アソスの2018年春夏モデルで、レース・トレーニング向けのベーシックモデルT.EQUIPEショーツが進化し、「T.EQUIPE EVOショーツ」に生まれ変わった。BMCレーシングによるフィードバックを活かして開発された最新モデルを、自転車ライター浅野真則によるインプレッションを通して紹介する。



アソス T.EQUIPE EVOショーツ(blackSeries)アソス T.EQUIPE EVOショーツ(blackSeries) (c)ダイアテック
ライクラ製のサイクルショーツやビブショーツ、密度の異なる素材を組み合わせたパッドなど、数々の世界初のテクノロジーで、サイクルショーツの数々の”常識”を作り上げたスイスのブランド・アソス。2017年からUCIワールドツアーチームの強豪・BMCレーシングにウェアを供給し、再び世界最高峰の自転車レースに復帰したことは記憶に新しい。契約外の選手もウェアを自費で購入して使ったり、パッドだけをアソスのものに縫い替えたりという選手がいるほど、先進的な機能でサイクリストの支持を集めるブランドだ。

そのアソスが2018年春夏モデルで、発表した最新モデルが「T.EQUIPE EVOショーツ」だ。これは従来のS7世代のレース・トレーニング志向のデイリーユースに最適なベーシックモデルT.EQUIPEショーツの改良版で、開発にあたってはBMCレーシングの選手のフィードバックが活かされている。

左から順にprofBlack、nationalRed、silverFeverのカラー左から順にprofBlack、nationalRed、silverFeverのカラー (c)ダイアテック前部にベンチレーションホールを配しブラックにカラーチェンジしたニューパッドを採用前部にベンチレーションホールを配しブラックにカラーチェンジしたニューパッドを採用 (c)ダイアテック

レース・トレーニング志向のデイリーユースに最適なT.EQUIPE EVOショーツレース・トレーニング志向のデイリーユースに最適なT.EQUIPE EVOショーツ (c)ASSOS
今作の最大の変更点は、パッドのマイナーチェンジが行われていること。パッドのフロント部分にパンチング加工を施すことで通気性をさらに向上させており、色もブラックに変更されている。一方、パッドの周囲の両足に密着する部分を縫い付けず、縫い目で擦れることによるストレスを減らしながらパッドの密着度も高めるゴールデンゲートテクノロジーや、8mm厚のメモリーフォームなど、旧モデルの主要テクノロジーはほぼ継承されている。

あわせてデザインもアップデートされた。バックパネルには、アソスロゴをモノグラム化した最近のアソスのウェアに共通して使われるデザインが採用されている。また、従来は左脚側の裾の色はエキップがアメジスト、カンピオニッシモがゴールドというようにモデルごとに異なっていたが、このモデルではレッド、シルバー、ブラックの3色から選べるようになっている。

旧モデルとの違いに注目しながら、さっそくインプレッションを行おう。



― インプレッション

「“最新のアソスが最高のアソス”を地で行く完成度の高さ」浅野真則(自転車ライター)

個人的にアソスのショーツを15年近く履き続けていて、モデルチェンジされて世代が変わるたびに感動させられています。今はS7世代のT.EQUIPEショーツを愛用していますが、T.EQUIPE EVOショーツの履き心地は、肌に触れる部分の心地よさや適度にタイトなフィット感など、S7の良さをそのまま受け継いでいます。

パッドの感触もS7世代の良さがしっかり生かされています。特に座面が硬めのサドルとの相性が抜群で、クッションがほとんどないようなサドルであっても、骨盤を寝かせたり立たせたりしてもお尻がほとんど痛くならないのが素晴らしい。「自分に合うサドルが見つからない」と感じている人は、サドルを変える前にまずアソスのショーツを試してみたらいいのに…と強く思います。

「“最新のアソスが最高のアソス”を地で行く完成度の高さ」浅野真則(自転車ライター)「“最新のアソスが最高のアソス”を地で行く完成度の高さ」浅野真則(自転車ライター) (c)ダイアテック
パッド以外のフィット感や肌あたりも絶妙。全体的に伸縮性の高い生地を採用していて縫い目が少ないので、チクチクしたりごろごろしたりしないのがいいですね。さらにビブの幅や締め付け感、乗車姿勢を変えたときのフィット感も他のブランドにはない魅力と言えるでしょう。

