3月4日から3月11日までの8日間、フランスで第70回パリ〜ニース(UCIワールドツアー)が開催される。ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催するこの春の定番ステージレースに、今年も動き出したばかりのオールラウンダーたちが集結。新城幸也(ユーロップカー)の活躍にも注目したい。

最終山岳TTが復活 地中海に至る「太陽へのレース」

パリ〜ニース2012コース全体図パリ〜ニース2012コース全体図 image:A.S.O.毎年3月に開催されるパリ〜ニースは、ツール・ド・フランスと同じASO(アモリー・スポール・オルガニザシオン)が主催。3日遅れてイタリアで開幕するティレーノ〜アドリアティコとともに、春を代表する中級ステージレースだ。

山岳コースが多く設定されているため、オールラウンダーはパリ〜ニース、そしてスプリンターはティレーノ〜アドリアティコに集まる傾向が強い。クラシックレースに向けてコンディションを整える選手や、グランツールを見据えて調子を確認したい選手が挙って出場する。

「パリからニースまで」という名前が示すように、レースはフランス北部のパリ近郊から地中海沿岸のニースまでひたすら南下する。まだまだ寒さの厳しいフランス内陸部をスタートし、比較的温暖な太陽を求めて地中海のコートダジュールに向かうその行程から、ときに「太陽へのレース(La Course au Soliel)」とも呼ばれる。

パリ〜ニース2012第1ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2012第1ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.第70回大会の開幕地は、花の都パリの40km西に位置するイヴリーヌ。前半に標高差82mの3級山岳を含む9.4kmの個人タイムトライアルで幕明ける。翌日からコースは直線的に南下を始め、フラットな第2ステージを経て、第3ステージで3級山岳ヴァシビエール湖の頂上ゴールが登場する。ヴァシビエール湖に向かう登りは登坂距離5.2kmで平均勾配3.9%だ。

パリ〜ニース2012第5ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2012第5ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.続く第4ステージも起伏に富んだステージであり、合計5つのカテゴリー山岳が詰め込まれている。ラスト2km地点で急勾配の3級山岳ボーラン峠を越え、さらに登ってロデーズにゴール。しかしこれらはまだマイヨジョーヌ争いの序章に過ぎない。

パリ〜ニース2012第8ステージ・コースプロフィールパリ〜ニース2012第8ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.「ローラン・ジャラベール山」と呼ばれる1級山岳クロワ・ヌーヴ峠にゴールする第5ステージが今大会の最難関山岳ステージ。1級山岳ラマレン峠(登坂距離4.2km・平均勾配7.9%)と1級山岳レストラード峠(登坂距離6.1km・平均勾配8.1%)を含む5つのカテゴリー山岳を越え、最後は急勾配の1級山岳クロワ・ヌーヴ峠(登坂距離3.0km・平均勾配10.1%)を駆け上がる。2010年のツール・ド・フランスにも登場したこのパンチある登りで、マイヨジョーヌは本命の手に渡るだろう。

難易度の低いカテゴリー山岳が5つ設定された第6ステージは、逃げ切りが決まりやすいレイアウトであると言える。少人数の逃げ切り、もしくはゴール12km手前の3級山岳で絞られた小集団によるゴールスプリントに持ち込まれる可能性が高い。

第7ステージでレースは地中海に到達。序盤から2級山岳が連続し、ゴール54km手前で1級山岳ヴァンス峠を越える。ゴール地点ニースまでの長いダウンヒル区間でサプライズが起こる可能性も。

今年は最終日がニースを起点とした個人タイムトライアル。「鷲の巣」として知られるエズに近い標高501mのエズ峠まで、高低差465mを9.6kmかけて登る山岳TTだ。コース全体の平均勾配は4.7%で、コンスタントに8%を超える区間も。久々の登場となるこの山岳TTで第70代チャンピオンが決定する。


