3月19日から25日までの1週間にわたって、スペイン北東部のカタルーニャ地方を舞台にした第92回ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)が開催される。別府史之(グリーンエッジ)と土井雪広(プロジェクト1t4i)の1983年生まれコンビにも注目だ。

超級頂上ゴールも登場する1週間の本格ステージレース

カタルーニャ地方の田園風景の中を走る選手たちカタルーニャ地方の田園風景の中を走る選手たち photo:Cor Vos1911年に第1回大会が開催されたボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(カタルーニャ一周)は、世界でも有数の歴史を持つ1週間のステージレース。その歴史は、ブエルタ・ア・エスパーニャ(1935年〜)よりも古く、ツール・ド・フランス(1903年〜)とジロ・デ・イタリア(1909年〜)に次ぐ伝統を誇る。

3月20日(火)第2ステージ ジローナ〜ジローナ 161km3月20日(火)第2ステージ ジローナ〜ジローナ 161km image:www.voltacatalunya.catカタルーニャは、2009年までジロ・デ・イタリアと同時期の5月下旬〜6月上旬に開催され、ツール・ド・フランスへの準備レースとして重宝された。しかしツアー・オブ・カリフォルニアが5月に開催時期を移した影響で、2010年、カタルーニャが3月開催に変更されている。

独自の文化を持ち、またそれを主張するカタルーニャ地方は、バスク地方同様、スペインからの独立を訴える自治州の一つ。州都はスペイン第二の都市バルセロナ。

3月21日(水)第3ステージ ラ・バル・デン・バス〜ポルト・アイネ 210.9km3月21日(水)第3ステージ ラ・バル・デン・バス〜ポルト・アイネ 210.9km image:www.voltacatalunya.cat一般的にカタルーニャ語が話されており、レースホームページもカタルーニャ語とカスティーリャ語(スペイン語)の2種類が用意されているほど。レース名の「ボルタ」はカタルーニャ語で、スペイン語の「ブエルタ」、フランス語の「ツール」、イタリア語の「ジロ」にあたる。

カタルーニャ地方の面積は九州の約3/4。ピレネー山脈と地中海に挟まれた地形は山がちで、カテゴリー山岳が設定されていないステージは一つも無い。今年は山岳ステージの連続で、個人タイムトライアルは無し。クライマー向きのコースが用意された。

3月22日(木)第4ステージ トレンプ〜アスコ 199km3月22日(木)第4ステージ トレンプ〜アスコ 199km image:www.voltacatalunya.cat地中海沿いのカレーリャを発着する初日の第1ステージは、中盤にかけて2級と1級のカテゴリー山岳を越え、さらにゴール18km手前で3級山岳を駆け上がる。半分ほどに人数を減らした集団によるゴールスプリントで、最初のリーダージャージ着用者が決まるだろう。

第2ステージのスタートとゴールは、北米出身選手がこぞっと居を構えるジローナ。ゴール14km手前に置かれた登坂距離6km・平均勾配5.5%の1級山岳アンヘルス峠、もしくはその下りでステージ優勝を懸けた闘いが加熱する。

そしてレース3日目に大会最難関の山岳ステージが登場。コース全長は210kmと最長で、しかも前半から1級山岳、1級、超級、超級と、難易度の高い山岳が連続して登場する。いずれの山岳も登坂距離が20kmに達するほどの難関峠であり、ゴールは標高1947mの超級山岳ポルトアイネの頂上に置かれている。獲得標高は4500mクラス。グランツールでもここまで厳しいステージは珍しい。

第4ステージ以降も起伏に富んだコースが用意され、ゴール前に1級や2級のカテゴリー山岳が置かれるステージが続く。スプリンターたちは、3級山岳が3つ設定された今大会最も難易度が低い第6ステージを見据えているだろう。

最終第7ステージは119.8kmのショートステージ。しかし合計4つのカテゴリー山岳が詰め込まれており、最後まで総合の行方は分からない。州都バルセロナの街中で、1週間に及ぶ、全長1203kmのレースが締めくくられる。


ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012ステージリスト
3月19日(月)第1ステージ カレーリャ〜カレーリャ 138.9km
3月20日(火)第2ステージ ジローナ〜ジローナ 161km
3月21日(水)第3ステージ ラ・バル・デン・バス〜ポルト・アイネ 210.9km
3月22日(木)第4ステージ トレンプ〜アスコ 199km
3月23日(金)第5ステージ アスコ〜マンレサ 207.1km
3月24日(土)第6ステージ サントフルイトス・デル・バヘス〜バダロナ 169.4km
3月25日(日)第7ステージ バダロナ〜バルセロナ 119.8km

豪華なメンバーが揃うハイレベルな総合争い

パリ〜ニースで総合優勝に輝いたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)パリ〜ニースで総合優勝に輝いたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji昨年大会で総合優勝を果たしたアルベルト・コンタドール(スペイン)は、ドーピング疑惑による出場停止処分中。剥奪されたタイトルはミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)に移っている。なお、スカルポーニは出場しない。

グランツールを見据えるオールラウンダーが、調整レースとして多数出場するのが出場。出場メンバーの豪華さは、3月上旬に開催されたパリ〜ニースやティレーノ〜アドリアティコに退けを取らない。

パリ〜ニースでステージ優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)パリ〜ニースでステージ優勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Cor Vos総合優勝候補の筆頭は、パリ〜ニースで総合優勝を果たしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)だろう。7月のツール・ド・フランスに照準を合わすウィギンズは、ミラノ〜サンレモをキャンセルし、このカタルーニャで更にベースアップを図る。

チームスカイからは、2007年大会総合2位のマイケル・ロジャース(オーストラリア)の他、リッチー・ポルト(オーストラリア)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)らも出場。山岳系メンバーで、スパニッシュクライマー達に立ち向かう。

アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン) photo:Cor Vosドーピングによる出場停止処分から今シーズン復帰し、今シーズンすでにツアー・ダウンアンダー頂上ゴール制覇、ブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝、パリ〜ニース総合3位という成績を残し、高らかに復活をアピーツしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は2009年大会の総合優勝者だ。

モビスターからは、昨年大会で山岳賞を獲得したナイロ・クインターナ(コロンビア)や、2009年のツアー・オブ・ジャパン覇者セルヒオ・パルディージャ(スペイン)らも出場。山岳力の面で隙がない。

全日本チャンピオンジャージを着る別府史之(グリーンエッジ)全日本チャンピオンジャージを着る別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiスペインからは他にも、ダニエル・ナバーロ(スペイン、チームサクソバンク)や、サムエル・サンチェス(エウスカルテル)、ミケル・ニエベ(エウスカルテル)らが出場する。クライマーを多く輩出しているスペインだけに、多くの選手を総合上位に送り込むだろう。

パリ〜ニースを第3ステージで降りるなど、今シーズンここまで存在感を見せていないアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は、ティレーノ〜アドリアティコ総合2位のクリストファー・ホーナー(アメリカ)やヤコブ・フグルサング(デンマーク)とともにカタルーニャに挑む。アルデンヌ・クラシックが1ヶ月後に迫った今、そろそろ結果が欲しいところ。

昨年ブエルタ・ア・エスパーニャを完走した土井雪広(プロジェクト1t4i)昨年ブエルタ・ア・エスパーニャを完走した土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji昨年2度目の総合表彰台に登ったダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・バラクーダ)は、カタルーニャと相性が良い。

ジロ・デ・イタリアを狙うイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)や、アルデンヌ・クラシックでの活躍が期待されるとダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)も出場する。

最終日前日の度重なる落車で、パリ〜ニースの総合争いから脱落したリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)をはじめ、デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)、ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)ら、7月のツールを狙うオールラウンダーが集結する。

スプリントステージでは、マルセル・キッテル(ドイツ、プロジェクト1t4i)やヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、FDJ・ビッグマット)、ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)、トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)らが優勝を狙う。平坦ステージが少ないため、スプリンターの出場数は少なめだ。

そして、今大会には日本から別府史之(グリーンエッジ)と土井雪広(プロジェクト1t4i)の2人が出場する。別府史之はスペインのシエラネバダでのトレーニングキャンプからカタルーニャに合流。一方の土井雪広は、スペインのバレンシア地方での長いトレーニングキャンプを行ない、スペインレースを転戦。このカタルーニャでスペインシリーズを締めくくる。

シクロワイアードでは、現地入りした辻啓によるレースレポートをお届けします!

text:Kei Tsuji in Calella, Spain