各チームのトレインが入り乱れる集団スプリントで決着したUAEツアー4日目は、オラフ・コーイの背後を巧みに利用したティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が大会2勝目。スプリントのトップスピードは74.2km/hに達した。



ドバイの街中を巡るUAEツアー第4ステージ photo:UAE Tour

中東最大のレースであるUAEツアー(UCIワールドツアー)は第4ステージ。この日はドバイの市街地を抜け、砂漠地帯を経由してからパーム・ジュメイラの根本にあるドバイ・ハーバーにフィニッシュする平坦ステージだ。

気温24度と過ごしやすい気候の中、急遽7kmのコース短縮が告げられたレースでこの日もマーク・スチュワート(イギリス、コラテック・ヴィーニファンティーニ)が逃げを打つ。ポイント賞争いでトップに立つスチュワートは前日と同様2名の逃げグループを形成し、この日の相方はハルム・ファンハウケ(ベルギー、ロット・デスティニー)。一方のメイン集団は、パトリック・ルフェーブルGMが近年成績の残せないジュリアン・アラフィリップ(フランス)に対する苦言が話題となっているスーダル・クイックステップがペースメイクを担当した。

単独で逃げるハルム・ファンハウケ(ベルギー、ロット・デスティニー)と地元サイクリストたち photo:CorVos

設定された2つの中間スプリントをスチュワートがトップ通過し、ポイント賞はもちろん中間スプリントリーダーの首位を堅守。すると、この日の目標を達成したスチュワートはプロトンに戻り、単独となったファンハウケも残り50km地点で吸収。この日は前日に集団を分裂させた風もなく、ドバイの観光名所を巡るメイン集団をドイツ王者エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)が長時間牽引した。

消化する距離と比例してプロトンに向け緊張感が増していくなか、残り10kmを切り幅の広いコースにはフィル・バウハウス(ドイツ)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスや大会初日を制したティム・メルリール(ベルギー)のスーダルが隊列を並べる。また、移籍後初勝利の欲しいファビオ・ヤコブセン(オランダ)のDSMフィルメニッヒ・ポストNLも時速60kmで飛ばす集団先頭でトレインを組んだ。

大きな塊のまま集団は残り3km地点を通過し、先頭付近で落車が発生する。約10名を巻き込んだ落車にはパスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)が含まれ、またサム・ウェルスフォード(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)の大事なリードアウトであるダニー・ファンポッペル(オランダ)の姿も。そして各チームがトレインの維持に苦心するなか、選手たちがモビスターを先頭に最終ストレートになだれ込んだ。

この日もスプリントに絡むことができなかったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザクスタン) photo:CorVos

トレインが入り乱れてスプリンターたちが単独でも勝負を強いられるなか、ヨナス・リカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)に導かれたカーデン・グローブス(オーストリア)が2番手につく。しかしリカールトの牽引が終わったグローブスはスプリントの開始が遅れ、その隙をつくようにオラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が先頭へ。

そしてコーイの背後を利用したメルリールが残り150mで飛び出し、追いかけるアーヴィッド・デクライン(オランダ、チューダー・プロサイクリング)も退けて先着。初日に続く大会2勝目を手に入れた。

コーイを抜き、先頭に立ったティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

大会初日に続き、2勝目を手に入れたティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

完璧なタイミングから最高時速74.2km/hで駆け抜けたメルリール。「風が左から吹いていたので(コース左側から加速する)オラフ(コーイ)を見て”ラッキー”だと思い背後についた。難しいだろうが、僕の目標は4つあるスプリントステージの全制覇。これで2勝目となり、この後も勝利を重ねていきたい」と、レース後の記者会見でメルリールは語った。

総合順位に変動はなく、リーダージャージはジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)がキープ。翌日の第5ステージも豪華スプリンターによるスピードバトルが予想されるフラットコースだ。

表彰台に立つティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:UAE Tour

UAEツアー2024第4ステージ結果
1位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 4:01:47
2位 アーヴィッド・デクライン(オランダ、チューダー・プロサイクリング)
3位 オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)
4位 スタニスワフ・アニオコウスキ(ポーランド、コフィディス)
5位 ヤコブ・マレツコ(イタリア、コラテック・ヴィーニファンティーニ)
6位 ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
7位 ヤルネ・ファンデパール(ベルギー、ロット・デスティニー)
8位 フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)
10位 オデッド・コグット(イスラエル、イスラエル・プレミアテック)
個人総合成績
1位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) 11:41:31
2位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:11
3位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:13
4位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:21
5位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:22
6位 マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +0:31
7位 トビアス・フォス(ノルウェー、イネオス・グレナディアーズ) +0:33
8位 サイモン・カー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:36
9位 ミッケル・ビョーグ(デンマーク、UAEチームエミレーツ) +0:37
10位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:39
その他の特別賞
ポイント賞 マーク・スチュワート(イギリス、コラテック・ヴィーニファンティーニ)
ヤングライダー賞 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos