5月22日(日)、国内に数多あるロングライドイベントの中でも屈指の人気を誇る「アルプスあづみのセンチュリーライド」が開催された。雪化粧残る山々が織りなす絶景や、信州の自然が育むグルメの数々が待ち受ける160kmクラスの実走レポートを2回に分けて紹介していきます。



ルートから残雪の白馬連峰を望むルートから残雪の白馬連峰を望む photo:Makoto.AYANO
マヴィックのサポートカーとモトが大会に随行。参加者の機材トラブルに対処したマヴィックのサポートカーとモトが大会に随行。参加者の機材トラブルに対処した ルートの至る所に、立て看板を設置。迷うこと無く走り切ることができたルートの至る所に、立て看板を設置。迷うこと無く走り切ることができた アルプスあづみのセンチュリーライド(以下AACR)のエントリーが開始された日のこと。大会事務局からCW編集部宛に届いたメールには「1時間かからず定員に達しました」とあった。1,500人ものエントリーが一瞬にして集まる人気大会なのだから、サイクリングメディアの記者としてもサイクリストとしても参加してみたいと思うのは当然のところ。CW編集部に加入して丸3年になるのに、不思議なことにAACR取材とは縁がなかった筆者だが、遂に今年、実走取材するチャンスに恵まれたのだ。

今年で8回目を迎えるAACRのテーマは、昨年に引き続き「100%の安全」。大会実行委員長兼プロデューサーを務める元MTBプロレーサーの鈴木雷太さんは「スポーツとしての自転車が永く日本で発展していくためには日本独特の道路事情にフィットした走りかた、マナー、モラルなどを、今一度自分たちで考えていくことがとても重要」だと説明する。

AACRならではとも言える安全への取り組みは多岐に渡る。大会前には全参加者を対象に、プロショップによる事前車検を義務化。交通ルールやハンドサイン(手信号)の出し方など、参加者が順守すべきことをまとめた動画をYoutubeに公開。大会当日は、右・左折箇所に加えて一時停止箇所でも立哨による注意喚起を実施。万が一に備えて、マヴィック、シマノ、ワコーズという3社による万全のメカニックサポート体制を敷き、多くのエイドステーションで救護スタッフを配置した。

そして最大の安全対策となるのが、選手時代から松本市に拠点を置き、安曇野の地をこよなく愛する雷太さんがプロデュースするルートである。可能な限り、急勾配の下り坂や信号、一時停止、交差点の右折を避けつつ、交通量が少なく道幅が広い道を繋いでおり、毎年アップデートが加えられているのだ。CW編集部が参加した160kmクラスでは、2箇所の大きな変更により、更なる安全性向上を図っているという。



大会実行委員長兼プロデューサーである鈴木雷太さんが開会の挨拶大会実行委員長兼プロデューサーである鈴木雷太さんが開会の挨拶 元気いっぱいなアナウンスで会場を盛り上げたMCアケさんと、スペシャライズド・ジャパンの望月秀記代表元気いっぱいなアナウンスで会場を盛り上げたMCアケさんと、スペシャライズド・ジャパンの望月秀記代表

「160km走り切るぞ~!!」「160km走り切るぞ~!!」 スペシャライズドS-WORKS TURBOタイヤが参加費に含まれた「S組」が一番スタートだスペシャライズドS-WORKS TURBOタイヤが参加費に含まれた「S組」が一番スタートだ


さて、編集部のある東京西部から、AACRの会場となる長野県松本市までは、中央道と長野道を通って車で3時間少々。多くの参加者さんと同じく現地に前日入りし、一泊してからスタート/ゴール地点となる宿泊施設「梓水苑(しすいえん)」へと向かった。

夜明け前の空には、まだ真ん丸な満月が浮かんでいる午前4時。梓水苑最寄りの松本ICを降りて、車を走らせていると、ライトを光らせながら梓水苑へと向かうサイクリストの姿がちらほら。そう、AACRのスタートへと向かう参加者たちである。160kmの長丁場とあり、これまでもスタートが早朝に設定されてきたAACRではあるが、今年は更に30分繰り上げており、最も早い時間帯の参加者達は5時ちょうどにスタートする。

ウエイブニャンなAACRルートメモを作成・配布したウエイブワンのお二人ウエイブニャンなAACRルートメモを作成・配布したウエイブワンのお二人 AACRのサポートライダーを務めたみなさんAACRのサポートライダーを務めたみなさん

