都心のサイクリストにもおなじみの多摩湖サイクリングロード。その横にある西武遊園地にて、中学生までのキッズレーサーを対象としたレーシングスクール&エキシビジョンレース「ケルメスTOKYOin西武園ゆうえんち」が開催された。

西武遊園地の敷地内に設置された特設コースにて行なわれたケルメスTOKYO西武遊園地の敷地内に設置された特設コースにて行なわれたケルメスTOKYO
「ケルメスTOKYOin西武園ゆうえんち」はこれまで子供自転車学校や親子ブルベ、ジュニアロードレース、MTBやBMXでのパンプトラック講習などを行ってきた東京都自転車競技連盟(以下東京車連)が主催するジュニア育成イベント。今年6月に第1回大会が行われ今回で4回目の開催となる。講師は東京車連普及委員会の皆さんで、それぞれが日本体育協会指導員やUCI育成コーチなどの資格を持つ。

会場となったのは西武園遊園地の敷地内にパイロンで区切られた1周300m弱の特設コース。緩やかな緩斜面に高速コーナーから低速のシケインまで大小6つ程度コーナーが設けられ、道幅は意図的に狭く設定されている。スピードこそ上がらないもののバイクコントロールやブレーキングの体得にはうってつけのレイアウトだ。

カラーコーンを使ったジグザグ走行は定番の練習の1つカラーコーンを使ったジグザグ走行は定番の練習の1つ 小さな女の子でもドロップ部を持ってブレーキング小さな女の子でもドロップ部を持ってブレーキング


大会名の“ケルメス”とは、ヨーロッパではポピュラーな移動遊園地を伴うお祭りの中で行われるクリテリウム(周回)形式のロードレースのことである。特に自転車競技が盛んなベルギーやオランダでは平日休日を問わず様々な都市で開催される身近なイベントで、ケルメスTOKYOは本場同様に自転車競技を身近にすることを目的の1つとしている。

朝早くから開催されたイベントはレーシングスクールの座学から始まった。まずはホワイトボードに描かれたコース図を用いて解説が行われ、更に理解度を高めるために実際にコースを歩きながら各コーナーの特徴や適切な走りかたのコツ、注意点がキッズライダーたちにレクチャーされる。

狭いコースで集団走行を行うことで、広いコースでは安心して走れる様になる狭いコースで集団走行を行うことで、広いコースでは安心して走れる様になる ガードレールを使って制動距離を体得するレッスンガードレールを使って制動距離を体得するレッスン

朝早い時間からの開催だったがなんだか楽しそう朝早い時間からの開催だったがなんだか楽しそう 変速の動作等共に坂の登り方を実演する変速の動作等共に坂の登り方を実演する


座学の後は自転車に乗っての実技で、スキルや年齢、参加回数に合わせたクラスに分けられた後に行なわれた。最も速い中学生のクラスを担当したのは吉井功治さん。かつて日本鋪道(現チームNIPPO)などに所属し、トラックワールドカップのポイントレースで2位に入った実績を持ち、ローテーションの回し方やダンシングの活用法などレースを見据えた講義を展開していた。

一方小学生を中心としたビギナーを対象に講義を行ったのは東京車連普及委員会の主要メンバーである日置聡さん。ブレーキの掛け方や下りでのライディングポジション、カラーコーンを用いたジグザグ走行など非常に基本的な内容から、下りながら砂利道に突入してのブレーキングなど実践的な内容にも及んだ。

吉井さんによるレクチャーには親御さんたちの注目も集まった吉井さんによるレクチャーには親御さんたちの注目も集まった マンツーマンでレクチャーするシーンが多く見られたマンツーマンでレクチャーするシーンが多く見られた


今回は悪天候に加え、各地でイベントが開催されていたこともあって参加者数は過去3回に比べると少なかったそう。しかし、キッズライダーから質問のこまめに対応できたり、できなかったことを何度も繰り返せるなど少人数だからこそのメリットも多かった様だ。

親御さんたちに参加理由を訊いてみると「一家全員がサイクリストだから」であったり、「子供がツールを見てレースに興味を持ったから」など様々。そして、サッカーや野球など地域のスポーツクラブと同じ感覚で参加させている親御さんや、女の子の参加が多い。

コースが滑りやすく抜きづらいためレース前には改めて注意喚起が行なわれたコースが滑りやすく抜きづらいためレース前には改めて注意喚起が行なわれた プロ選手の様にドロップ部を持ってコーナーを攻めるプロ選手の様にドロップ部を持ってコーナーを攻める

女の子だってしっかりとバイクを倒してコーナリング女の子だってしっかりとバイクを倒してコーナリング Aクラスは集団走行もお手の物Aクラスは集団走行もお手の物


充実のスクール後にはタイムトライアルを経て速い順にABCの3クラスに分けられ、エキシビジョンレースのクリテリウムがスタート。Aクラスは中学生が中心の20周=約10分程度のレースで、先頭交代やアタックなどそのレース運びは実に本格的だった。また、コーナリングスピードは大人以上に速く、見ていた親御さんたちにとっては少々ヒヤヒヤものだったかもしれない。

続くBクラスは今大会では最多となる7人が参加したローリングスタートの10周回のレース。実力差が少ないために白熱のレース展開となり、最も親御さんの歓声が大きくなった。Cクラスはまだまだ自転車も小さなキッズたちによるレースだったが、息を荒くさせながら一生懸命に坂を登る姿はとても可愛らしい。

Bクラスも白熱のレース展開になったBクラスも白熱のレース展開になった 最後は「先生」を抑えてゴール最後は「先生」を抑えてゴール


この後、各クラスとも1回ずつレースを行い、吉井さんによるレースのおさらいと表彰式、記念撮影を経てイベントは終了。まだまだ走り足りない様子の元気なキッズたちは、ケルメスTOKYOでできた友達と次のレースの約束をしつつも、それぞれの家路についていった。

