ワフーが展開しているサブスクリプションサービスのWahoo X。トレーニング系のSYSTMと並びサービスの根幹を成すバーチャルサイクリングアプリWahoo RGTにフォーカスし、使用感などをお届けしよう。



ワフーが展開するバーチャルサイクリングアプリのRGT

ありとあらゆるサービスが加入・解約が簡単なサブスクリプション(以下、サブスク)式となり、自転車系もトレーニング系やマップ・ナビゲーション系などあらゆるジャンルでサブスクのサービスが数多く登場している。その中の一つ、ワフーが展開する「Wahoo X」というサービスを今回は取り上げる。

ワフーはこれまでサイクルコンピューターに紐付けるELEMNTやフィットネスアプリを展開しており、それら無料のアプリを基盤としてサイクリストのライド体験をサポートしてきた。そこに加えるように登場したのがWahoo Xであり、既存のアプリから一歩踏み込んだトレーニングなどを支えるサービスとなっている。

具体的なサービスの一つがSYSTM(システム)。トレーニングメニューなどが収録されており、ユーザーの目的や目標レースに合わせてトレーニングスケジュールを構築してくれるコーチング系サービスだ。独自のパワー指標4DPなども展開し、FTPとは異なる指標をもとにライダーのパフォーマンス進捗を計測してくれるなどユニークな機能が採用されている。

綺麗なグラフィックで走っていて楽しい

Wahoo Xのもう一つの軸はRGTというバーチャルサイクリングサービスであり、内容の説明はこちらの記事が詳しいのでチェックしてもらいたい。SYSTMと合わせた2本の柱を活用することがWahoo Xのコストパフォーマンスを高められるだろう。そんなWahoo Xのサービスの中から、Wahoo RGTの使用感などをお届けしよう。

バーチャルサイクリングと言ってもCGアバターや仮想世界を走るものや、収録された現実世界とバーチャルを融合させた環境を走るものなど様々存在するのはご存知だろう。RGTはCGの世界とアバターだが、現実に存在する環境をCGで再現するというハイブリッド環境で、世界中のサイクリストと共に自由に走れる世界が構築されている。つまりCGながら画面の向こう側にサイクリストが存在し、相互にライドへ影響を及ぼすゲーム性が存在している。

モンバントゥのアイコニックなアンテナ塔も再現されている

CGは非常に細やかで、没入感は非常に高い。風景やアバター、自転車などのモデリングの解像感も高い上、影もしっかりと表現されている。実写と区別がつかないような最新のゲームのリアルなCGに匹敵するとは言えないものの、バーチャルサイクリングアプリの中では頭一つ抜けた表現力を持っている。

そして現実のコースの再現度も申し分無い。例えば、収録されているモンヴァントゥ峠にはアイコニックなアンテナ塔が聳え立ち、頂上を迎える高揚感は小さくない。さらにイタリアのステルヴィオ峠もジロ・デ・イタリアのレース写真でよく見る渓谷から伸びる山道を眼下に収めて走ることができるほどの再現が行われており、実写ではないもののライド環境としては最高だ。

今回使用感を確かめるべく先述の峠にチャレンジしたのだが、超級山岳は当然のようにキツイ。スタートから頂上までを自分の力で走ることができるのであれば、その達成感は一入なのは間違いない。しかし、RGTにはそのコースで走行しているライダーを指定し、その人が走っている地点までワープ&合流できるという素晴らしい機能が備えられており、"おいしい"ところまでひとっ飛びすることが可能となっている。

超級山岳全てを登るためには1時間以上の時間を要すため、時間に余裕がある場合のみにチャレンジできると思いきや、ラスト1km地点に人がいれば、そこからライドをスタートできる。1kmをしっかりと出し切れれば、フィットネスとしては十分な運動となるはずだ。ちなみにRGTにはサイクリストのためにパワーウェイトレシオが設定されたペーシング用のNPCなど、多くのコンピューターアバターが走行しているため、望み通りのポジションに飛びやすいようになっているのは嬉しい。

ドラフティングによるパワーセーブ量が表示されるのは嬉しい

ライドフィールについては違和感を覚えることはなかった。勾配変化に対してブレーキを掛けたような負荷がかかることや、斜度が緩んだ時に一気に負荷が抜けることもなく、自然に使えるという印象を持っている。走っている間はスマートローラーに起因する不快感が全くなく、快適な環境でライドに集中することが可能だ。

