日本のヘルメットブランドとして多くのサイクリストから支持されるカブトより、空力性能と通気性を追求したAERO-R1が登場。ジャパニーズブランド初となるセミエアロヘルメットの実力をインプレッションした。



カブト AERO-R1カブト AERO-R1 photo:Makoto.Ayano
サイクルロードレース界で普及の一途をたどるエアロヘルメット。TTヘルメットの空力性能を通常のヘルメットにも付加することで、ロードレースにおける高速巡航やスプリント時の空力性能を高める働きがあるとして、プロレースはもとより一般のサイクリストにも深く浸透してきたアイテムの1つだ。

そんなエアロヘルメットで多く語られるのが空力性能と通気性の両立である。そもそも高い空力性能を発揮するためには、空気の整流効果を考慮して通気性を向上させるベンチレーションホールを少なくする必要がある。そういった問題に対し、日本のメーカーとして初めて取り組んだのがカブトのAERO-R1だ。

銀色の部分が乱流を整えるウェイクスタビライザー銀色の部分が乱流を整えるウェイクスタビライザー シールドは上下反対にすることで収納が可能シールドは上下反対にすることで収納が可能

上下3段階に調節が可能なXF-7アジャスターを装備する上下3段階に調節が可能なXF-7アジャスターを装備する シェルの内側にはエアフローを考慮した溝が入り、額部分からも空気が入る設計にシェルの内側にはエアフローを考慮した溝が入り、額部分からも空気が入る設計に

昨年のサイクルモード2016にて発表されてから半年、満を持して一般発売を迎えたカブトのAERO-R1。TTヘルメットと同様の空力性能を有しながら、他のカブトヘルメットと同じくヘルメット内部のエアルートを広くとることで熱気を排出する構造としている。優れたエアロ効果を発揮しつつ、頭部が蒸れない快適性も獲得しているのは大きな特徴である。

TTヘルメットと同等の空力性能を発揮する上で大きな効果をもたらすのが、特許を取得した「ウェイクスタビライザー」と呼ばれる独自の構造。これは350km/h以上の速度で走るモーターバイクレース用ヘルメットのためにカブトが開発した空力技術で、ヘルメット後部に発生する乱流を抑え、ショートテール形状ながらロングテールのTT用ヘルメットと同等のエアロダイナミクスを発揮する。

ヘルメット後方は大きく開き、前方から取り込んだ空気を排出するヘルメット後方は大きく開き、前方から取り込んだ空気を排出する 大きなベンチレーションホールにはサングラスを刺すこともできる大きなベンチレーションホールにはサングラスを刺すこともできる


空力性能と並び、カブトがAERO-R1で重要視したのが換気性能だ。ノーマルヘルメットに比べてベンチレーションホールが少なくなるエアロヘルメットだからこそ、クーリング性能は各社の腕の見せ所となる。カブトがこだわったのはエアロダイナミクスを妨げない高効率のベンチレーションホールのサイズと配置、そしてヘルメット内部の空気を積極的に入れ替えるための深いエアルートの設計だ。

常に前面から新鮮な風を取り入れて後部へと排出することで、ノーマルヘルメットよりも圧倒的に少ない開口部ながらも、それらと遜色のない涼しさを手に入れた。また、ベンチレーションホールはアイウェアをしっかりキープできる形状にもなっているため、利便性も考えられたデザインとなっている。

専用シールドが装備できるのもこのヘルメットの大きなポイントだろう。マグネットにより取り付けられるシールドは、眼鏡を掛けたままでも装着できるよう顔とのクリアランスを確保している。ヘルメット前部には干渉度合いを微調整できるスペーサーも付属するため、自分好みに設定することができる。

シールドを使用する事もできるカブト AERO-R1シールドを使用する事もできるカブト AERO-R1
シールドはマグネットでついているため着脱は容易だシールドはマグネットでついているため着脱は容易だ サングラスをつけながらシールドを使用することもできるサングラスをつけながらシールドを使用することもできる


更に付け加えるならば、エアロヘルメットながら軽量性にも優れていることもこのヘルメットの美点だろう。S/Mサイズで205g、L/XLサイズで235g(※シールド未装着)と、ノーマルヘルメットと比べても軽さを感じる重量に仕上がっている。

チンストラップには瞬間消臭繊維”MOFF”を使用した極薄のカラーストラップを採用。パッドは通気性に優れるノーマルインナーパッドと、虫の侵入を防ぐA.I.ネットの2種が付属するため好みに応じて変更できる。

カラーはマットホワイト、マットブラック、パールホワイトレッド、マットブラックレッド、ブラックブルー、ブラックグリーン、ブラックイエローの7色。サイズはS/MとL/XLの2種類が用意される。価格は19,000円(税抜)だ。

また、オプションシールド「ARS-3 SHIELD」の販売も開始。スモーク、ブルーミラー、ピンクミラーの実用的な3カラーがラインアップされ、付属のクリアレンズとは違う特殊曲げ製法により成形することで、約50%の軽量化を果たしている。オプションレンズのインフォメーション記事はこちら。それではインプレッションに移ろう。



― インプレッション

「エアロヘルメットだと信じられないほど高い通気性を持つ」御園井智三郎(ミソノイサイクル)

カブトのヘルメットというと日本人サイクリストに非常に人気が高く、イベントなどでも本当に多くの人が被っています。そんなこともあってか、ショップでもこのAERO-R1はお客さんからの前評判も高く、いつ入るのかという問い合わせが絶えない注目製品でした。

