今年も最強布陣で参戦するチームNIPPO。対する国内チーム勢は4日前に終わったツアー・オブ・ジャパンの、そして昨年大会の雪辱を期して戦う。そして舞台の熊野地域は昨年9月の集中豪雨で大きな被害を受けた場所だ。

丸山千枚田を2回上る丸山千枚田を2回上る photo:Hideaki.TAKAGI
5月31日(木)から4日間で行われるツール・ド・熊野。今年で14回目をむかえ、当初の3日間レースから2008年にUCI2.2カテゴリーの4日間のレースとなって5年目。昨年9月に熊野地方を襲った台風12号による大水害からの復旧はまだ途上だが、それでも今までどおりに大会は開催される。一部区間の変更があり、コースはさらに難易度が高くなった。

奈良県上北山村で72時間雨量1652.5mm
第1ステージのS/Fライン付近。奥に見える建物が水没した第1ステージのS/Fライン付近。奥に見える建物が水没した photo:Hideaki.TAKAGI選手たちを温かく迎えてくれる選手たちを温かく迎えてくれる photo:Hideaki.TAKAGI
昨年9月の災害は和歌山、奈良、三重の3県で死者・行方不明者84名を出し、多くの沢で土石流が発生。そして奈良県など上流部の降水もあり、熊野川など河川の氾濫を引き起こした。大会に関わる地域だけを見ても、新宮駅から赤木川への国道168号は熊野川の氾濫と沢からの土石流で寸断され、今も片側通行規制で復旧工事中。そして第1ステージゴール地点の熊野川温泉さつきの建物が、高台にあったにもかかわらず屋根の上部だけ残して水没した。さらに第2ステージのコースも一部区間が復旧していないため迂回ルートを取っている。しかし地元関係者の努力により、レースに関わる部分での影響は最小限に抑えられている。

「大会は続けなければならない」角口賀敏 キナン会長

大会実行委員長であり㈱キナン会長の角口賀敏氏は「大会を何としてでも続けねばならない」と語る。もちろん地元企業としてこの未曾有の災害に全社を挙げて取り組んでいるが、いっぽうで同社は東北大震災の復興支援もしていた。震災後に資材・物資を届けることと仮設風呂を石巻市に設置していた。そして半年後の昨年9月、今度は自らの拠点が被災地になった。両地で復興支援をしつつ、この大会を開く。
「たくさんの人に来てもらう、そして熊野地域は元気だという発信をしたい」と角口氏は続ける。熊野地方を訪れたら、あらためてこの大会が地元の人の熱意で支えられていることに気がつくはずだ。

4日間 334kmの戦い
第2ステージ 新コース部分の小森峠上り側第2ステージ 新コース部分の小森峠上り側 photo:Hideaki.TAKAGI厳しい札立峠を下る。好天の2010年大会より厳しい札立峠を下る。好天の2010年大会より photo:Hideaki.TAKAGI第3ステージは熊野灘を望むコース。2010年大会より第3ステージは熊野灘を望むコース。2010年大会より photo:Hideaki.TAKAGI
スケジュールはほぼ例年通りで、初日にプロローグ、そしてマスドスタートレースが3ステージ。例年と比べると、第1ステージの熊野川沿いのパレード走行が災害復旧工事のためなくなった。第2ステージは札立峠を下った後、復旧していない区間を迂回して小森峠を回るコースに、そして第3ステージは太地漁港内駐車場を300mほど回ることが違いだ。変更されたコースにより、さらに難易度が上がっている。

プロローグ 5月31日(木)0.7km 15時35分第1走者スタート

和歌山県新宮市内熊野川河口部の市田側沿いで、今年のツール・ド・熊野はスタートする。距離は0.7kmと短いがターン部分のクリアのしかたで勝敗を分ける。

第1ステージ 
6月1日(金)114.1km 赤木川清流コース 11時30分熊野川ドーム前スタート

今年はパレード無しで、熊野川ドーム前がスタート・ゴール。およそ平坦だが、折り返し地点前後の狭く起伏のある箇所と、S/Fライン手前のKOM付近の狭い急坂がポイント。例年10人前後の逃げができて熾烈な戦いになる。サバイバルレースになる可能性が高い。

第2ステージ 
6月2日(土)119.2km 熊野山岳コース 10時10分熊野倶楽部パレードスタート

国内最難関山岳コースがこの熊野の第2ステージだ。細く長い上り、それに加えコケむした滑りやすい下り。例年主催者側でコケを焼いているがこの時期、コケがあると思ったほうがいい。今年は迂回部分に標高差270mの小森峠を配し約10km延長、上り・下りだけでなく平坦部分も難易度がさらに上がった。国内で最も難易度の高い下りであり、峠を通過した情勢だけで判断できないのがこのステージ。下りで逃げることも、あるいは蓋をしてしまう作戦も過去にあった。

