3月25日、ベルギーで開催された「北のクラシック」初戦ヘント~ウェベルヘムは石畳と強風に絞られた集団の勝負となり、E3プライス・フラーンデレンでの勝利に続き波に乗るトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が集団スプリントを制した。

強風の吹く海沿いの道を行くプロトン強風の吹く海沿いの道を行くプロトン (c)CorVos2012年の「北のクラシック」初戦、今年で開催74回目を迎えるヘント~ウェベルヘム(UCIワールドツアー)。名物ケンメルベルグの石畳の激坂がスプリンターとアタッカーにチャンスを与えるこの伝統のレースだ。先週金曜のセミクラシック、E3プライス・フラーンデレンでの落車の怪我が心配された新城幸也(ユーロップカー)も出走。

レース後半には石畳セクションが何度も登場するレース後半には石畳セクションが何度も登場する (c)CorVos昨年より全長が31km伸びた235kmのコースはヘントの南西15kmに位置するデインセをスタートし、一路北海沿いのデパンヌに向かって西進。そこから内陸部へと進路を変え、ウェベルヘムへとゴールする。

街中の急坂でペースアップするプロトン街中の急坂でペースアップするプロトン (c)CorVosコースの大部分は平坦で、数あるクラシックレースの中ではピュアスプリンター向きで、「スプリンターのためのクラシック」と呼ばれる。しかし単純な平坦コースではなく、短く幅の狭い急坂が繰り返し登場する。レース後半にはモンテベルグやケンメルベルグなど、6つの急坂を含む周回コースが設定されている。
勝負どころとなる急勾配の難所ケンメルベルグの大部分は石畳で覆われている。リスキーな下りを経てモンテベルグを登れば、ゴールまでは35kmの平坦路だ。

変わりやすいベルギーの天候と北海から吹き付ける強風もこのレースの名物。細く曲がりくねった道との相乗効果で集団を分裂させ、思わぬ展開をもたらす。
急勾配の上りやテクニカルな下りで飛び出した選手が逃げ切るか、それとも戦線に復帰したスプリンターたちによるスプリント勝負に持ち込まれるのか。

強風に集団が分裂。ヘント名物のエシェロンが見られた強風に集団が分裂。ヘント名物のエシェロンが見られた (c)CorVosデインセをスタートしてすぐにアタックが決まり、7人の選手が抜け出すことに成功する。集団は落ち着きをもってこれを見送り、後に2名の選手がこの逃げにブリッジをかけて追いつく。次の9人の逃げが差を開いて先行する。

逃げグループを捉え、さらにアタックするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)逃げグループを捉え、さらにアタックするファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) (c)CorVos逃げた9人
ヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)
クーン・バルベ(ベルギー、ランドバウクレジット)
トーマス・ベルトリーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
ウラディミール・イサイチェフ (ロシア、カチューシャ)
アナス・ルンド(デンマーク、サクソバンク)
ステイン・ネイレリンク (ベルギー、トップスポーツ)
ケヴィン・ファンメルセン(アクセントジョブス)
ユリー・クリストソフ(ウクライナ、ランプレISD)
ジュリアン・フシャール(フランス、コフィディス)

9人と集団の差は9分にまで開いたが、後半に向けてその差はじりじりと縮まり出す。2回通過する石畳の難所ケンメルベルグの、初回通過はこの9人が集団に2分52秒のリードを保っていた。メイン集団は好調フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼ)が先頭に立ち、激坂の頂上を通過。

ゴールスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) (c)CorVos2回目のケンメルベルグもほぼ同じ差をもって9人が集団より先に通過したが、ここからレースは残り55kmの攻防へ向けて激しさを増す。まず、逃げる9人からアナス・ルンド(デンマーク、サクソバンク)とヨン・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)がペースアップして抜け出し、ランデブーに入る。

後方メイン集団ではマッティ・ブレシェル (デンマーク、ラボバンク) やダニエル・オス(イタリア、リクイガス)がメイン集団を率いてペースアップ。頂上を越えてリスキーな下りで20人ほどのグループに分裂するタイミングでファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)がアタック。これにペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)がつく。二人は前を行く5人グループに追いつき、逃げの可能性を見せる。

ゴールスプリントで落車したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)、マッテーオ・トザット(イタリア、サクソバンク)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMC)ゴールスプリントで落車したホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)、マッテーオ・トザット(イタリア、サクソバンク)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMC) (c)CorVosしかし集団のペースを淡々と上げるヘルト・ステーグマンス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)らの働きによってこれを捕らえるが、このペースアップでメイン集団は分解した。後方に取り残されたのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)やBMCレーシングのフィリップ・ジルベール(ベルギー)とトル・フースホフト(ノルウェー)コンビ、アンドレイ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ら。スプリンターと有力パンチャーのふるい落としに成功した先行グループは序盤から逃げた選手たちを飲み込み、ゴールのウェヴェルヘムを目指す。

ゴールスプリントを制し歓喜するトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールスプリントを制し歓喜するトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) (c)CorVos残り16kmまで協力して粘ったアナス・ルンド(サクソバンク)とヨン・イサギーレ(エウスカルテル)のふたりも吸収。残り10kmで後方との差は1分10秒。約30人まで絞られた集団はカンチェラーラやポッツァート、アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシング)ら有力勢を多く含むが、勝負はこの集団でのゴールスプリントにフォーカスしてゆく。

ヘント3勝目をアピールするトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ヘント3勝目をアピールするトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) (c)CorVosステーグマンスが牽引してゴールへ。スプリントの体制に入った集団からはバッランがいち早くスパートをかける。しかし波に乗るボーネンが豪快なスプリントを披露してウェヴェルヘムのフィニッシュラインを通過した。
集団中ほどでは選手たちのラインが交錯。ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)、マッテーオ・トザット(イタリア、サクソバンク)、フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMC)が落車してしまう。
新城幸也(ユーロップカー)は7分8秒送れの72位でゴールしている。

ボーネンはこれで昨年の勝利に続いて連覇達成。2004年大会を含め3度目の勝利となった。ヘントで3勝以上を挙げたのは過去4人。ロベルト・ファンイーナエメ(ベルギー)、リック・ファン・ルーイ(ベルギー)、エディ・メルクス(ベルギー)、マリオ・チポッリーニ(イタリア)らに次ぐ5人目の3勝選手として名前を刻んだ。

またボーネンは先週金曜日のE3プライス・フラーンデレンに続く連続優勝。好調の波に乗り、いよいよ次週のロンド・ファン・フラーンデレンへとモチベーションを高める。

ボーネンは言う。「チームはまたしてもスーパーに強かった。ステーグマンスはとくに今日のキーとなった選手だ。彼の働きは信じられないほどのものだった。彼がハイスピードを維持してくれたおかげで僕は僕のスプリントをすることができた。
このレースに勝ててほんとうに嬉しい。これで何のプレッシャーもなく、2つの最重要なレースのフランドルとルーベに向かえる。このレースに勝ったからといってロンドとルーベの優勝候補だとは言えない。カンチェラーラはとても強かった。しかし僕は今とても好調だ」。


ヘント~ウェベルヘム2012結果
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) 5:32:44
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 マッティ・ブレシェル (デンマーク、ラボバンク)
4位 オスカル・フレイレ (スペイン、カチューシャ)
5位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
6位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
7位 マルコ・マルカート (イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 ストゥヴ・シェネル (フランス、FDJ・ビッグマット)
9位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
10位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ (イタリア、モビスターチーム)

72位新城幸也(ユーロップカー) +00:07:08


text:Makoto.AYANO
(c)CorVos

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