実業団Jプロツアー最高峰の経済産業大臣旗ロードでマリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)が優勝。団体総合は宇都宮ブリッツェンが獲得した。

マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)が優勝マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI
実業団最高峰の大会

輪翔旗が返還される輪翔旗が返還される photo:Hideaki.TAKAGI今年で46回目を数える実業団ロード最高峰の経済産業大臣旗ロード。実業団のロードチャンピオンを決める大会。同時に上位3人の成績で競われる団体成績の優勝チームには輪翔旗が贈られ、チームにとっても最高に栄誉ある大会だ。
今年は女子チャンピオンシップとジュニアユースロードチャンピオンシップも創設され、合計で3クラスのチャンピオンが決まる。
そして会場は広島県中央森林公園。全日本選手権が数多く開催され多くの名勝負が生まれたコース。アップダウンに富みカーブも多く、技術と体力の総合力が必要なもの。前半はカーブの多い下り基調、後半は「三段坂」を含む上り基調で、上りピークからゴールまでは3キロ、ホームストレートは300mで緩いのぼりになっている。また路面が改修されてからはパンクが極端に減っている。経済産業大臣旗ロードとしては初開催の場所だ。

女子 西加南子(LUMINARIA)が優勝女子 西加南子(LUMINARIA)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI女子初代チャンピオンは西加南子(LUMINARIA)

9月22日(土)には女子とジュニアユースのレースが行われた。
女子は5周61.5kmで17人が出走。序盤から西加南子(LUMINARIA)、崎本智子(ナカガワAS.K'デザイン)、金子広美(イナーメ・アイランド信濃山形)が積極的にペースアップして人数が絞られる。この中では崎本が先頭を引く時間が長い。崎本は世界選手権シリーズでも活躍するトライアスロンの第一人者だ。
これら動きで集団は6人にまで絞られ最終周回の上りへ。ここで金子がアタックするが振り切れず、6人のままでゴールへ。このゴールスプリントを西が制し優勝。西は初代チャンピオンに。

ユース 小林海(スペースゼロポイント)が優勝ユース 小林海(スペースゼロポイント)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI大怪我から復帰の中村誠(宇都宮ブリッツェン)がリード大怪我から復帰の中村誠(宇都宮ブリッツェン)がリード photo:Hideaki.TAKAGI4周目、先頭の6人4周目、先頭の6人 photo:Hideaki.TAKAGI7周目、逃げを吸収しペースを上げる鈴木譲(シマノレーシング)7周目、逃げを吸収しペースを上げる鈴木譲(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI10周目、アタックする初山翔(宇都宮ブリッツェン)と反応する伊丹健治(ブリヂストンアンカー)10周目、アタックする初山翔(宇都宮ブリッツェン)と反応する伊丹健治(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki.TAKAGI12周目、逃げ続ける4人12周目、逃げ続ける4人 photo:Hideaki.TAKAGI最終周回ラスト3キロ、アタックする伊丹健治(ブリヂストンアンカー)だが振り切れない最終周回ラスト3キロ、アタックする伊丹健治(ブリヂストンアンカー)だが振り切れない photo:Hideaki.TAKAGIP1クラス表彰P1クラス表彰 photo:Hideaki.TAKAGI団体表彰、輪翔旗は宇都宮ブリッツェンへ団体表彰、輪翔旗は宇都宮ブリッツェンへ photo:Hideaki.TAKAGIE1 山下裕太(バルバクラブ)が優勝E1 山下裕太(バルバクラブ)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIE2 豊田勝徳(チーム・アヴェル)が優勝E2 豊田勝徳(チーム・アヴェル)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIE3 加藤司馬(スミタ・ラバネロ)が優勝E3 加藤司馬(スミタ・ラバネロ)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIジュニアユースは小林海(スペースゼロポイント)

ジュニアユースは4周49.2kmで20人が出走。19分前後の速いラップで周回を刻む。この中で積極的なのは雨澤毅明(ブラウ・ブリッツェン)、岡篤志(キャノンデール・スペースゼロポイント)、谷内田涼(Team EURASIA)、内野直也(湘南ベルマーレ)ら。ペースの上がった先頭は人数を減らし6人で最終周回へ。上りで雨澤がアタックすると岡が抜き返す。しかし決定的な差にならずにゴールへ。ロングスパートをかけた小林海(スペースゼロポイント)が逃げ切って優勝。

フルメンバー参戦の輪翔旗杯

レースが始まる頃には晴れ渡り気温も25度ほどと過ごしやすい天候となった経済産業大臣旗ロード。コンチネンタルチームは1週間前のツール・ド・北海道に出場したメンバーほぼそのままで参加。出場していないのはブリヂストンアンカー清水都貴、マトリックスパワータグ窪木一茂、シマノレーシングは畑中勇介が同日の世界選手権出場で不在。いっぽうで1ヶ月前に大怪我を負った中村誠(宇都宮ブリッツェン)は「回復に向かっていて、今日はできる仕事があると判断しての出場」と心意気を見せての出場。
この中ではブリヂストンアンカーと宇都宮ブリッツェンの総合力が高く、北海道での好調さそのままに乗り込んだ。

