超級山岳2つと2級山岳を経由して1級山岳の山頂ゴールとなった第11ステージ。最後の山岳で逃げ集団から飛び出したピエール・ロランが制し、ユーロップカーは2日連続のステージ優勝・敢闘賞となった。総合はウィギンズがキープ。大きく遅れたエヴァンスは総合4位へ順位を落とした。

ステージ優勝・敢闘賞のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)

先頭グループを率いるピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)先頭グループを率いるピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) photo:A.S.O.すごい1日だった。すごいステージになると思っていたけど、やり遂げたのは僕らだ。マドレーヌ峠の登りで逃げをパスするか、少し待つべきなのかわからなかった。クリストフ・ケルヌと話すと、彼は僕を先頭集団に戻すのを手伝ってくれた。クロワ・ド・フェール峠を越えて、モラール峠を登った。彼にペースが速すぎると言ったけれど、彼は「黙って僕を信じろ、おまえならやれる!」と言い続けた。

独走でゴールするピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)独走でゴールするピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vosこのステージはこの半年間、僕の夢だった。僕にとってはここがクイーンステージだ。最難関だし、アルプスでのステージだから。アルプスは僕の故郷なんだ。今日の勝利は去年の勝利とは大きく異なる。逃げに乗るとすぐ、自分に責任があることがわかった。逃げ集団の他の選手たちが、僕に注目していたからだ。去年、僕は不意打ち的な面を利用して勝利した。(サムエル)サンチェスとコンタドールの探り合いにうまく作用したんだ。2つのステージ(今日と2011年のラルプ・デュエズ)は紙の上では同じ勝利だけど、勝ち方はまったく違っている。だから、僕のツールでの2つの勝利はそれぞれ味わいが違う。

ツールのプレゼンテーション以来、総合成績のことを考えると、今年のルートは僕にとっては理想的ではないのはチームとしてわかっていた。でも、その目標(総合上位)を追うことにした……。表彰台に立つには、3週間ずっと一貫して取り組む必要がある。レースという面では、緊張感を和らげる数日を過ごしながらステージを何勝かを狙うのと、総合上位を狙うのは異なっている。これはこの先何年かにわたって、僕が改善していきたいことだ。


総合1位・ステージ6位のブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)

ライバルたちの動きを封じるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ライバルたちの動きを封じるブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos(ニーバリに追いついた後で)フルームが先行したときは、ただ集中してペースを保つことに専念した。そこまでに1.5〜2kmほど、全力で走っていたからだ。少し下がってから山を登った。乳酸を減らすことを優先したかった。あれ以上加速したくはなかったけれど、無線の雑音がすごかったのと、無線から聞こえてきたことが多すぎて、あの時点でのチームの動きについて少し混乱が起きた。でも、今日はクリス(フルーム)が優れた脚を持っていることがわかった。チームにとって素晴らしい日を、もう一日重ねられた。本当にそうだと思う。

1級山岳ラ・トゥッスイールで猛烈にペースを上げるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)1級山岳ラ・トゥッスイールで猛烈にペースを上げるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosあの時点では無線を聞いてなかった。イヤホンが外れていたんだ。でも、今朝、僕たちは実際にクリスが最後にアタックすることについて話していたし、すでにカデル(エヴァンス)を振り落としていた……でも、今朝の計画は、カデルがまだ一緒にいて、クリスが20秒以上の差を広げることができれば総合2位に浮上するというものだった。彼は最後のタイムトライアルで自分がカデルより上位に行く100%の自信がなかった。そして僕たちは今日少しでもタイムを稼いでおきたかった……これが今朝の計画だ。ただし、僕がヴィンチェンツォ(ニーバリ)や他の有力選手と一緒にいる場合に限ってのことだった。そしてクリスは彼らを引き離さなかった。

今日のレースは確実に最難関ステージの期待に相応しいものだったと思う。最後の登りに入って、残り7km地点を過ぎたところで、安心材料がやってきた。この登りのラスト3kmは——去年のドーフィネの経験で——かなり起伏に富んだ平坦なのを知っていたからだ。カデル(エヴァンス)が脱落して、僕たちは小集団になると、文字通り安心材料の意味が強まった。「神よ、僕たちは本当にやり遂げた——このステージを乗り切った……そしてあの男に(作業済の)チェックマークを付けた」 実際、僕たちはカデルに大きなタイム差をつけた。今朝はそうなるなんてまったく予想していなかった。

クロワ・ド・フェール峠でカデルがアタックしたのには本当に驚いた。ゴールまではとてつもなく長い距離があったからだ。僕たちは数名の有力選手——リッチー(ポルト)とミック(ロジャース)と一緒に速いペースで走っていた。ここでアタックしたら強力なペースを維持しないかぎり、残り2つの峠を乗り切れないと思った……驚いた。僕には、そんな勇気はまったくない。

ヴィンチェンツォ(ニーバリ)は今日、このツールの中での存在感を増しつつあることを示したと思う。終盤のアタックは、かなり効いた。


山岳賞のフレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)

この何日か頑張ってきた。僕の脚がライバルたちみたいにペダルを回し続けられるなら、うまくいけば山岳賞ジャージを守れる。今のところ、山岳賞ジャージを獲得してキープできることを楽しむことにする。喜ぶのは先にしたい。でも、ライバルたちほどの脚が残ってないなら、山岳賞になれただけでも満足だ。

新人賞のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)をアシストするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)をアシストするティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:A.S.O.カデル(エヴァンス)は精神的に強いから、今日のことで落ち込まないと思う。彼は戦い続けるだろう。スカイの数的優位が落ち続けて、カデルが今日のような揺さぶりをかけて、数日以内にカデルに調子のいい日が来れば、僕たちはタイム差を取り戻せる。

本当に大変だった。厳しい一日だった。スカイは一日中ずっと大量のプレッシャーにさらされていただけに、カデルの脚が残っていればと思った。ウィギンズが孤立したのを今日初めて見た。次の山岳ステージで同じことを繰り返して、そのときにカデルの脚が目覚めれば、どんなことでも起こりうる。まだ先は長い。

(グランドン峠でのアタックについて)スカイにプレッシャーを与えて、最高の結果になりそうに見えたけれど、カデルが僕の後ろに付くのに少し苦労していた。カデルは少し調子の悪い日だった。普段なら彼が僕をちぎっていくほうなのに。

ステージ3位・総合3位に浮上したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)

意味深なポーズでゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)意味深なポーズでゴールするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)とブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos今日は本当に重要なステージだった。カデル・エヴァンスが遅れるとは思っていなかった。彼は偉大なチャンピオンだし、誰もがそれを知っている。調子の悪い日は、誰にでも起こり得るものだ。今日はとても難しいステージだった。何度かアタックしようとした。ウィギンズのまわりにはチームメイトがたくさん残っていた。でも、窮地に追い込めなかった。

今日は少しだけ新展開もあった。ファンデンブロックのように僕についてきた選手がいたんだ。僕たちはイヴァン(バッソ)を発射しようとしたけど難しかった。スカイには、まだ4人の選手が残っていたんだ。みんなは僕が全力を出すと思っていてくれた。だから、この結果を彼らの元に捧げることができて嬉しい。そして、こういう努力をパリまで続けるつもりだ。

コメントは現地取材、プレスリリース、チーム公式サイト、選手個人サイト、TVインタビュー、twitterなどより。

text:Taiko YAMASAKI + Seiya YAMASAKI