ピュアレーシングブランドとして高い人気を誇るカナディアンブランド、サーヴェロ。高性能モデルをリリースすることで定評ある同社のエアロロード、Sシリーズの中から、もっともリーズナブルなモデル、S2をインプレッションした。



サーヴェロ S2サーヴェロ S2 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
レーシングバイクブランドとして、ストイックに結果を求めるライダーたちの間で大きな存在感を示すサーヴェロ。歴史ある老舗でもなければ、様々なレンジの製品をラインアップする巨大ブランドでもないが、小規模ながらも高い技術力によって革新的な製品を送り出してきたイノベイティブなメーカーである。

歴史を振り返れば、サーヴェロがいかに先見性のあるブランドであったかを窺い知ることは容易だ。例えば、同社がオールラウンドモデル「R」シリーズに採用したダウンチューブとチェーンステーでねじれを抑えつつ、極細シートステーによる縦方向への柔軟性を確保するという設計は、今やどのブランドでも採用されたもの。近年ではグラベルロードとレース用ロードバイクの中間たるCシリーズをデビューさせ世間を驚かせた。

まるでインテグレーテッドポストのような一体感のあるデザインのシートポストまるでインテグレーテッドポストのような一体感のあるデザインのシートポスト 細身のトップチューブにはスピード感のあるグラデーションのグラフィックが細身のトップチューブにはスピード感のあるグラデーションのグラフィックが 細身のS2フロントフォークは軽量な仕上がりだ細身のS2フロントフォークは軽量な仕上がりだ


それは、「エアロロード」という概念自体に対しても同じ事が言えるだろう。もともと、トライアスロンやタイムトライアルの分野において圧倒的な支持を得ていたサーヴェロが、ロードバイクに対してそのテクノロジーをフィードバックしたのが「ソロイスト」と名付けられたエアロロードである。

2002年時点でNACA断面形状をダウンチューブやシートチューブに採用した、全てのエアロロードの祖ともいえるアルミバイクを発表し、2005年には名作「ソロイスト カーボン」の発表に繋げた。当時供給していたチームCSCの選手たちによって数多くの実績を残したことを覚えている方も多いだろう。

テーパードヘッドを採用し、ハンドリング性能を高めているテーパードヘッドを採用し、ハンドリング性能を高めている エアロプロファイルなダウンチューブと細身のトップチューブ集合部はボリュームたっぷりだエアロプロファイルなダウンチューブと細身のトップチューブ集合部はボリュームたっぷりだ


シートクランプは臼式で、空気抵抗の発生を抑えているシートクランプは臼式で、空気抵抗の発生を抑えている エアロ形状のダウンチューブは初代ソロイストから受け継ぐアイデンティティエアロ形状のダウンチューブは初代ソロイストから受け継ぐアイデンティティ


そのDNAを受け継ぐ直系モデルが、現在の「S」シリーズである。だが、翼断面形状のチューブを使用しているだけで革新的とされてきた10年前と、各社が独創的な機構を取り入れ、様々な実験結果を誇示し鎬を削り合う現在では、エアロロードを取り巻く環境は大きく変化を遂げてきた。

しかし、「S」シリーズは今でも確固たる存在感を失わず、多くのアスリートに選ばれ続ける存在であり、プロレースでも勝利を重ね続けている。それは、登場以来10年を越える歴史の中で様々なアップデートが施され、エアロロードの祖でありながら最先端を走り続けてきたことの証である。空気を切り裂くエアロバイクとして、時代を切り拓くパイオニアとして、ソロイストの血統はサーヴェロのバイクラインアップの中に生き続けてきたのだ。

チェーンステーはシンプルな形状でライダーのパワーを受け止めるチェーンステーはシンプルな形状でライダーのパワーを受け止める ボリュームがたっぷり与えられたBBは独自規格「BBright」を採用するボリュームがたっぷり与えられたBBは独自規格「BBright」を採用する


今回紹介するS2は、そんなSシリーズの末弟モデル。だが、それは決して初心者向けの入門モデルという意味ではない。上位モデルがプロユースモデルとするならば、S2はアマチュアレーサーのために用意されたパフォーマンスモデルと言えるだろう。