朝焼けのなかのスタートだ朝焼けのなかのスタートだ
朝陽を背中に浴びながらスタートを切っていく朝陽を背中に浴びながらスタートを切っていく 水が張られた田圃の中を走る水が張られた田圃の中を走る


徐々に明るくなり、朝陽が辺りを赤く染めだすと、そろそろスタートの時間。大会協賛を務めるスペシャライズド・ジャパンの赤いバルーンアーチの前には、続々と参加者が集まってくる。早くスタートしたいとはやる参加者の気持ちをさらに盛り上げるのが、各種サイクルイベントでお馴染み「Team REAL」のMCアケさんとサブMCカネダさん。そして、大会実行委員長兼プロデューサーである鈴木雷太さんと、スペシャライズド・ジャパンの望月秀記代表の挨拶と共に、2016年のAACR本番が始まった。4~6名のグループが30秒間隔でスタートしていく。

スタートしてからは、苗が植えたばかりの田圃や上高地の山々を横目に、日本の原風景と言わんばかりの田舎道を走る。この時期ならではの新緑に、少しだけひんやりとした空気がなんとも心地よい。スタートしてから、あづみの公園・穂高エイドまでの間には大きな変更が加えられており、昨年通過した林檎畑の中のルートから一本西側のルートを通過することで、一時停止が減ったことも心地よさに拍車をかけているのだろう。

広々としていて、気持ち良いエイド会場でした広々としていて、気持ち良いエイド会場でした ジャムとパンはどちらも地元で作られたものジャムとパンはどちらも地元で作られたもの

去年参加したヤスオカパイセン↗も大絶賛のジャムパンを頬張ります去年参加したヤスオカパイセン↗も大絶賛のジャムパンを頬張ります 情報満載のルートマップを見て、現在地を確認中情報満載のルートマップを見て、現在地を確認中

第1エイドではスポンジケーキをホワイトチョコでコーティングした地元銘菓「あずさ」も配られていました第1エイドではスポンジケーキをホワイトチョコでコーティングした地元銘菓「あずさ」も配られていました 思わず写真に収めたくなってしまう色とりどりの花々思わず写真に収めたくなってしまう色とりどりの花々


ルート変更によって加えられた梓川ふるさと公園への3kmの登りもスムーズにこなし、ほどなく第1エイドのあづみの公園に到着する。ここで食べられるのは、安曇野にあるティンカーベルというベーカリーのフランスパン。昨年に続き、地元松本のスドージャムが作るジャムが塗り放題で、エイドのスタッフさんたちも「それじゃ足りないでしょ?もっと塗って塗って」と煽ってくる(笑)。スポンジケーキをホワイトチョコでコーティングした地元銘菓「あずさ」と共に、朝食代わりの糖分補給は万全だ。

同じく国営あづみの公園の中に設けられた第2エイドまでの17.5kmは、ほぼ平坦。最後の1kmこそ登りだが、それほど勾配はキツくない。あづみの公園内のグネグネと曲がりくねった林道を終えると現れる大町エイドにて、この日2回目の朝食の時間となる。

力強い新緑が目に鮮やか力強い新緑が目に鮮やか あづみの公園内の林道を抜ければ、第2エイドはすぐそこあづみの公園内の林道を抜ければ、第2エイドはすぐそこ

シャリもネギ味噌もお替わり自由!シャリもネギ味噌もお替わり自由! AACR名物のネギ味噌おにぎりはやっぱり最高ですAACR名物のネギ味噌おにぎりはやっぱり最高です

プロライダーを多くサポートしている「スポーツアロマコンディショニング」のサービスを無料で受けることができたプロライダーを多くサポートしている「スポーツアロマコンディショニング」のサービスを無料で受けることができた 万が一の時に備えたシマノのメカニックサービスもありがたい万が一の時に備えたシマノのメカニックサービスもありがたい


大町エイドで振る舞われるのは、「これを食わずしてAACRを語ること勿れ」という大会名物のネギ味噌おにぎりだ。ここまでのルート沿いに現れた、田圃の多さと、透き通った用水路の水を考えれば、シャリがおいしいのは明らか。3種類用意された味噌との相性も抜群である。ネギ味噌おにぎりは、とても1個では我慢できないほど美味しいのだが、AACRなら大丈夫。他大会ではあまり聞いたことがないが、シャリも味噌もお替わり自由。とんでもない量のおにぎりを仕込んでくれた地元の方々に感服である。

