安倍首相と黒田日銀総裁による”異次元の金融緩和”を伴うアベノミクスの影響で激しく乱高下を繰り返す日経平均株価に、日本中が一喜一憂を繰り返す中、今年も”アルプスあづみのセンチュリーライド”開催日がやってきた。

この大会は、長野県の安曇野地区から白馬村を舞台に、のどかな風景と壮大な山岳景観を存分に味わいながらユッタリ走れる、初級者にも優しい難易度の低いセンチュリーライド(160km)だ。昨年に引き続き、私たちCW編集部からはメタボ会長と編集長に私を合わせた3人で出走である。

早朝の梓水苑前にスタートを待つ参加者の列が続く。早朝の梓水苑前にスタートを待つ参加者の列が続く。 迎えた大会当日の朝。スタート地点”梓水苑”に集まった多くの参加者を、清々しい五月晴れの空が優しく迎えてくれる。薄日が差す空の下、参加者の笑顔が光り輝く。

今更ながらメタボ会長の晴れ男っぷりを侮る訳にはいかないほどの、絶好のサイクリング日和だ。

前回のもてぎ7時間耐久に続き、今大会もメタボ会長のジャージは普段着のマイヨジョーヌだ。実は前回取材時に判明した事なのだが、抜群に目立つこの普段着が私たちにはかなり都合がイイのだ。

撮影時にファインダー越しで個々の判別を付けるのは案外難易度が高いのだが、これだけ目立ってくれればファインダー越しでも見逃す事はまず無い。もっと言えば迷子にもならない。(たまにオヤジは迷子になるんです・・・。)

早朝6時ジャスト。いよいよ”アルプスあづみのセンチュリーライド”が始まる。160kmコース早出組から順番に、木漏れ日が降り注ぐ安曇野の長閑な風景の中に漕ぎ出してゆく。スタートして行く参加者の輝く笑顔をカメラに収め、トップから1時間半遅れで私たちも出発を迎える。

今年はユニークなスタイルが目立つ。愛車は変速無しのママチャリ。今年はユニークなスタイルが目立つ。愛車は変速無しのママチャリ。 貫禄あるコスプレと控えめなサムアップとのギャップが微笑ましい。貫禄あるコスプレと控えめなサムアップとのギャップが微笑ましい。

いよいよアルプスあづみのセンチュリーライドのスタートだ。いよいよアルプスあづみのセンチュリーライドのスタートだ。 別角度のスタートシーン。取材の舞台裏はこんな感じです。別角度のスタートシーン。取材の舞台裏はこんな感じです。


スタート地点の”梓水苑”から40km先の”国営アルプスあづみの公園大町エイド”までは平坦な安曇野の広大な田園風景が続く。道幅も広く交通量も少ないこの区間はウォーミングアップにはもってこいの爽やか区間だ。今年も安曇野の空気が美味しい。昨年同様、難易度の低いコース設定と長閑な景色やほど良い気温に、前を走るメタボ会長もすっかりご機嫌の様子だ。

とはいえ、マイヨジョーヌを身に纏いイエロードマーネを駆るその姿は眩しい!というよりはむしろイタい。誰もが「さすがにソレは・・・。」と尻込みするレプリカルックを自信満々に着こなし、かつ得意満面な笑みを浮かべていられるその鈍感力の高さは、彼が常人の感性を持ち合わせていない事を考慮しても、脱帽に値するものだろう。少なくとも常識人の私には決して真似できない芸当である。ましてや、これが本当にメタボ会長の普段着なのだから、もはや恐れ入るしかない。

スタート時の気温は19℃。安曇野の朝は爽快だ。スタート時の気温は19℃。安曇野の朝は爽快だ。 オヤジはカワイイ女性ライダーが大好物である。オヤジはカワイイ女性ライダーが大好物である。

一直線の農道で女性ライダーとランデブーを楽しむ。一直線の農道で女性ライダーとランデブーを楽しむ。 安曇野の美味しい空気を胸一杯に味わう。安曇野の美味しい空気を胸一杯に味わう。