その設計は、複雑な機構を持つライバルブランドの最先端エアロロードと比べると、シンプルに映るかもしれない。エアロロードを長年デザインし続けてきたサーヴェロにとって、闇雲にエアロダイナミクスだけを求めることが速さに繋がる訳ではないことは自明の理だった。エアロダイナミクスだけではない、剛性や快適性といった走行性能を高い次元で兼ね備えた新世代のエアロロードの思想がS2には盛り込まれている。

それらの向上に寄与したのは、オールラウンドモデルのRシリーズのテクノロジー。ヘッドチューブ下部の大口径化やサーヴェロ独自のBB規格「BBright」の採用によって、前作と比較してヘッド周りは32%、BB周りは20%の高剛性化を実現。また、ウルトラ・シン・シートステーを採用することで、空力を改善しつつ、クラストップの路面追従性を獲得している。

細身のシートステーによりトラクション性能を底上げする細身のシートステーによりトラクション性能を底上げする BBrightに対応するハンガー部 Di2に対応するねじ穴が用意されているBBrightに対応するハンガー部 Di2に対応するねじ穴が用意されている ホイールに沿うようにカットされたシートチューブホイールに沿うようにカットされたシートチューブ


もちろん、Sシリーズの代名詞たるエアロ形状のフレーム形状は健在。リアホイールに沿ってシートチューブの形状を工夫するパーシャル・シートチューブ・カットアウト」など、様々な工夫が施されている。実は、これらの仕様および、フレーム素材は上位モデルであるS3と共通のもの。S3との違いはフロントフォークのみとなる。S3よりも細身のブレードをもつフォークは、実測で10gほど軽量に仕上げられていることが特徴だ。

ラインアップの中でも最も費用対効果に優れるバイクだと、サーヴェロ自身が断言するS2。今回のインプレッションバイクはシマノ105に、クランクはBBright仕様のローター 2Dのミックス仕様。ホイールはイーストンのEC90AEROを組み合わせている。それでは早速インプレッションに移ろう。



ー インプレッション

「スピードという自転車の根源的な快楽を追求した一台」
錦織大祐(フォーチュンバイク)

速いバイクですね!このバイクを買うというのはスピードを買うことと言っても過言ではありません。しかも特定のシチュエーションでのみ速いということではなくて、ありとあらゆる場面で速い。エアロロードというイメージに反して、ヒルクライムも得意です。

ダンシングでバイクを振ると、エアロロードらしく板状の剛性感がベースとなっているのを感じます。とはいえ硬すぎることはなく、シッティングとダンシングを織り交ぜながら走っていく中でどんどんとケイデンスが上がって、速度もどんどんと上がっていく。いつの間にか速いんですよ。巡航はもちろん、エアロ性能が活きる速度までの加速性能も素晴らしい。一気にギアを掛けてぐいぐいと加速しても、細かくギアを変えながらスムーズに速度を上げていっても気持ち良く伸びていく。

でも、綺麗な路面を駆け抜けることだけに特化したバイクでも無く、荒れ気味の路面が続く中でもしっかりと路面を掴んで前に進んでいきます。欧州の荒れたコース、下手したら石畳のレースでも十分に対応するだけの懐の深さを感じさせます。他ブランドのオールラウンドモデルにも引けを取りませんね。

「スピードという自転車の根源的な快楽を追求した一台」 錦織大祐(フォーチュンバイク)「スピードという自転車の根源的な快楽を追求した一台」 錦織大祐(フォーチュンバイク) エアロ形状のシートチューブやピラーが突き上げを逃がせないからこそ、シートステーがきちんと仕事をしているように感じます。他の部分、特に前三角で振動吸収性を上げるような方向性に持っていこうとすると、このスピード感を支えている要素が失われてしまうのではないでしょうか。必要なだけの快適性を確保し、残りのステータスを「速さ」へと全て振り分けたからこそ生まれる乗り味でしょう。

