2010年8月31日、ブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ(UCIヒストリカル)第4ステージが開催され、ゴール手前1kmの激坂区間で飛び出したイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が4年ぶり2度目のステージ優勝。この日も暑さがプロトンを苦しめ、総合争いから脱落する選手が続出した。

アンダルシア州内陸部の丘陵地帯を進むアンダルシア州内陸部の丘陵地帯を進む photo:Cor Vos今年のブエルタはスプリンターに手厳しい。アンダルシア州を駆け抜ける第3&第4ステージは、いずれも起伏のあるアップダウンコース。マラガからバルデペニャス・デ・ハエンまでの183.8kmで行なわれた第4ステージは、後半にかけて2級〜3級のカテゴリー山岳が3つ連続する。

「幸い今日は気温が低め」という主催者の発表をあざ笑うかのように、この日も気温は40度近くまで上昇。暑さに打ち勝つための体調管理が今年のブエルタのキーワードになっている。

逃げグループを形成するホセルイス・カラスコ(スペイン、アンダルシア・カハスール)やドミニク・ロエルス(ドイツ、チームミルラム)逃げグループを形成するホセルイス・カラスコ(スペイン、アンダルシア・カハスール)やドミニク・ロエルス(ドイツ、チームミルラム) photo:Unipublic16km地点でドミニク・ロエルス(ドイツ、チームミルラム)、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)、ホセルイス・カラスコ(スペイン、アンダルシア・カハスール)の4名が飛び出すと、メイン集団はすぐにこの動きを容認。

ヘルメットまでレッドカラーで揃えた総合首位フィリップ・ジルベール(ベルギー)擁するオメガファーマ・ロットは、逃げグループのリードが6分に広がるまで放置した。

一日中メイン集団をコントロールしたオメガファーマ・ロット一日中メイン集団をコントロールしたオメガファーマ・ロット photo:Unipublicこの日のゴール地点はバルデペニャス・デ・ハエンの激坂。最大勾配が27%に達するとも言われる「壁」がスプリンターを寄せ付けない。そのためこの日はスプリンターチームが集団牽引に加わらず、オメガファーマ・ロットが一日中メイン集団を引き続けた。

レースが動き始めたのは、ゴール7.8km手前で頂点を迎える2級山岳バルデペニャス峠。逃げグループの中で山岳ポイントを連取し、山岳賞ジャージ着用に王手をかけたカタルドが飛び出すと、ボナフォンだけが合流。2人で先頭を逃げ続けた。

メイン集団は激坂にめっぽう強いホアキン・ロドリゲス(スペイン)擁するカチューシャが先頭に立ち、登坂距離9km・平均勾配4.8%の上りでペースを上げて行く。このハイペースな展開がスプリンターたちを振るい落とし、メカトラで遅れたアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)の集団復帰を許さなかった。

アンダルシア州内陸部の丘陵地帯を進むアンダルシア州内陸部の丘陵地帯を進む photo:Unipublic

結局カタルドとボナフォンは、バルデペニャス峠の中腹でカチューシャが牽くメイン集団に飲み込まれて行く。20名ほどに絞られたメイン集団の中にはカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)やクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)の姿は無かった。

バルデペニャス峠の下り区間でヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタックを仕掛け、ジルベールとルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)が合流。この動きが封じ込められると、諦めずにLLサンチェスがアタック。しかしどれも決定力を欠いた。

マイヨロホを着て走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)マイヨロホを着て走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublic複合賞ジャージを着るハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)複合賞ジャージを着るハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール) photo:Unipublicステージ優勝を狙うニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)ステージ優勝を狙うニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) photo:Unipublic

メイン集団内にメンバー5名を残していたケースデパーニュはアタックを止めず、続いて飛び出したリゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)が独走のままラスト1kmから始まる激坂区間へ。山の斜面に張り付いた街中を直線的に上る20%オーバーの上りでウランは失速。後続のメイン集団は、ロドリゲスのアタックで火がついた。

