7月7日に世界規模で行われた「Rapha women's 100」。vol.1の伊豆半島・下田編に続き、国内で同時開催されたもう一つのライド、小豆島編をレポートする。本州からフェリーで瀬戸内海を渡った先で行われたライドを、参加者の言葉で振り返る。

Women's 100 in 小豆島

伊豆が雨に振られている頃、21名のライダーを載せたフェリーが日本の西、瀬戸内海に浮かぶ小豆島に接岸。なんと前夜0時に神戸に集合し、フェリーで夜を明かし到着後走り出すというスケジュールにも関わらず、果敢な20名のライダーが参加を果たしたのでした。

起伏に富む小豆島。それを縫うように道路と集落が点在する起伏に富む小豆島。それを縫うように道路と集落が点在する photo:Kei.Tsuji
朝から太陽が照りつける小豆島。この日Raphaが設定したのは100kmで1400mを登るルート。このライドについては、フォトグラファー辻啓による写真と、参加者がライド後に寄せてくれたコメントで紹介します。厳しい夏の一日を走り切ったライダーの言葉は、疲弊よりもフレッシュな喜びが勝っているように感じられるのは、ひいき目が過ぎるでしょうか?



スタートするまで

参加者のみなさんの様々な不安とともに、ライドへの期待もまた伺えます。

「小豆島には一度も行ったことがなくアップダウンが厳しいと聞いていたので、どんなところか是非走ってみたかったのと、伊東で行われたプレライドの女子イベントがとても楽しかったので、7月7日を楽しみにしていました。私のあこがれる方がリーダーで参加すると聞き、また他の女性ライダーさんたちとも新たに知り合えるからワクワクしていました。」

荷物片手に船を降りる。その姿はどこか頼もしく荷物片手に船を降りる。その姿はどこか頼もしく photo:Kei.Tsuji前夜0時に神戸に集合。夜行フェリーで小豆島へ前夜0時に神戸に集合。夜行フェリーで小豆島へ photo:Kei.Tsuji


「集まってきた女性の一人に話しかけると、その人も一人での参加という。『不安だったけど、Raphaが好きで…しかもこんな世界中の人が同時に100kmをチャレンジするイベントに参加できると思うと…』それを聞いて『なんて素敵なイベントに参加できるんだ私は』と、初めて気づき、ワクワクしてきた。」

「今回参加させていただいたのも、Oさんに誘われるがまま軽い気持ちで参加表明!でも、いろんな人に小豆島ライドについて聞くたびにハードなコースだと聞かされテンション下がりぎみで…えらいものに手あげてしまったなぁ~と少し後悔。それでも、参加するからにはしっかり走りたいと思いショップ練も頑張りました。でも、7月7日が近づくにつれだんだん憂鬱に…。」

およそ20人の女性ライダーが連なって走る。women's100だからこその光景およそ20人の女性ライダーが連なって走る。women's100だからこその光景 photo:Kei.Tsuji
港の建物をバックに記念撮影港の建物をバックに記念撮影 photo:Kei.Tsuji島内は交通量も少なく、とても走りやすかった島内は交通量も少なく、とても走りやすかった photo:Kei.Tsuji

「10日前、大阪出張の仕事終わりRaphaのショップに寄ってみる。Raphaのジャージ、シンプルでかっこいい。大好きな色がある。Sサイズに体をねじ込む。脇腹の贅肉が気になるけど…まぁいいか。これでモチベーション一気に上がる。雨以外は毎朝20㎞走る。小豆島ライドのイメージをふくらませる。楽しみだ。」

「『頑張ろっ!』って声を掛け合った。メンバー全員で記念撮影。ほとんどが初めて走るメンバー。ワクワクと、ちょっぴり不安。イベントが始まる前。Y里さんと話していた事を思い出す。
『時間はたっぷりあるから、絶対みんなでゴール出来るように頑張ろう』って。
以前の試走の時に、このコースが初心者の人にはかなりハードになる事は分かっていた。だから、目標は『みんなでゴール』だったのだ。」


ライドがスタート

ライダーたちはフェリーでの対面も果たし、一夜明けていよいよ走り始めます。それぞれの想い。この日、世界中の女性ライダーが100kmを走っていたのですが、そのことが力になった参加者も。