ところで現在、日本の自転車競技界ではジュニア(高校生)世代が急速に力を伸ばしているのはシクロワイアードでもお伝えしている通り。そして、ケルメスTOKYOはジュニア世代よりも更に若い世代の育成を目的としたイベントだ。シクロワイアードではケルメスTOKYOの終了後、東京車連普及委員会のケルメス担当である日置聡さん、主任コーチとして参加する元マディソン全日本王者の吉井功治さん、そしてサイクルスポーツ誌で編集部員を務める傍ら東京車連普及委員会副委員長としてイベントをまとめる松本敦さんにお話を伺った。



CW編集部:ケルメスTOKYOを開催するに至ったきっかけを教えてください。

日置さん:息子が自転車競技に興味を持ち始めた時に、競技を教えてくれるスクールが身近になく、ならば自分で作ってしまおうと考えたのが6年前のことです。現在では全国各地で行なわれているウィーラースクールも当時から存在していましたが、関西圏でしか行なわれていませんでした。

そこで、当時のウィーラースクールの代表にアドバイスを頂いて2006年から東京車連普及委員会でもキッズ向けのスクールを行う様になりました。しかし、ケルメスTOKYOの様にレース指向の高いイベントは今年の6月が初めての開催で、これまでのイベントのステップアップとして考えています。

東京車連普及委員会の主要メンバーである日置聡さん東京車連普及委員会の主要メンバーである日置聡さん ライディングの基本となるブレーキの掛け方をレクチャーする日置さんライディングの基本となるブレーキの掛け方をレクチャーする日置さん


吉井さん:海外での競技生活の中で、キッズの育成システムやレースがとても重要であると感じたからです。特に自転車競技が盛んなフランスやオーストラリアでは育成システムがとても充実しています。その一方で私が自転車競技を始めたのは20歳と遅かったのですが、コーナーの曲がり方やダンシングのタイミングなど身体の適切な使い方は独学で体得しました。

もし日本でも、地域のサッカークラブでボールの蹴り方やヘディング、トラップなど基礎的な技術を当たり前に教えてもらる様に、自転車の基本的な乗り方を教えてもらうことができれば、国全体の競技レベルが向上していくはずだと考えています。また、昨年まで務めていた日本ナショナルチームコーチとしての経験や、UCI(国際自転車競技連合)のコーチ育成プログラムで得た知識を生かせればと思っています。

CW編集部:ケルメスTOKYOが目標とすることは何でしょうか?

キッズと一緒に自らも自転車を楽しむ松本さんキッズと一緒に自らも自転車を楽しむ松本さん 松本さん:国内はもとより世界のレースで活躍する選手を育成することと、シンプルに楽しく安全に自転車に乗れる様になることが大きな目標です。9月に行なわれた東京国体に東京都代表として出場した橋詰丈選手(昭和第一学園)を始め、我々のイベントに参加した後に大きな大会で成果を残す選手が既に現れてきています。

日置さん:私はライディングスキルが上達することで安全な走行ができる様になることを重視しています。近頃は交通ルールを覚えることが安全への第一歩と捉える向きもありますが、余裕を持って自転車に乗ることが可能になれば楽しみつつ自然に交通ルールを覚えることができる、そしてレースでも不安を感じることなく楽しめるはずです。現ウィーラースクール代表であるブラッキー中島さんも同じことをおっしゃっています。

CW編集部:レースの中で鍛えられるものとは何でしょうか?

吉井さん:ケルメスTOKYOでは敢えて狭いコースでレースをすることでライディングテクニックの向上のみに目的を絞りました。スピードは出せませんが、道幅の広いコースでレースをした際に、より安全に楽しめる様になるはずです。東京車連では12月に下総フレンドリーパークにキッズレース行う予定で、そこで今回の成果を子どもたちが見せてくれると嬉しいですね。

吉井さんを中心にレース後の反省会が行なわれる吉井さんを中心にレース後の反省会が行なわれる 元マディソン全日本王者の吉井功治さん元マディソン全日本王者の吉井功治さん


CW編集部:近年、ジュニア世代の自転車選手を取り巻く環境についてどう感じますか?

吉井さん:まず、キッズ世代でも自転車競技熱の高まりを感じます。しかし、小学生のうちに自転車競技を始めても自転車競技部がある中学校や中学生が対象の大会そのものが少ないため、途中でやめてしまう子供たちが多いのも現実です。今後はクラブチームなど中学生が満足に走れる環境や大会を整備することが我々にとっての課題といえます。

CW編集部:我々の様な大人もケルメスTOKYOの様なライディングスクールを受講したいのですが?

日置さん:ケルメスTOKYOは東京都体育協会のジュニア世代育成推進事業であるため、キッズのみを対象にしています。しかし、東京車連では大人も参加可能な自転車教室も行っていますので、こちらにご参加下さい。



最後は西武遊園地の観覧車をバックに記念撮影最後は西武遊園地の観覧車をバックに記念撮影 まだまだ参加人数は少ないものの、ケルメスTOKYOは自転車競技熱の高まりを感じる事ができたイベントだった。10月末に開催され20万人もの観客を集めたさいたまクリテリウムは対照的だが、「このイベントをキッカケに選手を目指した」というプロ選手が将来出てくることは間違いなさそうだ。

東京車連では12月22日(日)に年内では最後となるキッズ向けレーシングスクールを下総フレンドリーパークで開催することが決定しており、大物ゲストが来場予定とのことだ。興味のあるキッズライダーや親御さんは是非奮って参加しよう。

text & photo:Yuya.Yamamoto


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