ここまでは旧モデルでも味わえるのですが、EVOの真価は実際に走ってみて初めて分かりました。というのも、明らかに旧モデルより通気性が高くなっていて、蒸れにくくなっているのです。

S7パッドは、下ハンを持って深い前傾姿勢をとった時にも痛くなりにくいように前面までしっかりパッドが入っています。旧モデルでもパッドの中層のフォームに穴を開けて通気性を高めてはいたものの、肌に触れる部分が穴あきではなく、暑い時期にはやや蒸れやすかったのです。

アソスロゴのモノグラムデザインはエキップジャージから透けて見えることを考慮しているアソスロゴのモノグラムデザインはエキップジャージから透けて見えることを考慮している (c)ダイアテック
腰部分にはアソスロゴが挿入される腰部分にはアソスロゴが挿入される (c)ダイアテック全体的に伸縮性の高い生地を採用しており、フィット感も高い全体的に伸縮性の高い生地を採用しており、フィット感も高い (c)ダイアテック


しかし、今作ではパッドのフロント部分の肌に触れる部分に無数のパンチング加工を施した「クレーターベンチレーション」によって通気性が格段に高まっています。それでいて、深い前傾姿勢で骨盤を寝かすようなフォームになったときにも、S7パッド同様に圧迫感がないのは素晴らしいですね。

デザイン面では、左ももの裾部分に太めのカラーラインを採用し、レッド、シルバー、ブラックの3色が選べるようになったのはカラーコーディネートを楽しみたい人には朗報と言えるでしょう。個人的にはEQUIPEジャージのカラーバリエーションに合わせてブルーやホワイトのラインも追加してほしいです。

EQUIPEジャージと組み合わせるといえば、アソスの社員からこんな話を聞きました。「T.EQUIPE EVOショーツのバックパネルに配されたアソスロゴのモノグラムは、EQUIPEジャージの背面の白いメッシュ部分から透けて見えることも考慮したもの」だとか。こうした遊び心も大好きです。

パッドに施したベンチレーションによる快適性向上が今作の大きなアップデートポイントパッドに施したベンチレーションによる快適性向上が今作の大きなアップデートポイント (c)ダイアテック
アソスのウェアというと価格だけを見て「高級」「高い」というイメージを持たれる方も多いですが、耐久性が他のブランドのものとは格段に違うと実感しています。週3回とか4回ペースで履き続けても1年でボロボロになるなんてことはないし、数年は当たり前に使えます。実使用年数あたりの単価で考えると、実はアソスのウェアってそんなに高くないし、他のブランドにはない極上の履き心地も味わえます。安価で着心地がそこそこのウェアを毎年買い換えるぐらいなら、実はお値打ちであるとすら言えるのではないでしょうか。

T.EQUIPE EVOショーツは、アソスの技術の粋を集めた最新のショーツです。古くからのアソスユーザーの間では「最新のアソスが最高のアソス」と言われますが、T.EQUIPE EVOショーツは、まさにその言葉を地で行く完成度だと思います。

アソス T.EQUIPE EVOショーツ
サイズ:XS、S、M、L、XL、XLG、TIR
カラー:nationalRed / silverFever / blackSeries / profBlack
アウトフィットクライマレンジ:サマー
フィット:レーシングフィット
推奨使用温度帯:25℃~
メインテキスタイル:Type.439
UVカット:UPF 50+
アイスカラー:○
素材:70% PA, 18% EA, 12% PES
価格:26,500円(税抜)※ProfBlackは27,500円(税抜)



インプレッションライダープロフィール

浅野真則(あさのまさのり)浅野真則(あさのまさのり) 浅野真則(あさのまさのり)

各種自転車WEBメディアや自転車専門誌で執筆活動を行いながら、実業団登録選手としても活動する業界屈指の実走派自転車ライター。個人的に15年近くアソスのウェアを愛用し続けるヘビーユーザーでもある。本業の合間を縫って実業団レースやホビーレースにも参戦し、2015年にはアソスが主催したグランフォンド「ラ・カンピオニッシモ」の最長コースを完走した。シクロワイアードでは過去にROTOR INPOWERインプレッション企画にも登場。

ライターアサノFacebook

text:Masanori.Asano
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