5月15日、ジロ第7ステージが行われ、注目の未舗装路区間で形成された先頭グループから、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)が区間優勝。アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がマリアローザを奪還した。

談笑しながら出走サインに向かうイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)とステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)談笑しながら出走サインに向かうイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)とステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) photo:Kei Tsuji第7ステージはカラーラ〜モンタルチーノ間の220kmに設定された。昨年のコース発表時から注目を集めていたのがこのステージだった。それはストラーデビアンケ(白い道)と呼ばれる未舗装路がレース後半の14kmに渡って設定されているからであり、しかもそこには最大勾配16%の激坂が組み込まれていたからであった。

迎えた第7ステージは生憎の雨模様。後半に控える悪コンディションのレースを見越してか、これまでのステージ以上に序盤からアタックがかかるも決まらない。最初の1時間の平均時速は52kmと高速でレースは推移するが、それは逃げが決まらないことの裏返しでもある。

降りしきる雨の中、逃げグループに入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)降りしきる雨の中、逃げグループに入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsuji57km地点でようやく決まった逃げは16人の大所帯。ここには新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が入り、第5ステージに次ぐ逃げに加わり存在感を見せる。ここにはジルベルト・シモーニ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)、マリアビアンカを着るヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・ドイモ)が加わった。

しかし豪華メンバーが災いしてか、この逃げは71km地点でカチューシャの引く集団に吸収される。ひとつになった集団から、再びアタックで逃げが形成。ニキ・セレンセン(デンマーク)とリック・フレンス(オランダ、ラボバンク)の2人が抜け出す。

チームメイトに牽かれてダート区間を走るイヴァン・バッソとヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)チームメイトに牽かれてダート区間を走るイヴァン・バッソとヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsuji2人は順調に差を広げ、集団はようやく沈静化。しかし降りしきる雨と、後半に待つ未舗装路区間が選手たちをナーバスにする。フィリッポ・ポッツァート(イタリア)の勝利と、ウラディミール・カルペツ(ロシア)の総合キープを狙うカチューシャ勢が集団コントロールに回り、徐々にその差を削っていく。

およそ100kmを逃げた2人だったが、178km地点で大集団の射程圏内に。するとここで集団からダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア、チームスカイ)がアタックし、前の2人をパスし単独で先頭に躍り出る。04年ジロ総合4位に入った実績のあるチオーニだが、この逃げは長く続かず、間もなく集団に吸収されてレースは振り出しに戻る。

アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が未舗装路でアタックを仕掛けるアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が未舗装路でアタックを仕掛ける photo:CorVos184km地点に設定された2級山岳パッソ・デル・ロスパトイオは集団で通過したが、この下りでリーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)が飛び出す。ストラーデビアンケと同じコースを走るクラシックレース、モンテパスキ・ストラーデビアンケで好成績を収めたゲルデマンが、未舗装路に入る前にアタックで勝機を伺う。

この下りで落車が発生。なんとマリアローザのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)、総合2位のイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、マリアビアンカを着るアニョーリのリクイガス総合トップ3がこの落車で集団から後退する事態に。

未舗装路区間で激しく競り合うカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)未舗装路区間で激しく競り合うカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVosリクイガス艦隊の座礁の好機に、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、トーマス・ローレッガー(オーストリア、チームミルラム)ら5人が前を行くゲルデマンに合流。

この6人は集団に数十秒、ニバリ・バッソグループに1分20秒差をつけて193km地点のストラーデビアンケに突入。路面は茶色の泥で、選手たちのバイクとジャージがみるみる泥にまみれていく。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を引き上げるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)を引き上げる photo:CorVosゲルデマンが積極的に引き、ヴィノクロフ、ガルゼッリがその横で目を光らせるこの先頭グループは一度舗装路区間に入る199km地点でエヴァンス、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)らのいる15人ほどの追走グループに吸収される。そしてここからクネゴが単独でアタックし抜け出す。

しかし203km地点、残り17kmのところでアスタナのアシストにペースメイクさせたヴィノフロフやガルゼッリのいる集団にクネゴは吸収。この時バッソ・ニーバリグループは先頭から1分強のビハインド。

残り15kmでヴィノクロフがアタックを仕掛けると、反応できたのはエヴァンスのみ。2人で先頭交代をしながら泥道を進んでいく。

上りスプリントを制したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)上りスプリントを制したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsujiしかし後方ではクネゴが懸命の追いを見せ、ガルゼッリ、ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)、マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)を伴って2人に合流。先頭はこの5人となる。

残り8kmで再びヴィノとエヴァンスが抜け出し、再びクネゴがこれを追う展開に。残り4km地点の2級山岳ポッジオ・チヴィテッラでの下りでなんとかクネゴ、ピノッティ、アローヨが先頭の2名に追いつく。残り1kmのバナーをクネゴ先頭で通過すると、残り600mでエヴァンスが先頭に立つ。


マリアローザを取り戻したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)マリアローザを取り戻したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Kei Tsujiエヴァンスの番手にはクネゴ、その後ろにヴィノクロフと、2人には勝利を狙える絶好のポジションだったが、この日は元MTBクロスカントリー王者のタフさが勝った。先頭を譲ること無く力強く先行し続けたエヴァンスが、そのままゴールラインを切りステージ優勝を遂げた。泥で茶色くなったアルカンシェルを指差してロード世界チャンピオンをアピールしてのゴールシーンだった。

マリアローザのニーバリはバッソと協同してゴールを目指したが、未舗装路の下りで遅れるバッソを待つなど、チームのエースを尊重する走りとなった。最後はバッソが遅れたため、結果としてニーバリがチーム最高位を維持する結果となったが、この日2分遅れの17位で総合成績を1分33秒遅れの5位にまで落としている。バッソは総合8位に順位を下げた。

この結果、ステージ3位に入ったヴィノクロフがマリアローザの奪還に成功。エヴァンスが1分12秒差の総合2位にジャンプアップしている。翌第8ステージは今大会初の山頂ゴールが設定される。これまで以上に総合順位の変動が激しくなるだろう。


ジロ・デ・イタリア2010第7ステージ結果
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)     5h13'37"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)   +2"
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
4位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)        +6"
5位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)            +12"
6位 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)    +27"
7位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル)         +29"
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)    +1'01"
9位 カイエタノ・サルミエント(コロンビア、アックア・エ・サポーネ)  +1'07"
10位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)      +1'10"
175位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)             +25'29"

個人総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)   24h09'42"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)      +1'12"
3位 デーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・トランジションズ)  +1'29"
4位 ウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)        +1'30"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       +1'33"
6位 マルコ・ピノッティ(イタリア、チームHTCコロンビア)      +1'40"
7位 リーナス・ゲルデマン(ドイツ、チームミルラム)         +1'50"
8位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +1'51"
9位 トーマス・ローレッガー(オーストリア、チームミルラム)     +1'56"
10位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)        +2'00"
174位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)            +50'59"

ポイント賞 マリアロッサ
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
サクソバンク

敢闘賞
アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)

フーガ(逃げ)賞
リック・フレンス(オランダ、ラボバンク)

text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos

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