ロードバイクが持っているスピード感を具現化した存在であり、そこが失われるとこのバイクのアイデンティティが失われる。サーヴェロはRシリーズやCシリーズをラインアップしているのですから、ここは潔い割り切りだと感じます。S2はエアロロードとしての旨味を突き詰めた一台なわけです。

他ブランドの最新エアロモデルに比べるとギミック感は少ないですが、実際のエアロダイナミクスでS2が劣っているようには感じられません。40km/h手前くらいから、明らかに風を切り裂いていく感覚があります。ノーマルブレーキを採用するデメリットよりも、メンテナンス性などのメリットのほうが大きいのではないでしょうか。

下りでもスピードの伸びが他のバイクから頭一つ抜けています。ついついコーナーも高速で攻めたくなってしまう。コーナーリングにおける抑えるべきポイントはきちんと押さえられています。少しエアロロード特有の癖を感じますが慣れの範囲内でしょう。体重のある人だと、もう少しフォーク剛性が欲しくなるかもしれませんが、僕の体重くらいだと不安は感じませんでした。剛性の高いホイールを組み合わせてあげると不安は無いはずです。

とにかく、登りでも下りでも平坦でも、道が多少荒れていようが、いつでもどこでも速い。見た目もいかにも速そうで、「速く走りたい」と思わせてくれる。乗ってみると実際に速く走れて気持ちいい。もっとこの快感を味わっていたくなる。でも、速く走れる分脚へのダメージは大きくて、脚が終わってしまうと進まない。そうなると、速さの快感を知っている分辛いわけです。だから、楽しい時間を長く味わうために自分を鍛えようという気にさせてくれる。乗っているだけで強くなるバイクと言えるでしょう。

105完成車という枠組みで価格を見てしまうと、相対的に高く感じてしまうでしょう。しかし、このフレーム性能を鑑みれば、この値段設定が高いとは感じません。レースからハイテンポなロングライドまで、「速く」走りたい人にとって、これ以上ない選択となるでしょう。

注意するポイントがあるとすれば、ホイールの良い部分も悪い部分もそのまま引き出すタイプのフレームであるため、組み合わせるホイールにもそれなりの性能が必要となります。特に後輪の剛性感がしっかりとしたホイールとの相性が良いでしょう。重量を気にしないのであればマヴィックのコスミックカーボン、もう少しオールラウンドに走りたいのであればカンパニョーロのボーラワンなどがしっくりくるのではないでしょうか。

「直線番長という言葉がぴったりくるバイク」
吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

「ザ・エアロロード」という乗り味ですね。ゼロ発進からの加速がとても気持ち良く、後ろから押されているかのような感覚があります。自然にケイデンスが上がっていくような加速感が印象的ですね。スピードが伸びきってからの巡航性能の良さは、エアロロードならではです。

BB周りのウィップ感がちょうど良くかみ合っているのか、どんどんと回転数が上がっていきます。ウィップといっても、返りが速くキレのある乗り味に仕上がっており、レース仕様のチューニングが施されているような感覚があります。

Sシリーズの中ではもっとも手ごろなグレードに位置づけられるS2ですが、私レベルの脚力であれば全く不満を感じることはありませんでした。見た目のボリュームから、BB周辺の剛性はかなり高いのかな?というイメージを持っていたのですが、意外に踏みやすい味付けなんですね。

見た目はエアロだけど、性質的にはオールラウンダー」 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)見た目はエアロだけど、性質的にはオールラウンダー」 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)
S3との違いがフォークだけならば、リーズナブルなS2を選ぶという人は少なくないはずです。見た目こそ振動吸収性が低いように見えますが、シートステーが良い仕事をしているのでしょうか、思ったよりもかなり快適性は高いというところも良いポイントですね。

トライアスロンも良いですし、もちろんロードレースでも活躍します。快適性の高さを活かして、ハイテンポなロングライドでもいいでしょう。ピーキーさはなく、扱いやすいバイクであるため、予算に余裕があれば一台目として選んでも間違いありません。見た目はエアロですが、性質的にはオールラウンダーと言っても良いでしょう。