おにぎりと共に提供された黒豆ようかんは、さっぱりとした甘みでお口直しにピッタリ。その他にも、大町エイドではシマノによるメカニックサービスやマッサージブースも用意され、まさに至れり尽くせり。

160kmクラスにファットバイクで参加する強者も160kmクラスにファットバイクで参加する強者も 大会最初のビュースポットである大出橋大会最初のビュースポットである大出橋

透き通った川の流れと共に走る透き通った川の流れと共に走る ルートの至るところでお地蔵様が参加者を見守るルートの至るところでお地蔵様が参加者を見守る


おにぎりをたらふく食した参加者が次に向かうのは、16.5km先の大町木崎湖エイド。平坦基調のルートはここまでと変わらないが、目に飛び込んでくる景色は大きく変化する。槍ヶ岳を源流とする高瀬川にかかる「大出橋」からは、未だ雪が残る白馬連峰が見えてくる。今大会最初の本格的なビュースポットとあり、多くの参加者が足を止めて、信州ならではの雄大な眺めを楽しんだり、仲間と記念撮影したり。

小高い山々の新緑まぶしい農村地帯を抜けてると、木崎湖キャンプ場に設けられた第3エイドに到着する。第2エイドの味噌おにぎりと並ぶAACR名物の漬物バイキングとおざんざ、新鮮なレタスのサラダが登場だ。

地元産レタスのサラダも好評地元産レタスのサラダも好評 こちらもAACR名物の漬物バイキングこちらもAACR名物の漬物バイキング

納豆菌をつなぎに使った信州名物のおざんざ納豆菌をつなぎに使った信州名物のおざんざ 「大分の星がんばれ!」お父さんの応援だそうです「大分の星がんばれ!」お父さんの応援だそうです


きゅうり、キャベツ、大根、人参などの信州野菜を使った漬物バイキングは、浅漬や醤油漬けにキムチ漬け、変わったところではカレー漬けなど、これでもかといわんばかりの豊富なバリエーションが用意される(ちなみに漬物大好きな筆者は、食べ過ぎてしまったが故に、後半戦で喉がカラカラに・笑)。納豆菌をつなぎに使った信州名物の麺「おざんざ」は、うどんのような喉越しと歯ごたえで、ツルッと食べれてしまう。

朝こそ肌寒かったものの、この頃になると気温もぐんぐんと上昇し、夏を思わせる陽気に。そんな時に、塩気のある補給食とはナイスなタイミング。少しオーバーペースかと思うぐらいの美味のオンパレードではあるが、ここからの100kmに備えてお腹を満タンに。

大町木崎湖エイドからフィニッシュまでの模様は後編で紹介していきます。

安曇野アートラインのアップダウンを走る安曇野アートラインのアップダウンを走る


AACRで目立っていた人、チームを紹介!

神奈川県厚木・藤沢・平塚・横浜市を拠点としたチームSBCのみなさん神奈川県厚木・藤沢・平塚・横浜市を拠点としたチームSBCのみなさん お揃いのジャージで決めたチームマヴィック&大人の自転車部の河口まなぶさんお揃いのジャージで決めたチームマヴィック&大人の自転車部の河口まなぶさん

ロードイベントは初出場というダウンヒラーの永田隼也選手とオークリー自転車部のみなさんロードイベントは初出場というダウンヒラーの永田隼也選手とオークリー自転車部のみなさん チーム亀風(カメカゼ)のみなさん。命名理由は「遅いから」チーム亀風(カメカゼ)のみなさん。命名理由は「遅いから」

タンデムで走るお二人。毎年パリ〜ブレスト〜パリ挑戦を続けているそうですタンデムで走るお二人。毎年パリ〜ブレスト〜パリ挑戦を続けているそうです パナソニック松本の会社の同僚チーム「HALFPOWER」のみなさん。「パワーは半分なんですが、全力振り絞って走っています」パナソニック松本の会社の同僚チーム「HALFPOWER」のみなさん。「パワーは半分なんですが、全力振り絞って走っています」


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text&photo:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO