ブエルタ・ア・エスパーニャ最終日は今年も首都マドリードへの凱旋ステージ。平坦ハイスピードバトルを制したのはアルゴストレインだった。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)がスプリント5勝目をマーク。土井雪広はこの日も集団ローテーションに加わるなど、最後まで仕事をやり遂げた。

マドリード中央郵便局の前を通過するプロトンマドリード中央郵便局の前を通過するプロトン photo:Cor Vosツール・ド・フランスのパリ・シャンゼリゼと同様、ブエルタも開催国首都の目抜き通りにゴールする。山岳地帯のセルセディリャをスタートした一行は、緩やかな下り基調の幹線道路を走り、マドリード中心部の周回コースに向かう。

逃げグループを形成するミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)ら逃げグループを形成するミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)ら photo:Unipublic選手たちは5.7kmの周回コースを10周。2つの90度コーナーと3つの180度ターンを含むT字型の周回コースは例年同様だ。マドリード中央郵便局前、シベレス広場で繰り広げられるスプリンターたちによる華々しいバトルで第67回ブエルタは締めくくられる。

グランツール最終日独特の和やかな雰囲気で動き出したプロトン。険しい山々を越えてきた175名の選手たちが、リラックスして一路マドリードを目指した。

マドリード中心のT字型周回コースを駆けるマドリード中心のT字型周回コースを駆ける photo:Cor Vosこの日を最後に現役を引退するダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)とグリシャ・ニアマン(ドイツ、ラボバンク)が飛び出し、2人先頭のままマドリードの周回コースに入る。

1回目のフィニッシュライン通過がアタック開始のサイン。モンクティエとニアマンは集団に戻り、代わりにセルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)やミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)ら6名が集団から飛び出した。

メイン集団は、総合ワンツーを抱えるサクソバンク・ティンコフバンクとモビスターがコントロール。やがて5周回に入るとアルゴス・シマノが集団先頭に出る。土井雪広がローテーションを組みながら、メイン集団を率いて周回をこなした。

ゴールまで残り2周回を切ると、徐々に集団前方は慌ただしくなる。チームスカイ、オリカ・グリーンエッジ、ラボバンク、リクイガス・キャノンデールが隊列を組み、競い合うように集団先頭でスピードを上げる。アルゴス・シマノは少し番手を下げ、トレインの発進準備を整えた。

土井雪広(アルゴス・シマノ)も集団ローテーションに加わる土井雪広(アルゴス・シマノ)も集団ローテーションに加わる photo:Unipublic

マイヨロホを着て地元マドリードに凱旋したアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)マイヨロホを着て地元マドリードに凱旋したアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Unipublic逃げグループの中で最後まで粘ったラグティンは最終周回に入ってすぐに吸収。リクイガス・キャノンデールが積極的にメイン集団をリードするが、ラスト1200mの最終コーナーに向けてアルゴス・シマノのトレインが急加速。アルゴス・シマノがリードした状態でコーナーを抜け、ラスト1kmアーチを駆け抜けた。

サイモン・ゲスク(ドイツ)がラスト500mまで引き、そこからクーン・デコルト(オランダ)がスプリントさながらの勢いでリードアウト。

マドリードステージを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)マドリードステージを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Unipublicその後ろから、ラスト200mでデゲンコルブが発進する。鋭い加速を見せたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は届かず、デゲンコルブ5度目のガッツポーズが決まった。

「1つのグランツールでステージ5勝出来るとはアンビリーバブルだ。チームは固い結束力をもって3週間を闘い抜いた。今日は100%フォーカスしていたんだ」と、このブエルタで一躍トップスプリンターの仲間入りを果たしたデゲンコルブは話す。

エルナンデスと笑顔でゴールするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)エルナンデスと笑顔でゴールするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Cor Vosそのチームの結束力は、土井のコメントにも現れる。「今日はジョンの勝利以外無し!今日は絶対勝つ!とバスの中で円陣を組んだ。ステージ5勝という歴史を作ったジョンのアシストとして連日先頭を引けたことに、本当に喜びを感じる」。

最終的にデゲンコルブはポイント賞ランキング4位に終わったが、最強スプリンターであったことに疑いはない。そしてそれを支えたアシストたち。アルゴス・シマノにとって、チームの歴史上最高のグランツールが終わった。

表彰台でアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)のポーズが炸裂表彰台でアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)のポーズが炸裂 photo:Unipublicアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)はチームメイトたちに感謝の手を差し伸べながらのゴール。2008年以来2度目のブエルタ制覇を果たし、スペイン人選手で独占した総合表彰台の頂点に立った。

この日のサプライズは、単独でスプリンターチームに混ざり込んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が6位に入ったことだろう。バルベルデは10ポイント加算し、最終日にホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)からポイント賞トップの座を奪った。ポイント賞ランキングの変動に伴い、複合賞ジャージもバルベルデの手に渡っている。

山岳賞ジャージはサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の手に。9月9日現在、クラークはジャパンカップに別府史之とともに出場予定だ。

スペイン人選手によって占められた総合表彰台スペイン人選手によって占められた総合表彰台 photo:Unipublicチーム総合成績トップに輝いたモビスターチーム総合成績トップに輝いたモビスター photo:Unipublic


ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第21ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)             2h44'57"
2位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
4位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 ヘルト・ステーグマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ライモント・クレダー(オランダ、ガーミン・シャープ)
10位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)
170位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                    +2'17"

敢闘賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)   84h59'49"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)               +1'16"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)                +1'37"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                 +10'16"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                +11'29"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)                +12'23"
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)         +13'28"
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)                +13'41"
9位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)               +14'01"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              +16'13"
139位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                   +3h12'22"

ポイント賞(プントス)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              199pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               193pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)    161pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        63pts
2位 ダビ・デラフエンテ(スペイン、カハルーラル)                40pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               36pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              8pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)    10pts

チーム総合成績
1位 モビスター                               254h52'49"
2位 エウスカルテル                               +9'40"
3位 アージェードゥーゼル                            +20'19"

text&photo:Kei Tsuji in London, UK
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