4月22日のトレーニング中に事故死したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)を偲ぶ声が集まっている。エースとして挑む予定だったジロ・デ・イタリアを前にしたタイミングでの悲劇。事故の詳しい状況も明らかになってきた。



上りスプリントで勝利したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)上りスプリントで勝利したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) photo: Tour of the Alps
ツアー・オブ・アルプスを総合4位で終えたスカルポーニは、第5ステージ終了後にチームマッサージャーとともに車で450km離れたマルケ州フィロットラーノの自宅へ。その日のうちに帰宅し、家族とともに一晩を過ごした。スカルポーニはツアー・オブ・アルプスのリーダージャージを着せた双子の息子(ジャコモとトンマーゾ)を背中に乗せた写真をInstagramにアップしている。

翌朝(4月22日)スカルポーニは自宅から短いトレーニングライドに出発。午前8時5分、自宅近くのインドゥストリア通りの交差点で事故は発生した。フィロットラーノからの下りを走っていたスカルポーニが、57歳男性の運転する大型バンと正面衝突。周囲の運転手が駆けつけて118番(救急ダイヤル)通報を行い、その数分後には救急車が現場に到着した。同時にトッレッテ・ディ・アンコナの大型病院から救急ヘリコプターも出動している。しかし、救急救命士による蘇生処置もむなしく、スカルポーニが息を吹き返すことはなかった。ガゼッタ紙によると、正面衝突の衝撃によりスカルポーニは即死の状態。バン運転手の前方不注意が事故の原因だと伝えられている。

「書くことをはばかる大きな悲劇が起こってしまった」。事故の数時間後、アスタナチームはプレスリリースを出し、スカルポーニの死去を伝えた。チームのアレクサンドル・ヴィノクロフGMは「大きなショックを受けている。我々チームのメンバー全員や彼の家族、友人、同僚たちが深い悲しみに包まれている。ミケーレ・スカルポーニは偉大なチャンピオンだった。多大なる損失であり、この苦しみを表現する言葉が見つからない。アスタナチームの代表として、ミケーレの家族と友人たちに哀悼の意を表したい」とチームを代表するベテランの逝去を悼む。

2009年ジロでステージ優勝を飾ったミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)2009年ジロでステージ優勝を飾ったミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ) photo:Kei Tsuji
観客をかきわけて激坂を進むミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)観客をかきわけて激坂を進むミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) photo:Kei Tsuji出走サインに登場したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)出走サインに登場したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsuji

スカルポーニは1979年9月25日生まれ(享年37歳)。2002年にアクア・エ・サポーネでプロ入りし、ドミナヴァカンツェを経て2005年にリバティーセグロス入りした。しかしスペインで2006年に勃発したドーピングスキャンダル「オペラシオンプエルト」で名前が挙がり、後にドーピングへの関与を認めたスカルポーニは15ヶ月間の出場停止処分を受けている。レース復帰後、2008年から3年間アンドローニジョカトリに所属。2011年から3年間はランプレで過ごし、2014年からアスタナに所属していた。

2009年ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝し、2011年にはボルタ・ア・カタルーニャとジロ・デル・トレンティーノ(現ツアー・オブ・アルプス)で総合優勝。同年ジロ・デ・イタリアでは総合2位に入った。その後、総合優勝者アルベルト・コンタドール(スペイン)が失格処分を受けたため、スカルポーニが繰り上げで総合優勝トロフィーを受け取った。

ジロにはこれまで11回出場してステージ通算3勝をマーク。2011年の総合優勝の他にも、2010年、2012年、2013年のジロで総合4位という成績を残している。起伏のあるワンデークラシックも得意とし、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは4回トップ10フィニッシュ(2003年の4位が最高位)。イル・ロンバルディアでは2010年に2位に入っている。近年は山岳アシストとしていぶし銀の走りが光り、2016年のジロと2014年ツール・ド・フランスでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)の総合優勝をサポートした。

37歳というベテランの域に達しながらも2017年シーズンは好調で、ツアー・オブ・アルプスの開幕ステージで優勝してリーダージャージを着用。膝の故障によって欠場するファビオ・アル(イタリア)に代わってジロでアスタナのチームリーダーを担う予定だった。16年間のプロ生活の中で通算19勝。最後の勝利は自身4年ぶりの勝ち星となったツアー・オブ・アルプス第1ステージだった。

喜びを全身で表現するひょうきんな性格で、ファンのみならず選手から根強い人気を得ていたスカルポーニ。レースの前後にはファンのサインや写真撮影に気さくに応じる姿が見られ、常に笑顔とジョークで周囲を和ませてきた。長年スカルポーニとタッグを組んだニーバリは「何を言えばいいのか、何をすればいいのか分からない。言葉が出てこないよミケーレ」とコメント。アルも「悲劇は終わらない。言葉が存在しない。安らかに眠ってほしい」とTwitterに書き込んでいる。その他にも多くの選手やチーム、レース関係者がスカルポーニの死を悼むコメントを寄せている。

アスタナは4月23日に開催されるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに出場予定。レース前にはスカルポーニに捧げる1分間の黙祷が行われる予定だ。

スカルポーニの笑顔や勇姿をもう見ることはできないが、喜びを爆発させるあの表情は我々の記憶の中で生き続ける。遺された家族や友人たちの心情を思うといたたまれない。謹んで哀悼の意を表します。

アスタナチームが投稿したスカルポーニに捧げるムービー


ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は人気者ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)は人気者 photo:Kei Tsuji
ステージ5位、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)ステージ5位、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) photo:Kei Tsuji
地元ステージのスタートを待つミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)地元ステージのスタートを待つミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsuji
1年越しでミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)の手元にやってきた優勝トロフィー1年越しでミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)の手元にやってきた優勝トロフィー photo:Kei Tsuji
1級山岳アルトピアーノ・デル・モンタジオでマリアローザから遅れを取るミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)1級山岳アルトピアーノ・デル・モンタジオでマリアローザから遅れを取るミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji
敢闘賞を獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)敢闘賞を獲得したミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji
キンタナを追うミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)やアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)キンタナを追うミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)やアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:TDWsport/Kei Tsuji
スカルポーニがヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)のためにペースを上げるスカルポーニがヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)のためにペースを上げる photo:Kei Tsuji
息子を抱き上げるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)息子を抱き上げるミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) photo:TDWsport

text:Kei Tsuji
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