平坦基調の安曇野の爽やかな風景を味わいながら進む私たち3人。先頭を走るメタボ会長から声が掛かる。
「このイベントは去年のコースの記憶が残ってるから精神的に楽チンだよ。たしか国営公園の大町エイドまでは楽勝だったよな。腹減ってきちゃったからちょっと急ごうぜ!」相変わらずの自分本位な言動ではあるが、コースを知っているだけで随分と精神的余裕を持てるという言葉には私も同意である。連続参加はイベントを楽しむコツのひとつかも知れない。

スタートから20kmの穂高エイドでは山盛りのワラビ餅が。スタートから20kmの穂高エイドでは山盛りのワラビ餅が。 恒例の記念撮影に応じる。ある意味ビミョ~なツーショット。恒例の記念撮影に応じる。ある意味ビミョ~なツーショット。

得意のド平坦コースをご満悦の表情で駆け抜けるオヤジ。得意のド平坦コースをご満悦の表情で駆け抜けるオヤジ。 ニセ者がタイヤサービスに駆けつける?本物は後ろです。ニセ者がタイヤサービスに駆けつける?本物は後ろです。


殆ど疲労を覚える事も無く、私たちは”国営アルプスあづみの公園・大町エイド”に滑り込む。新緑を楽しみながら休憩する参加者さんを掻き分け、脇目もふらず一目散に補給テントに向かったオヤジは、さっそくネギ味噌をトッピングしたオニギリを頬張っている。

「やっぱり今年もシャリが美味いね~!今朝、東京出る時に高速のインター手前で牛丼食ったきりだったから腹ペコで倒れそうだったんだよ。空きっ腹にコイツは最高だね。ネギ味噌がマッチして抜群だよ!」

大満足の表情を浮かべながらオニギリをやっつけるオヤジ。彼が早朝3時に東京を出たと言っていた事を考えると、牛丼を補給してから既に6時間が経過した計算になる。”倒れそう”は大袈裟でもそこそこ空腹には違いない。子供の様に無邪気な笑顔を浮かべながらオニギリの食べ放題を楽しむその姿が微笑ましい。

大自然溢れる国営公園内。新緑が気持ちイイ。大自然溢れる国営公園内。新緑が気持ちイイ。 空きっ腹にネギ味噌オニギリ。天国です。空きっ腹にネギ味噌オニギリ。天国です。

「この人こそが本物のメタボ会長だよ!」ん~納得かも。「この人こそが本物のメタボ会長だよ!」ん~納得かも。 ここでも記念撮影。やはり理解に苦しむ現象だ。ここでも記念撮影。やはり理解に苦しむ現象だ。


美味しいオニギリを後にし、次に目指すは15km先の”大町温泉郷エイド”。籠川沿いに進むコースは、距離こそ短いが4~5%程度の緩い上りがダラダラと続く。この程度の斜度であれば、ずば抜けて低い登坂能力を誇るメタボ会長でも問題にはならない。オヤジが文句を垂れることなく順調に登ってくれてさえいれば、私たちの心も穏やかでいられる。適度な疲労感とともに”大町温泉郷エイド”に流れ込むと地元熟女のお姉様が優しい笑顔で迎えてくれる。

補給テントで振る舞われる膨大な量の”お漬物”は全て、地元熟女の皆様が手作りで持ち寄ったものだというから驚きだ。そんな労を微塵も感じさせない地元熟女の深みのある笑顔の奥に、自転車天国を目指す長野県を支える地域密着の底力が溢れている。

籠川沿いの緩い登坂。「後ろがかなり渋滞してますけど?」籠川沿いの緩い登坂。「後ろがかなり渋滞してますけど?」 新緑の中をランデブー。なぜガッツポーズ?新緑の中をランデブー。なぜガッツポーズ?

皆さんのハイテンションに流石のオヤジもドン引き?皆さんのハイテンションに流石のオヤジもドン引き? この深みのある熟した笑顔が大会を支えてくれている。この深みのある熟した笑顔が大会を支えてくれている。

アン・マリーレの杏さんと再会できました。アン・マリーレの杏さんと再会できました。 イカ娘君。今大会参加者のコスプレ完成度は極めて高い!イカ娘君。今大会参加者のコスプレ完成度は極めて高い!


