2012年3月5日、パリ〜ニース(UCIワールドツアー)第2ステージで、横風が集団を完全に破壊。リーダージャージを欠く21名によるゴールスプリントで、トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が勝利した。総合リーダージャージはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)の手に渡っている。

グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM)とクリスティアン・プリュドム氏が握手グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM)とクリスティアン・プリュドム氏が握手 photo:Cor Vosパリ近郊のマント・ラ・ジョリーからオルレアンまで、一気に185.5kmを南下する第2ステージ。平野部を駆け抜けるコースは、中盤に登坂距離1.5kmの3級山岳が設定されているものの、ゴールまでひたすらフラット。この日は、平野を吹き抜ける強風が勝負の鍵を握った。

強い向かい風の中、レースはスローペースで動き出す。

レース前半に独走したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)レース前半に独走したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Cor Vos60km地点で集団から抜け出したオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)は、単独で2分50秒のリードを築き、この日唯一の3級山岳を先頭で通過して行く。山岳賞ジャージを着るトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)はこの3級山岳でしっかりとポイントを押さえ、ジャージキープに意欲を見せた。

93km地点の補給ポイントを過ぎるとにわかに集団前方は活気づき、「風のレース」の走り方を心得たオメガファーマ・クイックステップが横風区間で一気にペースアップ。その結果、メイン集団は粉砕され、道幅いっぱいに広がるエシュロンがいくつも形成された。

雨雲が広がる空の下、メイン集団が進む雨雲が広がる空の下、メイン集団が進む photo:Cor Vos先頭のカイセンを捉えた第1集団は30名ほど。落車の影響でここから更に絞り込まれ、最終的に21名が大集団から飛び出した展開に。先頭21名の中に、リーダージャージのグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、ヴァカンソレイユ・DCM)やトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の姿は無かった。

ウィギンズやリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を含む先頭集団は、リーダージャージを含むメイン集団を2分前後引き離してオルレアンを目指す。

横風区間でエシュロンが形成される横風区間でエシュロンが形成される photo:Cor Vos140km地点のスプリントポイントは、総合2位のウィギンズが先頭通過してボーナスタイム3秒獲得。この時点でラーションを抜いて暫定総合リーダーに立ったウィギンズは、自らローテーションに加わって後続を引き離しにかかる。

メイン集団はソール・ソジャサンが牽引したものの、先頭集団とのタイム差は拡大する一方。逃げ切りが確定的となった先頭集団では、ゴール4km手前のリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)のアタックでステージ優勝争いに向けた動きが始まる。

吹き付ける風により集団が分断吹き付ける風により集団が分断 photo:Cor Vosラスト1kmアーチを過ぎるとセプ・ファンマルク(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)がアタック。しかしオメガファーマ・クイックステップが全てのアタックを封じ込め、最後はニコラス・マース(ベルギー)がボーネンを集団先頭に連れて行く。

先に仕掛けたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、プロジェクト1t4i)は伸びず、頭を上下に振るボーネンが先頭へ。ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)の追い上げも虚しく、ボーネンの手が先に上がった。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)自ら先頭集団を引くブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)自ら先頭集団を引く photo:Cor Vos今シーズン5勝目を飾ったボーネンは、これがキャリア100勝目。レース後のインタビューでチームメイトたちの走りを讃える。「横風が吹き付けるハードなステージだった。総合狙いの選手(ライプハイマー)が先頭集団に入っていたこともあり、一日中ハードな闘いが続いたよ。シルヴァン(シャヴァネル)はとても良く働いてくれた。彼は良き友人であり、この先のステージで彼やリーヴァイ・ライプハイマーをアシストする時が来ると思う。とにかく厳しい日をキャリア100勝目で締めくくることが出来て嬉しい」。

ゴールスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ゴールスプリントを制したトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vosパリ〜ニースでのステージ優勝は、2006年大会以来6年ぶり6度目。「過去4年間、この時期はティレーノ〜アドリアティコに出場したけど、今年は変化を求めていた。パリ〜ニースに出場した年は、決まって最高のコンディションでクラシックシーズンに挑めるんだ。集団スプリントでの勝利は、調子の波が来ていることを証明している」。クラシックシーズンに向け、自信あふれるコメントを残した。

マイヨジョーヌに袖を通したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosリーダージャージのラーションを含むメイン集団は2分29秒遅れでゴール。大会連覇が懸かったトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の他、フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)、デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、そして新城幸也(ユーロップカー)らが同集団でゴールしている。

更にその後方、先頭から10分58秒遅れでゴールしたのは、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)、リッチー・ポルト(オーストラリア、チームスカイ)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)ら。

レース2日目にして、パリ〜ニースの総合優勝候補は大きく絞られた。ラーションに代わってリーダージャージを得たウィギンズは、この先の山岳ステージで、ライプハイマーやティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)、シャヴァネル、そしてバルベルデらと争うことになるだろう。

選手コメントはレース公式リリースより。


パリ〜ニース2012第2ステージ結果
1位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)     4h22'15"
2位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
4位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)
5位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
6位 アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)
8位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
50位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +2'29"

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           4h33'32"
2位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) +06"
3位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)       +07"
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)     +11"
5位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)  +14"
6位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レディオシャック・ニッサン)      +18"
7位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)           +21"
8位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)         +22"
9位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)             +28"
10位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)               +29"
70位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +3'20"

ポイント賞
トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)

新人賞
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
オメガファーマ・クイックステップ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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