「ただのエアロヘルメットではない通気性の高さ」御園井智三郎(ミソノイサイクル)「ただのエアロヘルメットではない通気性の高さ」御園井智三郎(ミソノイサイクル) 実際に被ってみると、カブトの触れ込み通り、他のエアロヘルメットではありえないほど高い通気性を感じます。エアロヘルメットの中にはこのAERO-R1同様にシールドが装着可能なモデルがいくつかありますが、その多くが走行中の湿気で曇ってしまいます。ですが、このAERO-R1は空気抜けが良くシールドが曇りません。そういったところに通気性の良さというのを実感できます。

またこのシールドは顔との距離が離れているため、メガネやサングラスをかけたまま装着できるのもポイントでしょう。自転車に乗るたびに度付きのサングラスやコンタクトを付ける必要がないので、メガネを常用する方にとっては朗報になるのではないでしょうか。一点、シールドの上部分が軽く曲がっているため、視界に歪みが発生する部分がありますが、極端な上目遣いをしなければ問題ないでしょう。

帽体の形は今までのカブトヘルメットのようにサイドに余裕があるような形から、少しサイドを絞ったバランスの良い形状になっています。今までの丸い形状以上にフィット感が増したように感じますね。

またデザインも現在市場にある自転車用ヘルメットとは一線を画しているようで良いと思います。まるでガンダムなどの日本独自のロボットアニメに出てくるような、独特のメカメカしいデザインが気に入った方も多いのではないでしょうか。

「非常に優れた被り心地とエアロヘルメットらしからぬ軽さが魅力」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

カブトの新作ヘルメットということで、やはり被り心地は非常に良いです。その上、エアロデザインにも関わらず軽量ですし、空力性能も優れていると感じます。そしてメーカーが謳うように、通気性が良く涼しいのも特徴ですね。

「被り心地は非常に良く、エアロデザインにも関わらず重量も軽量」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)「被り心地は非常に良く、エアロデザインにも関わらず重量も軽量」村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)
他メーカーのエアロヘルメットだとテール部分が少し長いものがあり、疲れてきて頭が下がってしまうと空気抵抗が増してしまう物もあります。その点、このAERO-R1は短く出来ているので、頭が下がってきてしまっても抵抗と感じることがありません。どんなシーンでも十分なエアロ性能を感じる事ができますね。

ヘルメット上部のベンチレーションホールが絶妙な位置にあり、暑いときにはそこからボトルの水をかぶるというのもオススメの使い方です。夏場は熱中症に注意して自転車に乗らなければなりませんが、水を飲むことはもちろん、体を冷やすことも大切になってくるので、非常に優れたデザインですね。

シールドもマグネットで装着できる仕様となっていますが、ホールド感もバッチリで、サイズも大きすぎず、小さすぎずの丁度いいサイズとなっています。サングラスを掛けたくない方にはぴったりですし、通気性が良いため曇らないというのもポイントで、とても使い勝手の良いシールドだと思います。

被り心地はカブトらしい日本人の頭にフィットした形状です。今回試したのはS/Mサイズでしたが個人的にはサイドにゆとりがあり、やや大きく感じました。ですので頭が丸型の人でも被りやすいと思います。それに外から見たときにサイドが薄く出来ているのでキノコ頭になりづらいのもいいですね。

この内容でありながら、価格も非常に抑えられており、コストパフォーマンスは高いと思います。日本人サイクリストのニュースタンダードとなるヘルメットの登場だと感じましたね。

カブト AERO-R1カブト AERO-R1 photo:Makoto.Ayano
カブト AERO-R1
規 格:JCF(公財)日本自転車競技連盟公認
サイズ:S/M、L/XL
カラー:マットホワイト、マットブラック、パールホワイトレッド、マットブラック・レッド、ブラックブルー、ブラックグリーン、ブラックイエロー
価 格:19,000円(税抜)



インプレッションライダーのプロフィール

御園井智三郎(ミソノイサイクル)御園井智三郎(ミソノイサイクル) 御園井智三郎(ミソノイサイクル)

今年で創業120周年を迎えた、国内はもとより世界的にも最古参クラスの歴史を誇り、静岡県浜松市内に3店舗を構えるミソノイサイクルの5代目代表を務める。海外メーカー及び国内代理店と強い繋がりを持ち、ロードレーサーから実用車まで、あらゆるジャンルの機材で、新旧を問わない豊富な知識を持つ。また、かつてはトップアマとして国内レースで活躍した経験も。現在は地元浜松市と共に、走行環境の整備やイベントの企画・運営を行い、スポーツサイクルの更なる普及に注力している。

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村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI) 村山智樹(ZING² FUKUOKA-IWAI)

福岡市は天神地区に店舗を構えるZING² FUKUOKA-IWAIにて、セールス&メカニックやトライアスロンアドバイザーを担当する。モータースポーツを趣味にするほどの機械いじり好きが高じて自転車業界へ。自身は各地で行われるトライアスロンのレース会場へも、メカニックとして出向くほどTTバイクの扱いを得意とする。お客さんに向けたトライアスロン教室も行い、普段からトライアスロンのレース参加に向けたトレーニングとして自転車を嗜む。トライアスリートらしく愛車はサーヴェロのP3。

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text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
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