平地や下りでも速いバイクですが、登りでもその速さは健在です。特に緩やかな坂であればまるで平地のようにスイスイと登っていきますし、何よりもやる気にさせてくれます。急な登りでダンシングしても、どこかが妙にねじれたりするような感覚もなく、しっかりとパワーを受け止めてテンポ良く登ってくれました。

コーナーリングも基本的にはとても安心感があります。ただ、横風に対して少し影響を受けやすいので、その点は注意が必要ですね。エアロロードだと直進安定性が強いものが多いですが、S2はとてもニュートラルでイメージ通りに車体を倒すことができます。

レース用途として考えるのであれば、エアロダイナミクスと高い快適性で最後まで足を残し、勝負に絡めるバイクだということができます。もちろん平坦が一番気持ち良いバイクですが、登りが含まれるレースやロングライドでも活躍してくれます。フレームの性能が非常に優れることから、できればアルテグラ以上、ホイールもカーボンディープリムなどを組み合わせてあげたいところです。

105の完成車も価格面では魅力的ですが、S2の魅力を引き出すには少し力不足かな、と感じます。ホイールやコンポーネントをグレードアップしながら、長く付き合っていけるだけのポテンシャルを持った一台と言えるでしょうね。

サーヴェロ S2サーヴェロ S2 photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
サーヴェロ S2 105完成車
コンポ―ネント:シマノ 105
クランク:ローター 2D 52/36(Black/silver)、FSA Gossamer BBright™ 52/36(Black/Blue)
ブレーキ:シマノ 105 5800(Black/Silver)、FSA Gossamer Pro(Black/Blue)
ホイール:シマノ WH-RS010
ハンドルバー:3T Ergonova
ステム:3T ARX
重 量:7.7kg(54サイズ実測)
サイズ:48, 51, 54, 56
カラー:Black/Silver(新カラー)、Black/Blue
付属品:AHB500エアロハンドル、専用シートポスト、専用ヘッドパーツ、エアロブレーキ
価 格:460,000円(税抜)

サーヴェロ S2 フレームセット
クランク:ローター 2D 52/36(Black/silver)、FSA Gossamer BBright™ 52/36(Black/Blue)
重 量:フレーム単体1,050g/フォーク単体360g(51サイズ実測)
サイズ:48, 51, 54, 56
カラー:Black/Silver(新カラー)、Black/Blue
価 格:370,000円(税抜)



インプレライダーのプロフィール

錦織大祐(フォーチュンバイク)錦織大祐(フォーチュンバイク) 錦織大祐(フォーチュンバイク)

幼少のころより自転車屋を志し、都内の大型プロショップで店長として経験を積んだ後、2010年に東京錦糸町にフォーチュンバイクをオープンさせた新進気鋭の若手店主。台湾をはじめとした世界各国の自転車メーカーと繋がりを持ち、実際の製造現場で得た見聞をユーザーに伝えることを信条としている。シマノ鈴鹿ロードに18年連続で出場する一方、普段はロングライドやスローペースでのサイクリングを楽しむ。

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ショップHP

吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所) 吉田幸司(ワタキ商工株式会社 ニコー製作所)

名古屋に店舗を構えるワタキ商工株式会社 ニコー製作所の4代目店長を務める。一般企業に勤めてから入社した経験を活かし常に"外側からの視点"に注意を払い、初心者さんが気軽に入店しやすい雰囲気づくりを心がけている。週末にはロードやシクロクロス、トライアスロンなど多岐にわたってイベントを開催し、お客さん同士が仲良くなれるような場を提供している。ショップでは「当たり前のことを当たり前にやる」ことをモットーに作業を行い、お客さんが乗りやすいバイクを提供している。

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ワタキ商工株式会社 ニコー製作所


ウェア協力:アソス
アイウェア協力:カブト

photo:Makoto.AYANO
text:Naoki.YASUOKA
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監督: ジョー・フィンクルマン
出演: サーヴェロ・テストチーム
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出演: サーヴェロ・テストチーム
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監督: トーマス・ギスラソン
出演: ビャルネ・リース, イヴァン・バッソ, カルロス・サストレ, ミケーレ・バルトリ, イェンス・フォイクト
レーティング: NR - Not Rated