フィナーレへと向けた山岳決戦の初日。5月25日に開催されたジロ・デ・イタリア第19ステージは、先のステージで大幅な遅れを喫したロマン・クロイツィゲルが逃げ切りのステージ優勝。ライダー・ヘジダルはタイムを稼ぎ、総合優勝へ向けてリードを重ねた。

1級山岳パッソ・マンゲンを登るプロトン1級山岳パッソ・マンゲンを登るプロトン photo:Kei Tsuji

逃げグループの中からアタックするエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)逃げグループの中からアタックするエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Riccardo Scanferla2012年のジロ・デ・イタリアはいよいよ最後の山岳決戦の地に舞台を移す。5月25日に開催された第19ステージは、トレヴィーゾからアルペ・ディ・パンペアーゴにかけての198km。距離の長さもさることながら、難易度の高いカテゴリー山岳を5つ越え、獲得標高差は5000mを超える。

1級山岳パッソ・パンペアーゴで集団のペースを上げるリクイガス・キャノンデール1級山岳パッソ・パンペアーゴで集団のペースを上げるリクイガス・キャノンデール photo:Riccardo Scanferlaまず1級のマンゲン峠をクリアすると、標高2006mへと向かって直線的に駆け上がるパンペアーゴ峠へ。登坂距離10.5km・平均勾配9.8%のこの難換山岳をクリアすると2級のラヴァーゼ峠へ。そして再びパンペアーゴ峠へと上り詰め、この日のステージは決着。マリア・ローザを懸けた総合上位陣による激しい登り勝負が繰り広げられるものと予想された。

ヴェネト州の都市トレヴィーゾをスタートした一行は、まず78.5km地点に用意された3級山岳セッラ・ディ・ロアへ。この日はスタート直後にアタックがかかり、それに追随する形で17名の逃げが決まった。

先頭で1級山岳パッソ・パンペアーゴを駆け上がるステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)とサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)先頭で1級山岳パッソ・パンペアーゴを駆け上がるステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)とサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット) photo:Riccardo Scanferla逃げグループの中には、総合19位につけるサンディ・カザール(フランス、FDJ・ビッグマット)やエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)トーマス・ローレッガー(オーストリア、レディオシャック・ニッサン)の姿。

またマリア・ローザ擁するカチューシャは、ミハイル・イグナチエフ(ロシア)を逃げへと送り込んだこと。先頭グループは最大で10分ほど、1級山岳マンゲン峠をクリアした時点では6分ほどのタイム差をもって1回目のパンペアーゴへと上り始めた。

前走のピラッツィとカザールを抜いて先頭に立つロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)前走のピラッツィとカザールを抜いて先頭に立つロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Kei Tsujiタフなスペックを持つ1級パンペアーゴでは先頭の人数は10名にまで絞りこまれ、ペースの落ち込みを嫌ったローレッガーがアタック。ここにピラッツィとカザールが加わり、先頭は3名となる。一方のメイン集団はリクイガス・キャノンデールやカチューシャがコントロールを担い、およそ3分差で頂上を通過した。

リクイガス・キャノンデールのペースアップによってメイン集団の人数は激減し、次なるラヴァーゼ峠では30名ほどに。ここからダリオ・カタルド(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)とクロイツィゲルが飛び出しを図る。2名はそのまま先行して頂上をクリアし、ローレッガーが脱落して2名となっていた先頭へ合流すると、2回目のパンペアーゴへと再び突入した。

快調に1級山岳パッソ・パンペアーゴを登るロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)快調に1級山岳パッソ・パンペアーゴを登るロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Riccardo Scanferla速いテンポでペースを刻む逃げ集団と、それを追うメイン集団。そして残り3.7kmでクロイツィゲルが飛び立った。これにはカザールはついていくことができない。

一方スカルポーニの揺さぶりによって各チームのエース選手のみとなった集団は、ペースは早めながら互いに見合う心理戦を展開していく。ここからヘジダル自らがペースアップを図ると、フォローできたのはスカルポーニのみ。バッソとロドリゲスは水を開けられてしまう。

ライバルを振り切ってゴールするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)ライバルを振り切ってゴールするライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) photo:Riccardo Scanferla単独でゴールを目指すクロイツィゲルのタイム差は、後方から迫るメンバーに対して30秒程に。しかし苦しい表情を見せながらもクロイツィゲルのリードはゴールまで持続し、自身初となるグランツールステージ優勝を成功させた。

その後方ではヘジダルがスカルポーニを振り切ってゴールに飛び込む。マリア・ローザを着るロドリゲスはヘジダルから13秒遅れの3位でゴールし、リードを消費しながら辛くも総合首位をキープする展開となった。

この動きによりヘジダルの総合タイム差は17秒にまで縮小。バッソは55秒遅れの6位に沈み、総合タイム差を1分45秒にまで拡大する結果となった。

翌第21ステージはチーマコッピのステルヴィオ峠が待ち構える今大会の最難関ステージ。最後の山岳決戦に向かって選手たちは息を整える。


ゴール後、苦しい表情を見せるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ゴール後、苦しい表情を見せるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferlaタイムを失ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)タイムを失ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Riccardo Scanferla


ジロ・デ・イタリア2012第19ステージ結果
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) 6h18'02"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +19″
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +32″
4位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +35″
5位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +43″
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +55″
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +57″
8位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ) 01′18″
9位 ステファノ・ピラッッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +01′22″
10位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)

個人総合成績
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 84h06'13"
2位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ) +17″
3位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +01′39″
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +01′45″
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ) +03′21″
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) +03′30″
7位 ジョン・ガドレ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) +05′36″
8位 トーマス・デヘント(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +05′40″
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ) +05′47″
10位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) +06′09″

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)

山岳賞 マリアアッズーラ 
マッテオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

新人賞 マリアビアンカ
リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)

チーム総合成績
モビスター


text:So.Isobe
photo:CorVos,Kei.Tsuji,Ricccardo.Scanferla