中盤に吸収された逃げ

P1クラスは13周159.9km、108人が出走。実業団チャンピオンを賭けた戦いは展開の速いものに。
1周目からのアタック合戦の中から安原大貴(マトリックスパワータグ)が単独で1周強逃げる。吸収後の3周目、上りピークを経て6人の逃げができる。メンバーは向川尚樹(マトリックスパワータグ)、普久原奨(宇都宮ブリッツェン)、吉田隼人(ブリヂストンアンカー)、入部正太朗(シマノレーシング)、遠藤績穂(キャノンデール・スペースゼロポイント)、嶌田義明(チーム右京)で、すべてのコンチネンタルチームから1名ずつ入った逃げは容認された。
しかしその後もメイン集団は上りでシマノ、アンカー、ブリッツェンらを中心にペースアップして集団は小さくなり、逃げとの差も縮まる。そして7周目、レース中盤の早い段階で逃げは吸収される。各チームとも強い選手たちでの力勝負に持ち込むための動きだ。

不安定な集団

ひとつになった集団は不安定で小刻みなアタックが繰り出される。4人の逃げに増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がブリッジをかけるがアンカー勢が追走して吸収。先頭でアタックを繰り出すのは鈴木譲(シマノレーシング)、伊丹健治(ブリヂストンアンカー)、初山翔(宇都宮ブリッツェン)らが目立つ。地元広島出身の野中竜馬(シマノレーシング)の動きもいい。
9周目、高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)の動きに続いて平塚吉光(シマノレーシング)が抜け出し単独で逃げる。平塚の逃げは1周で吸収、ふたたび振り出しに。

4人が逃げてゴールへ

そして決定的な動きは11周目に入るホームストレートで。ここへの上りを使って初山がアタック、すぐに伊丹が合流、さらに野中も合流して3人に。下り区間でヴィズィアックも合流して4人の逃げが完成。
後続は逃げと吸収を繰り返して10人に。ここに増田、鈴木、井上和郎(ブリヂストンアンカー)らエース格が集まり、逃げ4人との根競べに。逃げ4人の中ではヴィズィアックがスプリント力に長けており、他チームはできれば追走を合流させたいところ。しかし10人の追走集団は散発的なアタックはかかるが思惑が一致せず、先頭4人との差を縮めることができない。
ようやく井上、増田、飯野智行(宇都宮ブリッツェン)、高岡の4人の追走ができる。ここで井上が接触落車したこともあり差を詰められないままに最終周回へ。先頭4人の逃げは決定的に。

ラスト3キロで伊丹がアタックするが決まらず4人のままでゴールスプリントへ。ヴィズィアックがロングスパートで先行、初山が追うも届かずヴィズィアックが優勝。
ヴィズィアックは09年に播磨中央公園で行われた経済産業大臣旗ロードで優勝(当時はNIPPO)しており個人で2勝目、マトリックスチームとしては昨年のガロッファロに続いて2連勝だ。

各選手等のコメント

優勝のマリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)
「スプリントには自信があったので勝てて嬉しい。ボス(安原監督)に恩返しができた」と語る。1週間前のツール・ド・北海道第3ステージでは、スプリンターにもかかわらずチームオーダーを優先して窪木のアシストに徹した。「北海道では調子が悪かったからね」と言うがプロ意識の高さを感じさせる。

安原昌弘マトリックスパワータグ監督
「4人で最後の坂を上りきったときに勝ったと確信した。あと一人で輪翔旗を逃したが嬉しい」


結果

P1クラス 159.9km
1位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)4時間07分49秒
2位 初山翔(宇都宮ブリッツェン)
3位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)
4位 野中竜馬(シマノレーシング)
5位 井上和郎(ブリヂストンアンカー)+23秒
6位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)+24秒
7位 高岡亮寛(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)+27秒
8位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+39秒
9位 原川浩介(キャノンデール・スペースゼロポイント)+2分27秒
10位 狩野智也(チーム右京)+2分28秒

団体成績
1位 宇都宮ブリッツェン 3200点
2位 マトリックスパワータグ 3000点
3位 ブリヂストンアンカー 3000点

Jプロツアーリーダー 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
U23リーダー 安原大貴(マトリックスパワータグ)

Fクラス 61.5km
1位 西加南子(LUMINARIA)1時間50分59秒
2位 金子広美(イナーメ・アイランド信濃山形)
3位 森本朱美(スミタ・ラバネロ)+01秒

Jフェミニンリーダー 高橋奈美(Vitesse-Serotta-Feminin)

Yクラス 49.2km
1位 小林海(SPACE ZEROPOINT)1時間16分36秒
2位 岡篤志(cannondale spacezeropoint)
3位 谷内田涼(Team EURASIA)

Jユースリーダー 雨澤毅明(ブラウ・ブリッツェン)

E1クラス 86.1km
1位 山下裕大(バルバクラブ)2時間13分47秒
2位 真坂哲平(ブラウ・ブリッツェン)
3位 松木健治(クラブシルベスト)
4位 矢部周作(クラブシルベスト)
5位 西脇圭亮(Team Axion-axion2011.com)
6位 金子大介(なるしまフレンド)

E2クラス 73.8km
1位 豊田勝徳(チーム・アヴェル)1時間56分00秒
2位 加藤康則(AACA)
3位 伊藤舜紀(ボンシャンス飯田)+30秒
4位 吉田裕仁(VC Fukuoka)+32秒
5位 飯田晋一(SPADE・ACE)
6位 門田基志(焼鳥山鳥・R)+33秒

E3クラス 61.5km
1位 加藤司馬(スミタ・ラバネロ)1時間38分03秒
2位 山村明徳(Fastoria FUKUOKA)
3位 柳瀬慶明(チーム・アヴェル)+01秒
4位 川村つよき(Tacurino.net)+02秒
5位 安永亮(竹芝サイクルレーシング)
6位 黒澤虎南(VC Fukuoka)

photo&text:高木秀彰
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