して下さる美味しい料理が我々を至福の時間へと誘う。ワインリストトップにはイタリアの発泡ワイン「プロセッコ」が並んでいる。

「埼玉県でプロセッコを味わえるなんて、粋なお店ですね。」 飲みたい衝動を抑えながら私が問いかけると 

「そぉだろ!(笑)。ウチの啓がイタリアと言えばプロセッコですよって騒いでたの思い出して、ワインリストの先頭に加えるようオーナーに進言しちゃった。俺って偉い?」

ウチの啓とは、自転車とプロセッコの本場イタリアに以前住んでいた編集部コアスタッフ辻啓の事である。

偉いも何も別にアンタの手柄じゃなくない? なかば呆れながらも美味しい料理のおかげで、夢心地を彷徨う私達だった。

素敵な時間と料理を十二分に堪能し終え、再び自転車に跨り帰路に就く。自転車だったためプロセッコを味わえなかった事だけが心残りではあったが・・・。

ワイングラスの誘惑に負けそうになるが、飲酒運転はしません。ワイングラスの誘惑に負けそうになるが、飲酒運転はしません。 ゆったりとしたレイアウトの店内。多人数グループでも対応してくれるゆったりとしたレイアウトの店内。多人数グループでも対応してくれる


人気のピッツァ。お持ち帰りも可能です。人気のピッツァ。お持ち帰りも可能です。 プロセッコのオーダーに答える清水店長。ごちそうさまでしたプロセッコのオーダーに答える清水店長。ごちそうさまでした



次の日、本社で小山社長を見つけるなり、早速質問をぶつけてみた。 
「つかぬ事をお尋ねしますが、狭山のイタリアンはどなたがデザインされたんですか?」

すると、いつもの穏やかな表情の社長から帰って来た答えに、思わず腰が抜けそうになる。

「狭山の内装デザインはもちろん会長ですよ。照明プランと空調・換気プランも会長ですね。デザイン絡みの物件は全て会長が設計しますからね。 会長が設計する店舗はとても評判いいんですよ。」

期待に反する返答に、何故か悲しい気持ちにさせられる。
メタボ会長のあの風体とイタリアンの間には違和感しか存在できないんだけど・・・。

何となく狐に抓まれたような気分で編集部に戻る私だった。



次回ですか?
タダ飯ならガンガン付き合いまっせ!




岩田オーナーありがとうございました岩田オーナーありがとうございました イタリアンカフェ 「ラ・ヴィータ」 の岩田オーナーから読者のみなさんに素敵なプレゼントを頂きました。
11月10日までにご来店の方で、来店時に合言葉を言えばナント20%OFFにして下さるそうです。気になる合言葉は「メタボ会長の紹介です。」 ただし、小声でお願いしますとの事です。


イタリアンカフェ 「ラ・ヴィータ」  埼玉県狭山市入間川1432-1




* プロセッコとは・・・・

イタリア北部ヴェネト州でのみ生産される白発泡ワインで、いわゆるスプマンテ(スパークリングワイン)の一種。現在、「プロセッコ」と言う名称は、欧州連合の原産地名称保護制度で保護されており、コネリアーノ、ヴァルドッビアーデネのプロセッコ品種のみで生産されたワインにのみ使用することが出来る。今年のジロ・デ・イタリア第3ステージのゴール地点ヴァルドッビアーデネが、プロセッコの本場中の本場。

ジロ取材中の辻啓が高価なプロセッコ2本を無料でゲットしたものの、日本に持って帰れず、最終ステージ後のローマで2本とも開けてしまったのは(編集部内では)有名な話。




メタボ会長連載のバックナンバー こちら です


「ポイ捨てはダメだぞ!携帯灰皿を忘れずに。」「ポイ捨てはダメだぞ!携帯灰皿を忘れずに。」 メタボ会長
身長 : 172cm
体重 : 87kg→79kg
自転車歴 : 5ヶ月目

当サイト運営法人の代表取締役。
高校3年まで野球に明け暮れ、大学時代にオートバイのロードレースに夢中になり、卒業後メーカー系チームに所属し全日本選手権に3年間出場。鳴かず飛ばずで所属チームを解雇された後、平成元年に現法人を設立、平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となるが、その勤務実態や社内での立場は謎に包まれている。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。