アンディ&フランクのシュレク兄弟を抱えるレオパード・トレックが、レディオシャック・ニッサンとして動き出す。チームに新たに加わるのは、スポンサーのレディオシャック社とニッサン社。クレーデンやホーナーといった強力なオールラウンダーの他、名将ブリュイネール監督の加入が大きなトピックだ。

レオパード・トレックレオパード・トレック photo:Makoto Ayanoルクセンブルクのシュレク兄弟を中心に据え、ルクセンブルクを拠点に2011年に結成されたレオパード・トレック。ファビアン・カンチェラーラ(スイス)やイェンス・フォイクト(ドイツ)、ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)らが所属し、年間25勝を挙げた(UCIワールドツアーランキング3位)チームが姿を変える。

チームのパトロンであるフラヴィオ・ベッカ氏チームのパトロンであるフラヴィオ・ベッカ氏 photo:Cor Vosパトロンであるルクセンブルクの資産家フラヴィオ・ベッカ氏は、レオパード・トレックの設立当初、1500万ユーロ(約15億2000万円)という巨額の年間予算を4年間確約した。華々しい船出を迎えたが、実際はタイトルスポンサーが見つからないまま。僅か1年で体制立て直しを余儀なくされ、チーム名称を変更して再スタートを切ることとなった。

新たにスポンサーに加わるのは、これまでアメリカのチームレディオシャックをサポートしたレディオシャック社とニッサン社。トレック社も引き続きチームに携わり、チーム名称は「レディオシャック・ニッサン・トレック」に。UCI(国際自転車競技連盟)登録名称は「レディオシャック・ニッサン」

レディオシャック・ニッサンの新監督に就くヨハン・ブリュイネール氏レディオシャック・ニッサンの新監督に就くヨハン・ブリュイネール氏 photo:Cor Vos今シーズン限りで解体するチームレディオシャックから、ヨハン・ブリュイネール監督をはじめ、多くの選手が移籍する。チームの体制や登録はレオパード・トレックを踏襲するが、実質的には2チームの合併と言っても過言ではない。

ブリュイネール監督はプレスリリースの中で「すべての関係者にとって有益な、勝つためのパートナーシップだ。30名の選手を選び出す作業は、これまで経験したことがないほど困難を極めた。チームレディオシャックと契約が残っている選手と、レオパード・トレックの選手を合計すると42名。つまりUCIワールドツアーチームのメンバー数の上限を12名超過する。路頭に迷うことがないように、すべての選手が2012年に走る場所を確保するよう努めた」と語っている。

ツール制覇を目指すシュレク兄弟(ルクセンブルク)ツール制覇を目指すシュレク兄弟(ルクセンブルク) photo:Makoto Ayanoメンバーのうち、チームレディオシャックから移籍する選手は13名。レオパード・トレックから継続する選手は13名。他チームから移籍する選手は4名。

チーム最大の目標はシュレク兄弟によるツール・ド・フランス制覇だ。弟アンディは2009年から3年連続ツール総合2位。兄フランクは2011年に総合3位に入り、兄弟揃って総合表彰台に登った。チームレディオシャックから加わるアンドレアス・クレーデン(ドイツ)やクリストファー・ホーナー(アメリカ)、ティアゴ・マシャド(ポルトガル)らが強力なアシストとして活躍するだろう。

「北のクラシック」でエースを担うファビアン・カンチェラーラ(スイス)「北のクラシック」でエースを担うファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Cor Vosそして何より、ランス・アームストロング(アメリカ)のツール7連覇(1999年〜2005年)とアルベルト・コンタドール(スペイン)のツール2勝(2007年と2009年)を指揮したブリュイネール監督の合流が、シュレク兄弟にとって大きな助け舟となる。

アンディはプレスリリースの中で「ヨハンと話し合い、彼のフィロソフィーを理解した。彼がチームを指揮することは、自分にとってもチームにとっても最高の利益になるだろう。彼ほどレースの戦略に精通している人物は他にいない。表彰台の真ん中に立つための最高のチャンスを得た」と新体制を喜ぶ。

