オールフラットなコースで争われたツール第2ステージは予想通り大集団スプリントへ。各チーム入り乱れる激しい展開の中、マーク・カヴェンディッシュがライバルを寄せ付けない力強さを見せ今ツール1勝目を挙げた。

左手にコルセットをはめて登場したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)左手にコルセットをはめて登場したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsujiスタートを待つペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)スタートを待つペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsuji


補給ポイントを行くアントニー・ルー(フランス、FDJ・ビッグマット)ら3名補給ポイントを行くアントニー・ルー(フランス、FDJ・ビッグマット)ら3名 photo:Makoto.Ayanoプロローグ、第1ステージと続いたベルギーステージへはこの日で別れを告げ、翌第3ステージからはフランスへ。ベルギー最終日となる第2ステージはオランダ国境からほど近いヴィセを西に向けてスタートし、トゥルネーへと至る207.5kmだ。

逃げを見送ったプロトンはペースダウン逃げを見送ったプロトンはペースダウン photo:Makoto.Ayano中盤の82.5km地点にはナミュール城塞を上るカテゴリー4級の山岳ポイントが設定されているものの、それ以外は基本的にオールフラットという完全スプリンター向きのコースだ。ゴール地点では大会初の集団スプリントが繰り広げられるものと予想された。

昨日の第1ステージで落車し、左手首の舟状骨を骨折したトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)や同じく負傷したルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)はレースを続行。リタイヤ無しの全198名の選手たちが午後12時40分、晴天に恵まれたヴィセの街からスタートを切った。

この日はリアルスタートが切られても積極的なアタックが掛からず、集団は一つのまま距離を消化していく。

集団内で走る新城幸也(ユーロップカー)集団内で走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Makoto.Ayanoやがて22km地点でアントニー・ルー(フランス、FDJ・ビッグマット)が抜け出すと、ここにクリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)とミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)が合流。集団はこの動きを容認し、3名の逃げが決まった。

逃げる3名のうち、山岳賞ジャージを着るモルコフは昨ステージに続いて逃げを成功させ、唯一設定された4級山岳でのポイント追加を目論む。ユーロップカーも2日連続で逃げに選手を送り込む積極的なレース運びを見せる。

逃げを見送ったメイン集団がペースを落としたため、先頭との間隔は急速に拡大する。やがてマイヨジョーヌのファビアン・カンチェラーラ(スイス)擁するレディオシャック・ニッサンがコントロールを開始し、スプリントに持ち込みたいロット・ベリソルやアルゴス・シマノも集団先頭にメンバーを配置したことで、タイム差は最大8分をもって徐々に減少していく。

トゥルネーは昨年ジロで命を落としたワウテル・ウェイラントがキャリア最後の勝利を手にした場所。親友だったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)は是が非でも勝利が欲しいところ。

ナミュールの城塞を駆け上がるナミュールの城塞を駆け上がる photo:Kei Tsuji
レースは82.5km地点に設定されたナミュール城塞へと上る4級山岳ポイントへ。ここはモルコフが先頭通過を果たし、作戦通り1ポイントの加算に成功した。

ナミュールの城塞を駆け上がるプロトンナミュールの城塞を駆け上がるプロトン photo:Kei Tsuji続く153km地点に設定された中間スプリントポイントは争わずしてケルヌが1位通過。2分弱の差を持って通過したメイン集団の先頭はマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーッエッジ)が抑え、以下マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)、カヴェンディッシュと続いた。

混戦の集団スプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)混戦の集団スプリントを制したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto.Ayanoゴールスプリントに向けて各チームが徐々に体勢を整える中で、タイムギャップは残り33kmで1分を割り込んでいく。先頭からはこの動きを嫌ったルーがアタックし、単独で逃げを続行したものの14kmを残してスピードを増す集団に吸収された。

スプリントを狙うため、総合を狙うエースの危険回避のため、各チームが集団前方に入り乱れる非常に激しい展開に。アルゴス・シマノのスプリントを担うマルセル・キッテル(ドイツ)は体調不良のため後方へと下がった。

ツール通算21勝目を記録したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)ツール通算21勝目を記録したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto.Ayano人数を残したロット・ベリソルは、残り1.5kmからユルゲン・ルーランズ(ベルギー)、残り500mでグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)が先頭を牽く必勝体勢から、満を持してアンドレ・グライペル(ドイツ)を発射。しかしその直後、背後に回り込んでいた世界チャンピオンが飛び出した。

勢い良く加速を続けるカヴェンディッシュはゴール直前でグライペルをかわすと、追撃するゴスを振りきり先頭でゴールラインを駆け抜けた。

「ゴールまではとてもせわしない展開だった。スプリンター、総合勢、クライマーまでもが集団前方にいた。普段のレースならばチーム全体でスプリントに臨むけれど、ツールでは様子が違う。小さなチャンスを掴んだ結果だよ。凄くナイスな勝利だ」そう語るカヴはこれがツール通算21勝目となる。

総合有力候補はトップと同一集団でゴールしたため、タイム差に大きな変動は無し。集団前方でレースを展開したカンチェラーラもここに入り危なげなくマイヨジョーヌを守った。

マイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)マイヨヴェールを獲得したペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Makoto.Ayanoマイヨジョーヌに袖を通すファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)マイヨジョーヌに袖を通すファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsuji


ステージ6位に入ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)はマイヨ・ヴェール獲得に成功。スプリントに加わった新城幸也(ユーロップカー)はステージ15位に入っている。

翌日はフランスへと入り、オルシーからブローニュ・シュル・メールにかけての197kmで第3ステージが行われる。コース終盤には無数の細かい上りが続くコースでパンチャー達による登坂勝負が繰り広げられるだろう。


ツール・ド・フランス2012第2ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)4h56'59"
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
3位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーッエッジ)
4位 トム・フィーラース(オランダ、アルゴス・シマノ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、FDJ・ビッグマット)
8位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・ティンコフ)
9位 マーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)
10位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
15位 新城幸也(ユーロップカー)

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)10h02′31″
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+07”
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)+10″
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)+11″
6位 デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)+13″
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
8位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+17″
9位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+18″
10位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
34位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・シャープ)+31″
40位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+37″
42位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)+38″
45位 サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+40″
50位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)+45″
58位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)+53″
92位 新城幸也(ユーロップカー)+02′03″

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフ)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
チームスカイ

敢闘賞
アントニー・ルー(フランス、FDJ・ビッグマット)


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji