8日間に渡る日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」に昨年新たに加わり、5万人の観客を集める成功を収めた京都ステージ。京田辺市から精華町にかけて広がる丘陵地帯に設けられたコースは、近畿圏のサイクリストにとって、訪れやすく走り甲斐のある練習スポットとして週末には多くのサイクリストが集まる定番コースとして注目を集めている。

多くの観客が集まったTOJ京都ステージ多くの観客が集まったTOJ京都ステージ photo:Satoru.Kato国内外の選手たちを苦しめるアップダウンに富んだ地形、歴史ある寺社仏閣、いろいろな野菜に抹茶や苺といった地域名産の食材を活かしたグルメ&スイーツと、シリアスライダーからポタリング派サイクリストまで、豊かな自転車の楽しみ方が広がっているのが、このTOJ京都ステージエリア。

でも、まだまだその魅力を知っている方も少ないのではないだろうか、ということで京都ステージのメモリアルコースと、周辺のオススメお立ち寄りスポットや、サイクルラックやフロアポンプ、工具などを備えるサイクリストフレンドリーなお店を集めた便利なマップが完成。市役所・観光協会のほか、普賢寺ふれあいの駅をはじめ、サイクルラック協力店、サイクルショップで配布している。(PDFファイルはこちらのリンクよりダウンロードできる。

そのマップをもとに地元出身で現在はTOJ京都ステージのアンバサダーを務める三船雅彦さんがメモリアルコースと周辺のエリアの魅力をたっぷり詰め込んだサイクリングへと出かけることに。

京阪奈に広がる名物コースを体験

スタート地点となる「普賢寺ふれあいの駅」に集合スタート地点となる「普賢寺ふれあいの駅」に集合
サイクリングマップでルートを確認中サイクリングマップでルートを確認中 木津川サイクリングロードからTOJのコースへと行くにはこの玉水橋を西へと曲がる木津川サイクリングロードからTOJのコースへと行くにはこの玉水橋を西へと曲がる さて、なにはともあれメモリアルコースを走ってみよう、ということで集まったのはレースのスタート地点となる「普賢寺ふれあいの駅」。京奈和自動車道の高架が頭上を走り、さながら巨大なスタートゲートのようにも見えるこのスポットに三船さん、そしてちゃりん娘の秋山さん、詰田さんの3名が集まった。

TOJのコースは初めて、というちゃりん娘のおふたりに、コースを知り尽くした三船さんがマップを見せつつコースの様子をレクチャーしてくれた。程よい縮尺のマップには上り坂と下り坂、注意ポイントなど、様々なインフォメーションが盛りだくさん。

ちなみに普賢寺ふれあいの駅へのアプローチは、木津川サイクリングロードが便利なのだとか。玉水橋を西側に進み、JRと近鉄の三山木駅をくぐってまっすぐに進めば、普賢寺ふれあいの駅が見えてくる。

「このTOJ京都ステージのコースの特徴は平坦がほとんどないアップダウンコースではありますが、パワー系の選手に有利なコースで、ヒルクライマーよりも何度もアタックを仕掛けられるパンチ力に長ける選手に向いていると感じます。自分自身も現役時代にここでレースをしたかったですね。」とは三船さん。

ベルギーを拠点にしていた現役時代、オフシーズンのみ帰国しこの丘陵地を練習拠点にしており、ベルギーから日本に戻ってからは、この京阪奈丘陵の大阪側に居を構えた三船さんは、「本場のレースに近いコース取りができるのがこのエリア。ヨーロッパで走るために必要なエッセンスが詰め込まれています」という。

さて、ここからは三船さんによるコースの解説をお届け。プロはこのコースをどのように走るのか、実走派のシリアスライダー必読のレポート。

TOJ京都ステージ攻略ガイド by 三船雅彦

コースはいきなり梅ノ木峠へコースはいきなり梅ノ木峠へ
いくつもの登りが現れるいくつもの登りが現れる 京奈和自動車道の側道のアップダウンは道幅狭めだ京奈和自動車道の側道のアップダウンは道幅狭めだ

スタートの普賢寺ふれあいの駅から同志社大学構内をパレード走行し、周回コースへ。いきなり梅ノ木峠へと入りますが、峠という名前ほどの登りではありません。精華町側からだと緩いながらも普賢寺側よりやや長いので峠と言われても「そうかも」と感じますが、普賢寺側からは峠というよりも丘のような印象です。