レース終盤にかけてメイン集団を牽引するカチューシャレース終盤にかけてメイン集団を牽引するカチューシャ photo:Unipublicロドリゲスは持ち前の登坂力を発揮し、ダンシングで力強く前進。しかしジルベールやニーバリが食らいつき、ロドリゲスに先行を許さない。この拮抗した状況を打ち破り、ラスト400mでアタックを成功させたのはアントン。遅れてニーバリが追撃に出たが届かず、アントンが先頭のままガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

集団内で走るトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)集団内で走るトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublicエウスカルテルのチームリーダーを担うアントンは身長173cm・体重59kgという軽量クライマー。2006年大会の頂上ゴールで優勝して頭角を現すと、2007年大会総合8位、2008年ツール・ド・スイス総合3位という好成績をマーク。今年はブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオン1級頂上ゴールでアルベルト・コンタドール(スペイン)らを敗って優勝し、総合2位に入った。今日のような起伏のあるワンデークラシックも得意分野で、今年のフレーシュ・ワロンヌでは「ユイの壁」で真っ先に攻撃を仕掛けて4位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ6位という成績を残している。

終盤の2級山岳で先行するギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)とダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)終盤の2級山岳で先行するギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)とダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ) photo:Unipublic今シーズン2勝目を飾ったアントンは、レース後のインタビューで「今日のコースは事前に下見済みだった。フレーシュ・ワロンヌでは早めに仕掛けて失敗。その失敗が今日の勝利に繋がったと思う。ウランとロドリゲスがアタックしたときも落ち着いて対処出来た。ニーバリが追いついてくることを一番恐れていたんだ」と語る。ボーナスタイムのおかげで総合2位に浮上しており、今後の総合争いにおいても主役になる可能性を秘めている。

ステージ優勝の本命に挙げられながらも4位に終わったロドリゲスは「今日は勝ってマイヨロホを着たかった。でもメディアが挙って僕を優勝候補に挙げたので、ライバルたちのマークが非常に厳しかった。最後はアタックのタイミングを逃してしまったんだ」と、悔しさを滲ませながらコメントしている。

ガッツポーズでゴールに飛び込むイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)ガッツポーズでゴールに飛び込むイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) photo:Unipublicステージ連勝を逃しながらも、マイヨロホをキープしたジルベールは「苦しみながら集団内でバルデペニャス峠を通過したとき、リーダージャージを守れると思った。でも昨日ほど調子が良くなかったんだ。アントンには付いていけなかったよ。でも今日の最後の上りはフレーシュ・ワロンヌのユイの壁ほど厳しいとは感じなかった」とコメント。翌日から平坦ステージが続くため、ジルベールはしばらくマイヨロホを着続けることになりそうだ。

総合優勝候補のニーバリはこの日も存在感を見せ、ステージ2位に食い込んで総合4位に。複合賞リーダージャージを獲得している。その他、フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)とデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)は19秒遅れでゴールした。

その一方で、サストレが1分34秒遅れた他、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)が2分48秒遅れ、アンディとクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が14分36秒遅れ、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームスカイ)が19分46秒遅れ。これらの選手は大会4日目にして実質的に総合争いから脱落した。アンディは「このブエルタでの仕事は兄フランクのポジションをキープすること。今日はメカトラが無くても集団についていけなかったと思う。でも確実に昨日より調子が上がっているよ」と語っている。

中級山岳2連戦を終え、ブエルタはムルシア州に舞台を移す。第5ステージから3日連続で平坦コースが設定されており、暑さに苦しみながら激坂を上ったスプリンターたちに再びスポットライトが当てられる。総合争いは第8ステージまで一時休戦だ。

選手コメントはレース公式リリースより。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第4ステージ結果
1位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)        5h00'29"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)        +01"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)    +05"
6位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア)  +08"
7位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)      +12"
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、ケースデパーニュ)       +19"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)  13h56'30"
2位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)          +10"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)        +12"
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)     +16"
6位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア)  +29"
7位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +49"
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)        +50"
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ)          +54"
10位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)      +55"

ポイント賞(プントス)
1位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)        41pts
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)  37pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)        34pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)  13pts
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)        8pts
3位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)        6pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)      21pts
2位 ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)    95pts
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)       109pts

チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ     41h23'24"
2位 カチューシャ        +1'05"
3位 オメガファーマ・ロット   +1'18"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic

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