「実際のライド当日、明らかに早そうな皆さんに着いて行けるのかしらと不安になりつつも、いざ走り出してみると割とペースの合う人も見つかり、楽しい100kmの旅が始まりました。沢山のRaphaウェア…しかも女性だけのトレイン…その中に自分も!走っている最中、常に皆で一つの目的に向かっているのだという一体感がありました。」

瀬戸内海を背後に、少しずつ高度を増していく瀬戸内海を背後に、少しずつ高度を増していく photo:Kei.Tsuji気温は上がり続けるが、木陰は快適だ気温は上がり続けるが、木陰は快適だ photo:Kei.Tsuji


「走りはじめる。先頭集団について行く。前方の人手信号上手い。左右はもちろん危険なものも知らせてくれる。私手放しはバランスが悪いのでもっぱら「車きまーす」の声掛け担当。いきなり坂また坂。サドルから立ち上がりダンシングで。急勾配を力強く走る集団、ペースも落ちない。シッティングで走る私少しずつ遅れる。『大丈夫!がんばれ!いけるよ』」と後ろから声掛けられる。しんど過ぎて振り向けないでも、私を応援してくれる。うれしい。『がんばる!』と声を出しこぎ続ける。暑い、きつい。汗がふきだす。」

「休憩ポイントでワイワイみんなどんどん仲良くなる。群れるのに慣れている女子特有の、すぐフレンドリーになれるあのイイ感じ。「暑い」「しんどい」も面白く盛り上がる関西人の会話。」

世界同時開催されたwomens100。Instagramには世界中の様子が次々とアップされていく世界同時開催されたwomens100。Instagramには世界中の様子が次々とアップされていく photo:Kei.Tsuji魚市場の土産処で小休止魚市場の土産処で小休止 photo:Kei.Tsuji

広がる棚田。日本の自然を凝縮したような風景が続く広がる棚田。日本の自然を凝縮したような風景が続く photo:Kei.Tsuji急峻な斜面に据え付けられた道路を走る急峻な斜面に据え付けられた道路を走る photo:Kei.Tsuji


「今回たくさんの人と一緒に走るというのは初めてのためか、不安からか前半は自分でも気づかないうちに緊張してたようです。私はもちろん後方の集団にいたのですが、途中からリーダーの方が声をかけてくださり、引いてくださってすごく助かりました。ご本人の実力なら、先頭集団と一緒に走りたかったのではと思いとても申し訳ない気持ちでしたが、おかげで皆さんで走りきれたと思います。とても感謝しております。」

「そしてインスタグラムには世界中から続々とライドの様子がアップされていく。『世界の皆と同じ時間を共有しているんだ』というかつてない気持ち良さ、大量の汗と大量のアドレナリン、本当に最高の時間でした。」

「この1ヶ月でこの日焼け。日焼け止め塗ってても焼けちゃう。でも、この日焼けがちょっぴり嬉しかったりもするんだな。」

「波の音、オリーブの木が揺れる音、醤油工場の匂い、雷の音…。眠っていた五感が目を覚ます」「波の音、オリーブの木が揺れる音、醤油工場の匂い、雷の音…。眠っていた五感が目を覚ます」 photo:Kei.Tsuji
「いざ走り出すと、眠っていた五感が目を覚ましだす。波の音、オリーブの木が揺れる音、醤油工場の匂い、雷の音…。砂浜で遊んでる子ども達は元気いっぱい手を振ってくれる、おばあちゃんも頑張れって応援してくれる!犬も元気いっぱい吠える!仲間も待っててくれる!!普段の生活では味わえない、気持ち良い感覚が次々にやってくるのだ。あまりの心地よさに、にやにやしながらペダルを回していると私のすぐ前にいるリーダーが叫んだ!

「あぁ~もぉ~こういう瞬間があるから自転車って大好きー!」

私は、はっとした。「そうっ!そうだ!!私も自転車大好きなんだ」って!!(笑)

フェニックス。温暖な小豆島を代表する光景だフェニックス。温暖な小豆島を代表する光景だ photo:Kei.Tsujiデコレーションコンピューターデコレーションコンピューター photo:Kei.Tsuji


「こんな気持ちを世界中の女性が、今日、今この瞬間に感じてる人がたくさんいるんだって思うと、
ゾクゾクする!不安だった事や苦しかった坂道は、ゴールの瞬間に全部消えてしまい、また走りたい
という気持ちになる。自転車を乗っている人にしか分からないこの気持ち、味わった事がない人にはぜひトライして欲しい。」


灼熱のライドを走り切って……

アップダウンの連続する100kmのルート。それぞれの挑戦がゴール地点で実を結んだ瞬間。共に走った仲間を讃えるコメントが目立ちます。リーダーを務めたライダーは、その重責を果たした上でのコメント。それぞれの想いがゴール地点で弾けました。

暑さと勾配にうなだれる。でもライドが終われば良い思い出暑さと勾配にうなだれる。でもライドが終われば良い思い出 photo:Kei.Tsujiジリジリと照りつける日差しの中をヒルクライムジリジリと照りつける日差しの中をヒルクライム photo:Kei.Tsuji「ペース配分と皆で走りきれるかどうかずっと気にかけてくれてた第二集団のリーダーさんにも笑顔が見えてきました。あと少し頑張れば、皆、完走できる!残り少しだとわかって、暑さと疲れで無表情になっていた皆の顔にも笑顔が。こうなると、もっともっと一緒に走っていたいのにと、ライドが終わってしまうのがいつも惜しくなってしまいます。」

「初めはあまり話さなかった人たちとも 休憩をとるごとに話す機会が増え仲間意識がだんだんと芽生えてきました。そうなると苦しいけど だんだんと楽しくなってきます。一人では無理でも、みんなとなら登れる山もあります。みんなとなら走れる距離もあります。今回のライドはまさにそれです!」

「半年前に初めてロードバイクを購入し、100kmロングライド1回参加しただけという浅い経験で、期待と不安を抱えての参加でした。みなさまの温かいサポートあっての完走でした。

先輩のライダーのみなさん、スタッフのみなさんの走り方やアドバイスひとつひとつがかけがえのない経験となり、今後のライドに対して精神的にもスキル的にもぜひ応用したいと思いました。素晴らしい出会いを通してロードバイクはひとりではなくみんなで楽しみ上達するスポーツなんだと実感しました。」

「休憩をとるごとに話す機会が増え、仲間意識がだんだんと芽生えてきました」「休憩をとるごとに話す機会が増え、仲間意識がだんだんと芽生えてきました」 photo:Kei.Tsuji
「今回のコースについては、今まで走った中での一番の獲得標高だったこともあって正直(傍目にも?)結構キツいものがありましたが、そこをお互い励まし合いながら皆と一緒にがんばることで、何とか無事に完走する事ができました。それは自分の中でのちょっとした自信にもなりました。」

爽快にダウンヒルをこなしていく。ロードライディングを一番に楽しめる瞬間爽快にダウンヒルをこなしていく。ロードライディングを一番に楽しめる瞬間 photo:Kei.Tsuji「ゴールしたら、『前を引いてくれて、ありがとうございました』ってみんなに声をかけて頂いた。初めて言われた…。リーダーの役割を果たせたのかなって思えて、本当に嬉しかった。」

「コースの80%はアップダウンを繰り返した。さすがに足も筋肉疲労を起こしてつりそうだった。でも走りきった。先頭集団の最後尾で…うれしかった。またRaphaのイベントで会いましょうと声を掛けてもらった。

日差しの暑い日は小豆島のライドを思い出す。私の宝物になった。」



Rapha Women's 100総括

7月7日に開催されたWomen's 100は、日本国内で上記の2ライドを含む6つのライドが有志によって有機的に開催され、世界では実に38カ国、134ものライドが開催されました。Facebookに登録された参加者数は3114人。平均して、ひとつのライドに23名の女性ライダーが参加した計算になります。この企画が、日本はもとより、世界中のロードライドを愛する女性たちを何がしか勇気づけるものになったなら、これ以上の喜びはありません。

「世界の皆と同じ時間を共有しているんだ、というかつてない気持ち良さを味わった」「世界の皆と同じ時間を共有しているんだ、というかつてない気持ち良さを味わった」 photo:Kei.Tsuji
最後にこのWomen's 100プロジェクトの発起人である英国Raphaのローラ・バウアーからのメッセージを紹介して締めくくりたいと思います。

「そして今、このプロジェクトの最後に私たちが伝えたいメッセージはシンプルです:キープ・ライディング。ライドを楽しみ続けましょう。」


text:Yufta Omata(Rapha Japan)
photo:Rapha Japan,Kei Tsuji

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