ツール・ド・北海道がいよいよ9月15日から3日間、旭川を起点とする道北地方で行われる。今年のコースは美しい丘陵の美瑛・富良野を巡ること、そしていつもより厳しくなった第2ステージの十勝岳がトピックだ。

今年は美瑛・富良野を走る。写真は2009年大会での美瑛町付近今年は美瑛・富良野を走る。写真は2009年大会での美瑛町付近 photo:Hideaki.TAKAGI
日本で唯一のタウン・トゥ・タウンのステージレースがこのツール・ド・北海道。1987年に第1回大会が開催され、1997年からUCIレースとして行われ、今年で16回目を数える(UCI2.2)。

毎年、美しく雄大な北の大地で繰り広げられるこの大会は、3年ごとに道南、道東そして道北を舞台としている。今年は旭川市スタートの道北エリアが舞台。そしてレースは3日間・3ステージの闘いに。昨年よりも1日・1ステージ少ないが、それは個人TTであったので、公道でのロードレースの規模は3日と変わっていない。
9月15日(土)に開幕。17日(祝・月)までの総走行距離516kmだ。

選手にとってのツアーは観客にとってもそれは同じこと。9月の3連休を使ったこのレース、現地で観戦してみてはいかが?特に今年は美瑛や富良野といった抜群のロケーションを走る時間が長いので、ついでに観光もできる楽しみもある。
事前に全区間を現地確認したうえでの見どころを紹介しよう。

前日 9月14日(金)
ライセンス・コントロール、監督会議など。旭川市神楽公民館にて
このライセンス・コントロールを経て正式なスタートリストが発表される。この後に「見どころ チーム・選手編」をお伝えします。

第1ステージ 9月15日(土) 旭川市から当麻町 159km 9時45分スタート

第1ステージは蕎麦の産地、幌加内を通る第1ステージは蕎麦の産地、幌加内を通る photo:Hideaki.TAKAGI第1ステージゴールは当麻町役場前第1ステージゴールは当麻町役場前 photo:Hideaki.TAKAGI旭川市郊外、少し高台の春光台公園からスタート。最初のKOMである標高差300mほどの江丹別峠へ向かう。頂上手前2kmくらいが本格的な上りで、勾配のある峠らしい道となってKOMにたどり着く。この日2つあるKOMの一つ目だ。ステージレースが始まったばかりでアタックの応酬となるだろう。そしてKOMを巡って山岳賞ジャージをかけた戦いが繰り広げられる。これを契機に少人数の逃げもできるだろう。
そして幌加内高校前HSへ。直線の平地で3秒からのボーナスタイムが得られる。KOMでの逃げがいったん吸収されて争われることも。このあたり一面は蕎麦畑。この幌加内は全国一の蕎麦の作付面積を誇る、幌加内蕎麦の産地だ。9月はちょうど新そばが出回る時期。

そして峠とは名ばかりのなだらかな和寒峠を経て剣淵町へ。ここでもHSが1箇所、その後小さな上士別峠を越えて補給地点へ。そして緩い坂を上って岩尾内湖(ダム)へ。さらに緩く上って於鬼頭トンネル手前のKOMへ。ダムからの標高差は250mほど。ここで第1ステージの山岳賞が決まる。その後は下り基調から平坦、そして2.6kmの直線路の先がゴールだ。

峠は4つほどあるがその後の平坦もあるのでヒルクライマーが活躍できる坂ではない。だがステージレースの初日、激しいアタックが続いてKOMとHSを契機に逃げができるはず。そして終盤に向けて集団はひとつとなり、ゴールスプリントで決着が付く。
総合リーダーは3つのボーナスタイムを合計したタイムで競われる。途中のHSを2回1位で通過すれば、ゴールは2位でもリーダーになれる可能性がある。秒差の争いになる大会なだけに、ボーナスタイムを獲得できるスプリント力を持ち合わせる選手が有力だ。

