ここ数年、国内でもさまざまなフィッティングやコーチングのサービスが始まっている。5月22~23日の2日間、それらのサービスを提供するコーチたちが一同に会し、コーチングスキルのレベルアップや情報交換を行う研修合宿を行った。その様子をスマートコーチングの安藤隼人氏のレポートで紹介しよう。



ひとりひとりが数多い経験と実績を持つコーチたちが集まった修善寺コーチング合宿ひとりひとりが数多い経験と実績を持つコーチたちが集まった修善寺コーチング合宿
5月22日、23日の2日間で、日本体育協会認定自転車コーチが中心となったコーチ研修合宿を修善寺サイクルスポーツセンターで行いました。この研修合宿は、日頃ロードや競輪選手のコーチとしてトップアスリートから初心者へ指導しているSMART COACHINGの安藤隼人コーチ、大磯クリテリウムなどのイベントを仕掛けながら自転車教室なども主催するWalk Rideの須田晋太郎コーチ、RETULフィッターでピラティスやパワートレーニングに詳しい福田昌弘氏(Hamster Spin)が発起人となりました。

お互いのコーチングスキルアップや情報交換、親睦を目的として他の指導者らに呼びかけたところ、アテネオリンピックの日本代表でサイクリングイベントを運営する田代恭崇氏(リンケージサイクリング)、立川市でサイクルクリニックを行なう二戸康寛氏(東京ヴェントス)、サイクルジャーナリスト山本健一氏、スポーツサイクル向けの製品開発を行うGROWTACの木村将行氏らも参加しました。今後の自転車界の発展には、初心者女性への的確な指導や女性への指導配慮も必要という考えから、日本女子ロードレース界を牽引している西加南子選手にも参加して頂きました。

自転車教室研修を行うWALKRIDE須田コーチ自転車教室研修を行うWALKRIDE須田コーチ 止まる基本動作を確認する福田氏止まる基本動作を確認する福田氏

250mバンクを走るSMART COACHING安藤コーチとLinkage cycling田代コーチ250mバンクを走るSMART COACHING安藤コーチとLinkage cycling田代コーチ 落車を想定した緊急対応研修を行うSMART COACHING安藤コーチ落車を想定した緊急対応研修を行うSMART COACHING安藤コーチ


初日は伊豆ベロドロームの250m室内バンクでピスト練習を行いました。現役時代にトラック競技をしていたコーチ陣も250mバンクは殆どが初めての体験です。250mバンク特有の強烈なコーナーリング重力をどのようにクリアすればいいかをお互いにコーチングし、ほどなくスムースなローテーションができるようになりました。

福田氏がパワーメーターの仕組みについて講義福田氏がパワーメーターの仕組みについて講義 サイクルスポーツセンターのBMX公認コースで研修を行ったサイクルスポーツセンターのBMX公認コースで研修を行った マウンテンバイクのインストラクターでもある須田コーチはBMXもさすがに上手くコントロールマウンテンバイクのインストラクターでもある須田コーチはBMXもさすがに上手くコントロール 2時間程バンク周回練習を行ったあとは、須田コーチによる初心者向けの自転車教室研修を開催。バンクの内側にコーンを並べて、基本的な「曲がる」「止まる」という技術の確認やスラロームなどを行いました。

特に、理屈が分からない子供などに対して、どのようにすればわかり易く、安全な走り方を教えることができるかなど、わかり易いレクチャー方法などを確認しあいました。

自転車教室の後は、安藤コーチが事故発生時の緊急対応の研修を行いました。「一緒に走っていたクライアントが峠の下りで落車し意識がありません。どうしますか?」というように、実際のコーチングやサイクリングツアー時の緊急対応を想定したワークショップ形式で実施されました。

具体的な内容としては、現場での一次救命処置方法や119番への連絡の取り方、頸椎固定の方法などを研修しました。提供しているサービスの安全に関わる事でもあり、取り組むコーチたちの表情は真剣そのものでした。

その後、宿に移動して福田氏によるパワーメーターの仕組みについての講義と、西選手による女性への指導についての講義で初日の研修は終わりました。

二日目は途中参加組に救命処置方法のおさらいをしながら、主にBMX研修を行いました。BMXは力ずくで漕いでも早く走ることはできず、ジャンプ、プッシュセクションやバーム(コーナー)に合わせて自転車と自分自身をうまくコントロールしなければ進みません。

そこで、BMXの元全日本チャンピオンでコースディレクターの佐伯進さんに、バイクをコントロールするポイントをレクチャーして頂きました。

日頃自転車を生業としているメンバーもほとんどがBMXは初めて。ビギナー視点に立ち戻り、徐々に体を動かす感覚を掴み、バイクをコントロールできるようになる楽しみを再認識していました。

日頃から指導する立場に回ることの多いメンバーですが、「自転車を操るだけで楽しい」「新たな事を教わる楽しさ」という忘れがちな気持ちを思い出せたようで、実り多い研修となりました。

この研修合宿の成果は、各メンバーの今後の指導やサービスにも反映されると思いますので、ぜひご期待ください。



研修のレポートは以上となる。ここでは、今回のコーチング合宿に集まった気鋭のコーチ/フィッターたちを紹介しよう。細かなサービス内容についてはそれぞれの公式サイトを参照して欲しい。

SMART COACHING 安藤隼人氏
新宿区四谷に居を構える「SMART COACHING」。宮澤崇史選手や、西加南子選手をはじめとして20名以上のプロサイクリストへとプライベートコーチングを行う安藤隼人氏が代表を務めるスタジオだ。
SMART COACHING オフィシャルサイト

Walk Ride 須田晋太郎氏
大磯クリテリウムをはじめとして、さまざまな自転車イベントを主催する株式会社Walk Ride。そのなかで、「自転車を考える、学ぶ、目標を達成する」ために始められたスクールが「シクロアカデミア」だ。須田晋太郎氏はシクロアカデミアを主導する主任コーチとして活躍している。
株式会社Walk Ride オフィシャルサイト

Hamster Spin 福田昌弘氏
フィッティングシステム ”RETUL”のプロフィッターでもあり、オーダーメイドインソール ”Solestar” の販売を手掛ける福田昌弘氏。常に最新の理論を積極的に取り入れ、RETULのみでなく、さまざまなフィッティングやトレーニングメソッドについて深い知見を持つ。
masahif Test Team

リンケージサイクリング 田代恭崇氏
2度の元全日本ロードレース王者でアテネオリンピック代表の田代恭崇氏が主宰するサイクリングスクールが、湘南は片瀬江ノ島にある「LINKAGE CYCLING」だ。「サイクリングの魅力を多くの人たちに伝え、みんなで楽しむ」をコンセプトに、レンタルサイクルやツアー型のスクールを行っている。
LINKAGE CYCLING オフィシャルサイト

東京ヴェントス 二戸康寛氏
立川市を拠点とする東京多摩地域密着型サイクルロードレースチームである東京VENTOS(ヴェントス)を立ち上げたのが、二戸康寛氏だ。チームの拠点となる「Punto Ventos」では、フィッティングやパーソナルコーチング、ペダリング解析といったサービスを提供している。
Punto Ventos オフィシャルサイト

GROWTAC 木村将行氏
ローラー台用の振動吸収材やクリートスペーサーなど、さまざまなアイディアパーツを世に送り出すGROWTAC。全く新しい駆動方式のローラー台「GT-Roller Flex2」は優れた実走感を持ち、スマートコーチングなどでも使用されている実績を持つ。
GROWTAC オフィシャルサイト


text:安藤隼人(スマートコーチング代表)
edit:Naoki.YASUOKA