4度の世界TTチャンピオンで、北京五輪個人TT金メダリスト、ロンド・ファン・フラーンデレン&パリ〜ルーベ覇者のファビアン・カンチェラーラ(スイス)はチームに残留する。「北のクラシック」でエースを担うカンチェラーラは「2011年はフランドルでもルーベでも勝てず、困難な時期を経験した。だけどその経験が自分のモチベーションを上げてくれる。身体的にも精神的にも強さを増した。石畳のクラシックに長けた選手も加入し、自身もパリ〜ルーベで勝っているディルク・デモル監督も加わる。自信をもたない理由がない」とコメント。グランツールだけでなく、クラシックレースでも成績を残せる布陣が揃った。

レディオシャック・ニッサン2012メンバー
ヤン・バケランツ(ベルギー) ←オメガファーマ・ロット
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
ジョージ・ベネット(ニュージーランド) ←レディオシャック
マシュー・ブッシュ(アメリカ) ←レディオシャック
ファビアン・カンチェラーラ(スイス)
ローラン・ディディエ(ルクセンブルク) ←サクソバンク・サンガード
ヤコブ・フグルサング(デンマーク)
トニー・ギャロパン(フランス) ←コフィディス
リーナス・ゲルデマン(ドイツ)
ベン・ヘルマンス(ベルギー) ←レディオシャック
クリストファー・ホーナー(アメリカ) ←レディオシャック
マルケル・イリサール(スペイン) ←レディオシャック
ベンジャミン・キング(アメリカ) ←レディオシャック
アンドレアス・クレーデン(ドイツ) ←レディオシャック
ティアゴ・マシャド(ポルトガル) ←レディオシャック
マキシム・モンフォール(ベルギー)
ジャコモ・ニッツォロ(イタリア)
ネルソン・オリベイラ(ポルトガル) ←レディオシャック
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ) ←レディオシャック
ヨースト・ポストゥーマ(オランダ)
グレゴリー・ラスト(スイス) ←レディオシャック
トーマス・ローレッガー(オーストリア)
ヘイデン・ロールストン(ニュージーランド) ←HTC・ハイロード
アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
フランク・シュレク(ルクセンブルク)
ジェシー・サージェント(ニュージーランド) ←レディオシャック
イェンス・フォイクト(ドイツ)
ロバート・ワグナー(ドイツ)
オリバー・ツァウグ(スイス)
アイマル・スベルディア(スペイン) ←レディオシャック

チームを移籍する選手(レオパード→他チーム)
ドミニク・クレンメ(ドイツ) →プロジェクト1T4I
マルティン・モルテンセン(デンマーク) →ヴァカンソレイユ・DCM
トム・スタムスニデル(オランダ) →プロジェクト1T4I
アナス・ルンド(デンマーク) →チームサクソバンク
ダヴィデ・ヴィガノ(イタリア) →ランプレ・ISD
ファビアン・ウェーグマン(ドイツ) →ガーミン・サーヴェロ
マルティン・ペデルセン(デンマーク) →クリスティーナウォッチズ
スチュアート・オグレディ(オーストラリア) →グリーンエッジ
ステファン・デニフル(オーストリア) →ヴァカンソレイユ・DCM
ブルーノ・ピレス(ポルトガル) →チームサクソバンク
ブリース・フェイユ(フランス) →ソール・ソジャサン
ルディガー・セリグ(ドイツ) →カチューシャ
ウィリアム・クラーク(オーストラリア) →チャンピオンシステム

チームを移籍する選手(レディオシャック→他チーム)
別府史之(日本) →グリーンエッジ
サム・ビューリー(ニュージーランド) →?
ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア) →アスタナ
マヌエル・カルドソ(ポルトガル) →カーハルーラル
フィリップ・ダイグナン(アイルランド) →ユナイテッドヘルスケア
ロバート・ハンター(南アフリカ) →ガーミン・サーヴェロ
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド) →オメガファーマ・クイックステップ
リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ) →オメガファーマ・クイックステップ
ジョフロワ・ルカトル(フランス) →ブルターニュシュレー
ジェイソン・マッカートニー(アメリカ) →ユナイテッドヘルスケア
ロビー・マキュアン(オーストラリア) →グリーンエッジ
デミトリ・ムラフエフ(カザフスタン) →アスタナ
セルジオ・パウリーニョ(ポルトガル) →サクソバンク・サンガード
セバスティアン・ロセレル(ベルギー) →ガーミン・サーヴェロ
イワン・ロフニー(ロシア) →チームルスベロ
ビョルン・セランダー(アメリカ) →スパイダーテック

text:Kei Tsuji

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