それでも最後の200mほど、左直角が2回続くあたりは勾配が増すので集団から離れてしまうと下りで見えなくなってしまうでしょう。そのあとごみ処理場横の登りは、レースであれば下りの勢いを利用できるので単独で走行しているようなきつさはないはず。

未来感のある学研都市を横目にみながら進む未来感のある学研都市を横目にみながら進む TOJのフィニッシュ地点となるけいはんなプラザの日時計TOJのフィニッシュ地点となるけいはんなプラザの日時計

見事な並木が立ち並ぶけいはんな学研都市見事な並木が立ち並ぶけいはんな学研都市 鳥谷池までの登りは、峠らしさはあるけれど勾配も比較的緩い鳥谷池までの登りは、峠らしさはあるけれど勾配も比較的緩い

それよりも難しいのは京奈和自動車道の側道のアップダウンを抜けてからの右コーナー後に始まる登りでしょうか。側道は道幅も狭く、ペースが上がれば集団は長く伸びるでしょう。その伸び切った状態で最後の登りに差し掛かれば、勾配や距離以上の破壊力を感じると思います。

そしてゴールとなるけいはんな学研都市まではほんの少しだけ登り基調。ここからゴールまでに逃げる選手、追いかける選手、スプリントに持ち込みたい選手等々、多くの思惑が渦巻くことで見どころになりうる箇所です。

フィニッシュ地点を越えてから鳥谷池までの登りは、峠らしさはあるけれど勾配も比較的緩く、最後の400mほどだけ勾配が増します。鳥谷池から打田そして高船へのKOMを含むこの登りは、鳥谷池の登りでジャブを食らったあとにもう1セットをほとんどノーインターバルで行う感じでしょうか。個人的には、鳥谷池のあとに一度下りでアウターの重いギヤでリズムを変えてからのKOMは、意外と難しいし勝負が動けば精神力を問われる登りだと思っています。

緩やかに標高を上げていく緩やかに標高を上げていく 名物のヘアピンで、三船さんが本気の走りを披露。名物のヘアピンで、三船さんが本気の走りを披露。

比叡山を遠くに望むスポット 琵琶湖の花火大会も見えるんだとか比叡山を遠くに望むスポット 琵琶湖の花火大会も見えるんだとか KOMはもちろん三船さんが先着(笑)KOMはもちろん三船さんが先着(笑)

自分が現役だったら間違いなく勝負に使う。それがKOMから水取へと下っていく農道です。ここはかなり難易度が高い区間で、「止まる」「曲がる」の基本的な動作を正確に、的確に、そして冷静に行う必要があります。レースであれば相当スピードが出ますが、そのスピードをきちんと曲がれるスピードまで減速、そしてコーナーを抜けてからは加速、と決して楽はできない下りになるでしょう。それがこのコースに関する印象です。

ちなみにですが、これはあくまでも「裏メニュー」みたいなものだと思っていただきたいのですが、実はこの京都ステージをさらに難易度を上げた超級カテゴリーに感じる方法があります。既に十分きつい!という声も聞こえてきそうですが……。それはずばり「逆回り」です。

逆回りにすると、印象的には登りしかないコースに感じます。水取からの急勾配を一気に駆け上がる逆回りは、これこそ現役時代に難易度の高いレース前に体のキャパシティを向上させるためのコースで、全日本選手権やジャパンカップの前に走行していました。

一気に視界が開け、開放感のあるルートに一気に視界が開け、開放感のあるルートに
いま週末は京都ステージコースを体験しに走りに来られているサイクリストの数が以前とは比べ物にならないほど増えています。交通ルールを守って反対車線にはみ出たりせぬよう、くれぐれも注意してもらうのは当然で、それこそもしかすると逆回りを楽しんでいる人がいるかもしれません。普段は農道として活用されているので、予期しないような農作業の車や地元の方もいるかもしれません。とにかく大会を盛り上げて続けていくためにも地元住民の方にも配慮し、事故などがないように各々で注意して走行を楽しんでもらえればと思います。

もし自分がこのコースを選手として走るなら、勝ちに行くのなら……。区間賞を狙いに行くのなら、ずばり「KOM直後の下りでアタック」です。

自分の持ち味は(正確には“だった”ですが)下りのテクニックと短い登りのアタック、緩い登りや横風区間などで高い出力を要するような区間。下りでアタックすることで集団を伸ばして中切れを誘発。そして梅ノ木峠でアタックし集団から少人数、10人ほどで抜け出しを図る。そして京奈和自動車道側道のアップダウンで休ませないようなペースで集団との差を確保、側道を抜けた最後の登りで全力で集団をばらしにかかり、登り切ってからゴールまでは、力の出し惜しみ厳禁、勝利を掴むためにすべてを出し切って勝負に出る。

いくつものヘアピンが続く下りセクション。三船さんが仕掛けるならこういったテクニカルなパートだといういくつものヘアピンが続く下りセクション。三船さんが仕掛けるならこういったテクニカルなパートだという
そんな「たら」「れば」なシナリオですが、要は自分から仕掛けることがこのコースでは大事だと思います。仕掛けられる選手にとっては非常にバランスのいいコースで、自分の持ち味を活かすことのできるコースプロフィールだと思います。そんな各々の駆け引きで勝利に結びつけることができるのが京都ステージの魅力でしょう。

観戦ポイントとしては、鳥谷池へ向かうS字コーナーやKOMそしてゴール地点などみどころは去年のレースを見ても参考になるかと思いますが、鳥谷池からKOMへと向かうY字路で先頭を確認して、そのまま梅ノ木峠入り口へ先回りするというのも自転車だったらありかもしれません。その場合はくれぐれも一般車両や地元の方たちには配慮して気を付けてください。

2017年の開催は5月22日の月曜日ですが、ぜひ皆さん観戦に足を運んでみてください。国内外のトップライダーがこのコースをどんなスピードで駆け抜けていくのかを、肌で感じてほしいですね。

メモリアルコースだけではない、本物のレースを知る男が感じた京阪奈地域の魅力


現役時代にも幾度となく京田辺市や精華町を走行、実はこのコースこそがオフシーズンのトレーニングや製品テスト時に走行していたコースなのです。高校を卒業してからこの京阪奈丘陵にはまり、高船や東畑そして普賢寺付近は昔からお気に入りの場所。シクロクロスレースを開催しているくろんど池も、このコースの鳥谷池からだと3kmほどで行ける距離です。

ベルギーを拠点にしていた現役時代、オフシーズンのみ帰国しこの丘陵地を練習拠点にしていました。そしてベルギーから日本に戻ってからは、この京阪奈丘陵の大阪側に住むようになりました。

くろんど池CXの大会実行委員長を務める三船雅彦氏くろんど池CXの大会実行委員長を務める三船雅彦氏 photo:Hideaki TAKAGI
練習環境が素晴らしく、なんといっても冬に積雪で走れないということがほぼありません。ここから東へ進むと木津川市から和束町を通って甲賀市信楽へと抜ける山城地方のサイクリストのメッカともいうべきルートがありますが、ここは冬になると凍結の可能性が一気に上がります。オフシーズンのトレーニングをどれだけきちんとこなせるか、それが重要課題となります。

春以降であれば和束や信楽、伊賀上野から土山や水口そして柳生から名張方面と、ストレスなく走れるルートがたくさんあります。

この地域の魅力について語る三船さんこの地域の魅力について語る三船さん 練習環境で言うと京阪奈丘陵の中であれば高低差50~150mほどのアップダウンも走れるし和束方面へ足を運び鷲峰山(じゅうぶざん)へ行けば標高680m近くまで走れる山岳コースもあります。平坦基調で走りたければ、木津川のほうへ足を運べば木津川サイクリングロードや奈良街道もあるので平坦が走れないということはありません。

そしてこの地域の魅力は練習環境だけではありません。遠征に行くのも京都駅までは第二京阪自動車道と阪神高速京都線を使えば30分ほど。精華町からでも京奈和自動車道を使えば1時間かかりません。京都駅へのアクセスがいいことで新幹線を利用すれば東京駅へも3時間半あれば到着します。

そして伊丹空港、関西空港ともに車だと1時間圏内。これは第二京阪自動車道のおかげで自宅から3kmで高速道路へとアクセスが可能。おかげで北海道や沖縄、そして海外への遠征へのストレスもなく、そして練習環境も良い。京都、奈良、大阪と車を使えばどこに行くのも楽に移動できます。自転車選手には間違いなく日本で最も良い環境だと自負しています。

プロフィール

三船雅彦


15歳から自転車競技をはじめ、高校卒業と同時にオランダへ。94年にプロ登録し2002年までヨーロッパで活動し2008年まで選手として活動。現在はブルべやロングライドを中心に各地を走っている。

株式会社マッサエンタープライズを設立し、イベント関係や自転車の開発、メーカーや代理店のアドバイザー、そしてメディア関係など多岐にわたって活躍中。活動にあたっては、基本的に自転車、特にスポーツサイクルを取り巻く環境をよくできればと思い活動しているとのこと。
提供:TOJ京都ステージ 取材:CW編集部