アッシジを訪れれば、誰もが感動を覚えると思う。優美なレンガ作りの街並が、山の中腹に佇んでいる。世界遺産サンフランチェスコ大聖堂の前を、マリアローザを含むプロトンが駆け抜ける。アッシジのゴールは間違いなく今大会のハイライトだ。

海に面したチヴィタヴェッキアのスタート地点海に面したチヴィタヴェッキアのスタート地点 photo:Kei Tsuji第9ステージで落車したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)は、右手をかばいながらスタート地点にやってきた、普段着で。手首に近い舟状骨を骨折した「ピッポ」は、第10ステージをスタートしないことを決めた。

ティレニア海に面したチヴィタヴェッキア(直訳すると古代の街)は、イタリア有数の港湾都市。ローマの北西80kmに位置していて、多くのフェリーや貨物船が就航することから「ローマの港」のニックネームを持つ。

巨人カップルの脚と別府史之(オリカ・グリーンエッジ)巨人カップルの脚と別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji古くから港湾都市として栄えた歴史をもち、1615年には日本の慶長遣欧使節団がこのチヴィタヴェッキアに上陸。市内には同使節団の支倉常長の銅像がある。

春先のティレーノ〜アドリアティコは度々このチヴィタヴェッキアを訪れる。2005年大会にも登場し、当時アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)が勝ったことをよく覚えている。

そんな個人的な話は置いておいて、レースの話。青い海と青い空。ピンクの風船とピンクの出走サイン台。ポッツァートはステージに上がって前日の落車の原因を作ったことを改めて謝罪するとともに、レースを去ることの悔しさを述べた。

出走サインを終えてからヴィラッジョを訪れた別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は、珍しくエスプレッソを飲みながらスタートを待つ。

スタートを待つミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)と、ブレーキ面を磨くメカニックスタートを待つミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)と、ブレーキ面を磨くメカニック photo:Kei Tsuji熊野と北海道の思い出を語るミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)熊野と北海道の思い出を語るミゲルアンヘル・ルビアーノ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Kei Tsuji

カチューシャがコントロールするメイン集団カチューシャがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsuji

サンフランチェスコ大聖堂の前を通過して旧市街へと入って行くサンフランチェスコ大聖堂の前を通過して旧市街へと入って行く photo:Kei Tsujiジロの一団は、ラツィオ州のチヴィタヴェッキアを離れ、ウンブリア州のアッシジまで北上する。カテゴリー山岳は1つだけ。ゴール地点アッシジに至る短い登りがカテゴリー4級に指定されている。

イタリアの定番観光地として、日本人観光客にもお馴染みのアッシジ。カトリック教会の巡礼地として、聖地として、崇められている。ガゼッタ紙には「パラディーゾ(楽園)に至るステージ」という文字が踊る。

サンフランチェスコ大聖堂の前でパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアタックサンフランチェスコ大聖堂の前でパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がアタック photo:Kei Tsujiピンクがかった薄いレンガ色の街並が、山の中腹に佇む。標高は約400mで、ラスト4kmから断続的に急勾配の登りが続く。ラスト1kmで旧市街に至るアーチを越え、まもなくサンフランチェスコ大聖堂の前を通過する。

このサンフランチェスコ大聖堂と関連修道施設群は、ユネスコの世界遺産に登録されている。カトリック系修道会の一つフランシスコ会の創始者である守護聖人「アッシジのフランチェスコ(1182年〜1226年)」の功績を讃えるために建立されたサンフランチェスコ大聖堂。堂々と盆地を見下ろすその様は圧巻だ。

サンフランチェスコ大聖堂サンフランチェスコ大聖堂 photo:Kei Tsujiちなみに現在進行形で盛り上がっているアメリカ・カリフォルニアの主要都市、サンフラシスコの名前はこの「アッシジのフランチェスコ」に由来する。

ルールブックには石畳との記載があったが、巡礼路だけに路面はタイル張りでスムーズ。体重が軽い選手でもバイクを跳ねさせることなく登って行ける。ラスト300mから道幅が一気に2m強まで狭まるため、後ろに下がっていては勝負にならない。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)のために作られたようなコースで、ロドリゲスが勝った。

旧市街へと入って行く選手たち旧市街へと入って行く選手たち photo:Kei Tsujiカチューシャの鉄壁の守りによって力を温存し、ラスト300mから始まる登りに全てをぶつけたロドリゲス。「ヴァレリオ・ピーヴァ監督の言う通りラスト200mまで待った。もっと厳しい登りを想像していたけど、勝ったから別にどうでもいい」。

多くのスペイン人選手は「イタリア語っぽいスペイン語」でレース後のインタビューに応える。2つの言語は似ているため、とくにこれといった勉強をしなくてもコツさえ掴めばある程度分かり合えるのだ。

2分17秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ)2分17秒遅れでゴールする別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Riccardo Scanferlaしかしロドリゲスのイタリア語はパーフェクトに近い。イントネーションもばっちりイタリア語。人当たりの良さから、イタリア人ジャーナリストやフォトグラファーの中でも人気が高い。ちなみに「プリート」という愛称は、短いタイプのタバコの名称に由来しているらしい。

総合有力勢は6秒遅れでフィニッシュ。「やはりコースを知らないのはディスアドバンテージだ」と話すフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は26秒遅れ。徐々に調子を上げてきているとは言え、このタイムロスは痛い。

「明日のステージが長くてスプリンター向きなので力を温存しないといけない」とスタート前に話していたフミは、2分17秒遅れの60位という好位置でゴールしている。

翌日の第11ステージはとにかく長い。コース全長は今大会最長の255km。ゴール地点は温泉地として名高いモンテカティーニ・テルメ。ゴール11km手前にある4級山岳ヴィコ(登坂距離3.3km・平均勾配5.2%)が果たしてどこまで集団スプリントに影響を与えるのか。フミは集団を率いてアタックを潰し、ゴスを好位置に連れて行く。

text&photo:Kei Tsuji in Assisi, Italy

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