第2ステージ 9月16日(日) 当麻町から美瑛町 159km 9時20分スタート

第2ステージは十勝岳の吹上温泉まで上る。写真は2009年大会、十勝岳から降りてきたメイン集団先頭第2ステージは十勝岳の吹上温泉まで上る。写真は2009年大会、十勝岳から降りてきたメイン集団先頭 photo:Hideaki.TAKAGI第2ステージ終盤に現れる美瑛の丘陵。「三愛の丘」付近第2ステージ終盤に現れる美瑛の丘陵。「三愛の丘」付近 photo:Hideaki.TAKAGIいよいよ山岳ステージ。今年は吹上温泉KOMへの上りが白金ゴルフ倶楽部を経由するため2段階の上りに。その後のゴールまでの距離が短く手前に丘陵もある。この厳しいコース設定のため、今年のツール・ド・北海道の大勢を決するステージだ。

序盤は旭川から美瑛までのおもに平地。スタート後1箇所丘陵を抜ける。そして勝負の上りへ。白金ゴルフ倶楽部近辺の3kmほどは8%以上のきつい坂で、確実に差がつく。同じ勾配の下りを経て今度こそ吹上温泉KOMへの上りへ。2006年開催時と同じルートだ。5~7%勾配の坂だが、バラバラになった集団がこの上りで再編されるが、先頭は紛れもなくヒルクライムを得意とする選手たちだ。その後に1回中腹まで再び上る坂があるが破壊力は小さい。

そしてゴールまで18km地点で美瑛の丘陵地帯に突入する。ここで最後のステージ優勝争いが繰り広げられる。逃げ集団があれば、メイン集団はこれの前までに吸収しておかないと逃げ切られてしまう。この区間、勾配こそきつくは無いが次々と現れるカーブとアップダウンで逃げやすい。しかしラスト6kmからが下りから平坦なので、秒差程度ならば吸収されてゴールになる。ここは吹上温泉での逃げ、そして美瑛丘陵でのアタックに期待したいところだ。

紛れもなく総合の行方を左右するステージだ。従来ならば十勝岳の上りで差がついても、ゴールまでに大集団となるレースがほとんどだった。しかし今年は違う。ここで分差をつけて数人が逃げ切る可能性が非常に高い。この逃げに選手を送り込めるか否かで今年の大会は決まる。そして逃げ切った数人の間では、今度はボーナスタイムの争いが待っている。


第3ステージ 9月17日(月) 美瑛町から札幌市 198km 9時30分スタート

第3ステージ序盤の美瑛第3ステージ序盤の美瑛 photo:Hideaki.TAKAGI最終日、モエレ沼公園で栄冠に輝くのは誰?最終日、モエレ沼公園で栄冠に輝くのは誰? photo:Hideaki.TAKAGI小さな上りはあるが全体としては平坦に近いステージ。各チームによる起死回生のアタックが頻発する。リーダーチームのコントロール力が試される。

スタート後に美瑛の美しい丘陵地帯へ入る。「北西の丘」からケン&メリーの木の手前で「パッチワークの路」に入る。有名どころの観光地を通るさまは一見の価値あり。ここ美瑛ではセンチュリーライドなどスポーツとしての自転車が大変に認知されている場所なのだ。丘陵のアップダウンの延長といった場所に1つ目のKOMがある。
華やかな美瑛を過ぎると札幌へ向けてコースは一路西へ。国道38号を空知川沿いに西進、赤平市でHS、滝川市から国道451号で石狩市の日本海を目指す。緩いアップダウンで途中に最後のKOMをはさんで日本海に出る。ここからはおよそ平坦で、ゴールのモエレ沼公園へ。公園西口から入りラスト400mの直線の先がゴールだ。
展開は前日までのタイム差にもよるが、数人が上位に数秒差でいる可能性が高い。そのため2箇所あるHSと、そしてゴールでのボーナスタイムの攻防が激しさを増す。自ら取りに行く場合、そしてライバルに取らせない動きがあるはずだ。上位チームのなかではスプリンターを抱えるチームが有利だ。

参考
ボーナスタイムの設定

 HS(ホットスポット)各ステージ2箇所、各3秒、2秒、1秒
 ゴール 各ステージ 10秒、6秒、4秒

photo&text:高木秀彰