パリ〜ニース2012ステージリスト
3月4日(日)第1ステージ ダンピエール・アン・イブリーヌ〜サン・レミ・レシェヴルーズ 9.4km(個人TT)
3月5日(月)第2ステージ マント・ラ・ジョリー〜オルレアン 185.5km
3月6日(火)第3ステージ ヴィエルゾン〜ヴァシビエール湖 194km
3月7日(水)第4ステージ ブリーヴ・ラ・ガイヤルド〜ロデーズ 178km
3月8日(木)第5ステージ オネ・ル・シャトー〜マンド 178.5km
3月9日(金)第6ステージ シューズ・ラ・ルッス〜シストロン 178.5km
3月10日(土)第7ステージ シストロン〜ニース 219.5km
3月11日(日)第8ステージ ニース〜コル・デズ 9.6km(個人TT)

マルティンやウィギンズ、シュレク兄弟、バルベルデに注目

トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos出場するのは18のUCIプロチームに、UCIプロコンチネンタルチームのコフィディス、プロジェクト1t4i、ソール・ソジャサン、ユーロップカーを加えた合計22チーム。

個人タイムトライアルでリードを広げ、昨年総合優勝に輝いたトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)は、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)とともに大会連覇を狙う。マルティンは2月のヴォルタ・アン・アルガルヴェで総合2位と、上々の滑り出し。ライプハイマーはツール・ド・サンルイスで総合優勝に輝いている。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vosオメガファーマ・クイックステップは今シーズンすでに13勝。世界最多勝チームはその勢いをパリ〜ニースにも持ち込めるか。マルティンは初日からリードを奪うだろう。

ヴォルタ・アン・アルガルヴェでマルティンを下し、大会制覇を果たしたのはチームスカイ勢。ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)が個人TTでマルティンを負かし、そして今年移籍したばかりのリッチー・ポルト(オーストラリア)が総合優勝に輝いた。パリ〜ニースでは再びウィギンズとポルトがタッグを組む。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji昨年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネを制し、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位に入ったウィギンズ。ツール・ド・フランスに向け、優勝リストにもう一つ大きなタイトルを追加したいところだ。ブエルタ総合2位のクリス・フルーム(イギリス)は肺の感染症により出走を取り止めている。

“形式的”な2010年ツール・ド・フランス覇者アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は、兄フランクとともに出場。2000年大会覇者で、昨年総合2位のアンドレアス・クレーデン(ドイツ)も同チームから出場する。

新城幸也(日本、ユーロップカー)新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Sonoko Tanaka出場チームの中で、レディオシャック・ニッサンは屈指のチーム力を誇ると言えるだろう。シーズン序盤の走りを見る限り、兄フランクをエースに立てることが予想される。

出場停止処分を終え、モビスターで復帰したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)は、早速ツアー・ダウンアンダー頂上ゴール制覇、そしてブエルタ・ア・アンダルシア総合優勝。まだ優勝経験が無いこのパリ〜ニースで復活をさらに印象づけることが出来るか。コースはバルベルデ向きだと言えるだろう。

イタリアからはイヴァン・バッソ(リクイガス・キャノンデール)とダミアーノ・クネゴ(ランプレ・ISD)の二強が出場。デニス・メンショフ(ロシア、カチューシャ)やヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らも総合上位に名を連ねるだろう。

フランスのユーロップカーは、昨年ツール・ド・フランスを沸かせたトマ・ヴォクレール(フランス)とピエール・ロラン(フランス)をエースに立てる。直前のGPサミンで調子の良さを見せた新城幸也も出場予定であり、ステージ優勝を含めた活躍に期待がかかる。

シクロワイアードでは、3月9日の第6ステージから現地入りする辻啓がユキヤの生の声をお届けする予定。また、パリ〜ニースが開催される3月4日〜11日は、J SPORTS全4チャンネルが無料放送キャンペーン中。全8ステージを生中継で視聴可能だ。

text:Kei Tsuji