RGTの負荷調整で面白いのはドラフティングで何ワットのパワーがセーブされているか画面上で表示されること。前走者から何メートル離れており、ドラフティングエリアまでの残り距離を示してくれるのはポピュラーな使用だが、実際にパワーセーブ量をチェックできるのは面白い。

その数字通りのパワーがセーブされているかどうか以上に、数字で表示されていることによる気持ちへの影響は大きい。一方でRGTでは前走者に近づき、アバターが重なるとパワーロスが発生する仕様で、画面上では赤文字でパワー損失の数値を表示する。とにかく足の力で押し切ろうというのは難しくなっている。

スマホアプリとKICKR STEERを組み合わせて使用する

ドロップ部分からもSTEERにアクセスすることができる
ブラケットポジションでも触りやすい


ステアリング機能以外も操作することができる

このアバターの重なりを防ぐのがステアリング機能だ。KICKR BIKEではボタンの割り振りによってアバターの左右位置を調整するが、ノーマルバイクの場合はRGT Remoteというスマホアプリから行う。Remoteアプリは画面上のボタンでアバター位置を動かすだけではなく、様々な操作を手元で行える便利なアプリとなっているため、RGTで遊ぶ際は一緒に活用することが吉。

Remoteアプリは画面での操作だけではなく、スマホの傾きを検知する機能が備えられており、その傾きによってアバターを動かせることが特徴。その機能を引き出すべくワフーがラインアップしている製品が、KICKR STEERだ。

これはハンドルに装着して仕様するスマホ台で、その端からパドルが伸びており、それを指で押すことでスマホを傾けられるというハードウェア。ブラケットポジション、ドロップを握っている時どちらからでもパドルにアクセスすることができるため、スプリントしている時でもポジションを調整することが可能となっている。

KICKR STEER

パドルの位置は調整することができる

RGTのステアリング機能はコースを複数にライン分割(エリアによって異なる)しているため、レーンを一つずつ移動する仕組みだ。例えばスマホアプリでのボタンをワンタップするとレーンを一つ移動し、長押しすると遠くのレーンまで移動する。この動作は全てが滑らかなため、一つずつ移動していくという感覚は全くなく、ライド中は違和感を覚えることはなかった。

ここで一つずつ移動することを説明したのは、少しだけでも動けることを伝えたかったため。KICKR STEERを使用していると傾きの時間に応じてレーンチェンジを行うが、パドルを軽く叩くだけでもRemoteアプリは反応し、1レーンずつ移動させられる。簡単なアクションでもステア操作できることで、RGT内での身のこなしもスキルとして活用させられるようになるはずだ。

ユーザー自らアバターのハンドルを切る

また、RGTのレーンチェンジはリアルでの操作を行うと、これから向かうレーンをグラフィックで知らせてくれるため、走りたいラインをコントロールすることができる。一方でアバターは実際の操作からワンテンポ置いてから動き始める仕様であることも使う際は頭に入れたほうが良さそう。

これまでもステアリング操作が可能となるデバイスが登場してきた中で、ハンドルを切らないという割り切った操作方法は実際に試してみる前は訝しげに思っていたのは事実。しかし、リアルではない操作方法はアバター操作を"ゲーム感覚"でできるという割り切った捉え方ができ、新たなバーチャルサイクリングの楽しみ方を提示してくれたようだ。

KICKR STEERのブラケットはワフーのサイクルコンピューターを載せられる

スマートローラーを展開するワフーのサービスであるものの、スマートローラーのブランドに拘らず使えるのも魅力。大手サービスよりは人口が少ないが、これからユーザーが増加することでステアリング機能を活用できるレースなども頻繁に開催されるようになるはずだ。

自分のGPXファイルから仮想コースを制作することもでき、コース内にいるライダーとコミュニケーションができるラジオ機能なども実装されているなど魅力はまだまだ存在するため、新しい物好きの方はチャレンジしてみても良いだろう。




Wahoo X、KICKR STEER
• Wahoo X: 14.99 USD/月、22,500円/年(SYSTM、RGTの両アプリにアクセス可能)
• KICKR STEER:15,000円
• Wahoo XとKICKR STEERのバンドル:37,500円/年(KICKR STEERは1個付属します)

text:Gakuto Fujiwara
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