第3ステージ 
6月3日(日)100km 太地半島周回コース 11時10分スタート

太地半島を周回するジェットコースターのような名コース。過去にこのステージで総合成績が逆転したことが多いが、この3年間は安泰の結果になっている。常に逃げが発生し、どの逃げがゴールに届くかが見どころ。今年はKOMの手前に漁港駐車場に入り込むコース設定。ここで長く伸びた集団はそのままKOMそして逃げへと繋がる可能性が高い。


最強NIPPOに対抗するのは?
4日前までのTOJで圧倒したチームNIPPO4日前までのTOJで圧倒したチームNIPPO photo:Hideaki.TAKAGITOJで個人総合3位のヤロスラフ・ダブロフスキ(左、アモーレ・エ・ヴィータ)とポイントリーダージャージを着たマリウス・ヴィジアック(右、マトリックス・パワータグ)。2人はポーランド同郷の練習仲間TOJで個人総合3位のヤロスラフ・ダブロフスキ(左、アモーレ・エ・ヴィータ)とポイントリーダージャージを着たマリウス・ヴィジアック(右、マトリックス・パワータグ)。2人はポーランド同郷の練習仲間 photo:Hideaki.TAKAGITOJ伊豆ステージを制したUCIアジアツアーリーダーのワン・カンポー(香港チーム)TOJ伊豆ステージを制したUCIアジアツアーリーダーのワン・カンポー(香港チーム) photo:Hideaki.TAKAGI2011年大会第3ステージを制した西谷泰治(愛三レーシングチーム)2011年大会第3ステージを制した西谷泰治(愛三レーシングチーム) photo:Hideaki.TAKAGI
直前の5月27日に終えたツアー・オブ・ジャパン参加チームのほとんどがそのまま熊野へ出場する。
そのTOJで圧倒的な力を示したチームNIPPOを中心にレースは動く。
昨年は第2ステージを独占したNIPPO。結果、フォルトゥナート・バリアーニが総合優勝した。
今年もNIPPOはバリアーニを中心に強力メンバーで参戦。山岳と総合でそのバリアーニとジュリアン・アレドンドが、スプリントではリケーゼ兄弟が活躍する。佐野淳哉と内間康平も展開により勝機があり、最強の布陣で参戦する。

海外勢ではジェネシス・ウェルス・アドヴァイザーズ、アモーレ・エ・ヴィータ、トレンガヌ・サイクリングチーム、香港チーム、台湾ナショナルチームが、一部ツアー・オブ・ジャパンのメンバーで参加。
この中では、TOJ総合3位のヤロスラフ・ダブロフスキ(アモーレ・エ・ヴィータ)、アンソニー・ジャコッポ(ジェネシス・ウェルス・アドヴァイザーズ)、福島晋一(トレンガヌ・サイクリングチーム)、そしてTOJ伊豆ステージを制したワン・カンポー(香港チーム)が有力。

国内勢ではTOJ東京ステージと昨年第3ステージ覇者の西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、鈴木譲、畑中勇介(シマノレーシング)、トマ・ルバ、清水都貴、西薗良太(ブリヂストン・アンカー)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、マリウス・ヴィジアック(マトリックスパワータグ)、鈴木真理(キャノンデール・スペースゼロポイント)、狩野智也、辻善光(チーム右京)らが有力だ。
また、チーム和歌山は日本大学現役&OB中心で、現U23全日本ロードチャンピオンの安達康将、スピードが武器の窪木一茂らが参加、注目だ。


参加チーム 計18チーム

海外コンチネンタルチーム等
アモーレ・エ・ヴィータ
ジェネシス・ウェルス・アドヴァイザーズ
トレンガヌ・サイクリングチーム
香港チーム
台湾ナショナルチーム

国内コンチネンタルチーム
TEAM NIPPO
愛三工業レーシングチーム
シマノレーシング
ブリヂストン・アンカー
宇都宮ブリッツェン
マトリックスパワータグ
キャノンデール・スペースゼロポイント
チームUKYO

国内クラブチーム等
なるしまフレンドレーシングチーム
シエルヴォ奈良プロサイクリングチーム
湘南ベルマーレ
イナーメアイランド信濃山形
チーム和歌山


協力:ツール・ド・熊野実行委員会
photo&text:Hideaki.TAKAGI

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