熟女パワーに見送られ、次に迎える区間こそが今大会で最も手強い区間になる。ここは次の白馬ジャンプ競技場エイドまでの約33kmの間に2ケ所の登坂が控え、そこそこ厄介なポイントだ。大町街道の”三日町北交差点”先のトンネルを抜けるといよいよ1本目の登坂が始まる。この区間は約4kmの間に170mほど登り、所々で7%ほどの斜度を有する。

「いよいよ正念場だね~!序盤は体力温存作戦で行こうぜ!なんたって最後がやたらキツイからな!!」笑みを浮かべながら語りかけてくるメタボ会長の表情はまだまだ余裕がありそうだ。実際、昨年大会でも1本目の登坂は難なくクリアしているだけに、本人にも苦手意識はまったく無さそうだ。

黙々と撮影をこなす編集長。これこそが彼の正しい姿です。黙々と撮影をこなす編集長。これこそが彼の正しい姿です。 シャッターチャンスを覗う編集長と、待ち時間を持て余す男。シャッターチャンスを覗う編集長と、待ち時間を持て余す男。

1本目の登坂開始。この時点ではまだ余裕があったが・・・。1本目の登坂開始。この時点ではまだ余裕があったが・・・。 誰よりも苦しむオヤジ。この場面こそが私の至福の時間だ。誰よりも苦しむオヤジ。この場面こそが私の至福の時間だ。


昨年の経験を糧に、確実に登坂をこなしてゆくメタボ会長ではあったが、いつまで経ってもペースが上がる気配を見せない。登り始めてからずっと巡航速度は15km/h以下をキープしている。いくら体力温存作戦とはいえ、ここまでペースを落とすと温存の意味を成さない。しびれを切らした私が、ペースアップの進言をすべく横に付くや否や、弱々しい表情のオヤジが弱音を投げてくる。

「あれ~?おかしいな~。此処ってこんなにキツかったっけ?」苦笑いを浮かべるその顔からは滝のような汗が吹き出している。この汗を見た瞬間、私は全てを理解した。彼は傾斜ではなく”暑さ”に苦しんでいたのだ。登坂嫌いのメタボ会長がもうひとつ苦手としている要素がこの”暑さ”なのだ。

「大丈夫ですか?」参加者さんの心遣いに反応する余裕すらない。「大丈夫ですか?」参加者さんの心遣いに反応する余裕すらない。 読者の皆さんも薄々はお気付きだろうが、彼が参加を希望するイベントは、概ね予想気温が20℃前後のモノに集中しているのだ。

この日の長野県は5月としては異例の暑さで、日中の最高気温が30℃を超すという想定外の日だったのだ。この時点での気温も既に27℃に迫っている。

”黄色い弾丸”のボーダーラインは驚くほど明快だ。斜度であれば7%、気温であれば25℃、この数値のどちらか一方を越えた時点で、見事なまでに彼は一気にレベルダウンを露呈する

これは私にとっては千載一遇のチャンス到来だ。ここの所”メタボ会長より走れないキャラ”が定着しつつある私の汚名返上には持ってこいの状況だ。幸い、今日の私はいつにも増してすこぶる脚が軽い。一方のオヤジは普段なら余裕でこなす程度の斜面で大失速を披露してくれている。そんな哀れな姿を横目に、爽やかに晴れ渡る五月晴れの心地良さ以上に、言い知れぬ爽快感を胸に軽快に登坂をこなす私であった。


次回、気持ち良く後編に続きます。



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メタボ会長
身長 : 172cm 体重 : 82kg 自転車歴 : 4年

当サイト運営法人の代表取締役。平成元年に現法人を設立し平成17年に社長を引退。平成20年よりメディア事業部にて当サイトの運営責任者兼務となったことをキッカケに自転車に乗り始める。ゴルフと暴飲暴食をこよなく愛し、タバコは人生の栄養剤と豪語する根っからの愛煙家。